Golf Tips Vol. 75

常にベスト・ゴルフが出来るわけではない

'The Don't Sweat Guide to Golf'
by Editors of Don't Sweat Press (Hyperion, 2002, $10.95)

「あなたが自分のベスト・ゴルフを展開出来なくても、欲求不満になったり怒ったりせず、ベストでないゴルフを容認し、そこから学ぶべきことを何か探すべきである。

多くのプロは、思い通りのショットが打てることは稀であり、完璧なショットが出来るのはたった二、三度だろうという姿勢でトーナメントに臨む。大惨事があるとまでは考えないが、完璧なラウンドというのも期待しないのである。だから、完璧なゲームが出来なくても心の準備が出来ているので驚かない。多くのプロは七〜八回も思い通りのショットが出来れば、それは素晴らしい日だと考える。

プロ・トーナメントの観戦に行くと、最高のプロでさえいいショットは一ラウンドでたった数回に過ぎないことを知るはずだ。だから、あなたがラウンドの度にベスト・ゴルフを展開出来るというのは、あまりに非現実的である。そう認識すれば、たった一回や二回のいいショットしか出来なくても、自分に辛く当たることはなくなるだろう。

自分が完璧でないこと、プロを含む他のゴルファーと同じような存在だということを単純に受け入れるべきである」

(October 01, 2003)


勝つと思うな、思えば負けよ

 

堅実派の代表Tom Kite(トム・カイト)による悟りの境地。

'How to Play Consistent Golf'
by Tom Kite and Larry Dennis (Pocket Books, 1990, $14.00)

「『勝とうと思うな』と云うと奇妙に聞こえるだろう。トーナメント、マッチ・プレイ、友人との賭けなど、全て勝つためにやっている。それが楽しみなのだ。

しかし、頑張ることと頑張り過ぎることの間には明白な一線がある。自分がコントロール出来ないことを無理にどうこうすることは不可能なのだ。勝つとか負けるという範疇はコントロール出来ない。

完璧なスウィングが出来るということは稀である。完璧なスウィングを実現するというのは難しいからだ。完璧なラウンドというのもあり得ない。完璧なラウンドなどというものは存在しないからだ。あなたに出来ることは、出来るだけいい心理状態を保ち、出来るだけいいスウィングをすることだけである。それが実行出来た時、No.18にいいスコアで到着し、そのいいスコアが勝利に結びつくかも知れない。

 

私は素晴らしいゴルフをして優勝したことがある。素晴らしいゴルフをして敗れたこともある。お粗末なプレイで敗れたことがある。相当ひどいゴルフで優勝したこともある。1986年のマスターズでは、それまで鳴りをひそめていたJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)が最終日の最後の10ホールで7アンダーを記録し、私を一打差で打ちのめした。私にはこういうことをコントロールすることは出来ない。

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)はマッチ・プレイについて「私はコースを相手にプレイする。対戦相手とではない」と云っていた。これはいい考えだ。状況がどのように見えようとも、それはたちまち変化する。対戦相手が池に打ち込むかも知れず、あなたがチップ・インさせるかも知れない。あるいはその反対のことが起るかも知れない。

忍耐強くあれ。無理強いするな。あなたのベストを尽くせ。その結果、なるようになるしかないのだ」

(October 15, 2003、改訂May 31, 2015)


[Shotgun]純正ショットガン・スタート

“ショットガン・スタート”というのは、スタート前とフィニッシュ後の待ち時間を少なくするため、1〜2組ずつ18ホール全てに散らばり、クラブハウスのサイレン、笛あるいは警報(ホーン)によって同時にスタートするシステムです。これですと、全員がほぼ一緒に終了出来ます。こちらではこの方式のトーナメントが多く、これが行われている間、参加者以外の人間はプレイ出来ません。

ところで、我が市営ゴルフ場のショットガン・スタートは文字通りショットガン・スタートです。サイレンやホーンではなく、実弾を篭めたショットガン(散弾銃)を使います。発射するのはグリーンズ・キーパーの親玉兼カート修理工のTom Embrey(トム・エンブリィ)。住宅が近くにあるゴルフ場では銃を発射したり出来ないわけですが、この市営ゴルフ場は山の中だし、大きな池の反対側は狩猟地域になっているほどなので、全く問題ないんだとのこと。Tomは「本当は空砲を撃つべきなんだろうけど、面倒くさい。木に向けて撃つことにしてるからいいだろ」と云っていました。

どうです?アメリカ南部のゴルフは凄いでしょう:-)。

(October 15, 2003)


[Greenskeepers]グリーンズ・キーパーの仕事

トーナメントの参加費用の多くは昼食を含んでいます。市営ゴルフ場にはレストランはないので、コックなどいません。では、仕出しを取るのか?コックを日雇いするのか?どちらでもなく、グリーンズ・キーパーたちが料理するのです。

料理と云ってもハンバーガーとホットドッグの二つしかありません。どちらも野外のドラムカンを改造したグリルで焼きます。参加者がハーフを終えた頃に火を起し、18ホール終わる頃にはハンバーガーとホットドッグが焼けています。参加者はどちらか一つを選べるのですが、実際には多めに用意しているので、ハンバーガーの後にホットドッグを食べることも出来ます。缶入りコーク付き。

グリーンズ・キーパーたちは朝5:00頃から働いていて、午後は仕事はありません。ゴルフの好きな人たちは時々ラウンドしたりしています。そのくらいですから、ハンバーガーを焼く時間も十分あります。ただ、このコックの仕事も業務に入るのか、あるいは$10.00ぐらいのお駄賃が出るのか聞きそびれました。いずれにせよ、参加費用のいくばくかは市営ゴルフ場に落ちることになるので、グリーンズ・キーパーたちの給料やコース改善の足しにはなっているわけです。

(October 15, 2003)


眠られぬ夜のために

ある時、83歳のゴルフ友達J.B.(ジェイ・ビー)と、隣町で午前9:00から行われるゴルフ・トーナメントに参加しました。7:00にJ.B.の家に着いてそこから彼の車を運転することになるので、朝食時間を含めると5:00には起きなくてはなりません。

車中、J.B.が「睡眠は十分かね?」と聞くので「10時に寝ようとしたのだが、11時まで眠りにつけなかった。最終的にどうやったかと云うと、もう朝の5:00だと想定し、『う〜ん、まだ眠い。あと30分寝よう』と考える。もう一人の自分が『駄目駄目!30分のつもりが一時間、二時間になって遅刻するぞ!』と諌める。『大丈夫。30分でちゃんと起きるって』とか議論しているうちに寝入ってしまい、当然30分では目覚めず、時計のベルが鳴るまでたっぷり六時間寝てしまうという仕掛け」と得意そうに話しました。

J.B.は「もっと簡単な方法がある。100から逆に99、98、97、96…とゼロまで数えるんだ。ゼロまで行っても寝られなければ、また100から始める」という方法を教えてくれました。これはやってみると実に素晴らしい方法です。何か考え事をするから眠れないので、数を勘定することに専念して雑念を排除するわけです。1、2、3…と順に数えるのは空(そら)でも出来ますから、数えながら考え事が忍び込んで来るのを阻止出来ません。しかし、逆に数えるというのは慣れない行為ですから、必死に数えることになり、雑念は入り込めないのです。

(November 15, 2003)


恐怖に克つ

Tom Kite(トム・カイト)はTiger Woods(タイガー・ウッズ)出現以前の賞金王でした。彼のステディなゴルフはPGAツァー時代も現在のChampions Tourでも変わりはありません。

'How to Play Consistent Golf'
by Tom Kite and Larry Dennis (Pocket Books, 1990, $14.00)

「怖がらないプロはいない。この件についてPGAツァーで話されたことはなく、誰も認めようとしない。しかし、いくら平静を装っていても、どのプロも神経質になっていて、死ぬほど怖がっているかも知れないし、吐き気を催しているかも知れない。

上はJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)から下は初優勝を狙うプロ、初参加のルーキーに至るまで、同じように恐怖を感じている。あなたのコースのクラブ・チャンピオンシップの5番目のフライトに勝とうとしている人や、No.18で賭けに勝つための3フィートのパットをねじ込もうとしている人も同じことだ。

あるショットの成否、勝利や敗北について心配が湧いて来たら、中国の7億人の人たちを思い浮かべるべきだ。彼らはあなたの一打のことなど知っちゃいない。どうでもいいことなのだ。

興奮したりストレスの下ではアドレナリンが体内に噴出する。もし、ある決定的な瞬間にアドレナリンが機能しないとすれば、あなたはその瞬間をあまり気にしていないか死んでいるに違いない。

興奮するとスウィングが速くなる傾向がある。これはアマチュアに限らず、プロにもある。スウィングを速くし過ぎると、ボールとのソリッドなコンタクトが損なわれ、欲しがっていた飛距離を失うことになる。

私もトーナメントにおいては、ほぼ毎日のようにアドレナリンと恐怖に直面しなければならない。その際、テンポとルーティーンに集中して乗り切る。かなりゆっくりスウィングしたと思ったスピードが通常のスピードかも知れない。ソリッドに打つことが飛距離につながることがある。アドレナリンの影響である」

(November 15, 2003)


Tom Kite(トム・カイト)の練習

'How to Play Consistent Golf'
by Tom Kite and Larry Dennis (Pocket Books, 1990, $14.00)

Tom Kite(トム・カイト)は“練習魔”として有名です。彼の恩師Harvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)は、練習場から離れたがらないTom Kiteを追い出すようにしてコースに出さなければならなかったそうです。

「私は練習の60%をロング・ゲームに、40%をショート・ゲームに費やす。あなたは、自分の強みと弱点に応じてこの割合を調節すべきである。必ず、弱点を克服する練習をするように。

最重要な三つのクラブがあるというのがHarvey Penickの口癖だった。それらは順にパター、ウェッジ、そしてドライヴァーであった。Harvey PenickはBen Hogan(ベン・ホーガン)に同じことを尋ねたことがあるそうだ。Ben Hoganが最重要な三つのクラブとして挙げたのは、順にドライヴァー、パター、そしてウェッジだった。Ben Hoganは大抵の場合ボールを2オンさせたから、ウェッジが必要なのはパー5のホールだけだったのだが…。いずれにせよ、あなたもこれら三つのクラブを重点的に練習すべきである。

疲れている時は練習しないこと。練習中に疲れたら、すぐ止めるように。

練習ではうまく行くが本番では駄目というのは、練習法が間違っているからだ。本番と同じように練習すること。本番では40球も同じターゲットに打つことは出来ない。何球でも打てるような練習をしているから、たった一球しか打てない本番になると緊張してしまうのだ。練習でも、「この一球しかない」と思いながら一つのターゲットに向けて打つ。次の一球は別のターゲットを狙う。こういう練習をしておけば、コースでのテンションに煩わされることもなくなる」

 

(November 20, 2003)


反応速度

心理学の原理にHick's Law(ヒックの法則)というのがあるそうです。反応速度は決断しなければならないことの数に比例するというもの。以下はそのゴルフへの応用。

'MentalRules for Golf'
by Gregg M. Steinberg, PH.D. (TowleHouse Publishing, 2003, $12.95)

「反応速度は、あなたが決断すべき事柄が倍になると、約120ミリセカンドという定数によって増大する。

あなたが考慮すべきことが一つであれば、反応速度は約190ミリセカンドである。二つ考慮しなければならないとすると、反応速度は310ミリセカンドとなる。四つ決断しなければならない場合、反応速度は430ミリセカンドとなる(以下略)。

ダウンスウィングに関するスウィング・キィが多ければ多いほど、あなたの脳が筋肉への指令を出す速度が遅れてしまう。一つのスウィング・キィだけなら、四つのスウィング・キィがある場合より、筋肉への指令は速く送られる。指令が速く送られれば、クラブを速くスウィングすることが可能で、より遠くへボールを運ぶことが出来る」

(November 21, 2003)


メトロノームでパー・プレイ

名古屋にお住まいの古橋さんからリポートを頂きました。古橋さんは「80を切った、その日」に既に登場して頂いています。今回はユニークな練習法に挑戦されて、シングルへの道を切り開かれたようです。

先日パープレイを達成しましたが、その秘密はメトロノーム利用による「テンポ」の体得です。

ホームコースの瑞浪高原ゴルフクラブで、普段から好結果を残せていないクラブ競技に挑みました。「勤労感謝の日杯」というAB混合のアンダーハンデ競技です。3ラウンド連続70台の後ということもあって気合いが入りました。東コース(3216ヤード、パー36)はパー、ボギー、ボギーという出だしながら、なんとかパーを拾いつつ迎えた7番ショートのティー・ショット。あわやホールインワンというカップの手前5cm、初バーディ。8番で木に当たるトラブルがありボギー、2オーバーで迎えた9番はチップインのイーグル。アウトを計36のパー・プレイ。

後半、西コース(3217ヤード、パー36)の出だし3ホールはパーを拾い、4番ショートはピン下5mについたパットをねじ込んで1アンダー。その後も何とかパーでしのぐものの、7番ロングで痛恨のボギー。この時点でパープレイとなり、あとがなくなりました。迎えた最終ホール、ティー・ショットは苦手なティフトン芝のラフへ。セカンド・ショットはややダフリ気味のショットがグリーン手前のエッジに。そこから慎重に打ったはずのパットは大きくオーバーし、ピン上2mに。下りの順目ほぼストレートのパット。わずかに芯をはずして打ったボールは力無くコロコロと…ギリギリ、カップイン。「やったー、パー・プレイ!」同伴メンバーからも同時に歓声が…。今まででこれほどしびれたパットはなかったとさえ感じました。

結果は2バーディ、1イーグル、4ボギーの72、パー・プレイ。10アンダーで優勝することができました。

さて、本題の練習法です。私にはフィットしていますが、ほかの方がこれでうまくいくという保証はありません。いくら練習場とはいえ、メトロノームを使用すること自体に恥ずかしささえありますからね。私の方法はこうです。メトロノームのテンポはショット、パット共に60/1分、アドレスから1-2-3でショットします。昔の漫画の「チャーシューメン」です。打つ瞬間やテークバックの瞬間にいろいろなことを考えることこそがミスの大きな原因だと思います。とにかくテンポを合わせることにだけ集中すると、不思議なことにその他のことにまで意識が回らず、結果的に目の前のショットだけに集中できるようになります。

同じくパットでもテンポは同じです。やや遅い感もありますが、ショットとパットのテンポを変えるやり方は私には無理と判断したからです。パットの場合は1-2-3-4-5と数えます。まずは、アドレスに入る前に目標を決めます。この時点でイメージを完全に作り上げておくことが重要です。そして、メトロノームのテンポに合わせて、1でアドレス(ボールまたはパターを見る)、2でターゲットを確認、3で再度ボールに目を戻し、4で目標までの必要距離分をテークバック、5でショット…という具合です。慣れるまではこのテンポに追いつくのが大変です。しかし、テンポに慣れてくると目に入る情報が限られてくるから不思議です。下りの順目とか、ややスライスとかに絞られます。「これを入れればバーディ」なんて余計なことは消えてなくなります(笑)。この手順はどんな短いパットでも同じように行います。たとえ30cmでも。

70台連発はこの方法を始めてからのことです。現在、車の運転中も一切のオーディオを消し、メトロノームの音だけを聞くようにしています。身体が60/1分のリズムを覚えるように訓練するためです。

最近、他人のショットを見ていると、テンポの違いだけでミスが起きたり、ナイスショットが出たりすることが判るようになってきました。一人一人タイミングは違うものの、よいショットのタイミングを見つけ、そのリズムを再現することでナイスショットを増やすことができるはずです。お試し下さい。

私の場合、ハンディキャップも10で停滞気味でしたが、この勢いでなんとか当面の念願“シングル昇進”が叶うといいなと思っています。まだまだ、完成したわけではありません。さらに研究して、どんなプレッシャーにも負けないゴルフをしたいと考えています。

(November 25, 2003)


ニュージーランドのゴルフ

ニュージーランドにお住まいの中さんから、よだれの垂れるような“ゴルフ天国”のお国自慢が届きました。お楽しみ下さい。

私はニュージーランド(以下NZと略)の南島、クライストチャーチという街に住んでおります。この街は、“庭園の街”(Garden City)、また、“英国以外で最も英国らしい街”との別称でも知られておりますが、別称からも「こりゃゴルフ環境が良さそうだぞ!」なんて想像ができる、まさにそのとおり、クライストチャーチはゴルフ天国です。全国的にゴルフ環境に恵まれたNZの中でも、気候やゴルフ場の質、単位人口当たりゴルフ場数(=スタートのとり易さ)など、クライストチャーチのゴルフ環境の良さは抜きん出ていると思います。

[Christchurch G.C.]

・クライストチャーチの気候

南半球のNZは、北半球とは季節が逆。大雑把にいって、3月〜5月が秋、6月〜8月が冬、9月〜10月が春、11月〜2月が夏…といった感じ。当市は北海道旭川と同じ緯度ですが、海洋性気候のためか、冬でも最低気温はせいぜい氷点下1〜2度といった程度ですから、ちょっと着込めば冬でもゴルフが楽します。一方夏は北海道のようなすがすがしい天候。30度まで気温が上がるのは年に3、4日しかありません。さらに素晴らしいことに、10月の第1週〜3月の最終週までは夏時間(Daylight Saving Time)。この時期は夜9時過ぎまで明るいので、仕事を終えて6時にティーオフすればラウンドが可能です!!

・クライストチャーチの単位人口当たりのゴルフ場数

当市の人口は約35万人。その当市の中心から車で30分の範囲に15以上のゴルフ場があり、また、車で1時間半の範囲内には、40のゴルフ場があります。メンバーデイである土曜日あるい土曜日の午前中以外なら、「よし、これからプレーしよう!」と思った瞬間から30分後には、間違いなくどこかゴルフ場でティー・オフが可能です。プレイ・フィーはゴルフ場によりますが、年会費がNZ$400〜NZ$1200(日本円で3万円から8万円)。ビジター・フィーがNZ$20〜NZ$10(NZでゴルフ場メンバーになっている場合はこの半額になるのが普通。また、メンバー同伴の場合はさらにその半額ぐらい)。

さて、私の所属しているゴルフ場は"Christchurch Golf Club"。1873年オープン、NZでも名門のひとつに上げられるゴルフ場です。レフティー(左利き)で唯一全英オープンを制したボブ・チャールズが、わがクラブの出身者です。古いゴルフ場のため、フェアウェーは手造りの微妙なうねりがあり、セッティングによっては超高速になるグリーン、まずまず長い距離(6,960 yards)、最近加えられたポットバンカー群(ピーター・トムソンがコース改修監修)など、結構タフで楽しめます。

・NZのゴルフ・システム

まず、ハンディキャップの算定と公開の方法。NZゴルフ協会(NZGA)はかなり強力な求心力を持っており、NZのゴルフ場と所属プレーヤーに対する支配力というか、影響力は絶大です。このNZGAがリードして、しばらく前にNZでもスロープハンディキャップ方式が採用されました。また、それを追い、NZGA所属の全ゴルフ場と全会員のハンディキャップを登録・管理するインターネットサイトが立ち上がりました。このサイトでは、全ゴルファーが所属ゴルフ場番号(3桁)と自分の番号(4桁)をあわせた7桁のID番号で管理されています。ハンディキャップ計算は、2週間毎。各ゴルフ場が期間中に提出された全カードをインターネットに登録、サイト上でハンディキャップが自動計算され、各ゴルフ場はそれをプリントアウトして掲示します。この方法の合理的なところは、別のゴルフ場でプレーした場合のスコアを持ち帰らなくて良いことです。たとえば、私がNZ北島オークランドのゴルフ場でビジタープレーをした場合、スコアカードに私の7桁番号を記入、スコア他必要事項を記入してオークランドのゴルフ場に提出すれば、そのオークランドのゴルフ場が私のスコアをインターネット上に入力してくれます。これって、合理的ですよね。

また、このサイトを覗けば、世界中どこからでも全NZアマチュアゴルファーのハンディキャップや過去のラウンドスコア詳細の閲覧が可能ですから、あまり顔を合わせる機会のない他の街のライバルたちのスコアやハンディキャップも定期的にチェックすることができます。もちろん、自分のスコア歴もチェックできますし、また、自分がNZやその地方、また自分のクラブでどのくらいの位置にいるゴルファーなのか?なんて、情報もチェックすることができます。

・NZのゴルフ事情

良好なゴルフ環境の故でしょうか、この国ではゴルフは老若男女、あらゆる人にとって身近な娯楽、スポーツ、また、社交です。ゴルフクラブはそのための基盤で、「メンバーのためにある組織」ですから、日本のほとんどのゴルフ場のように利益を出す必要がありません(プロショップはもちろん違いますけど)。10年ほど前、日本とNZのゴルフ事情の違いを目の当たりにする体験をしました。日本のゴルフ場代表者10名ほどが私のメンバーコースを表敬訪問し、当地クラブ運営会代表者と意見交換会が持たれました。通訳を仰せつかった私は、日本側とNZ側の話があまりに噛み合わないので、困惑してしまいました。私企業である日本のゴルフ場の存在意義は「いかに儲けるか」。一方、NZのゴルフ場は「いかにメンバーに快適なゴルフを楽しんで貰うか」がその存在意義です。「沢山ビジターを入れる(=利益をあげる)には○○したら良いのでは?」という日本側の発言の意味を理解できないクラブの運営委員たち。「ビジターで混雑したらメンバーが困る。この点はどうですか?」今度は日本側が「?」(何言ってるの、この人たち?折角もっと儲かる話をしてるのに…)

ゴルフが身近にある分、NZには腕前の良し悪しに関わらず、基本マナーのしっかりした尊敬できる“ゴルファー”が多いようです。つい先日、日本人のお客様と私、2人のNZ人メンバーとプレーしました。ビジターの方は各ショットで5回ずつ素振り。ディポットやボールマークはそのまま、使ったクラブは置き忘れるし、毎回毎回ボールを手で動かしライの改善!私が連れて来たビジターですから、メンバーは何も言いませんが、肩をすくめ、お互い目配せで苦笑いしています。ああ恥ずかしかった!

NZの国技はラグビー。とにかく全国民がラグビー狂といっても過言ではないお国柄ですから、国対抗戦はもちろん地元チームの試合でもラグビーは一大イベント。大きなラグビー試合のある週末は、そのスケジュールに合わせてゴルフ・コンペティションのスケジュールも調整されます。ラグビーの試合時間中はゴルフ場はがらがら。私も毎年必ず参加している「スカイライン・ゴルフ・クラシック」という、15年にわたり11月の決まった週末に開催されている大きな大会でさえ、今年はオーストラリアで開催されるラグビーワールドカップの決勝戦と日程が重なるため、1週間予定が先送りされました!(これでしらふでプレーできる、と喜んだゴルファー多数)。

【おことわり】画像はhttps://static.golf.co.nz/にリンクして表示させて頂いています。

(December 01, 2003、改訂January 03, 2017)


ミス・ショットの後で

'MentalRules for Golf'
by Gregg M. Steinberg, PH.D. (TowleHouse Publishing, 2003, $12.95)

「ミス・ショットをした後、体内に溜ったネガティヴな感覚を放置してはいけない。

1) ネガティヴなエネルギーを発散する
 深呼吸するか、拳を作って3秒握り締めそれを開くということを行いながら、ネガティヴなエネルギーが空に消えて行くところを視覚化する。

2) ポジティヴなイメージを呼び戻す
 素振りをしながら、正しい、理想的なショットのイメージと感覚を呼び戻す。過去のベスト・ショットの記憶を思い起す。

3) リセット
 ミス・ショットの記憶をリセットし、次のショットに集中する。「よし、次のショットを大事にしよう」と呟くなど、心身を“現在”に置く。

このポスト・ショット・ルーティーンが実行出来れば、ボールに向かっていい心理状態で歩んで行く準備が整ったことになる」

(December 02, 2003)


[Metronome]メトロノーム

インターネットを探し歩き、一番安いSEIKOのDM-33というメトロノームを購入しました。日本からの輸入品で$20.95。ミュージシャン用に作られているようで、楽譜立てに止められるようなクリップ・タイプ。音を消してデジタルでテンポを表示するモードもあります。

先ず室内でパット練習をしてみました。私の場合は一分間に80拍(80 beat/minute)が良さそうですが、2.5m程度の距離なので、もっと長くなるとどうなのか分りません。一定のテンポでストロークすることになると、(バックストロークを短くした場合)“トップの間(ま)”を置く必要性を痛感します。間を置かないと、慌てたようなストロークになります。

練習場でドライヴァーを打ってみました。デジタル・キャムコーダーでも撮影することにし、カメラの傍にメトロノームを置きました。後に、スウィングと音を両方点検出来ます。

こちらでも80拍で始めてみましたが、結構いい結果でした。私のスウィングは1-2-3のリズムなので、このぐらい速くないと間がもてません。60拍でもやってみましたが、1-2のリズムにはいいとしても、1-2-3には遅過ぎます。70拍でも悪くないようです。結論を出すには、もう少し練習と研究が必要です。

なお、EyeLine Golfという会社がゴルフ用メトロノームを販売しています。$29.95で、やはりクリップ・タイプ。こちらは音量のラウド/ソフト切り替えが出来るようになっています。SEIKO DM-33にはそういう機能はありません。SEIKO DM-33の背面に音の出口があるので、そこをテープなどで塞げば多少ソフトな音にはなります。

日本の満員の練習場で普通にメトロノームを使うのは躊躇われるでしょうね。近隣の異なるテンポのゴルファーは怒り出すかも知れません。こういう場合は補聴器のように耳に挟むタイプ(自分しか聞こえない)が良さそうです。

このEyeLine Golfのサイトには「スウィングが短かければテンポは速くなる。パッティングには70〜95拍、スウィングには30〜60拍が妥当であろう」と書かれています。

【追記】この製品はゴルフ場のどっかで落としてしまい、届け出はありませんでした。

(December 07, 2003、改訂May 31, 2015)


ゴルフ金言集 Part 7

以下の金言集は当サイトが独自に収集・翻訳したものです。無断転載・引用を禁じます。

「テニス・プレイヤーは土曜日の晩に駐車場に並んだりしない」
David Owen(デイヴィッド・オーウェン)

「人は『どうして毎日同じようにプレイできないのか?』と聞く。毎日同じように出来ることってあるだろうか?私など、ベッドから起きるのだって同じじゃないよ」
Jackie Burke, Jr.(ジャッキー・バーク二世)

「バッグの中に数あるクラブの中で、ボールをカップに入れるように特別設計されたものはパターである。何故、それから練習を始めないのだ?」
Jackie Burke, Jr.(ジャッキー・バーク二世)

「ゴルフはカップ周辺の技から習得し、ティー・グラウンドへと後退すべきものだ」
Harvey Penick(ハーヴィ−・ピーニック)

「ボール・リトリーヴァーを携帯する人は、狩人ではなく収集家である。彼等の夢はもはや征服ではなく、サルベージなのだ」
David Owen(デイヴィッド・オーウェン)

「こう考えなさい。パー72のコースで18ホールのうち17のホールをボギーで上がれれば、まだ90を切っているのだ」
Cliff McAdams(クリフ・マカダムズ)

「ラインがストレートに見えるなら、あまり長い間見据えてはいけない。遅かれ早かれ、あなたはありもしないブレイクを“発見”してしまうからだ」
Corey Pavin(コリィ・ペイヴン)

「すべての条件が同じなら、ラインは西に向って曲がる」
Harvey Penick(ハーヴィー・ピーニック)

 

「誤った方向より誤った距離で失敗するパットの方が多い」
John Jacobs(ジョン・ジェイコブズ)

「バンカーで素人が冒す過ちは二つ。トップして隣りの町へボールを送り届けるか、猫を埋められるくらい大きな穴を開けることだ」
Sam Snead(サム・スニード)

(December 15, 2003)


クラブ購入時の留意点

山梨県にお住まいの三木さんから頂いた原稿です。実は私が新しいアイアン・セットを購入する際に、三木さんがご助言のメールを下さったのですが、私のアイアン・セットはカリフォーニア州の売り主が既に発送済みの段階で、その時点で“婚約解消”出来るものではありませんでした。しかし、三木さんのメールは私が初めて聞く「重心距離」についてなど大変勉強になる内容でしたので、原稿として書き改めて頂くようお願いしました。三木さんは多くの文献を参考にされ、プロショップの方にも読んで貰ってお墨付きを頂いたそうです。

アイアンとドライバーは別々に買い換える方が多いと思いますが、買い換えたら、新しいアイアンが使い易いのに、今まで使っていたドライバーが上手く打てなくなった、飛ばない…といった経験は無いでしょうか?

これは決して錯覚などではなく、アイアンとドライバーのマッチングに問題がある場合が多いのです。その中でも注目して欲しいのが以下のような二つの点です。

[CG]

1. 重心距離

重心距離とは、シャフトの中心線とクラブの重心との距離のことを言います。一般に重心距離が長くなるとヘッドのターンが遅くなり、スライスし易くなります。又、プロのようにヘッドスピードが速くヘッドのターンを素早くすることで球筋をコントロールする場合には、この長い重心距離が邪魔になります。事実、プロの中のハードヒッターはマッスルバックの重心距離の短いヘッドを好んで使っています。一般アイアンより強振するドライバーは、アイアンより重心距離を短くしておいた方が違和感無く使えます。アイアンの重心距離は30〜40mm以上とかなり差があります。40mm以上の物はさすがにヘッドも大型ですから、見た目で重心距離が長いことが想像できますが、30〜40mmの間はヘッドの形状ではほとんどわかりません。たとえば高野さんのNike Pro Combo(ナイキ・プロコンボ)は重心距離が32mmとかなり短いですが、クリーブランドのTA7ツアーは41mmと意外に長めになっています。

アイアンを買い換える場合、ヘッドスピード40〜43m/s前後のアマチュアの場合、アイアンの重心距離は38〜40mm位が良いと言われています。スライスが多いヘッドスピードの遅いゴルファーには重心距離が短いほど良いと思われがちですが、重心距離が短いと軌道が安定しにくいという弊害が出てきます。ですから重心距離を長くして打ち易くした分、スライスの防止策としてグースネックにするといった処理がなされます。キャロウェイのビッグバーサ(重心距離=44mm)などが典型的な例です。アイアンを買い換える前に、ご自身の球筋とヘッドスピードを考えて購入されることが大切です。

ドライバーはアイアンより重心距離が短いのが基本ですので、現在のドライバーの重心距離を基準にご自身の球筋を分析してみてください。テーラーメイドの最近のシリーズはほとんど38mm以上で、40mm以上のものも少なくありません。反面キャロウェイは34〜37mmと短めになっています。二つのタイプを試打してみてご自身に合ったタイプを理解されてからクラブを選ばれると良いと思います。ただ長めのテーラーメイドのタイプを選んだ場合は、アイアンをプロタイプのマッスルバック(重心距離が短い)などを選択するとアイアンがただ難しいという理由だけでなく、上手く打てないという問題が生じます。

2. 重量差

ドライバーと6番アイアンの重量差は70g前後がベストといわれています。最近の日本人向けのクラブは44.75〜45インチで290〜310gと少々軽めの設定が増えています。軽いクラブはヘッドスピードが増すメリットがありますが、そうなるとアイアンはどんなに重くても390g以下ということになります。この理論で行くとほとんどの人は軽量スチールでも重過ぎる事になります。一部では、クラブは振り切れる範囲で出来るだけ重いクラブが良いとされています。ドライバーを買い換える人は安易に最新の軽いクラブにせずにヘッドスピードを測定して、その範囲で一番重いクラブを選択された方がベストです。因みにヘッドスピード40m/sの方で45インチ300±5gだそうです。アイアンを買い換える方はヘッドスピード43m/s以上無い方はカーボンの方が無難です。プレシジョン・スーパーライトのシャフトやNSプロ850等で80g台の軽量スチールシャフトが最近は増えていますが、特性的にはカーボンに近づいており、スチール独特のしなり感を求める事はできないようです。

以上のことは一般アマチュアに当てはまることです。プロには、アイアンは典型的なプロモデル(当たり前ですが)、ドライバーは重心距離に限っては40mmを優に超えるものを使っているプロが多くいます。アーニー・エルスやガルシアなどです。これらのプロは多くの練習量と長年培ってきた感覚でドライバーとアイアンを打ち分けているのです。そのプロもシニアになってきますと上記の条件に合ったクラブ選択をする人が増えてきます。

重心距離その他のスペックは、新しいアイアンでは雑誌等に紹介文と一緒に載ることが多くなりました。又、一部ゴルフショップ(「ゴルフファイブ」等)ではプライスカードと一緒にスペックを記載している所もありますので、店員さんに聞いてみると良いでしょう。ダレルサーベイ等のツアー・プロのクラブリサーチ会社の資料(本)にはスペックまでは載っていません。日本で現在、一番その資料を持っているのはおそらく「フォーティーン」を主催されているクラブ設計家・竹林隆光氏だと思われます。2003年に『月刊ゴルフクラシック』の付録で1996から2003までの各メーカーのアイアンのスペックが載った冊子『完全保存版 重心ハンドブック』が竹林氏監修で公開されました。このような資料が年度ごとに出れば、中古市場が発達している今日とても有効な資料になると思うのですが、現在では全てを一覧できるような資料はインターネットでも書籍でも無いようです。2002年後半以降のデータのみであれば『竹林隆光徹底検証 ゴルフクラブアイ2003』(学習研究社)というムックがあります。

(December 26, 2003)


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