「かっ飛ばそう!」というのでなく、「快打を放とう!」とすると予想以上に飛ぶことがあります。ホームランではなく二塁打を狙ったような感じ。結果は三塁打であったり、ホームランということもあります。
そういう時私は、「どうでもいいから、左腕を真っ直ぐにして打とう!」と考えています。いつもはそんな想念は湧かないのですが、「快打を打とう」とすると自然に左腕を伸ばしてスウィングし、それが実際に快打に結びつきます。
私の信念ですが、ゴルフはスウィート・スポットで打つことが必須のゲームであると思います。パッティングしかり、チッピングしかり。スウィート・スポットで打たないとボールは真っ直ぐ飛ばず、左右どちらかへミスします。ボールの中心にクラブフェースの真ん中でアドレスしたら、ダウンスウィングでその状態に戻さなくてはならないのですが、多くの場合そうはならない。原因は何か?
体重移動の間違いで右に移った体重がダウンで左に戻らないこと、あるいは戻し過ぎてしまうことも原因の一つです。しかし、私は左腕が伸びておらず、左肘が折れているままのインパクトがミスの根源であると考えます。アドレスで伸びていた左腕がインパクトで折れていればスウィング弧の半径が短くなるわけで、当然スウィート・スポットをミスしてトゥで打つことになり弱々しく右へ飛ぶボールになります。
左腕を縮めた(左肘を折った)アドレスをして、ダウンで左肘を伸ばすと逆にスウィング弧の半径が長くなるので、今度はボールをヒールで打つことになり距離は稼げません。
これらを防ぐには左手・腕を真っ直ぐ伸ばしたアドレスをし、インパクトでそれを再現しなければなりません。スウィングの間中左腕を折らないためには、手・腕でクラブを上げるのではなく左肩を廻すことによって上げるという方法があります。肩がリードし腕がついて行くだけなら無理して肘が折れる心配はなくなります。
もちろん、左腕を真っ直ぐな棒のようにしようとすると肩の筋肉が強張り、ギクシャクしたスウィングになってしまいますから、あくまでもリラックスしたまま左腕を伸ばす必要があります。
Bobby Jones(ボビィ·ジョーンズ)はどう云っているでしょうか?
'Bobby Jones on Golf'
by Bobby Jones (Doubleday, 1966)
「バックスウィングで左腕を折るゴルファーは、紛れもなくスウィングの幅とパワーとを犠牲にしている。こうしたゴルファーのスウィングは幅が狭いので正確さを欠いてしまう。伸ばした左腕は直接パワーを生むわけではないが、左腕を伸ばすことが出来る人にとってはバックスウィングのスウィング弧を規定する適切な要素である。その結果、左腕が真っ直ぐであればスウィング弧も可能な限りの幅を持ち、何度でも容易く繰り返すことが可能なスウィングとなる。スウィングの幅を減らすことはクラブヘッド・スピードを上げるかも知れないが、左腕を折ることは正確さを失うという欠陥がある。
バックスウィングで左腕を頑なに伸ばそうとする人はいない。私は左腕でクラブを後退させる意識を好むが、これは適切に左腕を伸ばすのに役立つからだ。しかし、左腕が完全に真っ直ぐになるのはダウンスウィングの開始に当たって腰がボールに向かって逆転してからである。
バックスウィングを目一杯の長さでしかも左腕をほぼ真っ直ぐにして完了するためには、腰と胴の動きが良くなくてはならない。当然だが中年以降のゴルファーで胴の柔軟性を失った者には腰の回転は容易ではない。彼らには肘を折る選択肢しかない。
大事なポイントはインパクトの瞬間に左腕が伸びていればいいということだ。かのHarry Vardon(ハリィ・ヴァードン、1870~1937、英国、全英オープン優勝六回、全米オープン優勝一回、ヴァードン・グリップの創始者として有名、左図)が60歳を越えてから撮影された映画を見ると、彼はバックスウィングのトップで90°も左肘を曲げている。だが、ダウンスウィングの腰の回転によって真っ直ぐな左腕でインパクトを迎えている。だから、トップで左腕が折れているのは致命的欠陥ではないと云える。
大事なのは完全にリラックスすること。タイミングとリズムがパワーの源である。バックスウィングでもダウンスウィングでもクラブをスムーズに振り、硬直するのを防ぐことだ」
なお、《インパクトで胸を張れ》というtipを実行することも左腕を伸ばしたインパクトを助けてくれます。二塁打を狙ってインパクトで胸を張ると、飛距離がおまけでついて来てホームランになります。
(August 01, 2024)
●なぜシャンクするのか?
面白い記事を見つけました。インストラクターZach Allen(ザック・アレン)執筆によるシャンク防止法です。⇒https://www.4moles.com/users/raw?class=Weeklytip&column=description&id=94
「アイアンのヘッドはシャンクするように出来ている。シャフトとクラブヘッドはセンター・シャフテッドではなくズレているのでフェースをオープンにし易い。
また、アイアンヘッドの重量の大部分はトゥにある。この構造もフェースをオープンにし易く、インパクトでスクウェアに戻すのを難しくする。
アイアンの望ましいショットは手・腕主導でスウィングするのではなく、身体を回転させるスウィングをし、常にクラブフェースを僅かにクローズに保つことだ。これがムラのないショットを打つ秘訣である」
常にフェースをクローズにし続ける…というのは初耳ですが、クラブの構造からすればもっともな話です。
(August 01, 2024)
●リズムとテンポの研究【1. 序奏】
踊れる人も踊れない人も「ワルツは三拍子である」ということは知っています。「ズンチャッチャ、ズンチャッチャ」ですね。スーザに代表される行進曲は二拍子です。これは行進に合わせた音楽ですから、「イチニ、イチニ」でなくてはなりません。こういう「拍子」がリズムです。
ワルツも必ずしもゆっくり演奏されるとは限らず、早めの演奏も可能ですし、行進曲であっても「葬送行進曲」のように遅めの曲もあります。演奏の早い遅いを定義するものがテンポです。同じベートベンの『運命』でも、指揮者によってテンポが異なります。イタリアの指揮者トスカニーニ(速い)が振ったのとドイツのフルトヴェングラー(遅い)が振ったのでは、全所要時間が数分も違いました。
ゴルフの場合、《テンポは人それぞれが持って生まれた固有の速度》というのが定説です。歩く時の速度、喋る速度…これらが早めの人はゴルフ・スイングも早めであり(例:ニック・プライス)、遅めの人はゆったりとスイングします(例:アーニー・エルス)。音楽では音符の組み合わせ(拍子)が決まれば自動的にアクセントが決まります。ワルツであればズンチャッチャの“ズン”にアクセントがあるように…。しかし、ゴルフの場合、三拍子だとしても最初の一拍にアクセントはありません。アクセントは最後の一拍、つまりインパクト前後のヒッティング・エリアにある筈です。そういう意味では同じ言葉を使っていても音楽とゴルフは完全には一緒には出来ません。
朴セリが1998年にこう云っています。「プロ・アマの日に私より強靭な男性達とプレイするけれど、私のドライブの方が彼等より飛ぶ。理由は私がいいテンポでスイングするから。ゴルフ・スイングの秘訣はテンポとリズム。1998年に当時のLPGA最小スコア記録の61で廻った時に何を考えていたかというと、完璧なテンポ、完璧なリズム。スイングが完璧でもテンポが良くなければ、何の足しにもならない。いったん自分のテンポが蘇ったら、どのショットもピンに近寄って行く」
次はヘイル・アーウィンの言葉。「私はどの段階のゴルファーにも、『テンポを第一に考えよ』と云う。スイングの留意点は諸々あるとしても、テンポはそれら全ての面倒を見ることが可能なほど大切な要素だ。二つ以上の留意点を持ってはいけない。テンポと何かあと一つ。あるいはテンポだけ」
プロ、アマを問わず、テンポとリズムが重要であることは分りました。では、われわれはどうやってそれを習得したらよいのか?実はこれが難しいのです。1977年に59で廻るというPGAツァーの当時の新記録を作り、Mr. 59と呼ばれたアル・ガイバーガーの本に'Tempo'(テンポ、 1980)というのがありますが、肝心のテンポについての具体的な解説はありません。フレッド・カプルズのビデオ'Couples on Tempo'(カプルズ、テンポについて語る、1988)というビデオでも、実際にはテンポの奥義というようなものは何も語られません。恐らくテンポの説明というのは誰にとっても至難の技なのでしょう。
だからといって、本格的に誰かがリズムとテンポについて本やビデオを出してくれるまで待っているわけにはいきません。私たちの現在のゴルフにすぐ役立つ解答がほしい。では、数々の本に散らばっている片言隻句を手がかりに、ゴルフのためのリズムとテンポ、その実像と習得法までを研究してみましょう。
(August 01, 2024)
●パットの距離はバックストロークの長さで制御せよ
これはJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)がいろいろな雑誌に書いたパットのコツを集成した本からのtip。
'Putting My Way'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (John Wiley & Sons, Inc., 2009, $25.95)
「ゴルフをすればするほど実感することがある。それはパットする距離をコントロールするのは、打つ強さでなくバックストロークの長さだ…ということだ。それは、ロング・パットには長いバックストロークということを意味する。
この信念を築いた主な理由の一つは、私がベストのパッティングをしていた頃、直面したどのパットにおいても力でボールをカップに届けるのではなく、パターがそれ自身のテンポで動いていることに気づいたからだ。
【編註】「パターがそれ自身のテンポで動く」というのは振り子の運動を想起させます。
距離が長くなれば打つ強さをそれ相応に加えなくてはならないが、それでもなお、原則的に適切な幅のバックストロークの結果として、可能な限りパターヘッドが自由にそして自然にスウィングしてほしいと願っていた。
私は練習によってでなく、実際のトーナメントにおいて学んだのだ。すなわち、短いバックスウィングでパターフェースの角度をずらすことなく必要な距離を力で制御することは物凄く困難である…ということを。
これが、アマチュアが短いパットをミスする主な原因ではないかと考える」
(August 10, 2024)
●右肘でパットすべし
”奇跡のコーチ”と呼ばれたインストラクターPhil Galvano(フィル・ガルヴァノ)のパッティング・ストローク。「オーヴァースピンでパットせよ」の続編です。
'Secrets of Accurate Putting and Chipping''
by by Phil Galvano (Prentice-Hall, 1957)
「ストロークは手首ではなく、両腕で行われる。何故手首ではないのかって?
鉛筆で直線を描く実験をしよう。先ず、前腕を動かさず、指と手首だけでやってみてほしい。これだと数センチしか直線を描けないはずだ。では、手首を使わず腕だけでトライしてみる。なんら困難を感じることなく何十センチでも直線が描けることだろう。パッティングも手首ではなく腕を使うべきなのだ。
右肘はストロークの間じゅう身体の近くに留まり、バックストロークの際身体の右脇を擦る。
もしバックストロークを指と手首で始めると、緊張によってインパクトの際、急角度でクラブフェースをクローズにし、その結果ボールを左に向かわせてしまう。
腕を使うストロークだけが、ストロークの最初から最後までクラブフェースをスクウェアに保つことを可能にする。
重要なのはストロークのエネルギーは右肘で生じるということだ。右肘でバックストロークする。ストロークのパワーは、ストロークの長さによるのであって、打つ強弱ではない。
Phil Galvanoのパッティングは、上の写真のように左肘をターゲット方向に突き出すスタイルです。私はパターのスウィートスポットでボールを打つためには、左肘を伸ばした方がいいと思っていますが、両肘を曲げてパットするツァー・プロは少なくないですね。
「ストロークのエネルギーは右肘」という理論は正しいと思います。右肘がエンジン(動力源)であって、左肘はパターをカップに向かわせる舵だと考えるべきです。左腕を真っ直ぐ伸ばすスタイルの私の場合は、左手甲が舵取りをします。
私は「三角形パッティングのコツ」(tips_211.html)という記事で「右肘は伸ばさず、チキンウィングのように曲げるべきだ」と書きました。それは右肘を曲げてリラックスさせたままにすることが三角形を保つ助けとなるという趣旨で、ストロークのエンジンとまでは考えませんでした。右肘をエンジンとすれば三角形も保て、手首に力を篭める必要もなくなり、手首を捻って狙いを外すこともなくなるので一石三鳥です。
Phil Galvanoが「右肘はストロークの間じゅう身体の近くに留まる」と主張するのは、彼のストローク・メソッドが「バックストローク:10センチ、フォワード・ストローク:30センチ」というものだからなのです。バックストロークをたった10センチだと、パチンと打たないと距離コントロールは不可能です。彼が説く「ストロークのパワーは、ストロークの長さによるのであって、打つ強弱ではない」と矛盾しているように思えるので正規の紹介は控えた次第です。
【参考】「オーヴァースピンでパットせよ」(tips_211.html)
(August 10, 2024)
●リズムとテンポの研究【2. リズムの発見】
先ず、流麗なスイングで知られていたサム・スニード。彼は自著『ゴルフは音楽だ』の中で次のように述べています。「フィギュア・スケートを見たことがあるだろうか?音楽が変ると、スケーターは直ちにビートに乗る。私もラウド・スピーカーで音楽を鳴らしながらゴルフが出来たらいいと思う。そこにリズムとタイミングが関わって来る。『ワン・ツー・スリー』…と。私のスイングはスローに振り上げ、ダウンもスローにスタートする。次第にスピードを増し、インパクトでパン!と爆発する。あなたに必要なのはゆっくりした何か、ワルツのようなものだ」
サム・スニードは三拍子の“ワルツ派”であることが分ります。イギリスの高名なインストラクターであるジョン・ジェイコブズは、彼の本'50 Greatest Golf Lessons of the Century'(20世紀の偉大なゴルフ・レッスン50講)で、サム・スニードのリズムについてこう云っています。「サム・スニードの素晴らしいリズムの中心には二つの基本がある。小鳥を苦しめない程度に両手で包むようなソフトなグリップと、ドライバーでさえ80%の力で打つという制御されたスイングである。大方のゴルファーはきつ過ぎるグリップをし、バッグからドライバーを抜く度に猛牛のように荒々しくなる。サム・スニードのようにソフトなグリップが自然なリズムを生みだし、あなたの動きに流れるような感覚をもたらすのだということを忘れてはいけない」
トム・ワトソンはこう云っています。「ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の中に「エーデルワイス」という曲がある。この曲名をエー・デル・ワイスと三つに分け「エー」でバックスイングの途中まで行き、「デル」でトップ、最後の「ワイス」でインパクトに向かうという方法がある。これはなかなかいい」彼も“ワルツ派”のようです。トム・ワトソンは早めのスイングで知られています。つまり、同じワルツでも彼のように早いテンポと、サム・スニードのように遅いテンポがあり得るということが分ります。
アーニー・エルスは彼のビデオ'How to Build a Classic Golf Swing'( アーニー・エルスの模範ゴルフスウィング)(PolyGram Video, 56 min., 1995)において、“ワルツ派”(三拍子)と“マーチ派”(二拍子)それぞれの例をデモして見せてくれます。
アーニー・エルスのリズム論:「せっかちの人は普段歩くのも話すのも早い。こういう人は1でバック・スイング、ヒッティング・エリアで2が相応しい。ゆっくり歩き、ゆっくり喋る人は1でバックスイング開始、2でトップ、ヒッティング・エリアで3というリズム」
彼が打つと、二拍子でも三拍子でもいいショットになるようですが、彼自身は“ワルツ派”だそうです。
『 インナーテニス/こころで打つ』がベストセラーになったW. ティモシー・ガルウェイ(スポーツとビジネスのアドバイザー)は『新 インナーゴルフ』という本で次のようなエピソードを紹介しています。
「他人のリズムを真似してはいけない。たった二、三球いいショットが出たからといって、それを自分のリズムと決めつけてはならない。あなた固有のリズムはあなたの身体の中で脈打っている拍子であり、それを見つけるべきだ。
私のところへ、ハリエットという名の若い女性がゴルフを習いに来た。彼女のスイングの各部は基本通りだったが、いい結果が出せなかった。彼女はトップで車のギア・チェンジをするかのようにスイングを停止し、それからダウン・スイングに移っていたからだ。私は彼女に『ダンスをするように振ってみなさい。当面、結果は無視するように。あなたにとって心地よいリズムを作り出すことが先決』と示唆した。5分もかからずに、彼女のスイングは見違えるように良くなり、本当のスイングと呼べるものに変貌した。ハリエットはパワーと正確さを身につけただけでなく、ボールを打つ動作に喜びさえ見い出したのだ」
ところで、W. ティモシー・ガルウェイは“マーチ派”なのです。彼はゴルフ・スイングはテニスと同じで、バック・ストロークとフォワード・ストロークの二拍子であると主張します。「二拍子は呼吸のリズムを初めとする大概の動きの基本である。それはすでに備わっているものなので、強制する必要はない」と説きます。
なお、リズムとテンポに関連して「タイミング」という言葉が聞かれることがあります。足、膝、腰、肩、腕などがスムーズに連動すると「タイミングが取れている」と称されます。いいリズムとテンポが確立されれば、タイミングは自ずと備わって来るものと解釈しましょう。
(August 10, 2024)
●正しいアドレスで飛距離を伸ばす
卒中を患う前、私のドライヴァーの飛距離はこのウン十年夢にも思わなかった伸びを示しました。その絶好調の最中に脳卒中を患ってしまい、その後飛距離も減ってしまいました。
しかし、私は自分のスウィングに隠された飛距離が内蔵されているのは間違いなく、それを解き放てないのは何かが欠けているからだと思い、希望を捨てませんでした。だが、その欠けているものは何なのか?
卒中前に実行していた《インパクトで胸を張れ》を再現・実行しても飛距離は回復しませんでした。とすると、スウィングではないようです。そんな折、TV中継でブライスン・デシャンボーのスウィングを見ました。ご存知のように、彼は飛ばし屋です。彼は両腕を目一杯伸ばしてアドレスします。さらにドライヴァー・ヘッドを地面につけるのではなく、地面から浮かしてアドレスしていました。
腕を目一杯伸ばして、しかも地面から浮かして構えているということは、インパクトでさらに腕(とクラブヘッド)が伸びることを想定しているのでしょう。最近私の飛距離が伸び出したのは《インパクトで胸を張れ》というtipを実行し始めてからですが、胸を張ると自然に腕が伸びます。ただし、私はクラブヘッドを浮かしてボールにアドレスしていないので、構えたところよりヘッドのヒール側でボールを打っているに違いない。これが飛距離が伸びたり伸びなかったりする原因ではないか?
飛距離を増すにはスウィート・スポットで打つことが大前提です。それは常識。ではクラブヘッドのどこでアドレスすればいいか?これは知らない人が多いと思われます。物理学的な詳しい説明は本稿末尾のリンクを辿って過去の記事をお読み頂きたいと思いますが、結論を云えばヘッドのトゥ寄りでアドレスすべきなのです。ドライヴァー・ヘッドはシャフトと一線になっていないため、遠心力がヘッドの重心に影響を与え、シャフトはインパクトで右図のように撓(しな)り、ヘッドもインパクトで前傾します。この作用を予期してトゥ寄りでアドレスしておけば、インパクトで自然にスウィート・スポットでボールを捉えられますが、フェースの中心でアドレスしているとヒール寄りでボールを打つことになり、飛距離を損する結果になります。
私のドライヴァー・ヘッドには一年前のテストでボールにアドレスすべき位置として、左図のようにビニール・テープで青丸の目印をつけていました。今回、練習場でフェースに水虫スプレー(粉末タイプ)を噴霧してインパクト・チェックすると、この青丸の位置ではかなりヒール寄り(メーカーの目印よりさらにヒール側)で打ってしまうことが判りました。で、もっとトゥ寄りの赤丸でアドレスしてボールを打ってみると、やっとフェースの中央で打てるようになりました。赤丸はメーカーの印から約3センチもトゥ寄りです。
卒中以前にこの赤丸で打っていたわけではないのですが、スウィングの仕方、ボールとクラブヘッドの間隔その他によって偶然いい結果が得られたのでしょう。
コースのNo.14(360ヤード)パー5の右側に一本の木が立っています。計測するとグリーン中央まで残り190ヤードです。卒中以前はこの木を遥かに越えてグリーン中央まで150ヤード地点まで飛ばすことが出来ました。卒中後はこの木にすら到達出来ず悔しい思いをしていました(40ヤード減)。しかし、今回ヘッドのトゥ寄り(赤丸)で打ってみると残り170~180地点まで楽々と飛ばすことが出来ました。
赤丸でアドレスし、頭を動かさず力まないスウィング、胸を張るインパクト…等によって早く数週間前の飛距離を再現出来れば…と願っています。
ゴルファー次第でどれだけトゥ寄りでアドレスすべきかは異なると思いますが、インパクトでシャフトが撓(しな)りヘッドが前傾するのは物理的事実なのですから、それに対応したアドレスをすることが飛距離増への近道で、これを利用しない手はないでしょう。なにしろ、スウィングを変える必要もないのですから楽勝です。
【参考】
・「インパクトの物理学(トゥ寄りでアドレスすべき理由)」(tips_175.html)
・「インパクト・シール代用品(しかも格安)」(tips_160.html)
(August 20, 2024)
1995年のPGA選手権優勝者・スティーヴ・エルキントンは次のように云っています。「テンポは生来の個人的なもので、これを変えようとしても無駄だ。リズムは違う。これはビート(拍子)であり、ビートはタイミングを取る重要な要素だ。これは習得が可能だ」
二拍子であれ、三拍子であれ、自分に合ったリズムを発見したら、今度はそれを身体に定着させなくてはなりません。音楽の場合、ドラムやダブルベースが基本の拍子を刻み、他の楽器はそれに合わせて華麗な演奏を展開します。基本の拍子が乱れたら合奏は統一がとれず滅茶苦茶になってしまいます。ゴルフで拍子が乱れると、身体の動きがバラバラになってしまい、流麗なスイングは望めません。当然、結果(ショット)もひどいものになります。そうした重要な基本となるリズムはどのように構築すればいいのでしょうか? ジャック・ニクラスは'Golf My Way'(1974)『ゴルフマイウェイ』で次のようなアイデアを教えてくれます。「テンポを改良し、リズムをスムーズにし、バランスも良くするいい方法は、足をくっつけてスイングすることだ。最初はボール無しでミドル・アイアンを前後に振る。次第にスイングを大きくし、最後にボールを打つ。50球も打てば、テンポとリズムに驚くべき変化が出るだろう」 ジャック・ニクラスの二代目のコーチであるジム・フリックが語るアーニー・エルスのリズムの“秘密”。「私はアーニーに『どのようにして素晴らしいリズムを手に入れたのか?』と尋ねた。彼の答えはこうだった。彼がゴルフを始めた子供の頃、母親が与えてくれたのは約40ヤードしか飛ばないプラスティックのボールだった。力一杯ひっぱたいても40ヤード、イージーにスイングしても40ヤード。初めてコースに出た時、彼はイージーでリズミカルなスイングの方が目一杯ひっぱたくより遠くへ飛ぶことを発見した。アーニーの優雅で淀みのないスイングを見るとき、蔭の功労者である彼のママに拍手を贈りましょう」 |
私はスポンジ・ボールによる練習をしたことがありますが、確かにいいスイングで打たないとちゃんと飛びませんでした。本当のゴルフ・ボールは叩くだけでそこそこ飛びますが、スポンジ・ボールはごまかせません。リズム構築の道具として最適のようです。スポンジ・ボールの代わりに松ぼっくりを打つという方法もあります。これもいいスウィングをしないと飛びません。
そのアーニー・エルスは次のように云っています。「いいリズムは、ゴルフ・コースでのあらゆるトラブルを回避させてくれ、また、ひどいショットをまあまあのショットに変えてくれる」
'Four Magic Moves to Winning Golf'(1995)『マジック・ゴルフ』の著者ジョー・ダンテは次のように断言します。「いいゴルファーのスイングを映画フィルムで撮影すると、バック・スイングはダウン・スイングの長さの二倍かかっていることが判る。この2:1の割合がスイングのリズムである。スイングの所要時間(テンポ)は人それぞれで変わる。しかし、2:1という割合(リズム)は変わらない。いいゴルファーでは、クラブによってリズムが変わるということはない。8番アイアンからドライバーまで、割合は全て同じである。同じ人であれば、テンポも変わらない」
プロのリズムが本当に2:1かどうか、この研究の後半で調査結果をお目にかけます。
(August 20, 2024)
●パット不調の克服
以前好調だったパッティング・グリップを復活させたものの、ここのところずっと不調でした。で、ある日の練習ラウンド、パットを改善することを主眼にプレイしてみました。
・先ずはグリップ。私のグリップは写真のようなもので、スプリット・ハンズ(上下に離した両手)で、かつ右の人差し指と中指を左前腕に添えて左右の手を一体化させています(二本の指をハンドルから外すことは、パワーを削ぎストロークを穏やかなものにします)。このグリップはロングパットがスコンスコン入った実績のあるグリップなのですが、最近全然役に立っていませんでした。「どこがいけないのだろう?」虚心にグリップを点検してみました。原理的には右手の親指をパター・ハンドルの右側面に当て、その親指をラインに沿って押すべきなのです。しかし、最近 親指はハンドルの側面ではなく、やや斜め上になっていました。これが不調の原因だったかも知れません。元通り真横に戻すことにしました。
・次はボール位置。インストラクションの最大公約数は目の真下ですが、ターゲットラインより内側(目の真下より僅かに身体に近い位置)というメソッドもあります。私はこれまで目の真下にしていたので、ボール位置をやや内側にしてみました。スタンス中央であることは変えていません。
・スタンスを広めにしました。「正しいスタンス幅の決め方」(tips_126.html)によって、私はかなり広い幅のスタンスが両手をスクウェアに動かすコツであることを知っていたのですが、最近は実行していませんでした。私の体型で広いスタンスをとると、左右の掌が完全に向かい合ってスクウェアなストロークをする助けとなります。
・次に、私個人の体型に起因するミスを防止する方法。私の右脚は左より数センチ長いので、そのまま自然に立つと肩がオープンになってしまい、スクウェアにストローク出来ません。それを防止するため、アドレスしたあと必ず左膝を右に押し込むことにしています。この一つの動作で肩の向きがスクウェアになります。
・手の力で弾くのではなく、肩と腕でスムーズにストロークしなくてはならないのですが、一番いい方法は《息を吸いながらバックストロークし、息を吐きながらフォワード・ストローク》するというものです。これは力で打つのと反対の非常に穏やかなストロークが達成出来ます。
・最後に、《ボールを見送らない》こと。時期尚早にボールを見ようと顔を上げると肩がスクウェアでなくなってしまい、プルします。
上のような留意点を一つ一つ積み重ねながらストロークするうち、何度もボールでピンを打ち、ピンに跳ね返されるようになりました。真っ直ぐ打てるようになったわけです。「これだったら、本番ではピンを抜いてパットしよう」と思ったことでした。
こうして迎えた練習ラウンドのNo.14(360ヤード)パー5。三打目のクラブ選択を誤って、真っ直ぐ飛んだもののボールは8メートルもピンをオーヴァーしてしまいました。2パットのパーを覚悟したのですが、なんとボールはするするとカップインしてバーディ!これです。このグリップはこういう長いパットを入れた実績があるのです。やっと復活したようです。
翌日の本番では上に述べた方法によって四ホール連続パーを記録したりして、仲間を驚かせました。さらにその後のラウンド、私は堅実なパットによる二つのバーディでチームの勝利に貢献することが出来ました。
(September 01, 2024)
●先ずベルト・バックルをボールに向けよ
インストラクターPaul Wilson(ポール・ウィルスン)は画期的なアイデア、堅実なメソッド…などを取り混ぜて無数のヴィデオをYoutubeに投稿しています。どれもお薦めです。
今回紹介するのは、私が常々言及している《下半身主導のダウンスウィング》と同じものです。私の場合はダウンスウィングで「先ず左膝をターゲット方向に向ける」のですが、Paul Wilsonは「トップに達したらベルト・バックルをボールに戻せ」と云います。お腹を逆転させるわけですが、当然左膝も逆転します。ベルト・バックルという確実なものに焦点を当てたユニークな発想です。「臍(へそ)」と云ってもよかったのでしょうが、服の下に隠れている臍より表に出ているバックルの方がイメージが強いですね。
スウィングのトップで身体の下方の左膝に意識を集中するのは時として難しく、つい手打ちになる失敗を犯したりしますので、ベルト・バックルの方が意識を集中し易いかも知れません。「左膝」か「ベルト・バックル」か、実行し易い方を選べばいいと思います。
【参照】https://www.youtube.com/watch?v=bhuWpD-1hvg&list=PLR6JEo0_dz78CP1qdXHEo8lsihLnkQw5n&index=10
(September 01, 2024)
●リズムとテンポの研究【4. テンポの発見】
あなたに最適なテンポを見つけましょう。'Golf for Teachers and Their Students'(コーチと生徒のためのゴルフ)の著者スタンリー・L・シャピロがいい方法を伝授してくれます。「歩いている時、左足が地面を踏んだら『ワン』、もう一度左足が着地したら『ツー』。何歩か歩いてみると、あなたの固有のテンポが見つけられる。それに合わせるには、フル・スイングのトップで『ワン』、インパクトで『ツー』となる。
メトロノームでその日のテンポを確認した後、さらにその音で練習しながらスイングのテンポを調整することが出来る。
上のような二拍子では早すぎるというゴルファーは、三拍子を選択する。『ワン』で腰の辺り、『ツー』でトップ、『スリー』でインパクトである。私自身、以前はこの“ワルツ派”だったが、今は“マーチ派”(二拍子)である。両方試されることをお薦めする」
スタンリー・L・シャピロは、個人のテンポは日々変化するものなので、ラウンドする日のテンポを確認する必要があると警告します。バイオリズムや気分、一杯余計に飲んだコーヒーなどによってもテンポは変わると云っています。
メトロノームで確認すると、ある日の私のステップは一分間に50拍(50 beat/minute)、別のある日は48拍という具合でした。これらの拍子によるスイングは私にはかなり早いものに感じられましたが、メトロノームに合わせた練習ではアイアンは全く問題なく、いつもより飛距離が伸びたほどでした。ところが、ドライバーではテンポが速過ぎて追いつけません。私は長年“ワルツ派”(三拍子)で、特にドライバーはゆっくりスイングするように努力していたのです。アイアンとドライバーのリズムが違うというのは好ましくありません。二拍子がアイアンに合っていることを重視して、荒療治でドライバーも二拍子に変更する決意をしました。
メトロノームを使った練習は、そのテンポを呑み込んだ後は音を消してボールを打つことをお勧めします。お習字の稽古で、下のお手本をなぞったことがおありでしょう。なぞるという行為には勢いがありません。神経質に縮こまってしまいます。お習字もゴルフも同じ。メトロノームの音を消した時に、初めて勢いのあるスイングが出来ます。
(September 01, 2024)
●トップの間(ま)で飛ばす
数ヶ月前のある日のNo.1(320ヤード)パー4で、残り118ヤード地点まで飛んだショットが忘れられません。インストラクターPaul Wilson(ポール・ウィルスン、写真)のYoutubeヴィデオを見た翌日でした。【参考:https://www.youtube.com/watch?v=lROE1r9S9D4】
'Effortless Power: How to Increase Your Golf Swing Speed'(エフォートレス・スウィング:スウィング・スピードを増す方法)と題されたこのヴィデオは、アマチュア男性をゲストに迎えてのセッション。ハンデ11のアマチュアのドライヴァーの飛距離はラン込みで240ヤードほどだそうです。ローンチ・モニターでスウィング速度を計測すると、このゴルファーのスウィング速度は平均93mph(41m/s)でした。Paul Wilsonが手首を柔らかくイーズィにスウィングして97mph(43.4m/s)。
Paul Wilsonは「スウィング速度を早めるコツは、下半身を完全にターゲットに向けながらダウンスウィングすることだ」と云って、やはりイーズィではあるものの下半身を素早くターゲットに向けるダウンスウィングをしました。スウィング速度はなんと115mph(51.4m/s)まで上がりました。
翌日、私は上のPaul Wilsonの云う通りやってみました。力まず、トップから下半身をターゲットに向けたイーズィなスウィング。ボールは、いくら探しても私のいつもの範囲には見当たりません。信じられないことに、この日のティー・ショットは残り118ヤードという私にとって前代未聞の位置まで飛んでいたのです。このホールの私の普段のティー・ショットは残り170ヤード付近ですから、突如50ヤード以上も飛距離が伸びたのです。10ヤード程度の飛距離増なら「地面が固ければ、たまにはそんなこともある…」と驚きませんが、50ヤードとなると捨ててはおけません。是非、ドライヴァーの毎ショットでそれを実現したいと思いました。
その快打で覚えていることは、次の通りです。
1) 力まなかった(筋肉を硬直させなかった)
2) 大振りしなかった
3) トップで一瞬の間(ま)を置いた
4) 下半身のリードでダウンスウィングした
3と4は、実はセットです。切り返しをバックスング➝ダウンスウィングと切れ目なしに連続で行うと、下半身のリードが完全に行われない恐れがあります。確実に下半身が始動したのを確認してから手・腕を動かすには、トップで一瞬の間(ま)が必要です。「トップの間(ま)」というテーマは、1998年の当サイト開設早々から登場しています。私は間(ま)を置く意義を認めて数年間はそれを実行していたのですが、最近は意識的にはやっていませんでした。
Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)は「バックスウィングの捻転が終わる前に、下半身は既にダウンスウィング(逆転)を開始しているべきであり、トップの間(ま)などというものはあるべきではない」と云っています。私の仲間でJack Nicklaus風切り返しをする者がいますが、概ね「右や左の旦那様」です。ワンラウンドにつき一回か二回真っ直ぐとてつもなく飛ぶことがあるので、当人はそれが忘れられないのでしょうが、スコア的にはそれは惨めなゴルフとしか云いようがありません。。
一瞬であってもトップで間を置くと、そこでエネルギーが充填されます。「後退」から「前進」へとギア・チェンジする一瞬の間(ま)と云ってもいいでしょう。振り子運動も両端で一瞬停止するように見えるではありませんか。野球のホームランバッターもほぼ静止した状態から球を打ちます。ゴルフも同じであって悪いわけはありません。
上体のダウンスウィングは下半身に引っ張られて始まるべきなので、重要なのは下半身の動きです。トップで間を置くと、下半身が素早く確実に逆転出来ます。私は、今後のスウィングは「トップの間」を絶対遵守すべきだと決意したのでした。
【参考】
・「Johnny Miller(ジョニィ・ミラー)のトップの間(ま)」(tips_133.html)
・「万病に効く「トップの間(ま)」(tips_161.html)
(September 10, 2024)
●トップの間(ま)・視覚化法
これはインストラクターSteve Bosdosh(スティーヴ・ボスドッシュ)のtip。
'The Best Instruction Book Ever!'
by Golf Magazine's Top 100 Teachers (Time Home Entertainment Inc., 2012, $29.95)
「アドレスする際こう考えてほしい。あなたのクラブシャフトには半分だけ水が入っているのだ…と。あなたがスウィングを開始する前、すべての水はシャフトの下半分に溜まっている。だが、スウィングがトップに近づくにつれ、引力がその水をハンドル付近へと移動させる。
ボールに向かって急いで振り下ろすのではなく、ダウンスウィングの前にシャフトの中の液体が完全にグリップエンドに溜まるまで待つ。
その僅かな間(ま)が、ボールに向かって急激な突進をすることを防止し、全体としてスムーズな動きを実現する。さらに、このトップの間(ま)は手の動きでスウィングを開始するのではなく、腰→肩→手+クラブヘッド…という順序による下半身主導のダウンスウィングを励行させてくれるのだ」
(September 10, 2024)
●リズムとテンポの研究【5. テンポを確立する】
英国人のインストラクター、ジョン・ジェイコブズが面白いことを云っています。「もし、ベン・ホーガンに遅いスイングをさせ、サム・スニードに早いスイングをさせていたら、彼らは歴史に残るゴルファーにはなれず、スニードは農夫に、ホーガンはプロのギャンブラーになっていただろう。一般的に早いスイングをする人は背が低く、遅めのスイングをする人は背が高い。重心の違いによるものではないかと考えられる。しかし、ゴルフ・スイングに公式というものはない。色々なスピードを試してみるのが一番である」
スタンリー・L・シャピロによるテンポ確立法を御紹介します。バランスを保てる範囲内で目一杯の速さでボールを打てるスピードを100%とし、その80%、75%、50%の各スピードでボールを打ってみる。大抵のゴルファーは75~80%によるショットがベストであるという結論に達するが、そのスピードは実はそのゴルファーが普通に歩く早さと一致するのだそうです。
もう一点、スタンリー・L・シャピロが力説するのは、《どのクラブでも同じテンポで振る》ということ。「アニカ・ソレンスタムのスイングの偉大なところは、どのクラブでも同じテンポで振るということだ。彼女がどのクラブを振っているのか、見ただけでは判らない」9番アイアンのような短いクラブを振るのと、シャフトの長いドライバーを振る所要時間が同じということは、9番アイアンは比較的ゆっくり、ドライバーは比較的速めに振るということにほかなりません。
同じことをジャック・ニクラスは'Jack Nicklaus's Lesson Tee'(ジャック・ニクラスのレッスン・ティー)なる本で次のように述べています。「ある時、私の7番アイアンと2番アイアンのショットを、超スロー・モーションで撮影して貰う機会を得た。そのフィルムを見た私は大いに喜んだ。双方のスイング所要時間がぴったり同じだったからだ。それは、私の生涯の目標の一つだった」
参考のため、プロたちのスイングを分析してみました。ビデオをデジタル・キャムコーダーにコピーし、ビデオ編集ソフトでバック・スイング開始からトップまでと、トップからインパクトまでの齣数を計算したのですが、両方の比率がリズムに相当します。全体の齣数の合計はテンポ(スイングの速度)の目安と云えるでしょう。なお、フォロースルーはどこが本当の終りなのか確定出来ないので省略しました。
プロ | 比率 | テンポ | |
---|---|---|---|
アーニー・エルス (1995) | |||
フレッド・カプルズ (1988) |
アーニー・エルスとフレッド・カプルズはほとんど同じです。二人が揃ってイージーでエフォートレスなスイングの代表と云われるのも当然ですね。彼らの先輩で、流麗なスイングの見本と云われるサム・スニードのスイングを見てみましょう。
プロ | 比率 | テンポ | |
---|---|---|---|
サム・スニード(年代不詳) |
素材とした映像は白黒フィルム時代のものですから、彼の最盛期のスイングと思って間違いありません。奇しくもフレッド・カプルズと同一リズム・同一テンポです。では、速いスイングの代表ベン・ホーガンはどうでしょう?
プロ | 比率 | テンポ | |
---|---|---|---|
ベン・ホーガン (1965) |
リズム(比率)はエルスとカプルズの中間ですが、テンポがベラボーに速い。バック・スイングもダウン・スイングも電光石火の速さと云えます。デビッド・レッドベターは次のようなホーガンの言葉を紹介しています。「しっかりしたスイングの持ち主には、いいテンポが自然に備わるものだ。テンポについて考える必要はない」レッドベターは、いいテンポを構築する方法として、目をつぶって素振りすることを勧めます。身体の各部の動きを忘れ、テンポだけに集中出来る方法というわけです。さて、もっと若手(?)で速い方の筆頭に挙げられるニック・プライスはどうか?
プロ | 比率 | テンポ | |
---|---|---|---|
ニック・プライス (1994) |
まるでベン・ホーガンのクローンのようにリズムもテンポもそっくり同じ。この1994年というのはニック・プライスが全英オープンで優勝した年です。では、プロの真打ちとしてタイガーに登場して貰いましょう。
プロ | 比率 | テンポ | |
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タイガー・ウッズ (1997) | | ||
タイガー・ウッズ (2000) | | ||
タイガー・ウッズ (2004) | |
1997年はタイガーがマスターズ初優勝を飾った年。2000年は全英、全米、PGA選手権の三つを制覇した年。昔の方が今よりテンポが速いだろうと推測していましたが、実は逆でした。年々速くなっているようです。ニック・プライスより遅いのにタイガーの方が飛ぶわけですが、多分身長、身体の柔軟性など諸条件の違いによるものでしょうね。
ジョー・ダンテが云う「バック・スイングはダウン・スイングの長さの二倍」(2:1)という説に当てはまるプロは一人もいません。以上6人の平均的リズムは2.4:1です。
スイング篇の最後に名著'On Learning Golf'(ゴルフの習得について)の著者パーシー・ブーマーの言葉を引用しておきます。
「加速のクライマックスはボールを1ヤード(約90cm)ほど過ぎた位置でなければならない。そのためにはバック・スイングを短くする。ボール通過後までパワーを残しておくには、短いバック・スイングしかないからだ。
いいプレイヤーは、フォロースルーの程度から逆算してバック・スイングの長さを決める。彼はどこまでテイクアウェイするかを意識しているわけではないが、ボールを通過した後が加速の絶頂であることを知っている。つまり、ボールはスイングの真の中心ではないということだ」
(September 10, 2024)
●正しいコックのトップで飛ばす
卒中前の私の画期的飛距離増の真の要因はずっと謎のままでした。《インパクトで胸を張れ》や《トゥ寄りでアドレスせよ》というtipsを用い、《トップの間(ま)》を実行してさえもNo.1(320ヤード)パー4で残り118ヤードまで飛んだショットは再現出来ません。夢だったら諦めますが、202ヤード飛んだのは事実なのです。No.14(360ヤード)パー5では210ヤード飛びました。それが再現出来ないのが口惜しいのです。途方に暮れていたある夜、「コックだ!コックに違いない!」と閃きました。それ以外に自己最高の飛距離を達成出来た要因は考えられません。
私にはコックだと思い込んで左手首を凹の形に折ったり(図B、フェースがオープンになるので結果はプッシュ)、凸の形に折ったり(図C、フェースがクローズになるので結果はプル)した苦い過去があり、コック恐怖症となったためその後意識的にはコックしないスウィングをして来ました。
一緒にプレイする仲間のスウィングを見ていて、明らかに深いコックで飛ばしている姿を見ると、「ああ、おれもちゃんとコックしなきゃな…」と思わされるのですが、そういう仲間が隣のホールへのスライスやフックを打ってトラブルに陥るのを目撃すると、「やっぱり止めとこう」となったのでした^^。
私の画期的飛距離増にはインストラクターPaul Wilson(ポール・ウィルスン)のYoutubeヴィデオが大きく影響しています。彼は「(左肘を折ってもいいから)力まないでバックスウィングし、下半身主導でダウンスウィングせよ」と説くのですが、このスムーズそのもののバックスウィングは自然に深いコックを形成します。多分、彼の感化で力まないバックスウィングをして充分なコックをしたのが飛距離増の要因だったろうと思われました。
しかし、だからといって飛距離増を求めて意識的にコックするのはためらわれました。コック恐怖症は未だ健在なのです。で、当サイトで「コック」をキーワードにして検索し、ヒットする見出しの記事を読みまくりました。そして「正しいコックのトップを作る」(tips_197.html)という記事にぶつかりました。これは'Swingyde'(スウィンガイド)という練習器具を用いて正しいコックを身につけるというものです。この器具を使うと鏡を見る必要もなく、自分が正しいコックをしているかどうかが文字通り肌で判ります。この'Swingyde'を用いる練習ではボールを打つ必要はありません。ひたすら素振りで正しいコックを身につければいいのです。
ドライヴァーのスクウェアなフェースに揃えてSwingydeをハンドルに装着して、裏庭で練習。なかなかうまくいきません。長い間意識的にコックをしていなかったせいでしょう。左手甲を厳密に平らにして伸ばさないとSwingydeのアームが正しく左前腕に当たりません。アームが左前腕に接触しないということはコックが浅過ぎるということを意味し、アームが左前腕を逸れるということは左手甲を凸や凹に曲げている証拠です。「こりゃ時間がかかるわい」と思ったので、Swingydeをドライヴァーから外して練習用の短く重いクラブに付け替えてTVの傍に置き、CMの度に振ることにしました。先ずアームを正しく腕に当ててトップを作る練習から始めました。最終的なトップの形(角度)を身体に覚え込ませることが先決と考えたからです。
バックスウィングのトップに至る軌道によってゴルファーのスウィング・プレーンは右図のように高・中・低と分類されます。【参照:「体型別スウィング(プレーン篇)」(tips_137.html)】私は体型的に中プレーンに属し、トップでの左腕の高さは右肩の下になります。左腕が右肩の下に向かってしっかり伸ばされた時、Swingydeのアームがぴたりと左前腕の真上にかぶさります。右肩の上だったり下だったりするとアームは左前腕を逸れてしまうので、正しくコックされていないことが判ります。ただし、アームが左前腕に正しく当たったとしても手首が凸や凹になったのでは、クラブフェースがスクウェアではないのでプッシュやプルを生じてしまいます。下図のように穏やかなスウィングで、左手甲をすらりと平らに伸ばしたトップが理想的です。これならフェースをスクウェアに保てます。
驚いたことにこの正しいコックによるトップは、私の場合「Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)式トップの作り方【詳説】」(tips_207.html)で紹介した低めのトップと同じ形に納まります。
Swingydeのアームが左前腕に完全にかぶさるのが理想的な最も深いコックなのですが、私はそれにこだわらないことにしました。深くコックすれば飛距離は伸びるとしても、飛距離を望むあまり間違って手首を凸や凹にしてしまっては方向性が乱れます。方向は飛距離よりも大事ですから、無難な浅めのコックでも悪くないと考えるべきでしょう。
なお、正しいコックを習得するとドライヴァーだけでなくフェアウェイウッド、ハイブリッド、アイアンに至るまでご利益があるので、ゴルフの全面的改善が期待出来ます。
ただし、インストラクターDave Pelz(デイヴ・ペルツ)によれば、「マスル・メモリに新しいスウィングを記憶させるには10,000回の練習が必要」だそうです。10,000回!生きているうちに達成出来るものかどうか…。
(September 20, 2024)
●リズムとテンポの研究・最終回【6. パッティングにおけるテンポ】
パッティングでもリズムとテンポが重要であることは云うまでもありません。トム・ワトスンは「二つまで数えられる人間なら、だれでもいいパットが出来る」と公言しています。二拍子でパットしろというわけです。振り子式ストロークが全盛の昨今ですから、リズムは二拍子で決まりでしょう。三拍子の振り子なんてありませんからね。
問題はテンポです。面白い調査結果を入手しました。アメリカのグランド・サイプレス・ゴルフ・アカデミーのテキストですが、パッティングの項にグレッグ・ノーマンやトム・カイトなどPGAツァー・プロ十数人のパッティングに要した時間を計測したデータがあるのです。 このテキストが説くポイントは「『バック・ストロークとフォロースルーの長さを同じにせよ』という古い言い伝えは間違いだ」というものです。 ・PGAツァー・プロたちのバック・スイングとフォロースルーの距離を調べた結果、バック・スイングのほぼ二倍のフォロースルーを行っていることが判明。 ・パット名人たちの平均バック・ストロークは 0.67秒、平均ダウン・スイングは 0.27秒である。ダウン・スイングのテンポはバック・ストロークの二倍速い。それはボールとの接触までの十分な加速を意味している。 ・プロたちのパッティングに要する所要時間は常に一定である。その距離の如何にかかわらず、ストロークの初めからボールと接触するまでの時間は同じ。全ての距離で同一時間ということは、長いパットのテンポは短いパットより速いということである。 テキストの編者たちは、次のように主張します。「パッティング・ストロークには三つの要素が絡む。距離、テンポ、所要時間である。最初の二つは常に変わるが、所要時間は同一である。所要時間が同じである以上、テンポが変わらざるを得ない。4.6 メートルのパットのテンポは1メートル のパットのテンポよりずっと速くストロークされなければならない」 ゴルフ用メトロノームを販売している会社のウェブサイトにも、「スイングが短かければテンポは速くなる。パッティングには70~95拍(70~90 beat/minute)が妥当であろう」と書かれています。 |
(September 20, 2024)
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