今もChampions Tourで何度も優勝しているBernhard Langer(ベルンハード・ランガー、ドイツ)ですが、European Tour(ヨーロピアン・ツァー)からアメリカにやって来た当時は芝の違いによってYips(イップス=パットのスランプ)に陥ったそうです。その難局を乗り切るため、彼は新しい(奇抜な?)パッティング技法をいくつも考案しました。
その工夫の一つがレフトハンド・ロー(=クロスハンデド)・グリップで、彼はこのメソッドを始めた初期の人でもあります。中でも彼が一時期やっていたスプリット・クロスハンデド・グリップは、まるで脈拍を測るような感じのグリップでした。【図参照】左手は(パターのグリップ部分ではなく)下方の金属シャフトを握り、右手は(パターの上端ではなく)左の前腕部を握ります。つまり、パターの上部の1/3は左前腕部と一体化してしまっているわけです。これは手・手首・肘の動きを完全に封じるメソッドでした。 現在、私も似たようなグリップでパットしています。Bernhard Langerの当時のメソッドの詳細は分りませんので、グリップ以外の点は恐らく丸で違うでしょう。私のパッティング・スタイルは以下のようなものです。なお、これは典型的なショルダー・ストロークです。 ショルダー・ストロークの場合、距離が長くなるにつれ、かなり大きな(大袈裟とも思える)バックストロークをしないと届かない感じになりますが、ボールの北半球をしっかり打つようにするとバックストロークを左程大きくしなくても届きます。理想的ないい転がりが得られるからです。 私はこれ迄に数え切れないほどのグリップやポスチャーを試して来ましたが、この脈拍チェック型グリップは最も風変わりな部類に入ります。私の仲間はこれがBernhard Langerがスランプの時にやっていたグリップだなんてことを知らないようで、皮肉めいたことを云った人はこれまでのところ一人もいません。 Bernhard Langerは次のように云ったそうです:「このグリップは役に立った。何てったって、世界で最高に難しいグリーンのThe Masters(マスターズ)で優勝出来たのだから。オーガスタで生き残ろうと思ったら、スコアを良くしなきゃならん。カッコ良いスタイルでパットしてボーナスが貰えるわけじゃないんだ。そりゃカッコ良く見えるに越したことはないが、格好だけじゃ一銭にもならんからね」 |
【参考】
・「Bernhard Langer(ベルンハード・ランガー)の右手封じ)」(このページ下)
・「ランガー・グリップ(必殺・手首封じ)」(tips_157.html)
(May 04, 2010、改訂June 04, 2015)
これは非常に面白いtipです。しかも正しい。筆者のDr. David Wright(デイヴィッド・ライト博士)は「アドレスで決まるパットの方向」(tips_116.html)でもそうでしたが、珍しい法則を発見する名人です。彼は「プッシュやプルは、誤ったスタンスによっても起る」と云い、次のようなチェック法を開発しました。
'Stop pulls with your stance'
by Dr. David Wright ('Golf Magazine,' June 2010)
「1) 名刺でもスコアカードでも何でもいいが(原文ではクレディット・カード)、あまりひらひらしないカードを二枚用意する。
2) 左右それぞれの手の人差し指と中指の間にカードを一枚ずつ挟む。
3) (クラブ無しで)普通にアイアンを打つアドレスで立ち、大きく深呼吸し、肩から腕をだらんと垂らす(腕の力を完全に抜くこと)。【編註:カードが身体に触れないように保持する】
4) あなたのスタンス幅が正しくなければ、両方のカードはてんでんバラバラの方角を向いている筈だ。あなたのスタンス幅が正しければ、両方のカードは魔法のように揃っている筈だ。異なるスタンス幅で試して貰いたい」
「魔法のように揃っている」というのは、ターゲットラインに平行という意味ではなく、左右対称という意味に解釈します。
私が通常のスタンス幅をとると双方のカードが逆ハの字になります。私の場合、右のカードの角度より左のカードの角度が若干浅めなので鏡像のように左右対称にはなりません。ターゲット方向に置いた鏡でアライメントをチェックすると、私の悪い癖であるオープンな肩をしていることが解りました(これはプルやプッシュの原因になります)。左膝を僅かに右へ廻すと肩はスクウェアになり、両手に持ったカードも左右対称になりました。今後、一打一打でこの左膝を少し右に廻す手続きを繰り返さないといけません。
この実験をやっていて気がついたことですが、爪先の角度によってもカードの向きが変化します。上の左膝と肩の関係もそうですが、足・膝・腰の角度と手の向きとは密接に関係していることが解ります。
(May 08, 2010)
「バックストロークとフォワードストロークの長さを同じにせよ」とはよく聞く言葉ですが、何故そうすべきなのか?納得出来る説明を聞いたことはありません。以下の、インストラクターBill Moretti(ビル・モレッティ)の説明がこれまでのところ唯一のものです。
'Turn Three Shots Into Two'
by Bill Moretti with Mike Stachura (Andrews McMeel Publishing, 2002, $19.95)
「パッティングの際、ボールの前と後ろに動くパターヘッドの距離は同じでなければならない。これはインストラクターたちがよく云うお経ではない。これはあなたのパッティングの結果に直接的影響を与えることなのだ。
もしバックストロークとフォワードストロークの長さが異なると、特定のエラーが発生する。例えば、長いバックストロークで短いフィニッシュだと、インパクトに近づく段階でパターは力が有り余っている状態になり、大体においてプルを招く。もし、逆に短いバックストロークで長いフォロースルーだと間違いなくプッシュになる。何故か?あなたはパターヘッドをターゲットラインに保とうとする余りプッシュするのだ」
(May 11, 2010)
ヘリコプターの"hovering"(空中停止)は結構知られていると思います。南・北アメリカではhummingbird(ハチドリ)が花の蜜を吸うためにホヴァリングするのも有名です。【右上の'Hummingbird'というメニューでヴィデオが見られます】ゴルフではJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)が、「[スウィングの際の]アドレスではクラブヘッドを地面に付けず、空中で保持せよ」と云っています。理由は色々あるようですが、「テンションを和らげ、テイクアウェイの動作をゆっくりスムーズに開始出来る」というのが傾聴に値するポイントです。
'Hover it to beat tension'
by David Leadbetter ('Golf Digest,' April 2010)
インストラクターDavid Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)は、「プレイヤーがクラブヘッドを地面に置く時間が長いと、ボールに向かって凍り付いたようになり、筋肉のテンションが忍び入って来る」と云っていますが、これはフルスウィングに関してです。
Jack Nicklausはまた「パターを地面から微かに浮かしてアドレスせよ」とも云っています。他のプロやインストラクターで「パターをホヴァリングさせよ」と云った人は私の記憶にありませんので、これは彼独特の主張だと思います。
絨毯上のパッティングをしていて、細心の注意でスクウェアにストロークしているつもりなのに、僅かにカップの左右に逸れるミスを何度も経験しました。グリップから体重の掛け方、ボール位置、目の位置まで色々変えても、結果は全く変わりません。「もう打つ手が無いや」と諦めかけたのですが、思いついてアドレスでパターを浮かせて構えてみました。ビンゴ!これは素晴らしい結果でした。多分、パターを地面に付けた状態からテイクアウェイすると、微妙にフェースの角度が変わってしまうようです。浮かした状態からなら、スムーズにバックストローク出来ます。
ブランコをスタートさせるために後方に引っ張る場合、子供が地面に足をつけていると、その抵抗によってブランコはすぐに動き出さず、しかも左右にギクシャク揺れますね。子供が足を浮かしていれば、ブランコをスムーズに引っ張ることが出来ます。パッティングのバックストロークも全く同じだと思います。
パターを浮かしてアドレスし、目を閉じてフォワードストロークをすれば鬼に金棒です。
(May 13, 2010)
《中級と上級を分けるものがある》と、つくづく感じます。私は何年経っても中の中か中の下で、上級になれません。
その境目は「下半身主導のダウンスウィング」が出来るか否かにかかっていると断言します。私が十発のうち七発までそれを実行出来れば、間違いなく上級入り出来るでしょうが、そうはならずに万年中級のままです。先日のFour Person Scrambleで一緒に廻った相手チームの全員が手打ちでした。その中の結構上手い一人にしても強引に手打ちで全てを処理していました。Scrambleであるのに、彼らには滅多にバーディ・チャンスは訪れませんでした。
私は「ボールが右へ出たら手打ちである」と即断します。スライスでもプッシュでも…。もちろん、手打ちでもプルやフックは出ますし、左へ出るボールは概して危険です。しかし、右へ出るボールのほとんどは安易な手打ち以外の何ものでもなく、初歩的過ちです。ラウンド開始当初、私のティーショットは十中八九右へ向かいます。No.2でもそうです。気を引き締め、やっと下半身主導のダウンスウィングを思い出すのはNo.3以後です。
下半身主導のダウンスウィングがいいことは分っています。褒められるべきスウィングです。方向は驚くほどいい。飛距離も最高。分っているのに毎回実行出来ない。不甲斐ない思いです。 上級者の特徴は正確なアプローチ・ショットでパーオンさせ、必ずバーディ・チャンスを自分にもたらすことです。彼らは正しく距離を測定し、正しいクラブを選び、正しくスウィングします。正しいスウィングとは、地面より先にボールを打つことです。われわれは、しばしば手打ちでボールより先に地面を叩くので、ダフったりトップしたりします。それが正しい飛距離でグリーンを捉えることを妨げ、われわれにはパー・チャンスだけしか残されません。 何故手打ちになるのか?簡単に云えば「振る」のではなく「打とう」とするからです。手と腕の力で打とうとする。しかし、一旦下半身主導のダウンスウィングを体験すると、人間の手(腕)の力など“か弱い”ものだと実感出来ます(それでもすぐ忘れてしまって、手や腕で打とうとするのですが…)。 ・私が好きな言葉は「距離は内蔵されている」というものです。【註参照】クラブヘッドのロフトと反発力によって、設計時点で飛距離は決まっている。ゴルファーは力む必要はなく、ポカーン!と弾けばいいのです、下半身のリードで。その内蔵された飛距離を信じない人間は手打ちで飛ばそうとします。大きな間違いです。私もしばしばその大きな間違いを犯します。バンカー越えでグリーンを狙う場合など、つい力んでしまう。内蔵された飛距離を信じていれば、バンカーがあろうと池があろうと問題ないのに。打つ前に「飛距離は内蔵されている」と胸の内で呟くと、出来るだけ遠くへ飛ばそうという邪(よこしま)な欲望と力みは消滅します。 |
【註】2002年の「日記」で私は次のように書いています。「PRGR 400ccの宣伝サイトに非常に興味深い記事がありました。クラブ・デザイナーが素人に試打させながら、『ヘッドとシャフトで元々飛ぶように出来ているんですから、絶対力まないで下さい。無理にコックする必要もありません』と口を酸っぱくして説明しているのです。『なるほど。スプリング効果が内蔵されているわけだから、クラブに任せればいいのだ。飛ばそうとするとヘッド・スピードも落ちてしまうんだ』と悟りました」
・私の好きなイメージがあります。小さなゴルフ用品店でスウィング・スピードを測っている状態を想像するのです。ボールは数メートル先の網に吸い込まれて行くだけなので、ボールの行き先を見てもしょうがありません。この場合、可能な限り遠くへ飛ばそうと鼻息を荒くするのは無意味です。計測にはインパクト時のヘッド・スピードとクラブフェースの向きだけが重要なので、ゴルファーの意識は正しいインパクトを迎えることだけに集中します。この状態でスウィングすることをイメージすると、距離にこだわる力みと筋肉の強ばりが消滅します。
以上のどれかによってほとんどのショットを下半身主導のダウンスウィングで打てれば、18ホール終えても腕や肩は痛まない筈です。それが上級の証明で、腕や肩が痛い場合は手打ちのオンパレードだったという証明に他なりません。
【参考】
・「Percy Boomerの逆説的ゴルフ」(tips_12.html)
・「飛距離の最適化」(tips_20.html)
・「飛距離の神髄」(tips_126.html)
(May 13, 2010、増補May 26, 2015)
No.13(204ヤード) パー3は、登り坂の上に砲台グリーンという難物なので滅多に乗りません。ドライヴァーで打ったボールがグリーン手前に着地し、2バウンドぐらいで転がり上がるのが理想ですが、大抵は転がり切らずに斜面で息絶えます。もし左右に逸れると両脇は平坦なので飛んでもなくオーヴァーします。厄介なホールです。
数年前の私はドライヴァーを2センチほど短く持ってオンさせることが出来たのですが、最近は普通の長さで持ってもずっとショートしっ放しでした。ショートすれば力を篭めて打とうとします。力を篭めるとプルしたりプッシュが出て10ヤードもオーヴァー。全く乗らなくなってしまいました。
他のホールで成功している心構え、「飛距離は内蔵されている」、「飛ばそう!と思わないでスコーン!と打つ」をこのホールに適用してみました。ドライヴァーを普通の長さに持って穏やかにスウィング。乗っちゃいました。距離はぴったしでした。その次のラウンドでは失敗しましたが、そのまた次のラウンドでもワンオン。ことゴルフのパワーに関しては"Less is more."が正解であるという証明です。力を入れるから乗らなかったのです。「飛距離は内蔵されている」の証明でもあります。呆れるほど簡単なことなのでした。
(May 31, 2010)
'The easy way to perfect impact'
by Don Kotnik ('Golf Magazine,' April 2010)
「ダウンスウィングを、次の四頭立てによるレースだと想定する。
No.1:左肩
No.2:胸
No.3:両手のグリップ
No.4:クラブヘッド
バックスウィングのトップからフィニッシュに至るまで、上の各馬の順番を変えてはならない。必ずNo.1の「左肩」が他を圧勝してゴールインするようにスウィングする。他の馬も順番にゴールに入る。ゴルフ・スウィングの構造について考えるのでなく、この四頭立てレースだけ考えること」
(May 16, 2010)
インストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)が教えてくれる目線のチェック法。
'10 Rules'
by Jim McLean with Guy Yocom ('Golf Digest,' April 2010)
「重病のyipsよりも、ただのスランプの方が一般的である。あなたは、タフな1.5メートルのパットを不可解な感じでミスし始める。ストロークには問題ないはずだが、ボールは突如カップの縁を通過するだけになってしまう。あなたは自分がパッティング下手なゴルファーのように感じ、非常にまずい心理状態に陥る。
あなたが『入れなきゃ』というパットをミスし始めたら、目の使い方が微妙に変わったせいかも知れない。アドレスで次の二点をチェックすること。
a) 両目を結ぶ線がターゲットラインと平行かどうか?
b) 両目がボールの真上か、あるいはラインのやや内側であるかどうか?
ラインが良く見え、パターフェースがスクウェアなら、またボールはカップに沈み始めるはずだ」
(May 18, 2010、改訂June 04, 2015)
Golf Digest誌2010年六月号は面白い特集を組んでいます。創刊号から最近号までの記事からtipsベスト10を選出・掲載し(これだけならよくある企画)「効き目間違い無し」と保証し、読者が一定期間試して効かなかったら、お詫びのしるしにその読者の友人一人に「雑誌の一年間無料購読」をプレゼントするそうです(この点がユニーク)。下記のJim Mclean(ジム・マクレイン)のtipはその中の一つに選ばれたもの。
'Knuckles down for great irons'
by Jim Mclean ('Golf Digest,' March 2008)
「あなたの7番アイアンの飛距離は140ヤードなのに、PGAツァー・プロは7番アイアンで180ヤードも打つ。何故なのか不思議に思ったことはないだろうか?スウィング・スピードも要素の一つではある。しかし、最も大きな理由は、ツァー・プロはインパクトの瞬間に7番アイアンのロフトを5番アイアンのそれに変えてしまうことが可能だからだ。
もちろん、ツァー・プロも常に意図的にそうするわけではないが、どのアイアンを打つ場合にも少なからずロフトを減少させる。これを理解するには手首だけに注目すること。手首の蝶番の角度を維持することが、ロフトを減らして突き刺すようなボールの軌道を生む鍵なのだ。
アイアンのロフトを減らすには、インパクト前後で手首を(ターゲット方向に突き出して)弓なりにし続けなくてはならない。身体の大きな筋肉が左へ回転する間じゅう、あなたの左手の拳は地面を向いているべきである。こうすると、アドレス時よりもロフトが少ないディセンディング・ブローとなる。
多くのハイハンデのゴルファーは逆のことをする。彼らは手首をターゲット方向に凹型に折り曲げ、ボールを打つ瞬間、左手の拳を空に向ける(=結果的にロフトを増やしてしまう)。これでは弱いショットしか生み出せない。手首を凹型ではなく凸型にし、両方の違いを知るべきだ」
(May 21, 2010)
'Putting My Way'
Jack Nicklaus with Ken Bowden (John Wiley & Sons Inc., $25.95, 2009)
「ノーマルな打ち方でパットした場合、パターフェースを離れる際のボールにはスピンはかかっておらず、短い距離ではあるが地面を滑走する。しかし、グリーンが凸凹しているとボールが惰力を得る前に何かに接触してラインから逸れる恐れがある。早期の数センチのズレはカップに到達する頃には数十センチのズレになり得る。
このトラブルを避けるには、いくつかの手段がある。
・ロフトの多いパターを使うと、滑走を最少限に留めることが出来る。
・ボール位置を少しターゲット寄りにして、やや上昇気味でボールを打つ。この方法だとボールはパターフェースを離れた瞬間から正しく転がるので、グリーンの凸凹の影響を減少させることが出来る」
'A Swing for Life'
by Nick Faldo with Richard Simmons (Penguin Books, 1995, $19.95)
「理想的なストロークは、ボールの赤道かその上の部分をやや上方に擦るような動きだ。こうすれば、ボールは真っ直ぐ転がる。このためにはボール位置が極めて重要だ。多くのパット名人たちは、スタンス中央と左足踵との間にボールを置いている」
私がプレイしているコースは絨毯のようなグリーンではないので、イレギュラーな転がり方をすることが珍しくありません。Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)の場合、いつも上昇軌道でパットしているわけではなく、手入れの行き届いたグリーンでは低くフォローを出すとのことです。私の場合、「上昇軌道で」、「赤道かその上の部分をやや上方に擦るような動き」は駄目で、《北半球を打つ》のがいいことが分りました。これもグリーンの凸凹の影響を減少させ、しっかりしたストロークで転がりも良くなります。
(May 24, 2010、改訂June 04, 2015)
'50 Greates Golf Lessons of the Century'
by John Jacobs with Steve Newell (HarperCollins, 1999, $25.00)
これはHarry Vardon(ハリィ・ヴァードン)からTiger Woods(タイガー・ウッズ)までの、50の名人・達人たちの最も抜きん出ている特徴を抽出して、世界的インストラクターJohn Jacobs(ジョン・ジェイコブズ)が解説した本です。以下は「利き腕をのさばらせるな」と題したBernhard Langer(ベルンハード・ランガー、ドイツ)のパッティング・グリップについて詳述した記事。
「Yips(主にパットの絶不調)には脳味噌にも責任があるが、身体的な面における真犯人は手と手首の気ままな動きである。それらがパターをラインから逸らせ、惨憺たる結果を引き起こす。Bernhard Langerは長年にわたってパッティング・ストロークにおける新発明の数々を披露して来たが、その趣旨は手と手首の問題を取り除くことにあった。
彼の抱えている問題の根っこは珍しいものではない。右利きのゴルファーの右手は、常にストロークの最中にパッティングをハイジャックしようとする危険な存在である。特に、プレッシャーがかかった状況下でそれが顕著になる。そんなことを許してはならない。右手の干渉はいかなるものであれパターのリズミカルな流れを阻害し、パッティングの強さとラインの正確さを破壊する。Bernhard Langerの対処法は時折非常に風変わりであるが、それはストロークから右手を排除し、肩・腕・手・パターが一つの調和したユニットとして一緒に動くという意味では成功している。
両手は単にパターを保持している役目に過ぎないので、パターフェースが捩じれる危険性がないため、ストロークの強さだけに集中出来る。Bernhard Langerは右脳ではなく左脳でパットするタイプである。
あなたがパットのラインと距離のコントロールにむらがあるゴルファーなのであれば、Bernhard Langerのメソッドに価値を見出す筈だ。どんなグリップを選択するかは問題ではない。問題はパターを左右に揺らすために肩を正しく揺らすことが出来るかどうかである。両肩と両腕、そしてパターで作られる三角形を終始維持する。それらの各部を勝手に動かさず、全てが一体となって動くように努める。肩の動きの振幅の変化でストロークの長さを調節し、緊張を和らげてシロップのようにねっとりとスムーズな動きを生むこと」
この記事には「脈拍チェック型グリップ」を始め、計四つほどBernhard Langerが発明したグリップのイラストが添えられています。「肩の動きの振幅で距離を調節する」という部分が重要で、手・腕の力を加えてはいけないのです。超ロング・パット以外では力を篭めてはいけません。力加減というのは難しく、肩の振幅のように尺度がないからです。
なお、現在のBernhard Langerは長尺パターに移行して成功しています。それも右手の干渉を防ぐ方法の一つです。
【参考】
・「脈拍チェック型パッティング」(このページ上)
・「ランガー・グリップ(必殺・手首封じ)」(tips_157.html)
(May 27, 2010)
'Better by Saturday'(土曜日までにうまくなる)シリーズは、多くの有名インストラクターたちのtipを集めた小型本で、「ドライヴィング」、「アイアン/ロング・ゲーム」、「パッティング」、「ショート・ゲーム」の四冊が出ています。この項は「パッティング」篇のRob Akins(ロブ・エイキンズ)によるtip。
'Better by Saturday...Putting'
by Golf Magazine's Top 100 Teachers with Dave Allen (Warner Books, 2004, $15.00)
「上りや下りのパットの強さを視覚化し、ストロークに反映させる方法がある。
ボールがカップに届くまでの秒数を考えるのだ。例えば、4秒かかるパットだと考えた場合。打つ前に、勾配がボールのスピードにどう影響するかを考慮に入れつつ、4秒の転がりを生むストロークの練習をする」
距離感については「中距離のパットを成功させる尺度」(tips_122.html)といういいtipがあります。パターヘッドや手が右の爪先とか右膝に到達したら何メートル(何歩)転がるという「物差し」による距離のコントロールです。これは目が(朧げにでも)右足を見なければならないという難点がありました。転がる時間を視覚化し、それで得られる時間という観念をバックストロークの幅(=強さ)に換算するという方法は、ボールを見続けられることと、機械的ストロークにならずに済むという利点があります。ゴルファーによる時間の想定がうまくいけば…ですが。
(May 31, 2010)
そもそもは「トップ対策」として考えたことでした。ピンまで100ヤード以内となればウェッジの領域です。それは私の得意とする領域でもありました。ところが、自信満々なのに最近トップしてグリーン・オーヴァーという惨事がちらほら。ラウンド終了後、私はあるトップした地点に戻り、何がいけなかったのか、どうすればいいかを考えました。 明らかにトップの原因は掬い打ちでした。ボールを上げようとしていたのです。これはボールの手前を叩くか、ボールの天辺を叩くことに繋がります。掬い打ちを救うには、ヒットダウンしなければならない。ボールを圧し潰すように打つ。これはトップを防いでくれ、確実にボールにスピンを与えてくれる筈です。 ヒットダウンは多くのインストラクターたちがアイアンを打つ必須条件として口を酸っぱくして唱えていたことでしたが、私には馬の耳に念仏でした。私はそれを「ディヴォットを取る打ち方」と一緒に考えていました。私がプレイしているコースは草も短く地面は固く、ヒットダウンしてディヴォットを取ると手首を痛めそうな危険があり、恐くて出来なかったのです。「ヒットダウンなんて絨毯のようにふかふかの素晴らしいフェアウェイですることだ」と思っていたのです。しかし、やってみると裸地に近いライからでもヒットダウンしてうまく寄せられることが分りました。ディヴォットとは関係ありません(いいゴルフ場でなら、ヒットダウンすれば自動的にディヴォットを取ることになるでしょうが)。前に「中級と上級を分けるものは下半身主導のダウンスウィングが遂行出来るかどうかではないか?」と書いたのですが、ヒットダウン出来るかどうかも含まれるかも知れません。 ヒットダウンのコツは、やや鋭い攻撃角度の(フラットめではない)インパクトで、左手首を真っ直ぐ(あるいは凸型)にすることです。否応無く掬い打ちは回避され、ボールを圧し潰すインパクトが得られます。 PW、GW、SW、LW等でヒットダウンするようになってから、もはやトップすることはなくなりました。自分でも驚くようなファイン・ショットが出るようになり、その多くはピン・ハイについています。全てのアイアンでヒットダウンしたいところですが、長年地面からボールを摘まみ上げる打ち方をして来た習性を変えるのは容易ではありません。 |
(June 01, 2010)
先ず「ディヴォット・ホール」という表現について。"Divot"という言葉は正確には「削り取られた芝の一片」であり、削られた凹みを指すものではありません。アメリカの有名プロでさえ、凹みのことを"divot"と書いたりしている例も無いではありませんが、これは間違いです。USGAのルール・ブックの「エティケット」の章に"Replace Divots"(ディヴォットを元へ戻せ)と書かれています。"replace"は「元のところに戻す」という言葉ですが、「地面の凹み」を(元のところに)動かすというのはナンセンスですので、やはり「削られて飛んだ芝生の一片」が"divot"なのです。では凹みをどう云うかというと、英語では"divot hole"です。で、ここでは「ディヴォット・ホール」としました。
'Ken Venturi's Stroke Savers'
by Ken Venturi with Don Wade (Contemporary Books, 1995, $14.95)
ケン・ヴェンチュリは、U.S.オープン優勝者で、長いことCBS-TVの解説者でしたが、数年前に引退しました。
「ディヴォット・ホールの中にボールを発見したからといって、不運を呪って怒り狂わないように。これはそう大変なショットではない。
先ず、通常のライから打つよりも大きいクラブを選ぶ。6番アイアンのところなら5番アイアン。ボールはスタンス後方。両手はボールより前方に構える。これらはディセンディング・ブローをもたらし、ボールを上げる助けとなる。大事なのはボールとのソリッドなコンタクトだ。フォロー・スルーはほとんど無い。」
長めのショットにフェアウェイ・ウッドを使う方法もあります。
'Fairway Woods Can Save You'
by Editors of 'Golf Digest ('Golf Digest,' December 1997)
「最近の7番ウッドや5番ウッドは低重心なので、ボールとのコンタクトが理想的でなくとも、いい結果が得られる。
ややオープン・スタンスで、両手をボールより前にセットする(急角度のダウン・スウィングの準備)。スリー・クォーターだが両手を高く上げたバック・スウィング。右足を固定し、スウェイを防止する。ディセンディング・ブロー。ボールは低く出て次第に舞い上がり、フェード気味にターゲットに向かう」
こんなショットをしなくてもいいように、お互いディヴォットを取ったらちゃんと元に戻すようにしましょうね。
(June 05, 2010)
'The Best Golf Tips Ever'
edited by Nick Wright (Contemporary Books, 2003, $24.95)
「・ミス・ショットの後で『何がいけなかったのか?』と素振りを繰り返す人は多い。Harry Vardon(ハリィ・ヴァードン、1870〜1937)は『いいショットをした後も、そのスウィングを心に刻み付けるために素振りをすべきだ』と云った。
・『全てのアイアンでヒット・ダウンすべきだ』とU.S. Open優勝者Jurius Boros(ジュリアス・ボロス)は云う。『言葉を換えれば、クラブは先ずボールに接触し、その後で地面に接する。従ってスウィング弧の最低点はボールの1.2〜5センチ前方(ターゲット方向)になる。このように打たれると、ボールはスピンを生むに充分なだけクラブフェース表面で擦られることになる。バックスピンは着地後だけでなく飛行にも影響する。ボールにバックスピンが与えられると、正確に空中を移動するものだ』
・Johnny Miller(ジョニィ・ミラー)は『アイアンがボールのいい接触を確実にするには、クラブフェースの下から三番目のグルーヴ(溝)でボールを捉えるようにすることだ』と示唆する。
・ヨーロピアン・ツァーのプロNiclas Fasth(ニクラス・ファスト)は『クラブフェースをスクウェアにするコツは、インパクトで肩の回転を止めないことだ。インパクトで肩が回転を停止すると腕がスウィングの主役となり、正確な飛距離のコントロールが困難になる』と云う。
・グリーンまでの距離があなたのクラブのヤーデージの中間であった場合、短いクラブで強打すべきか、長いクラブでソフトに打つべきか? Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)によれば、『それはピンの位置による』とのことだ。『もしピンがグリーンのこちら側の端にあるのなら、長いクラブでカップを越えるように打つのが賢い作戦だ。ピンがグリーン奥にあるなら、グリーンをオーヴァーして難しい場所に打ち込むのを避けるため、短いクラブを選択すべきである』
・グリーン手前に池や小川がある場合、その手前に刻むか飛び越えるショットを打つか決断しなければならない。インストラクターKeith Wood(キース・ウッド)は、『どっちに決めるにせよ、障害物までの距離と障害物を越える距離を知らなければならない。もし刻むのであれば、水辺ギリギリに打ったりすべきではない。そんなショットをしようとすると、肩が緊張してミスに繋がる。飛び越すことに決めた場合、あなたのベスト・ショットを期待してはいけない。あるクラブで過去に打てた限界の距離ではなく、快適なショットで障害を越えられるゆとりのあるクラブを選ぶべきだ』
(June 08, 2010)
「スコアリング・ゾーン」とはピンまで100ヤード以内の地域。プロは、この距離だとピン傍3メートル以内につけるのが目標だそうです。
'The Best Golf Tips Ever'
edited by Nick Wright (Contemporary Books, 2003, $24.95)
「・Byron Nelson(バイロン・ネルスン、1912〜2006)は云う、『確実にバックスピンをかけるには、体重を左足に保ち、スウィングの間中右手の親指と人差し指が自由に活動出来る自由を与えることだ。これは多少の手首の動きを加えるので、鋭い角度のバックスウィングと望ましいディセンディング・ブローが得られ、バックスピンを生み出す』と。
・Henry Cotton(ヘンリィ・コットン、1907〜1987)は『ゴルファーがボールをヒット・ダウンすることを覚えれば、ピッチ・ショットは何ら悩みの種ではなくなる」と云っていた。
・『大抵のアマチュアはピッチ・ショットに用心深過ぎてショートする』と、ヨーロピアン・ツァー・プロのPaul Curry(ポール・カリィ)は云う。『グリーンに乗せようと思うのではなく、旗竿の天辺目掛けて打つべきだ。このイメージはあなたのスウィングを決然としたものにし、ボールのピン傍への着地を約束してくれる』
・ピッチングのヤーデージを見極めるには、練習グリーンに向かって五個のボールを打つ。あなたの真のヤーデージはラン込みのボールの終点ではなく、ピッチ・マークの場所である。Tom Kite(トム・カイト)はこのように練習している。
・インストラクターBeverly Huke(ビヴァリィ・ヒューク)の助言。『100ヤード以内でグリーンを狙う場合、エラーの確率を減らすため、グリーンを四分割することを勧める。そして、どれか一つ特定の部分を狙う。大概は(常にとは限らない)ピンを含む部分だが』」
(June 14, 2010)
'The Best Golf Tips Ever'
edited by Nick Wright (Contemporary Books, 2003, $24.95)
「・グリーン周りからの距離感と打つ強さの判断を完璧にするには、ホール(ピン)を見ながら素振りを繰り返し、ハンド=アイ・コーディネーションを良くするべきである。この手順は、あなたの脳に目から入った情報に本能的に反応することを促す。Jose Maria Olazabal(ホセ・マリア・オラサバル、スペイン)は、ショットの前に少なくとも三〜四回は素振りを行う。本番では、最後の素振りの振幅と強さを再現する。 【編註】Jose Maria Olazabalはパッティングでも相当長いアライメント調整をします。カップ(あるいはターゲット)を見、パターフェースに目を戻すという動作を五、六回繰り返します。最初はゆっくり、次第に頭の往復のテンポが早くなり、見ている方はジリジリさせられます。 ・インストラクターJohn Jacobs(ジョン・ジェイコブズ、英国)はチッピングをする前に二つの不可欠のポイントがあると主張する。『一つは体重を左側に寄せること(左脚に寄りかかると云ってもよい)。二つ目は、両手がクラブよりも7〜8センチほどターゲット方向に先行したアドレスである』。 ・『あなたがチッピングのための正しいポスチャーをとっているかどうか、確認する方法がある』と、インストラクターJonathan Yarwood(ジョナサン・ヤーウッド)は云う。『クラブをあなたのシャツのボタンのところからぶら下げるのだ。シャフトがボールよりもターゲット方向にぶら下がっていれば完璧である』。 ・インストラクターDavid Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)が勧めるグリーン周りの練習法。『ボールをアンダースローでカップに向かって投げ、強さや軌道の高低によってボールがどのように反応するかを学べ。その際、カップに届かせるにはどこに着地させるべきかを記憶すること。そのデータを正しいクラブ選択とスウィングの長さに役立たせる』 ・多くのアマチュアがラフからのデリケートなチップ・ショットを恐れる。特に、草がターゲット方向とは逆に伸びている場合だ。最良のアドヴァイスは『バンカー・ショットをする場面をイメージせよ』というものだ。スタンスをややオープンにし、いいライから打つ時よりもクラブフェースをオープンにする。長いバックスウィングをし、ボールの手前5〜7センチの草を目掛けてフォワードスウィングする。ボールを打ち抜くことに集中せよ」 |
(June 20, 2010)
'The 3 Scoring Clubs'
by Jim McLean (Gotham Books, 2005, $30.00)
インストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)の上の本に、次のような逸話が掲載されていました。
往年のパットの名手Bobby Locke(ボビィ・ロック、南ア生まれ、1917-1987)がGary Player(ゲアリ・プレイヤー、同じく南ア)にこう語った。「Gary、私はカップの四方向(前後左右)から入るように打ちたいのだよ」
Jim McLeanはこの話を、ボールが“カップで死ぬ”パッティング・スタイルを援護するために使っています。御存知のように、Dave Pelz(デイヴ・ペルツ)は「カップを40cm通過する強さで打つとカップインする確率が高くなる」という理論を提唱していますが、Jim McLeanはそれに反対の立場なのです。“カップで死ぬ”派としては、Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)、Bobby Locke、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)、Ben Crenshaw(ベン・クレンショー)、Brad Faxon(ブラッド・ファクソン)、Ernie Els(アーニィ・エルス)、Retief Goosen(ラティーフ・グーサン)、Gary Playerなどがいるそうです。
Jim McLeanはこう主張します。「“カップで死ぬ”パッティングを臆病だと考えてはいけない。確かに、いくつかはショートするかも知れないが、カップを通過するパッティングに較べれば常にボールはカップの傍に止まり、運が良ければ四つの方向から入る日もあるだろう。よしんば入らなくても、嫌な距離の返しのパットの緊張を強いられずに済む。
私のゴルフ・スクールの生徒たちに持って貰いたい目標は、確実に2パットでホールアウトすること、つまり3パットの根絶である。カップインさせることに集中するのではなく、完璧なスピード(強さ)でラインに沿ってボールを転がすことに集中する。図らずも多くのパットが成功してしまうことに驚く筈だ」
U.S. Women's Open 2005に優勝したBirdie Kim(バーディ・キム)の師匠Bob Toski(ボブ・トスキ)は、「どのホールにおいても、ピンを狙うのではなくグリーン中央にオンさせ、2パットでホールアウトせよ」と指導したそうです。Jim McLeanの教えと通ずるものがあります。
(June 30, 2010)
Davis Love III(デイヴィス・ラヴ三世)は、幼い頃からインストラクターである父Davis Love, Jr.(デイヴィス・ラヴ二世)からゴルフを教わり、プロ入りしてからはそのドライヴァーの飛距離で人々を驚かせました。彼のこの本は亡父が遺した未刊の草稿をまとめ、彼自身の経験や父の思い出を交えたもの。
'Every shot I take'
by Davis Love III and Michael Bamberger (Simon & Schuster, 1997, $21.00)
「プロ・アマの催しで私が必ず聞かれる質問は『どうやったらそんなに飛ばせるのか?』というものだ。飛ばし屋John Daly(ジョン・デイリィ)やTiger Woods(タイガー・ウッズ)出現以後は数が少なくなったものの、それでもこのテの質問は跡を絶たない。
飛距離の恩恵は云うまでもない。次打に短いクラブが使えるから断然有利なのである。しかし、Corey Pavin(コリィ・ペイヴン)のように、飛ばなくても世界一流のプロも存在する。私の父Davis Love, Jr.はCorey Pavinよりも飛ばなかった。私が飛ばし始めた時期、私のティー・ショットは父より80〜90ヤードも遠くに飛んでいた。父は私にゴルフを教えたのだが、飛ばす方法を教えることは出来なかった。
私のQ School(PGAツァー参加資格を得るためのトーナメント)のラウンドの際、父が私について歩いてくれた。私が440ヤードのドッグレッグのティー・ショットを巧く打ち、残りをピッチング・ウェッジの距離にした時、父は歩測をしてドライヴァーが334ヤード飛んでいたことを確認した。後に父が云った、『どうやったんだ?お前はとてもイーズィにスウィングしていたように見えたが…』と。私は驚いた。生涯ゴルフに携わっている父が、まるでゴルフを始めて一年目のアマチュアと同じ質問を私にするなんて。私は答えた、『パパ。僕はフェアウェイに飛ばそうとだけ考えてるんだ。そのためには、クラブフェースのド真ん中でボールを捉える必要がある。それだけだよ』と。
極端な飛距離というものは極端な速度のようなものだ。それは身体の内部から来るものなので、到底教えられるものではない。私の友人のBrad Faxon(フラッド・ファクスン)は私より強靭な肉体の持ち主だが、私はコンスタントに彼のボールを30ヤード追い抜ける(パットの面でも彼を追い抜ければいいのだが…)。
アマチュアの先ほどの質問に対する私の答えは『遠くへ飛ばすには真っ直ぐ打つことだ』というもので、彼らをがっかりさせてしまう。しかし、それが私の知るベストの回答だ。飛距離の長いショットは、クラブフェースの真ん中で打たれた時に出現するもので、それは真っ直ぐのショットが生まれる箇所と同じポイントである。ドライヴァーでは(実は、どのクラブにも共通なのだが)、私は自分の持てるパワーの80%で打つように努力する。その理由は、80%のパワーで打つとクラブフェースの中央でボールを捉え、フェアウェイ中央にボールを放てるチャンスが多いという私自身の発見によるものである」
【参考】
・「飛距離は内蔵されている」(このページ下)
・「飛距離の最適化」(tips_20.html)
(July 05, 2010)
'The Best Golf Tips Ever'
edited by Nick Wright (Contemporary Books, 2003, $24.95)
「・PGAツァー・プロPer-Ulrik Johansson(ペル・ウルリック・ヨハンスン)の助言。『ピンがグリーン奥の高い部分にある場合、サンドウェッジで届かせるのは容易ではない。こういう時は8番アイアンか9番アイアンを使う。短く持ちクラブフェースをややオープンにし、通常のスウィングをする。ロフトが少ないので、ボールは低く出て、着地後のランが多くなる』
・Tiger Woods(タイガー・ウッズ)は長いバンカー・ショットをする際、グリップ・プレッシャーを軽くする。それによってクラブヘッド・スピードが増し、ボールを遠くまで運んでくれる。
・Greg Norman(グレッグ・ノーマン)は『ハンデを減らす近道は、バンカーで二時間練習することだ』と断言する。『それによって砂に対する恐怖心を取り除き、バンカー・ショットに自信をつけることが出来る』 ・ヨーロピアン・ツァーのNick Dougherty(ニック・ダハティ)によれば『大抵のアマチュアは、バンカー・ショットでえらくショートしがちである。ピンの天辺かカップの向こうに届くように狙えば、インパクトで充分なクラブヘッド・スピードが得られるものだ』 ・伝説的バンカー名人のGary Player(ゲアリ・プレイヤー)は『常にボールの後ろ2インチ(5センチ)を狙うこと。距離はバックスウィングの長さとダウンスウィングの強さで調節する』と云う。 ・Gary Playerがバンカーの左足上がりのライに直面した場合、彼はボールが高く上がり、その結果大幅にショートし易いことを知っている。通常、彼はボールの後ろ2インチ(5センチ)を狙うのだが、左足上がりのライではその半分の1インチ(2.5センチ)後ろを狙う。 ・左足下がりのライのバンカー・ショットについて、Nick Faldo(ニック・ファルド)は次のように云う。『このライから打たれたボールは低く出てバックスピンが少ないか、あるいは全くない。クラブヘッドがボールを追うように、傾斜に沿って低くリリースするべきだ』 |
・『フル・スウィングと同じように、バンカー・ショットでも膝を柔軟にして上体を安定させること』とDavid Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)は云う。『アドレスで膝を柔軟にしたら、インパクトまでその状態を保たねばならない。そうでないと、ボールとの距離が変わってしまい、正しく砂が取れなくなってしまう』
・ボールが砂に埋まっている場合に関するNick Faldo(ニック・ファルド)の助言。『クラブフェースを若干クローズにして練習をしてみる。さらに、ピッチング・ウェッジをも考慮に入れること。サンドウェッジよりバウンスが少ないので、クラブフェースでボールの下を滑らすことが可能になる。クラブヘッドが砂に潜れば、ボールはバンカーから飛び出てグリーン上で転がる筈だ』
・ボールが乾いて固い平らな砂の上にあり、しかも顎が極めて低い場合、パターを使って脱出するのは悪くない方法だ。Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)は『バックスピンを減らすため、パターのトゥに近い部分でアドレスする。オフ・センターで打つと力が弱まるから、やや強めに打つ』と云う。
・Collin Montgomerie(コリン・モンガメリ)の示唆。『アマチュアのバンカー・ショットにはロブ・ウェッジが最適だ。サンドウェッジより多いロフトによって、スクウェアなスタンスを取ることが出来、クラブフェースもスクウェアに狙えるからだ』
・Byron Nelson(バイロン・ネルスン、1912〜2006)の教え。『アマチュアの間に蔓延している過ちは、バンカーであまりにも小さいスウィングをすることだ。バンカー・ショットは、常にフル・スイングでなければいけないということを忘れてはならない。砂の中にクラブを打ち込んでフォロースルーを取らないというのは、致命的なミスである』
・グリーンサイド・バンカーから打つ際、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)は『同じ距離のピッチ・ショットの二倍のスウィングをする』と云っている。
・グリーンサイド・バンカーでは、ダウンスウィングで加速することが重要。フォロースルーは少なくともバックスウィングと同じ長さであるべきだ。バックスウィングより短いフォロースルーだと、スウィングはあまりにも緊張した短いものとなり、コントロール不能になる。
・Lee Trevino(リー・トレヴィノ)の助言。『あなたのコースの砂がソフトできめ細かいのであれば、バウンスの多いサンドウェッジを用いるべきだ。分厚いソールが、クラブヘッドが砂にめり込むことを防いでくれる。あなたのコースがきめの粗い砂を使っているなら、ヘッドを砂に突き刺すため、バウンスが少なく鋭いリーディングエッジを持つウェッジを用いるべきである』
(July 11, 2010)
'How to feel a real golf swing'
by Bob Toski and Davis Love, Jr. (Three Rivers Press, 1988, $14.00)
この本は、日本でもお馴染みのインストラクターBob Toski(ボブ・トスキ)と、PGAツァーのDavis Love III(デイヴィス・ラヴ三世)の亡父Davis Love, Jr.(デイヴィス・ラヴ二世)による共著。
「Ben Crenshaw(ベン・クレンショー)がまだアマチュア・トーナメントで活躍していた頃、彼の頭がバックスウィングで4〜5インチ(約10〜12センチ)ボールの後方に動き、ダウンスウィングでターゲット方向に4〜5インチ(同)動くのは素人目にも明らかだった。どのゴルフ教本にも『頭を動かすな』という文句が出て来るが、Ben Crenshawは頭を動かしても素晴らしいプレイが出来ることを証明したわけである。それでもなお、誰かが彼の頭の動きについて言及した際、心配になったBen Crenshawが恩師Harvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)にお伺いを立てたところ、Harvey Penickは『変えるな。キミの流儀で通せ』と云ったという。
ゴルフ書の金字塔とも云うべき本に、モデルのゴルファーの頭に発光体を装着して撮影された分解写真が出て来る。そのモデルの頭は1〜2インチ(約2.5〜5センチ)ほどの円を描いて動いていた。バックスウィングでボール後方と下方に、そしてダウンスウィングでターゲット方向と上方に。生物力学の権威による最近の研究と分析でも似たような結果が出ており、頭は僅かではあるが動くと結論づけられている。
『静止した頭』は原因ではなく結果なのだ。インパクトでアドレス時と同じ頭の位置に戻って来ればよいのである。無理に頭を静止させようとして顎を胸に埋めると、首の緊張、ひいては肩の緊張をも生み出すため、身体のスムーズな回転が不可能になる。次のようなアイデアはどうか。頭は(身体から切り離されて)足の上に浮かんでいると想像するのだ。その浮いた頭の下でスウィングする。『頭を静止させる』というより、『安定した頭』、『静かな頭』を目標とすべきなのである」
(July 14, 2010)
「長いフォワードストロークでパターヘッドを加速せよ」、あるいは「バックストロークとフォワードストロークの長さを同じにせよ」というのは、定説と云えるほどよく聞かれる言葉です。この記事はその定説に真っ向から対立するもので、一見目立ちたがり屋の天の邪鬼的理論とも思えます。しかし、一寸ストップ。短いフォワードストロークをする利点は何なのか?この記事を読みながら考えてみましょう。
'Make a confident stroke'
by Eric Johnson ('Golf Magazine,' August 2010)
「本当の振り子運動というものは、弧の最低点を過ぎるとやや減速するものである。あなたがパットの際スタンスのターゲット寄りをボール位置としているなら、パターはスウィング弧の最低点を過ぎた地点でボールと接触するわけだから、パターヘッドの動きは若干スローダウンすべきである。
特に速いグリーンで云えることだが、『加速せよ』とか『バックストロークと同じ幅のフォワードストローク』という定説に従ってはならない。短いバックストロークから加速しようとすると、インパクトではスピード過剰となってタッチを失ってしまう。同一幅のストロークの場合も(やや程度の差はあるものの)同じような結果となる。
通常の(あるいは通常より長い)バックストロークをし、明白に短いフォワードストロークをしてほしい。『長から短』と覚えるとよい。これは多くのパット教祖が間違いだと看做すメソッドだろうが、私が教えている生徒たちはパッティングの機械的動作に煩わされることなく感覚的にパット出来るようになった方法である。
要はパターヘッドを滑らすことに集中し、パターが停まりたくなったところで停めればいいのだ。距離のコントロールだけ考え、加速することなどは忘れるべきである」
上の文章だけでは説得力が不足しているかも知れません。しかし、PGAとLPGAツァーを含む欧米のトップ・プロの大半が、非常に短いフォワードストロークをしている事実を思い起こしてみるべきでしょう。それはあくまでも肩を使った振り子式ストロークなので、昔のプロたちがやっていたように手首のテコの作用で「パチン!」と弾くスタイルではありません。しかし、手首で弾いてはいないものの、ボールの初速から見てやはり「弾いている」には違いないようです。棒のように一体となった肩・腕・手・パターで弾いているのだと思いますが。
今度TVでトーナメント中継を観る時に、世界のトップで「バックストロークと同じ幅のフォワードストローク」あるいは「ボールを撫でるような長いフォロースルー」をするプロがどれだけいるか数えてみるといいかも知れません。多分少ないでしょう。
トップ・プロたちの活躍の場は非常に滑らかで速いグリーンであるということも、短いフォワードストロークをする理由の一つでしょう。ボールに転がる切っ掛けだけを与えれば、方向をリードするような長いフォローは必要ないわけです。この意味では、超一流コースでラウンドするわけではない我々には、この記事のメリットはあまりありません。
残るはタッチの問題です。確かに「加速させよう!」と努力するとせわしないテンポのストロークになったり、ギクシャクしたインパクトになる恐れ大です。上の『通常の(あるいは通常より長い)バックストローク』という部分が鍵です。通常より長いバックストロークによってエネルギーを充填されたパターヘッドは、充分な打撃をボールに伝えられるので、短いフォローでも問題ないわけです。
私はこの記事を上のように解釈しました。正しいかどうかは定かでありません。
(July 14, 2010)
「ワン・ピース・テイクアウェイをせよ」というのはよく聞かれる教えですが、以下の記事は「ワグルもワン・ピースで行なえ」というものです。
'Try the one-piece waggle'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' August 2010)
「普通、クラブヘッドを左右に振るワグルは、気分をリラックスさせ、身体の緊張を減らすためのプレショット・ルーティーンである。ゆったりとし、リラックスした両手はいいスウィングに不可欠であるとしても、ワグルの方法によってはスウィングをぶち壊す原因を作り出す。
クラブヘッドを左右に振る際、それと気づかずに手首のコックもしがちなものだが、それは本番のバックスウィングでも即座にコックすることを促し、クラブの軌道を歪め、スウィングのタイミングを破壊する恐れがある。
それを防ぐには、肩の回転に揺るぎない(=コックしない)手首が追随するワン・ピースのワグルをすべきである。こうすれば身体に手・腕・肩が一体となって動くべきであることを教え、副産物として大きな捻転(=パワー)が生まれることになる」
私はワグルまでには考えが及びませんでしたが、現在左肩始動のバックスウィングを心掛けています。手・腕でバックスウィングを開始した場合より手打ちの割合が格段に減ります。手・腕始動のバックスウィングだと、完全な上体の捻転をせずに、手・腕を持ち上げるだけのごまかしになり易い。捻転不足だと飛距離が減り、手首の角度が変わり易く、方向性も悪くなります。
テイクアウェイを左肩始動で行なうにも二通りの方法があります。
a) 左肩を先ず身体の正面方向に突き出して、それから捻転を始める。【'One Move'方式】
b) 左肩を先ずターゲット・ラインに沿って動かし、それから捻転を始める。
両方を試したところ、私の場合、(a)だとプル気味のショットになります。現在の私には(b)が合っているようです。
(July 17, 2010)
Davis Love III(デイヴィス・ラヴ三世)の「飛距離の神髄」という記事の核心は「ドライヴァーでは(実は、どのクラブにも共通なのだが)、私は自分の持てるパワーの80%で打つように努力する。その理由は、『80%のパワーで打つとクラブフェースの中央でボールを捉え、フェアウェイ中央にボールを放てるチャンスが多い』という私自身の発見によるものである」という部分です。つまり、節度あるスウィングこそが正確で安定したショットを生む秘訣であるということを示唆しています。
「コンパクト・スウィング」とか「ショート・スウィング」、「エフォートレス・スウィング」など節度あるスウィングを奨励する表現は多々ありますが、現実にはどこをどうすればコンパクトなのか尺度がありませんでした。
私にとっての「節度あるスウィング」とは、図の矢印の部分にテンションを感じた瞬間を折り返し点とするスウィングです。左手首の矢印の部分に何か感じた瞬間にブレーキをかけ、そこがスウィングのトップになるわけです。
「飛ばそう!」という欲があると、そのブレーキを無視して更にコックを続けようとしがちですが、それはコックではなく手首を凸型に折ったり凹型に折ったりする過ちに変貌しかねません(ボールの方向が定まらなくなる)。
節度あるスウィングは横峯さくらのJohn Daly(ジョン・デイリー)風スウィングの対極にあるものです。最近目覚ましい活躍をしているSteve Stricker(スティーヴ・ストリッカー)の路線と云えましょう。彼のドライヴァーは水平線から20°ほど上で止まっています。左手首は上下に折れておらず、定規を当てたように真っ直ぐ伸びています。
鏡で確認すると、私の左手首のブレーキは水平線から約45°上の角度でかかっています。非常にコンパクトと云えます。大振りする人がいいショットをすれば私は30ヤードほど追い越されますが、ショットの安定度、方向性の良さでは私の方が常時優っていますから気にしておりません。
(July 23, 2010)
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