Golf Tips Vol. 130

雑念を排除せよ

'Clean up your cluttered mind'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' September 2009)

「バックスウィングを開始する前、あなたの心は平静で目の前のショットに集中していなければならない。しかし、確立されたプレショット・ルーティーンを実行中であったとしても、想念というものは簡単に別方向に彷徨い出しやすいものだ。

月賦の支払の心配だの、昼食に何を食べるかなどについて考えてはいけない。ゴルフの達人というものは、ボールに歩み寄る前に、余計な想念を排除出来る人々である。集中するには、アドレスの前にショットに関して異なる角度から考える習慣をつけるべきだ。

前のショットを終えボールに向かって歩きながら(その場に着いてからではない)ピンの位置について熟考し、距離を予測し、風向きをテストし、ライを分析する。こうしたプロセスによって雑念を排除し、真にターゲットのみに集中しながら、自信を持って穏やかに次のショットのクラブ選択や戦略を考えることが出来る。この方法を習慣にすれば、とても正確で堅実なショットが出来ることに驚くに違いない」

(December 07, 2010)


力みと強ばりを取る方法

私がプレイしている市営ゴルフ場のNo. 18は難ホールです。ティー・ショットが真ん中へ飛ぶと、左方向に急傾斜したフェアウェイによってボールは左の谷底に向かい、二打目は急な打ち上げとなります。このホールで最近全く2オンしていない私は、ある日このフェアウェイの左側150ヤード付近に数個のボールを転がし、21°ハイブリッド(私の能力で最長190ヤード)を打ってみました。乗りません。多くはグリーン手前にバックリと口を開けて待っているバンカーに吸い込まれてしまいます(これが私の最近の定番)。18°ハイブリッド(最長200ヤード)に替えてみました。これでも届かない。ヤーデージは150ヤードなのに、200ヤード打てるクラブで打っても届かないというのは理不尽です。

[simulator]

ふと気づきました。「届かせよう!乗せよう!」という強迫観念で力み過ぎ、筋肉が強ばっているせいではないか?しかし、「飛ばそう!」という意識を取り除くのは容易ではありません。「練習場で打っているつもりになれ」というtipがありますが、打ちっ放し練習場でもボールを目一杯飛ばそうとすると力むものです。飛距離はクラブに任せ、スウィートスポットで打つスウィングに集中出来る方法はないものか?

いい方法を思いつきました。ゴルフのシミュレーションをしていると考えるのです。【右図】ボールは数メートル先の、フェアウェイの画像が映っているスクリーンに消えて行くだけ。つまり、ボールの行き先を見てもしょうがありませんから、この場合170ヤード先へ飛ばそうなどと鼻息を荒くすることは無意味になります。飛距離と方向は、インパクト直後のスウィング・スピードとクラブフェースの向きによってコンピュータで計算されるので、ゴルファーの意識は正しいインパクトを迎えることだけに集中します。距離にこだわる力みと筋肉の強ばりは自然に消滅します。

その境地でハイブリッドを打つとフェアウェイ右からなら190ヤード、フェアウェイ左からなら200ヤードとして打てば何とかなるという結果になりました。まだ完全に力みが取れていないということも考えられるので、もっとクラブを短く持てる可能性は充分あります。

シミュレーションをシミュレーションする…という、言葉は妙だけど役に立つtipではないでしょうか。


【写真はhttp://www.carnaweb.comにリンクして表示させて頂いています】

(December 14, 2010、改訂December 12, 2015)


ゴルフ笑言集 Part 4

以下の笑言集は当サイトが独自に収集・翻訳したものです。無断転載・引用を禁じます。

「私が死んだら、主人が墓参りに来てくれるようにゴルフコースに埋めて頂戴」
詠み人知らず

「ゴルフボールというものは、中年男の目が的確に女性の胸に向かうように、正確に池に向かって行く」
Michael Green(マイケル・グリーン、作家)

[ten finger]

「見えないところでプレイしているあなたの競争相手の打数は、罵り声の回数+ヒューッという音の合計の平方根に等しい」
Michael Green(マイケル・グリーン、作家)

「ゴルフは18歳の巨乳娘のようなものだ。いけないとは思いながらも離れることが出来ない」
Val Doonican(ヴァル・ドゥーニカン、アイルランドのミュージシャン)

「私は80台前半でプレイする。それ以上暑かったらプレイしない」【華氏80°は摂氏26.6°】
Joe E. Lewis(ジョー・E・ルイス、喜劇役者)

「真のゴルファーというものは、どんな理由で腹を立てたとしてもドライヴァーでキャディを殴ったりしない。サンドウェッジの方がずっと効果的だからだ」
Huxtable Pippey【不詳】

「私が1番アイアンを抜いたのはたった一度タランチュラ(毒グモ)を殺した時だった。七打かかったね」
Jim Murray(ジム・マレイ、スポーツ・ライター)

「熱心なゴルファーはエヴェレストにだって登るだろう。もしその頂上に旗が立っていれば」
Pete Dye(ピート・ダイ、コース・デザイナー)

「ゴルフというのは、要するに屋外で行なわれるマゾ的運動だね」
Paul O'Neil(ポウル・オニール)

(プロ野球選手との、動いているボールと止まっているボールを打つののどちらが難しいかという議論において)「だけど、あんたらは観客席に行ってファウル・ボールを打たないだろ?おれたちゃ、打つ」
Sam Snead(サム・スニード)

「ある男が『もっと飛距離がほしい』と云った。私は『じゃ、打ったら後ろへ走ればいい』と云った」
Ken Venturi(ケン・ヴェンチュリ)

「あなたが自分の本当の性格を露呈したくなければ、ゴルフはすべきでない」
Percey Boomer(パーシィ・ブーマー、英国のインストラクター)

【おことわり】画像はhttp://blog.mola-light.com/にリンクして表示させて頂いています。

(January 02, 2011)


75歳で300ヤード打つ秘訣

PGAプロフェッショナル(インストラクター)としても高齢に入るDr. Gary Wiren(ゲアリ・ワイレン博士)は、75歳の誕生日にフロリダのあるコースで、何人かのギャラリーを前にして300ヤードのドライヴを(それも三回も)放ったそうです。最も長いのは310ヤード。以下は当人の弁。

[Wiren]

'Fountain of Truth'
by Gary Wiren ('Golf Magazine,' February 2011)

「若いゴルファーが300ヤード打つのは珍しくないことだ。しかし、75歳の男というのは珍しい(笑)。年齢によって【身体のコンディションが】劣化するのではない。大抵の人々は自ら急速に劣化させているのだ。もしその気になれば、90歳代に突入するまで、強靭さと柔軟さを保つことは可能だ。

柔軟さを伴わない強靭さは無意味である。私は日常生活の中でフィットネス運動を行なうことによって、柔軟さと強靭さを培っている。
・朝、髭剃りのために顔に石鹸を塗りながら、爪先立ちでふくらはぎを鍛えたり、尻の筋肉、太股、腹部などを引き締めたりする。
・歯を磨きながら、50〜100回のスクワット(しゃがみ込み体操)を行なう。
・車にガソリンを入れている間、ゴミ箱に足を乗せてストレッチする。あなたはぼけーっと立って数字が変わるのを見てるんだろうが…。

左手の最後の三本の指は、ゴルフクラブをコントロールすべきものなのに、指の中で最も弱いものだ。手で握り締める運動器具を手の届くところ(TVの前など)に置き、暇さえあれば鍛えることだ。歴史上の名人Henry Cotton(ヘンリィ・コットン)は、二年間も左手一本で打つ練習をしたそうだ。

私は最後にいつベーコン・エッグを食べたか記憶がない。私の朝食はレーズン入りグラノーラ(シリアル)で、そこにナッツ類、ブルーベリィや少しのヨーグルトを乗せる。わたしはまた、サラダ、魚、チキンをよく食べる。牛肉はもうほとんど食べない。

私は1994年のU.S. Senior Open(全米シニア・オープン)の本戦に臨むことが出来た。私は、カートに乗りたがってぶうたれている連中へのメッセージとして、自分で自分のバッグを担いだ。ただしキャディはつけなくてはならなかったので、私のキャディは、私の名を付けた「ビブ」(キャディが身につける“よだれかけ”のようなもの)を着て、タオルを肩に乗せただけで(空身で)フェアウェイを歩いた。観衆は『いい仕事を見つけたもんだな』とキャディをからかっていた。

もし私が過去に戻って25歳の自分に助言をするとしたら、『ゴルフの歴史の中で最高のパット名人になれ』と云うだろう。私はGary Player(ゲアリ・プレイヤー)と9ホール廻ったことがある。私は常に彼を40ヤードは追い越していたし、九つのうち七つのグリーンにパーオンしていたのに、一個もバーディを達成出来なかった。それに引き換え、Gary Playerのスコアは33(3アンダー)だった。ゴルフ名人ではなくともパット名人にはなれるが、パット名人でなくてはゴルフ名人にはなれないということだ」

【Dr. Wirenの写真は http://www.garywiren.com/wp-content/themes/Gary/images/gary_swing.png にリンクして表示させて頂いています。】

(January 13, 2011)


ストレッチングの原則

'Golf Flex'
by Paul Frediani (Hatherleigh Press, 2000, $9.95)

「ストレッチングは退屈であると思われがちだ。ティー・ショットが20〜30ヤード伸びるとしたら?退屈ですか?そうじゃないでしょう。硬い身体では短く小さなスウィングしか出来ず、当然距離も出ない。あくびをする前に、ティー・ショットのことを考えなさい。

身体が硬いがゆえに起る障害によって、家に座っていなくてはならなくなったら、それこそ退屈です。柔軟性を失うことは、重い障害の可能性を増大させます。

歳を取ると柔軟性を失いますが、これは主に関節に必要な水分を送り込む動きを欠くからです。多量の水を摂取することは、こうした水分を補給し、筋肉を柔軟に保ちます。

【ストレッチングの原則】

1. 常に呼吸せよ
2. いい姿勢を維持せよ
3. 息を止めてはいけない
4. ハネ返ったり、乱暴な動きをしてはいけない
5. 一貫して行うのが鍵
6. 身体とのコンタクトを続け、筋肉が伸長しているかどうかに集中せよ
7. 過度にストレッチしてはいけない
8. プログラムを始める前に医師に相談せよ
9. スマイル & リラックス
10. 常に呼吸することを忘れるな

おまけ:ゴルフ・エルボーは、ボールを繰り返し打つことから来る腱の障害である。手、手首、前腕部の筋肉を強化する必要がある。新聞紙を皺くちゃにする運動をお薦めする。毎回新しい新聞を手に、二・三回実行する。大した運動には見えないかも知れないが、これは手、手首、前腕部の筋肉強化に役立つ。痛み始めてから氷をあてたりリハビリを行うよりはずっと良い」

 

'Lifting weights when you're over 40'
by Blake Hammon ('The Meridian Star,' April 26, 2005)

「大方の人々はストレッチングとウォーミングアップを混同している。ストレッチングは冷えた筋肉でやってはいけない(筋肉を痛めることになる)。ランニング・マシンなどでウォームアップしてからストレッチングすべきである」

(January 13, 2011)


現在のレッスン・プロと別れるべき五つの徴候

'5 signs your pro must go'
by Charlie King ('Golf Magazine,' February 2007)

「1) レッスン・プロが遅れてやって来たり、何も準備していない場合。

2) 生徒であるあなたより、レッスン・プロの方が数多くボールを打つ場合。こういうプロは、レッスンを早く終えたくてうずうずしている。彼のフォーカスはあくまでもあなたにあるべきなのに。

3) 応急手当を施そうとするレッスン・プロ。スライスに悩む生徒にクラブフェースをクローズにすることを教えるような輩だ。これはスライスを根絶出来る方法ではない。いいプロであれば、スライスは何故出るか、その際のクラブフェースの動きを説明し、クラブフェースをコントロールするためのドリルを与えてくれる筈だ。

4) あなたの欠点に関する長広舌で、あなたをうんざりさせるプロ。一回のレッスンで八つ以上のスウィングの欠点を並べ立てるとすれば、彼は『おれって凄いだろ。十個もスウィングの欠点を指摘出来るんだ!』と自慢しているに過ぎない。理想的なプロは、八つの欠点を発見したとしても、対応可能な一つか二つを選ぶものだ。

5) フル・スウィングだけ教えようとするプロ。確かに、大方のゴルファーはフル・スウィングを教わりたがるものだ。しかし、いい先生ならフル・スウィングとショートゲームの割合を7:3にするだろう。もしあなたのインストラクターがショートゲームについて何も言及しないのであれば、断じて他のプロを探すべきである」

(January 28, 2011)


練習法の大いなる誤謬

'Do's and don'ts of practice'
by Ralph Simpson ('Golf Digest,' March 2011)

「練習場では真っ直ぐ打てるのに、コースへ出ると右や左の旦那様。『どうしてえ?』と思ったことはないだろうか?その理由について、UCLA名誉教授Richard Schmidt(リチャード・シュミット博士、心理学と運動作用の権威)は『あなたは練習巧者になろうと決意して練習しているのであって、ラウンドに備えているわけではないからだろう』と揶揄する。

教授は『ゴルフは一打毎になすべき課題と目的がころころ変わるゲームである。そのためには"random practice"(様々な課題をこなすランダム練習)が必要だ。大抵のゴルファーは"blocked practice"(同じ課題を繰り返すブロックト練習)によって、動作が無意識に実行出来るまで厭きずに繰り返す』と分析する。

『ブロックト練習においては課題と目的は常に同一なので、練習者は前の結果を参考にして次のショットを遂行することが出来る。だから、ブロックト練習では一打毎の問題解決を迫られず、ラウンドで必要とされる意思決定の学習を欠いてしまう』

教授は、ゴルファーにとってはランダム練習の方が効果的であると結論づける。何故なら、ゴルファーはコースにおいては一打毎に新しい課題(異なるライ、異なるハザード、異なるターゲット、異なる距離、異なる軌道など)に対応してショットを試みなければならないからだ。

『初心者の段階では、運動パターン(フル・スウィング、ピッチング、チッピングなど)の学習のためにブロックト練習が向いている。しかし、基本を学び終えたらランダム練習の方が格段に効果的である』と教授は断言する」

 


(February 12, 2011)

待ち時間にすべきこと

ゴルフの達人Tom Watson(トム・ワトスン)の体験談。

'Rehearse your shot'
by Tom Watson ('Golf Digest,' February 2009)

「2006年のU.S.オープンのことだ。スコットランドのプロColin Montgomerie(コリン・モンガメリ)は最終ホールのフェアウェイで待たされている間、6番アイアンを握っていた。グリーンが空くと、彼は7番アイアンに取り替え、非常に貧弱なショットでグリーンの右方向にショートした。待っている間に、何らかの疑惑が彼の心に湧いた結果である。

1983年の全英オープン最終日の最終ホール(長いパー4)。私はいいティーショットを打った。先行の組はまだグリーンに到達しておらず、かなり待たされそうだった。プレッシャーのもとでは辛い時間である。

私の残りのヤーデージは213ヤードだった。私は2番アイアンを手に、ただ一つのことだけ考えていた。トップでクラブを正しい位置にセットするということだ。インストラクターたちはそれを『slot(スロット)に収める』と呼ぶ。私はその動きをスローモーションで何度も何度も繰り返した。グリーンが空いた時、私に迷いはなかった。私のボールはグリーンをガードしている二つのバンカーの間を駆け抜け、ピンから15ヤードに到達した。私はそこを2パットでパーに収め、Hale Irwin(ヘイル・アーウィン)とAndy Bean(アンディ・ビーン)に一打差をつけて優勝した」

(February 12, 2011)


肥満体パター・グリップ

'Can fat grips help you make more putts?'
by Ashley Mayo ('Golf Digest,' February 2011)

「K.J. Choi(【英】K.J.チョイ、【日】崔京周、韓国)がAT&T National 2007に肥満体グリップを使って優勝して以来、太めのグリップの人気が上昇した。

本誌はジャンボ・サイズのグリップが本当にパットの役に立つのか、テストを実施した。ブレイクのない6フィート(約1.8メートル)を、標準的グリップで十回、標準より80%太めのグリップで十回。ゴルファーたちがどちらか一つに慣れ過ぎてしまうことのないよう、一回毎にパターをチェンジして貰った。ゴルファーたちはどちらのパターでも同じ成功率(71%)という結果を見せた。ただし、ハイハンデの者は太めのグリップによる成功率が高く、ローハンデの者は標準のグリップでの成功率が高かった。

LPGAのティーチング・プロSusan Roll(スーザン・ロール)は『ストロークする際にかなり緊張する人や手首と手の動きが激しい人には太めのグリップが向いている』と云う。『そういう問題がなく、現在のグリップで快適な人は別に変える必要はない』」

(February 18, 2011)


冒険王のコース戦略

冒険主義の攻めるゴルフで知られたArnold Palmer(アーノルド・パーマー)は、現在は冒険王というより冒険翁と呼ぶべきかも知れません:-)。彼の、反省も含めた攻撃精神のススメ。

[Palmer]

'10 Rules'
by Arnold Palmer with Guy Yocom ('Golf Digest,' March 2011)

「・リスク(危険性)対リウォード(恩賞)の比率を計算せよ

私がU.S. Open 1960の最終日のNo.1グリーンにドライヴァー・ショットを放った時、多くの人々がそれは危険が大き過ぎ、英雄たらんと試みたショットだと断じた。私はそういう風には考えなかった。右手に小川がある狭いホールではあったが、たとえ私の第一打が水に浸かったとしても、私が寄せワンのパーで上がることは可能だった。このホールの恩賞は確実なバーディ、うまくいけばイーグルの可能性であり、リスクを大きく上回るものであった。イーズィ・バーディでこのホールを終えた私は、自己最高の打差で優勝出来た。常に最悪のケースとベストの結果を勘案し、ベストの方を優先して考えること。

・泥沼に入る前に熟慮せよ

60年代初頭にJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)が登場し、凄い飛距離を見せ始めた。彼と一緒に廻ると、私は彼の飛距離に負けまいとする衝動を抑えられず、私のベストとは云えないショットが出る結果となった。全力を投入するのはいいが、全力以上でスウィングすると概ね大惨事に繋がるものだ。

・大胆なパットはリスキーではない

パットにおいて重要なのは、ボールをカップに届けることだ。もっと云えば、カップを通過するように打つことだ。私の最盛期、私がパットに失敗すれば、ボールは必ずカップの横を通り過ぎたものだ。あなたがショートしがちなタイプであれば、それはパターの動きを止めているせいであり、リスクが増大し、グリーン上での自信を損なってしまう。常にボールがカップに転げ込むチャンスを与えるべきである。

・リカヴァリーでミスを冒すな

U.S. Open 1966で、私が最終日の後半に七打のリードを失ってBilly Casper(ビリィ・キャスパー)に敗れたのは、彼が32という好スコアで廻ったのもさることながら、私の拙さも災いした。とりわけ、No.16(パー5)の第二打は痛恨のミスだった。ティー・ショットを濃いラフに入れた私は、フェアウェイに出すのではなく3番アイアンを選んだ。そのショットは75ヤードしか進まず、ボギーとなって、Billy Casperに優勝を譲る結果になった。リカヴァリーでミスを冒してはならない。

・低いボールはリスクを減らす

私はアイアン・ショットをかなり低く真っ直ぐに打つようにしており、ドローやフェードはかけない。こういうショットの利点はいくつかある。先ず、風に強い。次に、このショットは急な攻撃角度なので、悪いライからでもボールを打ち易い。そして、このショットはソリッドに打てる。

・未経験のショットを試みるな

U.S. Open 1963の18ホールのプレイオフのNo.11で、私のボールは60センチの高さの切り株の上で止まった。私は熟考の末、アンプレイアブルではなくそのまま打つ決意をした。ボールの脱出に三打かかってトリプル・ボギーとし、Julius Boros(ジュリアス・ボロス)に敗れた。これは、私の長いゴルフ人生の中でマリガンにしたいショットの一つだ。この場合のミスは、私が練習をしたこともないショットを試みたことだ。確信の無さはリスクを増幅し、ミスを生む原因となる。

・自分の本性に忠実であれ

私は『Phil Mickelson(フィル・ミケルスン)は攻撃的過ぎじゃないか?』としょっちゅう聞かれる。私の答えは断固たる『ノー』である。彼の多くのプレイにリスクの要素があるのは確かだが、彼はそういうショットで罰せられるよりは恩賞(イーグルやバーディ)を得ることの方が多い。彼が注意深く守りのゴルフをしたら、メンタルな間違いや他のミスを招くことになる。自分の個性にリスクを見極めさせ、英断すべきである。

・ラフからのリスクを軽減せよ

全英オープン1961で、私は四ホール残した段階のトーナメント・リーダーだった。あるパー4でのティー・ショットが濃いラフに掴まった。私はグリーンを狙う決意をした。それはリスキーなショットだったが、二つの要素で危険性を最少限にした。一つは、グリーンに届かせられるクラブの中で最もロフトの多い6番アイアンを選んだこと、二番目は30センチのディヴォットを取るほどの馬鹿力を使ったことだ。ボールはグリーンに乗ってパーを得、私にとっての最初の全英オープン優勝の助けとなった。現在、この第二打地点には記念の銘板が埋め込まれている。

・リスクとギャンブルの違いを知れ

L.A. Open 1961のあるパー5で、私は有名な12を叩いたことがある。グリーンへの第二打の3番ウッドで三度もO.B.を出したのだ。グリーンの両側にはO.B.区域があってリスキーではあったが、ライが良かったのでギャンブルという範疇ではなかった。私は好調だったし、そのショットに自信があった。突風がそのショットを台無しにした。次打で、私は狙いを調整し過ぎ、フックさせてO.B.となった。三度目も同じだった。しかし、現在でもそれがギャンブルだったとは思っていない。

・パートナーに影響されるな

プロのトーナメントの観衆は勇敢でリスキーなプレイを好むものであり、彼らの望みに応えないのは辛い時がある。あなたの場合も、パートナーから無分別な助言を得ることがある筈だ。パートナーの応援があれば、いつもよりリスクのあるショットを試みたくもなるものだが、それがどんなに魅力的な戦略であったとしても、50%の成功率が無いのであればトライすべきではない」


(February 23, 2011)

John Jacobs(ジョン・ジェイコブズ)の叡智

John Jacobs(ジョン・ジェイコブズ)は英国のインストラクター。全英オープンに14回出場した経験があり、無数のトップ・プロを教え、Ryder Cupのキャプテンを二度も務めています。'Practical Golf'(邦題『パーフェクト・ゴルフ』)など、著書も多数。

'A Life Full of Lessons'
by John Jacobs with Jamie Diaz ('Golf Digest,' March 2011)

「・Ben Hogan(ベン・ホーガン)の'The Modern Fundamentals of Golf'(=ゴルフの基礎・最新版、邦題『モダン・ゴルフ』)は、私のビジネスを助けてくれている。ハイハンデのゴルファーたちがこの本を買い、直ちにウィーク・グリップにしてクラブをオープンに捻り始めるからだ。その状態で出来ることと云えば、50ヤード右への当たり損ないしかない。この本の題名は'How I Play Golf'(私流のゴルフ)とすべきであった。それならフック撃退の特効薬として素晴らしい本であることは間違いない。しかし、現在の題名は誰にでも役立つような誤解を与えている。

・ゴルフの最も難しい点は、自然に考えられるミス対策が誤りであるということだ。スライサーはボールが右へ行くので、遥か左を狙う。それはスライスをひどくするだけに過ぎない。

・多くの人々はアドレス・ポジションを重視しない。アドレスは身体を捲き上げ、解(ほど)くことを可能にする重要ポイントなのに。正しくセットアップしさえすれば一件落着であり、もう何も考える必要はなく、後は全てを神様に任せればよい。

・私が最初の本'Golf by John Jacobs'を執筆した時、私が最初に紙に書いたのは'Golf is what the ball does."(ゴルフはボールの動き次第のゲームである)という一句であった。それはインストラクターとしての私の突破口となった。私はボールの軌道を見つめ、『何故そうなったか?』と問いかける。

・ゴルフ・スウィングの目的は只一つ、クラブヘッドをボールに正しく導くことと、そういうインパクトを繰り返し実行出来るようにすることだ。風変わりなスウィングをするゴルファーも、正しいインパクトを迎えることが出来、それを繰り返せるのなら問題ない。重要なポジションはインパクトただ一点であり、それはクラブフェースの向き、スウィング軌道、攻撃角度、そしてクラブヘッドの速度などによって決定される。よきゴルファーたらんとする大きな第一歩は、ボールの軌道【結果】からインパクトの瞬間に起った幾何学的現象【原因】を理解することにある」


(March 06, 2011)

[GM] 六週間で80を切る

'Golf Magazine'誌の四月号の特集の一つは'How to Break 80〜Your 6-week plan to a lifetime of low scores'(80を切る方法〜生涯最少スコアを目指す六週間計画)というもの。全9ページの特集の扉は、私のサイトの紹介ボタンのアニメに似ています。

執筆はインストラクターBrady Riggs(ブレイディ・リグズ)によるもので、次のような内容になっています。
・第一週 ウェッジによる正確なショットの習得(70%の正確さを得る三時間ドリル)
・第二週 ドライヴァーでフェアウェイの安全な側に打つ方法(70%の正確さを得る三時間ドリル)
・第三週 チッピングとピッチングのマスター(全てを1.5メートル内に寄せる三時間ドリル)
・第四週 パッティングの上達(1.5メートルから80%を成功させる三時間ドリル)
・第五週 ゲーム・プランの改善(コース戦略を強化する三時間ドリル)
・第六週 一打でバンカーから脱出する技術(80%の成功率を目指す三時間ドリル)

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筆者Brady Riggsは「80を切るための最後の難関である10ストロークの削減は、魔法のように突如降って湧くものではない。それは週に少なくとも三時間の、考え抜かれた計画に基づく努力によって可能となるものだ。golf.com/break80 にはヴィデオとワークシートが用意されている。

ゴルフ・ゲームをジグソー・パズルと考えてほしい。上に挙げた六つの要素は、どれ一つとっても欠かせない要素であり、それぞれが相俟って総合的にあなたの上達に貢献するのである」と云っています。

この号の'Golf Magazine'の表紙は、真ん中にでかでかと"How to Break 80"の文字があり、その脇にTiger Woods(タイガー・ウッズ)の写真がレイアウトされています。二つは全く別な記事なのですが、まるでTigerの目標が80を切ることのように見えるのが可笑しい。


(March 06, 2011)


明日のために

Dr. T.J. Tomasi(T.J.トマシ博士)はPGA of Amaricaのインストラクターであり、Keiser(カイザー)大学の教授兼ディレクターでもあります。10冊以上のゴルフ・インストラクション本を執筆し、新聞連載のコラムも持つ人気インストラクター。

'It's Good for Your Game'
by Dr. T.J. Tomasi (Andrews McMeal Publishing, 2003, $12.95)

「絶好調時、あなたは以前の低調なゴルフにはもう絶対戻らないと考える。絶不調になると、あなたはもう一度絶好調の状態に戻れる日など絶対やって来ないと考える。もちろん、どちらの確信も正しい。ゴルフ・スウィングというものは、なぜこうも不可解に好・不調が訪れるのか?その問いへの答えの一部は、脳が視野を離れた両手の動きを感じ取ることが出来なくなるというトラブルに関連している。

アドレスで両手が視野の中にある際は、脳にとって全く問題はない。テイクアウェイの段階でも両手は周辺視野の中にあるので同様である。しかし、両手が9時(真横)を過ぎると、視野の外に出て行ってしまう。こうなると、脳は身体各部の報告によって今両手(=クラブ)がどこにあるかを把握するしかない。

ゴルフ・スウィングの三大要素はボール、ターゲット、そしてクラブヘッドであるが、9時を過ぎると脳はターゲットとクラブヘッドの二つの要素と視覚的コンタクトを失ってしまうことになる。問題は脳への突然の情報遮断である。クラブヘッドがどう動くべきかコントロールするには、視覚から運動感覚系への情報のスムーズな引き継ぎが必要だ。

いいスウィングを可能な限り長くキープするには二つの方法がある。一つは、いいスウィングをしている期間に、その詳細を青写真として書き留めておくことだ。最盛時のJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)でさえ、いいスウィング・キイ(留意事項)を発見しても翌日には思い出せなかったと述懐している。もし不調になったとしても、青写真さえ残っていればいいスウィングを再構築することは可能である。いいスウィングをヴィデオに撮っておくことも役に立つ。不調になったら、現在のスウィングも撮影し、好調時のものと比較してみる。

もう一つの方法は次のようなドリルである。目を閉じ、通常のアドレスからポケットの高さまでスウィングする。目を開けてテイクアウェイの完璧さを確認し、目を閉じてその感覚を定着させる。この動作をバックスウィングは9時の高さ、ダウンスウィングは3時の高さまで、何度も何度も行なう。これは視覚から運動感覚への引き継ぎを障害なく行なう助けとなってくれる」

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日記をつけておくことは重要です。何もウェブ・サイトを公開するとかブログを始めなくてもいいのです。手軽なテキスト・エディタに書きとめておくだけで充分。われわれは、必ず忘れます。それを思い出すための日記が必要です。


(March 13, 2011、増補August 29, 2018)

赤ひげコーチ

Jackie Burke, Jr.(ジャッキー・バーク二世)は髭は生やしていません。しかし、その言動は黒澤映画『赤ひげ』の主人公そっくりです。彼の父はテキサス州で最初のクラブ所属のレッスン・プロになった人で、その血を受け継いだJackie Burke, Jr.はMasters(マスターズ)とPGA選手権の二つのメイジャー優勝と17回のPGAツァー優勝、五度のRyder Cup参加など、華麗な経歴を誇っています。彼は同僚のトップ・プロだった故Jimmy Demaret(ジミィ・デマレ)と共に、テキサス州ヒューストンにChampions G.C.を設立し、現在まで50年間もオーナー兼インストラクターの座についています。彼の生徒たちは、上は下記の本に序文を寄せているような超大物から、下はアマチュアまで幅広い層となっています。Champions G.C.もメイジャー・トーナメントを含むPGAツァーやRyder Cupまで開催するような名門コースです。【以下は、それぞれ数ページずつある序文のホンの一部を抜き出したものです】

'It's Only a Game'
by Jackie Burke, Jr. with Guy Yocom (Gotham Books, 2006, $22.50)

・Ben Crenshaw(ベン・クレンショー)の序文

【註:Ben CrenshawはMastersに二度優勝し、パット名人と目されている人】

「私が初めてJackie Burke, Jr.からパッティングのレッスンを受けた時のことだ。彼は『カップに向かって細いラインを想定しちゃいかん。壁にペンキを塗る時のような刷毛の太さのラインをイメージするんだ。あんたは細いライン上をパットするほど上手くない。何故なら、あんたは人間だからだ。そんな細いラインを考えたら、身体が凍り付いてしまう。もっとゆとりを持て』と云った。これは素晴らしいレッスンだった。

・Steve Elkington(スティーヴ・エルキントン)の序文

【註:PGA選手権に二回優勝したほか多数の優勝歴のあるSteve Elkingtonは、Jackie Burke, Jrとテキサス大学時代からの友人で、現在は隣同士で住んでいるほどの仲良し。Jackie Burke, Jrは昔からのSteve Elkingtonのスウィング・コーチでもある】

「Jackie Burke, Jr.の家の台所には'Ten Commands'('Ten Commandments'『十戒』ではない)という銘版が掲げられている。人生にもゴルフにも役立つルールである。その一つは次のようなものだ。『首(こうべ)を垂れている奴は食われてしまう』。Jackie Burke, Jr.は野生の王国と原始人の比喩を好む。この言葉は注意深く観察せよということだ。ゴルフにおいては、頭を上げて歩けば風の方向を察知することが出来、他のプレイヤーのパットによってブレイクを知ることが出来る。人生においてはニュースの流れと社会の動きに敏感であれということだ」

・Tim Finchem(ティム・フィンチャム)の序文

【註:Tim FinchemはPGAツァーのコミッショナー。序文は面白くないので略】

・Jim McLean(ジム・マクレイン)の序文

【註:Jim McLeanは現在トップクラスのインストラクター】

 

「私はヒューストン大学で学んでいたので、Jackie Burke, Jr.と面識があった。U.S.アマの八位以内に入ってMasters参加資格を得た時、私は彼に助言を求めた。彼は『メキシコ湾に出掛けて海にボールを打て』と云った。奇妙な助言だった。正直云うと、私はその言葉を真に受けなかった。しかし、ある日友達とメキシコ湾岸に出掛けた折りに、突如彼の言葉を思い出し、トランクからバッグを取り出し、浜辺の砂の上から三発ほど海を目掛けて打った。その後、彼に会ってそのことを告げると、
彼『何を学んだかね?』
私『よく分りません』
彼『うまく打てたのかな?』
私『そりゃそうです。メキシコ湾は的としてはでかいですから』
彼『それだよ!オーガスタに行ったら、フェアウェイはメキシコ湾だと思うんだ。外す筈はないんだとね。ドライヴァーで方向を操作しようとしたらアウトだよ』」

・Phil Mickelson(フィル・ミケルスン)の序文

「PGAツァーで活躍し、手首を痛めてからTV解説者に転身したBilly Ray Brown(ビリィ・レイ・ブラウン)から聞いた話。彼がJackie Burke, Jr.にパッティングを教わっていた時のこと。最初のレッスンは6フィート(約1.8メートル)のパットだった。こせこせしない性格のBilly Ray Brownは、パットをミスしてもJackie Burke, Jr.が期待するような苦悶の表情を見せなかった。突如Jackie Burke, Jr.はBilly Ray Brownの頭頂部をぴしゃりと叩いた。呆気にとられたBilly Ray BrownはJackie Burke, Jr.の顰め面を見返した。『お若いの、パットに失敗したら痛みを感じて貰いたいもんだ』とJackie Burke, Jr.は吠えた」

・Hal Sutton(ハル・サットン)の序文

「私がプロ入りする前年のことだ。私はChampions G.C.でのトーナメントに招待されたので、Jackie Burke, Jr.にプロの生活について教えて貰いたいと頼んだ。彼は承諾し、私をクラブハウスの外のポーチに案内した。私が『サー。PGAツァーでの最初の一年はどんな感じなのでしょうか?』と聞くと、Jackie Burke, Jr.は一瞬の沈黙の後、突如私の身体を押した。驚き、両腕をバタバタさせて、私はポーチから落っこちるのを防ごうとした。何とかバランスを取り戻すことが出来た。私はショックを受けて呆然と彼の顔を見た。『ツァーとはそういうもんだ』と彼は云った。『縁から落っこちそうになった瞬間、お腹に沸き起こった不安、バランスを失った感覚、それがツァーで日々感じることになるものだ』私はじわじわとポーチの縁から遠ざかりながら、もっと詳しい説明を求めた。

『ツァーでは誰も助けてくれない。誰に取ってもサヴァイヴァル・ゲームなんだ。最初は友達も出来んだろう。彼らにとっちゃ、あんたは彼らの食い扶持を奪おうとする若者の一人だからだ。タフになり、尊敬を勝ち得るべきだ。誰かがあんたを突き飛ばそうとしたらバランスを保つ術を学ぶべきだ。何しろ、毎日毎日突き飛ばされるだろうからな』

これは、ツァーについて得られた最高の助言だった」

【註:Hal SuttonがRyder Cupのキャプテンに任命された時、彼が最初にしたことはJackie Burke, Jr.にサブ・キャプテンの一人になって貰うことだった】

こんなに沢山序文が並んでいる本というのは初めて見ました。中身より序文の方が面白かったりすると困るな…と思いましたが、それは杞憂でした。

(March 24, 2011)


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