Golf Tips Vol. 117

中部銀次郎のゴルフ・メンタル篇

『ゴルフの大事』
中部銀次郎×三好 徹 (ゴルフダイジェスト社、2006、1,500円)

[daiji]

中部銀次郎が面白いことを云っています。どんな下手でも1ラウンドに一度や二度はいいショットが出来る。ヘンテコなスウィングであろうと何だろうと、いいショットが出るということは当人に実力が備わっているということに他ならない。問題は、そのいいショットの次にとんでもないミスを冒したりすることだ。

何故、いいショットが続けられないのか?中部銀次郎は、ゴルファーが視覚、聴覚、感覚のどれかによって動きを阻害されるからに違いないと考えます。そういう要因に動揺しない抵抗力をつければ、スウィングを改良しなくてもスコアが良くなる筈だと主張します。

私がある日の参加費用2ドルのベスト・ボール・ゲームでプレイしていた時のこと。私は、一緒のチームになった元・葬儀社勤務のBob(ボブ)から三回もプレイを阻害されました。あるホールで、彼は携帯電話に応答し、私がアドレスしても切りも中断もしませんでした。そのしばらく後、私がピッチ・ショットのアドレスをしているのに後方からカートを走らせて私の背後を駆け抜けました。さらに、あるホールのティー・ショットでは、私がアドレスしているのに他の仲間とお喋りを始めました。この元・葬儀屋のジジイは敵ではなく、一緒に他のチーム相手に闘っている味方なのです。味方が味方のプレイを阻害しているわけで、全く信じられません。これじゃ私はいいプレイを出来ませんし、チームのスコアも良くなるわけがありません。仕切り直ししない私も未熟者ですけど。次回から、こういう連中にはあるトーナメントで貰って来た「静かに!」というサインを掲げるつもりです:-)。

中部銀次郎は、われわれの「飛ばそう!」という欲望を戒めます。バランス良く、気持良く打てた時にナイス・ショットが出るものだが、人は「力を入れたらもっと飛ぶんじゃないか?」と思ってしまう。彼に云わせれば、ゴルファーは自分では80%の力で振っているつもりでも実際には100%であることが多く、調子がいいと120%で振りたがる傾向がある。「ガキーン!」と打たないと頭も肉体も満足しないから全力以上の力を篭める。実は《ショットの内容は力と反比例する》という事実に気づくべきだ。目一杯飛ばそうというのでなく、自分のスウィングを崩すことなく自分の平均飛距離に到達出来ればいいという余裕のある考え方をすべきだ…と云っています。

もう一つ、彼は「ほとんどの人がランを入れて自分の飛距離として考えているが、これは見栄以外の何ものでもない」と云い切ります。「キャリーで把握していないから、距離を聞いてクラブを選択した場合、ナイス・ショットであってもショートしてしまう」と、見栄っ張りを一刀両断。

「腰の動きで飛距離を伸ばす」(tips_116.html)を実践していた頃、私のティー・ショットは満足出来る距離を飛んでいました。しかし、「力を入れたらもっと飛ぶんじゃないか?」と思ってしまったのです(中部銀次郎の云う通りです)。腰を三塁方向にグイっと過激に廻すだけでは足りず、腕の力を加え始めました。腰主体のダウンスウィングの時は両手の発進は後発だったのですが、いつの間にか腰と同時スタートになってしまい、そのうち腰は両手にダウンスウィングの全権を委譲してしまいました。飛距離も落ちました。反省し、これからは「自分の平均飛距離に到達する」ことを目標に、身体でスウィングしたいと思います。

ティー・ショットをラフや林へ入れた場合、そのミスに対して潔くペナルティを払うつもりになることも肝要だというのが中部銀次郎イズム。つまり、ミスを帳消しにしようとグリーンを狙うなどという無謀なことをせず(概ね失敗するのが常識)、安全でなおかつ次打が容易に打てるところへ確実に出すべきだ、それがたとえグリーンから遠い場所であろうと。ミスを二度続けないことが大前提。「それを18ホール守れば、スコアはまとまるものだ」というのが中部銀次郎の確信です。

(September 09, 2008、改訂December 17, 2015)


ボールを見送らないでパット

'Two bar'パターは、本来取り扱い説明書が必要なパターなのに、そういうものは同梱されていません。あるのは二枚のDVDだけ。一枚はインストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)の'X-Factor II'という、彼の代表作の一つとも云うべきフル・スウィングの分析で、これはパッティングとは無関係。もう一枚は'Putting to Win'というもので、これがパターの解説書とtips集を兼ねています。出演者は、British Open優勝者で現TV解説者Ian Baker-Finch(イアン・ベイカー・フィンチ)とJim McLean。

Ian Baker-Finchが、ボールを見送らない癖をつける練習法を教えてくれます。頭を動かすのは肩の回転軸をずらす恐れがあり、パターフェースを開いたり閉じたりする弊害に繋がります。その防止策として彼はコインを使うのですが、私はボールマーカーを利用する方がいいと思い、ここでは勝手に書き換えています。

ボールの後ろにマーカーを配置します。普通にパットするのですが、インパクトからフォロースルーにかけて、そのマーカーに目を凝らします。単に「頭を動かすな」とか「ボールのあった地面を見ていろ」というtipより何倍か効果があります。この練習に慣れたら、本番のパットの際もボールの後ろにマーカーがあるように視覚化し、それから目を離さないようにします。

(September 27, 2008)


出しゃばりコーチ

「でしゃばりコーチをブロックする」(tips_3.html)でTimothy Gallwey(ティモシー・ゴルウェイ)の理論を紹介しました。それは「ゴルファーの内面に二つの自己が存在する。一つは理論家でコーチで評論家でもある自己、もう一つはプレイヤーで実際に身体を使ってスウィングする自己。コーチは、ショットの度にいちいちプレイヤーにああせいこうせいと命令する。実際にはゴルファーは本能的にいいショットをする術(すべ)を知っていて、目から入った情報を元に正確な距離と方向でボールを打てるのだが、このコーチが妨害してミスを招く」というものです。

私の最近のチップ・ショットは悪くないのですが、時折コーチの出しゃばりによるミスが結構あって口惜しい思いをしています。「さっきショートしたから、今度は強めに打て」とか、「グリーンが上りだから、ランを見込まずピン傍に着地させろ」などとうるさいのです。そして、大概の場合、このコーチの云うことを聞くとオーヴァーしたり、ショートしたりします。

Timothy Gallweyの云うように、人間の運動は潜在意識に任せた時、最もスムーズで正確に遂行されます(水泳の際に腕や脚の一本一本の動きを考えたりしないし、自転車に乗る時も両脚の動きを考えたりしません)。しかし、コーチが介入して来ると、命令系統が混乱します。地方自治体を中央官僚が牛耳ろうとしたり、FBIが地元警察をないがしろにしようとするようなものです。現場(身体の筋肉)はどっちの云うことを聞けばいいのか当惑します。結論が出る前に時間切れでスウィングを開始しなければならず、キッパリとした決意が不在の、どっちつかずのアクションになりがちです。最悪のケースはボールをまともに打てず、盛大にダフってチョロしたりします。

このコーチはプレイヤーのためによかれと思って助言をするだけでなく、虚栄心を煽る場合があります。「エッジの10センチ内側に着地させて、ピン傍に転がせ」とか、「チップインでみんなをあっと云わせろ」などというもの。こういう、プレイヤーの実力以上の成果を望むことや神頼みに近い欲求は、潜在意識のデータベースに「どう遂行すればそういう結果が得られるか」のデータがないため、筋肉を適切に動かすことが出来ません。欲望だけはめらめら燃え熾(さか)りますが、いい方策を見出し得ない身体の筋肉は痺れてしまい、ホームランを放つか、はたまたザックリ、ショートになってしまいます。

剣道などで「無念無想」が奥義とされているように、コーチの言葉に耳を貸さず、目から入った情報をもとに身体の本能に任せて動くべきなのです。目が頭上の木の枝を捉えた時、過去に木の枝を直撃したイメージが甦れば、間違いなく今回もボールは木に当たります(経験者は語る)。回り道をするか、低いショットで脱出するしかありません。コーチに「大丈夫だ、やってみろ」と唆されても、われわれは過去のデータベースの方を信じるべきです。本当に木の枝に当たらない確率が高いのであれば、木を直撃するイメージなど湧いて来る筈がありません。

コーチがしゃしゃり出て来たら、「もうとっくにあんたを馘にした筈だ。忘れたのか?すっこんでろ!」と蹴飛ばすべきです。

(September 29, 2008)


練習場のうぬぼれ鏡

数年前、私がチッピングの新しい技法を練習していた時のこと。ある施設の許可を得てその広い芝生を使うことが出来ました。ただ、その芝生はゴルフ場のようによく手入れされていないので、ボールをセットしにくい状況でした(長い草と露出した地面の混在)。仕方なく、マットの上にボールを置いて打ちました。かなり満足出来る結果だったのですが、ふと「草の上から打ったらどうなるか?」と思いました。やってみると散々な結果でした。マットだとダフってもクラブヘッドが滑って、ボールはちゃんと打てるものの、裸地や草の上だとダフれば素直に(?)トップにしかならないのです。つまり、マット使用は醜いショットを見事なショットに変えてくれる“うぬぼれ鏡”であることが分かりました。

以下のtipはアイアン全般に関するものですが、マットでの練習について書かれています。アメリカでは、大都会でない限り練習場でも芝の上からボールを打てるので、アメリカ人の記事でマット練習について触れるのは非常に珍しいと思います。

'Fix poor contact'
by Roger Gunn ('Golf Magazine,' October 2008)

「次回練習場へ行ったら、その辺から雑草を切り取って来て、マット上のボールのターゲット方向に(クラブヘッド一個分の距離を置いて)配置されたい。ボールを打つ際、先ずボールを、次いで草を打つように努める。

マット上の練習というのはとても楽チンなライであり、ミスの余地がほとんどないと云って過言ではない。ほんの少しボールの後ろを打ったとしても満足出来る距離に飛んでくれ、自分のスウィングはソリッドであると誤解してしまう。コースで同じことをすれば、クラブは地面につっかえ、得られるのはトップでしかないのに。

ボールを直接打ち、ボールのターゲット方向でディヴォットを取るのがいいアイアン・ショットというものだ。マット上ではディヴォットは取れないが、ボールを打ち、その向こうの草を薙ぎ払うことがあなたのスウィングの助けとなってくれる。

ボールの向こうの草を強打出来ない場合、ダウンスウィングの開始でズボンの左ポケットをターゲットに向けて引き、次いで背後に回転させるとよい。以前のショットとの違いは、即座に目に見え、身体で感じられる筈である」

(November 14, 2008)


最後の一瞥

スポーツ心理学者Dr. Joe Parent(ジョー・ペアレント博士)による成功の視覚化。

[Zen]

'Zen Golf'
by Dr. Joseph Parent (Doubleday, 2002, $17.95)

「多くのゴルファーが『視覚化出来ない』と嘆く。確かに人によって得意・不得意はあるだろうが、誰しも心の目で見る能力は持っているものだ。視覚化というものは映画か何かを見ることのように誤解している人々が多いが、実際には心の目で経験していることに他ならないのだ。

プレーイング・レッスンを行なった時、あるゴルファーが、ハーフで四回も4パットした。休憩の際、この人は『どうか助けてくれ』と私に頼んだ。私は『ボールが転がってカップに飛び込むイメージを持てないの?』と尋ねた。彼は『視覚化出来ないんです。ラインを見ることすら出来ない』と云った。

私は『視覚化出来ない人は多い。でも、もしあなたが視覚化出来るとしたら、パットはどんな風に見えると思う?」と聞いた。彼は少しのためらいもなく『多分、ボールはかなり右に真っ直ぐ転がり、カップへの距離の半分のところでスピードが落ち、左に30センチほどブレイクし、カップの右前方から転げ込む…と、こういう感じでしょうか』と云った。私は『やったね!あなたの心の目で見た、それが視覚化というものですよ』と応えた。彼は後半の9ホールで、全く3パットしなかった。

私はブレイクに関する会話で『右エッジを狙え』というような表現が嫌いだ。これは『カップの中央に入れるには、5センチほど右を狙わなくてはならない』ということを意味している。しかし、これだとゴルファーがパットする前の最後の一瞥によって右エッジのイメージが心に刻まれてしまう。右エッジがターゲットになってしまうため、ゴルファーはプッシュし、ボールはまさにその右エッジに到達し、リップアウトしてしまう。

ある新米のツァー・プロが9ホールで六回もリップアウトしたと云うので、彼に『最後にどこを見てストロークしたの?』と尋ねた。彼もまた右エッジとか左エッジを見ていたと云う。彼はエッジのイメージを心に刻み、そこをターゲットとして見事に“成功”(?)していたのだ。私は『それはあなたが熟練した腕前であることを証明している。エッジを打つことに較べたら、10センチのカップに打つことなど造作もないことだ』と云った。以後、彼はカップの外ではなく。カップの中心のやや右か左にボールが転げ込むイメージを抱くように努力し始めた。彼のリップアウト数は激減し、ボールのほとんどはカップの中心へと向うようになった」

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(December 24, 2008、改訂June 03, 2015)


【続・最後の一瞥】

「私は“視覚化”という言葉よりも“イメージ”という言葉を使いたい。イメージも視覚に基づくものだが、それは感覚とサウンドをも含むことが出来る。

『猿のことを考えるな』と云われても、われわれは猿のイメージを心に描いてしまう。『池に入れるな』と自分に云い聞かせる時、心にはボールが池に飛び込んで飛沫を上げる様子が浮かんでしまう。そして、ゴルファーはそのイメージを正確に再現するかのようにプレイする【ボールを池に入れてしまう】。

ネガティヴに『あそこに打ちたくない』ではなく、ポジティヴに《どこへボールを運びたいか》というイメージを抱くことが重要だ。そのイメージはどう動くべきかという身体へのメッセージに他ならない。

ある上級アマチュアが大きなトーナメントに出場した。望んだ着地点に飛ぶボールのイメージを常に抱き続けながら、彼は真っ直ぐ距離のあるボールを打ち続けた。後半のあるティーに立った彼は、最後の一瞥でフェアウェイの小さなバンカーに目を止めた。それは彼の飛距離からすればかなり手前であり、しかもフェアウェイの右端だから問題ない筈だった。ところが、そのバンカーのイメージがスウィング前の彼の心に残る最後のイメージになってしまった。彼は、突如トップし、しかもプッシュし、まさしくそのバンカーにボールを入れてしまったのだ。彼は『100回打ったってあのバンカーに入れるなんて考えられないことなのに!』と慨嘆している」

「ポジティヴでなきゃいかん。身体はあんたの脳が視認出来ることしか遂行出来ないんだから」
Chi-Chi Rodriguez(チ・チ・ロドリゲス)

これは至言ですね。遮眼革(視野を制御するマスク)をつけた馬のように、われわれは見えるところを目標として突っ走るわけです。それほどイメージは脳へのメッセージとして強烈なものであり、われわれはイメージを基準に行動するものだということですね。もし、よからぬイメージが心をよぎったら、仕切り直しをすべきです。不吉なイメージを抱いたままプレイしてはいけません。

(December 29, 2008、改訂January08, 2017)


幸せのスライス・ショット

'Zen Golf'
by Dr. Joseph Parent (Doubleday, 2002, $17.95)

上の本に"poverty mentality"という言葉が出て来ます。"poverty"は「貧困」ですが、ここでは「欠乏」あるいは「不足」という意味に使われており、"mentality"は「考え方、気質」で、「何かが欠乏していると断ずる考え方」という意味です。著者によれば、これは「満たされておらず、破綻しており修復が必要であり、全体的に何かが欠けている」と感じる、常に不満たらたらの考え方を指すとのこと。よくいますよね、こういう人。ショットを褒めても、身の程も弁えず理想が高いせいか素直に喜ばず、「いや、今のはミス・ショット。○○もうまく行かず、××にも失敗した。クソ」などと喚き、誰も聞いていないのに「こうしたかった、ああすべきだった」とぐじゅぐじゅと自己解説する輩。

私がプレイしている市営ゴルフ場では、80歳の誕生日を越えると男性でもレディース・ティーから打っていいことになっています。現在、その資格のある老人は三人。そのうちの一人J.B.(ジェイ・ビー、88歳)は最近視力が弱り、自分が打ったボールも見えなくなり、同じチームの誰かが「右へ行った」、「フェアウェイだ」とアナウンスして上げないといけなくなっています。彼は腰痛が恐いので地面に片膝ついてティーアップするため、ラウンドが進むとズボンの片方の膝の部分が次第に汚れて来ます。夏場はティー・グラウンドが固く、なかなかティーが刺さらず、刺さってもボールが落ちたりするので誰かが助けて上げることもあります。グリーン上でもカップが見えないので、彼のために端竿を持つ人間が必要です。

J.B.は長くタフなホールではティー・ショットしません。チームに貢献出来ないことが分っているからです。彼の出番は主にPar 3と短いPar 4です。彼は自分がチームのお荷物だと思っておらず、ゴルファーたちもJ.B.を邪険に扱ったりしません。彼らも長生き出来ればJ.B.のようになるのですから、明日は我が身、大事にして当然です。

J.B.は"Beautiful day!"(ゴルフ日和だ)と、よく独りごちます。彼にとっては、人生であと何回ラウンド出来るか分らないのですが、とにかくボールをポコーンと打てる限りはラウンドするでしょう。飛ばなくても、寄らなくても、入らなくても…。暖かく、ゴルフさえ出来れば、彼には"Beautiful day!"なのです。

そういうJ.B.に較べれば、われわれは精一杯スウィング出来るし、Par 4で2オンのチャンスもあり、何も文句を云う筋合いはありません。たとえスライスしたり、フックしたりしても、J.B.よりずっと遠くへ打てるわけです。"poverty mentality"で自分のスライスを罵る前に、200ヤードのスライスを打てる幸せを感じるべきでしょう。「ああ、スライスでもフックでも、打てるだけ幸せだ」と思うべきです。褒められたら、素直に喜ぶべきです。老少不定。われわれだっていつゴルフが出来なくなるか分らないのです。スライスでもフックでも、打てるだけ幸せだと考えないといけません。

(December 24, 2008)


刻めば常にナイス・ショット

スポーツ心理学者Dr. Joe Parent(ジョー・ペアレント博士)による欲張らないショットのススメ。

[Zen]

'Zen Golf'
by Dr. Joseph Parent (Doubleday, 2002, $17.95)

「ドライヴァーで『もう一寸距離を出したい』という誘惑は、大抵の場合反対の結果をもたらす。ボールを見つけられればラッキーな方で、それにしても通常より距離が短い筈だ。

『もう一寸距離を出したい』という邪念は、筋肉に余分な緊張をもたらし、スウィングの流れを損ない、身体の動き・スウィング軌道・ボールとの接触などに失敗する原因を作り出す。筋肉の過度の緊張はスウィング弧を狭め、腕による鞭の動きを弱くするため、結果的に飛距離を失ってしまう。Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)が"Many shots are spoiled at the last moment by efforts to add a few more yards."(多くのショットが、最後の最後にもう一寸距離を出そうという欲によって台無しになる)と喝破した通りである。

多くのゴルファーは刻むショットでいい結果を出す。刻むショットの目的は、次打に好都合な場所へボールを運ぶことであり、カップの近くまでボールを飛ばすことではない。多くの場合、それは障害物の危険もない安全なショットでもある。言い換えれば、刻むショットではプレッシャーを感じないで済み、スムーズでリラックスしたリズミカルなスウィングが可能なため、われわれのベスト・ショットが出現することも希ではない。

パー4やパー5のティーに立ったら、刻むショットを打とうと思うべきだ。『出来るだけ飛ばそう』と思うのでなく、普通に届く範囲のフェアウェイの一点をターゲットに選ぶ。それは目一杯打ちたいという燃えさかる欲望を鎮火し、いいショットを打つチャンスを与えてくれる。リラックスしたスウィングが、予想以上に飛ぶことにびっくりすることだろう」

実は、これを大晦日のラウンドのいくつかのホールで試しました。無限遠ではなく、手の届く目標を定めてスウィングすると力みがなく、いいショットが出来ます。「急がば回れ、"Less is more"、飛ばしたければ飛ばそうと思うな」が正しいようです。

この本は『禅ゴルフ』として邦訳が出ています。( http://www.amazon.co.jp/禅ゴルフ?メンタル・ゲームをマスターする法-ジョセフ-ペアレント/dp/458303802X )「禅」の逸話はいくつか紹介されていますが、抽象的な哲学の本ではなく、スポーツ心理学の本の一冊ですから警戒するにはあたりません。著者が禅の思想を通して見、考えたゴルフ道はとても納得出来るもので、われわれの抱える問題についての助言も平易かつ実際的で解り易い。素晴らしい本です。

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(January 02, 2009、改訂June 03, 2015)


フェアウェイウッドへの弔辞

'Fairway woods R.I.P.?'
by E. Michael Johnson ('Golf World,' October 17, 2008)

この筆者は'Golf World'誌上で「ベリィ・パターは“絶滅危惧種”である」(tips.113.html)と書いた人ですが、その後実際にはベリィ・パターで好成績を収めているプロもいることが判明し、当人も弁解がましい記事を書いていました。多分に「狼少年」的な記事を書く人ですので、眉に唾しながらお読み下さい。

「十月中旬に行なわれたPGAツァーのValero Texas Openで、78人のプロが少なくとも一本のハイブリッド・クラブを携行していた。彼らのほとんどはアイアンの代わりとしてではなく、フェアウェイウッドの代わりとしてハイブリッドを使っていた。

最近のフェアウェイウッドには、昔のBig Berthaドライヴァーを超える200ccのヘッドのものがあり、このテのものは芝の上からのショットをコントロールしにくくしている。

上述のトーナメントに参加したプロの中の63人は20°以下のロフト(標準の3番アイアンは21°)のハイブリッドを使用していた。多くのプロは18°〜19°であり、5番ウッドの代わりと考えられる。

ある技術者はこう云う、「PGAプロのスウィングスピードは49〜51 m/secなのだが、平均42 m/secのアマチュアは距離を得るためにはフェアウェイウッドの長いシャフトが必要だ。そしてロングアイアンの距離でハイブリッドを使うべきだ」と。

(January 08, 2009)


パット練習器を使いこなす

「練習ではうまく行くのに、本番ではさっぱり」という嘆きは、ドライヴァーやアイアンに限ったことではありません。パットでも同じです。家の中の練習では百発百中でパット名人になったような気になるのに、本番どころか、コースの練習グリーンでさえ右へ行ったり左へ行ったり。私もこういうことが続いたので、練習器(私のは2メートル70センチの長さのマット)には愛想を尽かしていました。

しかし、寒くてパット練習のためにだけゴルフ場へ行く気にはなれず、仕方なく室内でパット練習。相変わらず好調です。芝目もなく、アンジュレーションもないのですから、うまく行って当然です。「こんなので練習になるだろうか?」欠伸が出そうになりました。

ふと、マットの右端からカップを狙ってみました。入らない。マットの左端からカップを狙ってみました。入りません。判りました!誰でもそうでしょうが、普通われわれは練習器の(上下の巾の)真ん中にボールを置いて、カップを狙います。すると、練習器の端の長い直線がガイドラインとなってくれ、無意識にでもわれわれはその線に沿ってバック・ストローク、フォワード・ストロークします。いわば、定規をあててのパット、お手本をなぞるお習字みたいなものですから、これは楽チンです。パット名人になれる筈です。

本番に近いパットをするには、練習器の真ん中にボールを置いてはいけないのです。練習器の直線が目安とならないよう、カップを斜めに狙うようなラインにしてみて、初めて自分の実力でパット出来るのだという気がします。

気づくまでに十年以上かかりました:-(。

(January 22, 2009)


心と身体を同調させる

スポーツ心理学者Dr. Joe Parent(ジョー・ペアレント博士)による心技一体化のススメ。

[Zen]

'Zen Golf'
by Dr. Joseph Parent (Doubleday, 2002, $17.95)

「PGAツァーのQスクール(プロ・テスト・トーナメント)で、あるプロが最初の三ホールで三回連続で1メートルのパットに失敗し、パーを逃した。彼は自制心を失ってパターを真っ二つに折ってしまった。残る15ホールを、彼はドライヴァーでパットせざるを得なくなった。さて、彼のスコアはどうなったか?80?85?

実際のところ、彼はボギーをたった一つ出しただけで、いくつかのパー、五つのバーディにより71(1アンダー)でラウンドを終了したのだった。これ以前の数ラウンドにおいて、彼は純正のパターでも五つのバーディなど達成したことなどなかった。また、彼がドライヴァーによるパッティングの練習をしたこともなかった。では、一体何が起ったのか?

彼は、最近のパット不調の原因はパターにあると考えていた。ツァーに参加していた経験から、彼には長いパットも短いパットも入れて当然という自負があった。周囲の人々の、彼に対する期待も感じていた。そして、いまこのトーナメントに彼の職業的生命がかかっていた。彼の意識は自分のストロークを信頼するというより、パットをねじ込むことに集中していた。彼の心の焦点は、パッティング・ルーティーンという現在ではなく、ボールがカップに沈むという未来に向けられていたことになる。彼の心と身体は同調していなかったのだ。

ドライヴァーでパットする段になると、彼にはパットの成功など期待出来なかったので、『入れなきゃならない』というプレッシャーは皆無だった。彼はプロセスに集中せねばならなかった。ドライヴァーのフェースをラインにスクウェアに保ち、ストロークの強さも直感を信じるほかなかった。彼の心と身体は同調していた。そのせいで、パットに成功したのだ。

私は彼に、パットの成功・不成功を案ずるのではなく、ラインの選択と感覚を信頼すること、フェースをラインにスクウェアに保つこと、いいストロークをすることに集中すべきだと助言した。翌日、電話で彼はその日のラウンドで九つのバーディを記録したと告げた。

あるPGAツァーでの出来事。有名な外国プロが、アプローチ・ショットでグリーンを外し、急斜面のチップ・ショットを行なおうとしていた。彼はそこで一本のウェッジによって12回も素振りを繰り返した。彼は首を振り、別のウェッジに取り替えた。二回素早い素振りをした後、彼はアドレスに入った。私は『プランを変更したのなら、もっと時間をかけなきゃ。トラブルが待っているぞ』と思った。まさしくその通り、彼はグリーンを横断してしまうようなトップを放ってしまった。

彼は新しいプランが浸透する時間を作り出さなかった。彼の心だけは新しいプランに変更されたものの、彼の身体は以前のプランのイメージのままだったのだ。脳の片側から反対側にメッセージが伝わるには時間がかかるのである。プランを変更したのなら、二・三度のウォームアップ・スウィングをし、心に新しいイメージが滲み込むのを待つべきだ。その後なら、心と身体が同調したいつものルーティーンを遂行し、自信を持ってショット出来るのである」

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(February 02, 2009、改訂June 03, 2015)


ティーが語るあなたの球筋

'Max out your driver'
by J.D. Turner ('Golf Digest,' March 209)

「これはドライヴァーでダフったりポップアップを打つ人、パー4で2オン出来ない人のためのtipである。

先ず、8センチほどの間隔をおいてティーアップした四つのボールをドライヴァーで打つ。打ち終えたらティーの状態をチェックしてほしい。

1) ティーがターゲット方向に傾いている
 これはボールのかなり上の方を叩いており、ゴロのようなショットをしていることを示す(トップ)。【編註】

2) ティーが地面から弾き飛ばされている
 あなたのダウンスウィングはあまりにも急角度であり、ポップアップやダフりを引き起こす。

3) ティーが差された時のままになっている
 あなたは水平のスウィングをしており、ボールと良いコンタクトが出来ている。

上のドリルを繰り返し、(3)の状態でスウィング出来るようにする。飛行機の着陸時の軌道、ボールの右側に真横に釘を打つようなイメージ。絶対にしてはいけないことは、アイアンのようにボールに向って上から打ち下ろすことだ。水平に打てば、貴重なおまけの飛距離が得ることが出来る」

【編註】この項目に"worm-burner"と云う言葉が使われています。"worm"は一般的に「ミミズ」ですので、「ミミズを焼くもの」つまり「ミミズ殺し」という意味になります。これは野球とゴルフに共通の言葉だそうで、確かにゴロが地面を走ればミミズの一匹や二匹殺すかも知れません。

(February 08, 2009)


中間距離のクラブ選択法

クラブの平均飛距離の中間の距離を打たなくてはならない場合があります。7番アイアンにするか8番にするか迷う、そんな際の助けとなるスポーツ心理学者Dr. Joe Parent(ジョー・ペアレント博士)のtip。

'Zen Golf'
by Dr. Joseph Parent (Doubleday, 2002, $17.95)

「二本のクラブのどちらを選ぶか決断するには、一本ずつちゃんとセットアップして素振りをしてみる。どちらのクラブで、より身体が緊張するか、その度合いを計る。どちらが落ち着かない感じをもたらし、どちらが安心感をもたらすかを探る。どちらが自信を持って打てるか身体が教えてくれるので、その直感を信じ、それに従ってクラブを選べばよい」

これはいい方法だと思います。われわれアマチュアの場合、7番でどれだけ飛ぶかはその日によって変わります。晴天の湿度の低い日であっても、こちらの疲労度によっては飛距離が減ります。湿度が高かったり、気温が低くても減ります。当然、それらの逆もあります。ラウンド前の練習で自分のその日の飛距離がどうかは大体分りますが、最初の数ホールの数ショットで、身体はその日飛ぶか飛ばないかを決定的に認識します。ですから、二本のクラブを試した時、身体は正直な答えを出す筈です。

(February 09, 2009、改訂June 03, 2015)


面目を保とうとする失敗

スポーツ心理学者Dr. Joe Parent(ジョー・ペアレント博士)によるメンタルtip。

'Zen Golf'
by Dr. Joseph Parent (Doubleday, 2002, $17.95)

「『いいスウィングをしよう』という意識は、機械的動作と自意識に焦点が合わさり、流れるようなスウィングを妨害する結果となる(もし、あなたの心がターゲットに向うボールの飛行と転がりのイメージで満たされてさえいれば、妨害は起らないかも知れないが)。

あなたの意識が『恥をかきたくない』、あるいは『ミスをしないようにしよう』という方向に向かうと、恐る恐るボールをある方向へ誘導する(舵を取る)ようなショットになり易く、それは自由なフル・スウィングを妨害し、多くの場合貧弱なショットを作り出す。

偉大なBobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)でさえ、上のような弱点を持っていた。彼はあるトーナメントで二位のプレイヤーに格段の差をつけてトップに立っていた。彼はその大量リードを失って面目を失うことを恐れ、失敗を避けるためスウィングをコントロールしようとし始めた。ターゲットを定めるのではなく、障害物を避けることに集中してしまったのだ。彼は『リードしている時でも、トップを追いかけている時のようにターゲットに集中していたら、もっと数多くのトーナメントに優勝出来たろう』と述懐している。

最良のターゲットは《ボールを送り届けたい場所》である。最良の意識は《自分のスウィングを信じること》である。最良の目的は《ゲームを楽しむこと》だ」

(February 13, 2009)


[1913] Francis Ouimet(フランシス・ウィメット)のU.S.オープン 1913

'The Greatest Game Ever Played'
by Mark Frost (Hyperion, 2002, #30.00)

日本では劇場未公開ですが、邦題『グレイテスト・ゲーム』(2005)としてDVDが売られている映画の原作。映画は原作者による製作・脚本なのですが、本の方が圧倒的に感動させられます。

この本の存在はずっと前から知っていましたが、20歳のアマチュアが10歳のキャディとU.S.オープンに参加し、“たまたま優勝してしまった”物語に過ぎないと、パスしていました。映画を観ても、別に本を読む気にはなるほど感心しませんでした。

今年初め、ゴルフ仲間で本の虫のJ.B.(ジェイ・ビー)が、「この本を読め」と貸してくれました。大判で480頁もある本ですし、内容は知っているつもりだったので、本当は真面目に読む気はならず、適当な間を置いて返却するつもりでした。

ところが本をめくってみると、映画などとは全く違い、イギリスのプロHarry Vardon(ハリィ・ヴァードン)の伝記のように物語が始まるのです。彼はロンドンからジャージイ島に移り住んだ大工の倅で、キャディをしながらゴルフに取り憑かれ、全英オープンに何度も優勝してイギリスの(というか世界的)プロのトップに立ちます。当時、アメリカにはゴルフ場こそ結構出来ていましたが、現在のように大衆に人気のあるスポーツではありませんでした。コース・デザイナーもレッスン・プロも全て英国人でした。そんなアメリカにHarry Vardonがやって来ます。あるボール・メーカーの宣伝のためでした。あちこちで御当地プロと公開試合をしたり、デパートやスポーツ用品店でデモをします。

マサチューセッツ州の州都ボストンでのHarry Vardonのデモの時、母に懇願して連れて来て貰い、ボールを試打した上にHarry Vardonからグリップ(ヴァードン・グリップ)を教わった少年がFrancis Ouimet(フランシス・ウィメット、1893〜1967)でした。彼はボストン近郊のThe (Brookline) County ClubのNo.11の前の家に住んでおり、5歳の頃からコースに忍び込んでゴルフごっこをしていました。やがて少年キャディとして雇われ、巧い客のスウィングを真似てロスト・ボールを打つようになります。プロ・ショップの主が古いクラブをくれ、ついに本格的にゴルフを目指します。しかし、そのメンバー・コースではキャディはプレイ出来ない建前になっていましたから、夜明け前や日没近い頃が彼の練習時間でした。

一方、Harry Vardonは肺結核を病んでしまい、プロ生活とは無縁の後半生になるところでしたが、既に有名人だったせいでいい療養所と良い医師に恵まれ、奇跡的にトーナメント生活に戻ることが出来ました。またもや全英オープンに何度か優勝。そして、1913年のU.S.オープンを照準に、彼と同郷の若手Ted Ray(テッド・レイ)と共にアメリカへやって来て、数々の公開試合をこなし始めます。

20歳になっていたFrancis Ouimetは、1913年のU.S.オープン直前のアマの試合で惜しくも破れて意気消沈していました。彼を店員として雇っていたスポーツ用品店主がUSGA役員に根回しして招待選手としての参加を認めさせます。Francis OuimetはHarry Vardonの著書を熟読しており、Harry Vardonのメンタル面のtipsも自家薬籠中のものにしていました。

現在とはちょっと異なる曜日とホール数の予選・本戦ラウンドが行なわれます。最終結果はイギリスのHarry VardonとTed Ray、そして何とアメリカの若干20歳のアマFrancis Ouimetがタイとなり、翌日18ホールのプレイ・オフが行なわれることになります。

有名な写真であるFrancis Ouimetと10歳の少年キャディの組み合わせは、全く偶然の産物でした。Francis Ouimetのキャディは外国プロにお金で買収され、Francis Ouimetを見捨ててしまったのです。仕方なくFrancis Ouimetは顔見知りの少年にキャディを頼みます。少年はOKしたのですが、実はその頃学校の生徒が真面目に授業に出ないことが問題となっており、母親は少年に必ず登校するよう厳命します。彼の弟Eddie Lowery(エディ・ロアリィ、当時10歳)は不甲斐ない兄を詰(なじ)り、代わりに自分がキャディを務めることを決意します。不登校生徒を取り締まる警官の目をかすめて電車でコースに向かわなくてはなりません。

少年キャディEddie Loweryの口癖は"Keep your head down. I'll watch your ball."(ヘッドアップしちゃ駄目。ボールの行方はボクが見る)でした。また彼は、「今日こそは72で廻ろうね!」とFrancis Ouimetを鼓舞しました。彼の適切な助言もあり、二人の連帯感は次第に深まって行きます。

人々の会話はとてもリアルで、「講釈師見て来たような嘘を云い」の範疇だろうと思っていましたが、著者は極力事実に即して描いたと云い切っています。

Francis Ouimetの家族(特に息子を応援する母親の行動と、ゴルフを遊びとしか思わず白い目で見ていた父親の心の変化)の描写には泣かされます。

「アマチュアがプロに勝った!」というこの1913年の出来事がアメリカのゴルフを大変貌させます。ゴルフ人口はうなぎ上り、コース新設もブームになります。彼は今日のアメリカのゴルフの大恩人なのです。

Francis Ouimetの家はThe County ClubのNo.11の前にありました。本戦とプレイ・オフの際、このホールで何故か彼は素晴らしいショットを展開しました。1999年の米欧対抗Ryder Cup(ライダー・カップ)はこのコースで開催され、キャプテンのBen Crenshaw(ベン.クレンショー)は、負けが濃厚な最終日前日の記者会見で強気の発言をしますが、それは数打差を引っくり返して優勝したFrancis Ouimetの故事に由来したものでした。Justin Leonard(ジャスティン・レナード)がアメリカの優勝を決める14メートルのロング・パットを成功させたのは、奇しくもFrancis Ouimetの家の前のNo. 17でした。

邦訳が出ていればいいのですが、出ていなければ原書に挑戦して下さい。表現は平易です。途中20頁ほど「当時のアメリカ大統領たち」みたいな章がありますが、これは飛ばすことをお薦めします。時代背景として入れてあるのですが、面白くないし、Francis Ouimetの話と関わって来ません(私はこの部分で、読む気が二週間ほど減退しました)。

(March 07, 2009)


「Francis Ouimet(フランシス・ウィメット)という名前はアメリカ人らしくない」と思われることでしょうが、彼の父はフランス系カナダ人のアメリカ移民、母もアイルランドからの移民でした。アメリカで生まれたFrancis Ouimetはアメリカ人としてU.S.オープンに優勝したわけです(アマとしては初)。五歳からゴルフを始めていたBobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)は、この当時、わずか11歳でした。

この優勝はまぐれではなく、Francis Ouimetはこの後も数々のアマチュア・トーナメントで優勝しました。

この本の末尾に"Aftermaths"(余燼)として、主登場人物たちのその後が語られています。著者は彼らの死亡年齢と死因を明記していて、なかなか興味深いものがあります。ノンスモーカーと思われる八人は64歳から最長85歳まで生きており(平均78.5歳)、Harry Vardon(ハリィ・ヴァードン)を含むスモーカーたち四人は65歳〜76歳で、平均67.8歳なのです。ま、当時はフィルター付きシガレットなど無く、みなパイプ煙草でしたが、それにしても約十年も寿命が違うというのは驚きです。

【おことわり】画像はcontentreserve.comにリンクして表示させて頂いています。

(March 10, 2009)


不出来なラウンドの救済法

'How to salvage a bad round'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' April 2009)

「誰にとっても、出来の悪いラウンドというものは人生の一部である。それは世界のトップ・プロでさえもがき苦しむ地獄のような一日だ。そういう日の逆落としのような勢いを食い止め、勢いを逆転するtipをお教えしよう。

・ハード・フェードを打て
 ドライヴァーを打つ時にリズムとテンポが合わないと感じられたら、ハード・フェードを選ぶべきだ。これは上級者にとってはかなり簡単に実行出来るショットである。フェアウェイの左サイドを狙い、身体をフルに回転させ、身体の右サイドの力でハードに打つのだ。重要なのは、インパクト位置を過ぎても左手の最後の三本指(中・薬・小)をしっかり握り続けることである。これがクラブフェースをオープンなままにし、フェードを生み出してくれる。

・長めのクラブで3/4スウィング
 アイアンが不調な場合は、長めのクラブを選択して3/4スウィングをすることだ。楽に振ることは筋肉をリラックスさせ、緊張を取り除いてくれる。3/4スウィングによってコントロールがよくなり、スムーズでパワフルなショットが甦る筈だ。

・攻撃的にパットせよ
 パットの不調は3メートル前後の成否に顕著にあらわれる。自信がなくなったら、巧みにカップに入れようと努力するのでなく、カップの向こうの壁にガツンと当てるようなパッティングをするといい。この方法は、あなたの心から機械的動作への拘りを忘れさせてくれるだけでなく、ブレイクに影響されないパットに繋がる。そして、最も重要なのはあなたに自信を与えてくれることだ」

(March 19, 2009)


完璧なショットを期待するな

スポーツ心理学者Dr. Joe Parent(ジョー・ペアレント博士)の期待過剰の戒め。

'Zen Golf'
by Dr. Joseph Parent (Doubleday, 2002, $17.95)

「特定のクラブでどれだけ遠くに飛ばせるかは、いいゴルファーを計る物差しではない。遠くに飛ばすことはゴルフの目的ではなく、正確度と一貫性によってスコアを減らすことが、このゲームの目的である。

ツァー・プレイヤーたちは持てる力の80%でスウィングする。それぞれのクラブで一貫した飛距離を生むスムーズなスウィングをするには、目一杯の力で打ってはいけないのだ。

一般のゴルファーたちは常にアプローチ・ショットでショートする。完璧なショットをした時にのみグリーンに到達するクラブを選ぶからだ。自己最高飛距離を飛ばそうという潜在意識はあらゆる失敗の原因となり、そのため完璧なショットなど当然出現したりしない。それがわれわれがグリーンに乗せられない理由である。

アプローチ・ショットでは、ピンを狙ってはいけない。グリーンの向う端(遠い方)のエッジに近い部分に届くクラブを選ぶべきだ。こうすれば、多くの場合、あなたの“完璧なショット”(?)はグリーンの真ん中のピン近くで停止することだろう」

私の周囲の上級プレイヤーたちを見ていると歯痒い思いをすることがあります。彼らは長年通い慣れたコースなのに、グリーンへ1〜1.5クラブもショートすることが多いのです。ミス・ショットなら仕方がありませんが、そうではありません。飛距離が落ちたシニアと云えど、1クラブ上げればいい筈なのに、数年前の自分の飛距離あるいは完璧なショットの飛距離でクラブを選択しているとしか思えません。自分の能力の過信か、未だに飛距離が落ちた事実を認めたくないか、そのどちらかでしょう。彼らのスウィングはいいし、インパクトの音もいい。弾道も素晴らしい。グリーンに5〜10ヤードもショートするという結果だけがお粗末。

私は寒い日など、ラウンド開始後数ホールでその日の飛距離の短さを悟った時、すぐさま1〜1.5クラブ上げることにしています。しかし、そうすぐに決断出来ない日もあります。天気予報が「今日の最高気温は22℃ぐらいになる」と云っている日はそれを信じてしまい、体感気温が低くても飛距離が平常通りでないと思いたがらないのです。「今のはミス・ショットに違いない」と思ってしまい、飛ばなかったのは気温のせいだと気がつきません。その日の成績は、いつコンディションに気づいてクラブ選択を調節出来るかにかかっていると云っていいでしょう。「ゴルフは耳と耳との間(脳味噌)のゲームだ」と云われるのは、こういう要素があるからですね。

(March 24, 2009、改訂June 03, 2015)


[Lesson Tee]Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)の段階的上達法

'Jack Nicklaus' Lesson Tee'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Simon & Schuster, 1978)

「先ずどのレヴェルのゴルフをしたいのかを確定し、その目標達成のための計画を練るべきである。

あなたが100を切れず、90台で廻れれば幸せだと思うのであれば、その目標は二、三回ほどレッスンを受ければ達成出来るだろう。

あなたが90台で廻れ、80台のスコアを望んでいる程度なら、ショート・ゲームに上達することが一番の近道だ。

80台から70台に突入しようと企てているなら、コースでのラウンドより多くの練習を計画に組み込まなくてはならない。

あなたの目標がパー・プレイかアンダーで廻ることなら、ほんの微かな欠陥をも修繕し、有意義でなおかつ優劣を競うようなラウンドに可能な限り参加すべきである」

(April 17, 2009)


超スローモーション・ドリル

「スローモーション・ドリル」が効果的であることは周知の事実。Harvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)もこれを推奨しています(「スローモーション・ドリル」tips_01.html)。ただし、Harvey Penickはどれだけ遅くするかは明確にしていませんでした。今回のインストラクターMike Malaska(マイク・マラスカ)のtipはちゃんと時間経過が指定されています。

'Groove a perfect backswinng in one minute'
by Mike Malaska ('Golf Magazine,' May 2009)

「このドリルは1,000個のボールを打つより効果的であることが証明されている。バックスウィングを例に取ると、全体を6パートに分け、各パートをカタツムリのように10秒ずつで進行させる(止めてはいけない。クラブを動かし続けること)。

1) アドレス→両手が右太股の前まで 10秒
2) →クラブが地面とほぼ平行になる位置まで 10秒
3) →クラブが地面に対し45°になる位置まで 10秒
4) →クラブが地面に対し直角になる位置まで 10秒
5) →トップ直前まで 10秒
6) →トップまで 10秒

ダウンスウィングは逆の行程を辿ればよい。

これを毎朝会社へ行く前に実行する。そして、週末に練習場へ行けば、その素晴らしい結果とあなたの身体の筋肉が各パートの位置を記憶していることに驚くことだろう」

(April 21, 2009、改訂June 03, 2015)


ゴルフのための食事

'Explosive Golf'
by Michael Yessis, Ph.D. (Masters Press, 2000, $18.95)

「・食事のヒント

最高のコンディションにするための食べ物を探すのに苦労は要らない。例えば穀物はヴィタミンとミネラルを豊富に含み、かなりの量のエネルギーをも生み出す。穀物は豆類と共にどの文化圏においても重要な役割を務めている。

炭水化物を充分に摂取する際、白米や白く精製された小麦粉で焼かれたものにこだわらず、無精白の製品から様々なものを選ぶべきだ。コーンブレッド、マフィン、全粒粉を用いて脂肪の少ないパンケーキなどがよい。脂肪を加えたパン類は避けるように。コーン・チップス、ポテト・チップス、ドーナツ、脂肪の多いクラッカー、ケーキ、砂糖漬け果物が入った甘いロールパンなども遠ざけること。

野菜も食物の大黒柱の一つである。サラダを作る場合、レタスは、栄養の少ないアイスバーグ・レタスではなく、ロメインとかサニー・レタスなどの色の濃いものを使うこと。ほうれん草、セロリ、ピーマン、赤玉ねぎ、赤キャベツ、ブロッコリ、カリフラワー、人参なども加える。豆製品も欠かさないように。

これらと最小限の脂肪の摂取によって充分なカロリーが得られる。また、密封出来るヴィニール袋に、次のような野菜を刻んだものを入れて手近に置いておく。ブロッコリ、人参、ズッキーニ、カリフラワー、アスパラガス、ピーマン、マッシュルームや緑の豆類。これらにトマトを加え、日中やゴルフコースでのスナックとする。

 

新鮮な果物も水分を補い、お腹を満たしてくれる。生のままかピューレにした果物は充分な繊維質を含んでいる。地元で採れる旬の果物で自然に熟したものを丸かじりするのが望ましい。味わいも栄養も最高である。

肉、魚、豆類、卵、ナッツなどと共に、ヨーグルトやチーズもまた重要な食品である。蛋白質は重要なものであるが、アミノ酸と飽和脂肪を補給するには脂肪の少ない肉で充分だ。新鮮な生のナッツや種も、蛋白質、繊維、ヴィタミン、ミネラルの宝庫である。

卵はコレステロール値を高める悪者ではない。本当の悪者は鶏の餌である。自然に飼われている鶏の卵を食べてもコレステロール値は高くならない。こういう製品を得るには「放し飼い」とか「有精卵」という表示を探せばよい。

・朝のゴルフ

あなたが午前中にゴルフするとして、朝食抜きあるいは不十分な朝食しかとっていないと、あなたのライヴァルよりずっと早くエネルギー不足になるだろう。特に後半の9ホールで糖分が不足し、あなたは身体の脂肪を燃焼させなくてはならなくなり、脳への血液の流量が減少する。その結果、集中心がなくなり欲求不満が増大する。

あなたが朝型ゴルファーなら、ちゃんと時間を作って澱粉質、蛋白質と野菜を摂取すべきである。オムレツは最適の食べ物だ。午前の中頃のスナックに、蛋白質としてナッツや種を含めるべきである。これらは糖分を補給してくれるが過剰摂取の弊害はもたらさない。これらは頭脳の働きをよくしてもくれる。ナッツは夏場でもなければ塩味のついてないものが良い(夏場は多少の塩分があった方が良い)。

ナッツや種をそれだけでたべるのが最善である。何故なら、それらは空っぽのお腹でも消化しやすいからだ。ナッツや種が塩や油で調理済みだと、それらは痛みやすい上に頭痛や他の障害の原因となる可能性がある。

朝型ゴルファーなのに午後ラウンドしなければならない場合は、何かスナックか果物を用意しよう。

・午後のゴルフ

昼食をパスタやサンドイッチに限定してはいけない。昼食に蛋白質を摂り過ぎると午後に疲れが出て、ラウンド中に欠伸(あくび)が出るようになる。でんぷん質と蛋白質の過度の摂取は、それらを糖分に変化させるので適切な昼食とは云えない。【編註:糖分は一時的に気分を昂揚させるが、すぐに虚脱状態へと移行する】適切な昼食は野菜、魚やチキンなどの少量の蛋白質の摂取である。

ソフト・ドリンクやアルコールは有害である。どちらも脱水症状に繋がり、血中の糖分に影響する。砂糖が含まれたソフト・ドリンクやジュースは、あなたの思い込みとは逆にあまり栄養を含んでいない。オレンジが欲しいなら、生のオレンジ一個食べる方がよい。

午後型ゴルファーが午前中にラウンドしなければならない場合、朝食に果物を摂り、午前の中程でビーフ・ジャーキーなどの蛋白質のスナックを食べる。

・女性と炭水化物

あるトップクラスの栄養学者の研究によれば、男性と女性で炭水化物への反応が異なるそうだ。女性は、パスタ、パン、じゃがいもなどのような炭水化物を食べると体重が増すことが分った。男性一般にこのような反応はない。人々…特に女性が、ある種の炭水化物を摂取後眠くなる傾向があるのはこのせいだったのだ。つまり、炭水化物が蛋白質と同じ働きをしているのである。

なお、男性の一部にも女性と同様の反応をする人がいる。云えることは、何を食べたらどうなったか注意深く検証することだ。人間は一人一人違うのだから。

【参考】
・「80を切る栄養学」(tips_5.html)
・「80を切る食事」(tips_61.html)
・「朝のゴルフ・午後のゴルフ」(tips_69.html)
・「コンペ前夜」(tips_108.html)
・「ランチ・ブレイク」(tips_17.html)
・「エネルギー補給マニュアル」(tips_45.html)
・「エナージィ・ドリンクの飲み方」(tips_121.html)

(April 25, 2009、増補May 25, 2015)


ゴルフ理論

この記事は読んで何か役に立つというわけではありませんが、著者(トレーナーで、博士でもある)の視点が面白いので一部を紹介します。

'Explosive golf'
by Michael Yessis, Ph.D. (Masters Press, 2000, $18.95)

「ゴルフに関する技術書と記事の数は、他のいかなるスポーツをも上廻るものだろう。それはゴルフの人気を示していると同時に、ゴルフが個人に根ざしたものであることをも証明している。ゴルフコースの数と同じほどの異なるゴルフ・スウィングが存在するわけだ。

ゴルフ・スウィングの鍵となるアクションの定義に関しても、意見の一致は見られていない。その結果、効果的なスウィングの構成要素は何なのか?、パフォーマンスを改善する効果的手段は何なのか?…という疑問が湧くのは当然である。

ゴルフ・スウィングをよりよく理解するために、50人の異なるレッスン・プロに教わったというゴルファーと話したことがある。どのプロもどこかしら違うことを彼に云うので、彼の混乱は増す一方だった。この現象を説明出来るのは、レッスン・プロは各自のスウィング(あるいは各自が教えているスウィング)を理想の雛形と考えているということだ。事実は、“完璧な”スウィングなどというものはどこにもないのである」

これは、当サイトに相反するtipが多数あるということの説明でもあります。プロやインストラクターは学者ではないので最大公約数で教えたりしないのです。英語の先生なら文法書をバイブルとして、それに則って授業をするわけです。教える内容は共通しているでしょう。ゴルフにもバイブル的な本はあるとはいえ、レッスン・プロはそういう本に書かれている通りに教えたりしません。生徒の前で自分が見せるスウィング(いいボールが打てるスウィング)が本と同じとは限らないからです(有名インストラクターなら自分が書いた本で教えるでしょうけど)。レッスン・プロは自分にとってうまく行くスウィングをして見せ、それを生徒に教える…ということになります。とどのつまり、千差万別のセオリー(技術論)が世に溢れるという結果になるわけです。

(April 28, 2009)


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