Golf Tips Vol. 178

怒りはわれらを愚か者にする

 

スウェーデン出身のコーチPia Nilsson(ピア・ニルソン)は、Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)に「全てのホールをバーディで廻る」という'Vision54'という理念を植え付けた女性。彼女はアメリカ人女性インストラクターLynn Marriott(リン・マリオット)と組んで'GOLF54'というゴルフ・スクールをアリゾナ州に開設しました。当サイトでは二人のアイデア「二つのボックス」、「練習の害をなくせ」などを既に紹介済み。

'Every Shot Must Have a Purpose'
by Pia Nilsson and Lynn Marriott (Gotham Books, 2005, $22.50)

「ゴルフ・コースであなたが爆発させ得る最大の破壊力は、怒りである。自分が陥った不当な境遇に対して衝動的な反応を示すのは分別のある振る舞いとは云い難い。貧弱なスウィングをすると能無しになった気分にさせられるし、不運なバウンドはわれわれを不幸のどん底に陥れる。だが、不運への最悪の反応は怒りである。それは引き続く劣悪なショットを100%保証する。お粗末な意志決定は怒りそのものを引きずり出す一本道である。

トーナメントで心ここにないプレイヤーを見掛けるのはお馴染みのことだ。彼は6番アイアンを使おうとして、間違って9番を引っ張り出し、とてつもなくショートして池のど真ん中にボールをぶち込んでしまう。【編者独白:この著者たちはいつどこで私のプレイを見ていたのだろう?】 簡単に云うと、怒りはわれわれを愚か者にする。怒りはわれわれの判断力を曇らせ、われわれの低次脳機能【編註:魚類が身体を動かすために使うような脳の機能】だけで反応させようとする。怒りは、われわれが高次脳機能【編註:動物が獲得した脳の機能】にアクセスすることを認めず、われわれを爬虫類や哺乳類レヴェルの脳で行動するよう瞬時に退化させる。

 

怒りは、身体に緊張と不安を作り出すホルモンの引き金となるだけでなく、そのホルモンが脳の部品を操業停止させ、間違った判断をさせる方向にわれわれを導く。ティーショットを林に打ち込み、怒りの激発によって二打目に無理なことをし、トリプルボギーになったことが何度あったことだろう。不調なドライヴァーによる挫折感は、次の一打でその失敗を帳消しにしようという試みに繋がる。それがどんな結果になるか、われわれは皆よく知っている。大抵の場合、博奕は木が演奏するキンコンカンという音を聞くか、ラフにボールを打ち込むのが関の山と決まっている。

頭に来るのは、こうしたケースの多くを振り返ってみると、どうしてフェアウェイに戻してボギー(あるいは1パットのパー)で手を打とうとしなかったのか不思議なことだ。怒りはパンドラの箱を開けるように、多種多様な災いを飛び出させる。それらは、悪しき判断、躊躇(ためら)いがちなスウィング、急速なテンポ、そしてターゲットへのラインをろくに見もしないという症候群だ。

怒りに対処するのは容易ではない。しかし、あなたの周りで何が起っているかを正しく認識すれば、怒りをコントロールすることは可能である。ある時、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)のティーショットがディヴォット痕に入り込んでしまった。彼はどんな風に反応したか?後に、彼はこう回想している、『それは、私が伸び上がらないで打つことを助けてくれるだろうと思った』と。愚かに反応する代わりに、彼は悲観的状況を建設的に変えてしまったのだ。これこそ、コースにおける純然たる自己コントロールの好例である」

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十個の寄せワンを達成した日のことです。No.14(470ヤード)パー5で、先ずRoy(ロイ)がピンまで6メートルに3オン。続いて私が2メートルに3オン。他の二人はパー・チャンスも得られず傍観者となっています。Royは大幅ショートし、続けてパー・チャンスの2パット目も失敗。

傍観者の一人が、アドレスに入る私に「エイジ、それはパー・パットか?」と聞き、私が「バーディ…」と簡単に答えました。「おお!」その傍観者は賛嘆しました。もう一人の傍観者(チーム・キャプテン)が"Don't leave the cup."(カップの外を狙うな)と、短いパットのためのコツを呟きました。もとよりそのつもりだった私は返事も省略し、おもむろにストロークに入りました。うむむ!ボールは5センチほどカップを逸れ、1メートルもオーヴァー。キャプテンは"I said don't leave the cup."(カップの外を狙うなと云ったのに…)と呟きました。

話はここからです。チームのためにバーディが欲しかった私は、彼らをがっかりさせたこと、短いパットに失敗したこと等でカーッとなってしまいました。私はOKパットを沈める時のようにアドレスもちゃんとせず、ターゲットへのラインをろくに見もしないで2パット目をしました。そしてそれをまた外した時、私はチームの誰もまだパーを得ていないことに気づいて愕然!無頓着にOKパットを沈めるように打ってはいけなかったのです。他の三人は私の不可解なプレイに驚き、声も出ませんでした。私は3パット目でようやくボールを沈めました。傍観者の一人が「つまりボギーということか…」と呟きました。

上の記事にあるように、怒りが私の脳のレヴェルを爬虫類のそれにしてしまったのです。バーディでなく、せめてパーでもまだ褒められるプレイだったでしょうに…。その後、皆は何も云いませんでしたが、私は皆に申し訳ない思いで一杯でした。それまでチームに貢献したことが御破算になってしまいました。

18ホールのプレイを終え、他のチームが上がって来るのを待つ間、私はNo.14での不注意なプレイを皆に詫びました。一人は「あんたの活躍がなかったら、今日のわれわれのスコアは酷いものになってた筈だ。あんたはヒーローだよ」と慰めてくれました。

奇跡的にわれわれはその日のゲームに勝ちました。私は一安心。そして、学びました。教訓:《カーッとなって爬虫類になってはいけない》。

【参考】Pia Nilsson(ピア・ニルソン)とLynn Marriott(リン・マリオット)の記事:
・「二つのボックス」(tips_101.html)
・「練習の害をなくせ」(tips_108.html)
・「英雄たらんとするな」(tips_108.html)
・「ターゲットを水先案内人とせよ」(tips_108.html)

(December 11, 2016)

ビビりの構造

 

Tommy Bolt(トミィ・ボルト、1916〜2008)は1958年のU.S.オープン優勝ほか、全18勝を挙げており、ゴルフ名誉の殿堂入りしている名人。彼の渾名は"Thunder Bolt"(サンダー・ボルト、雷電)で、怒りっぽく短気で、試合中にクラブを投げたり、折ったりしたことで有名です。

'How to Keep Your Temper on the Golf Course'
by Tommy Bolt with William C. Griffith (David McKay Company, Inc., 1969)

「誰であれ(たとえパターを一度も持ったことのない人間でさえ)60センチのパットを沈めることが出来る。その人物が二、三度パットを沈ませた後、彼に『次のパットを沈められない方に1,000円賭ける』と云って、どうなるか見守って御覧。一般に"choke"(ビビり)と呼ばれる奇妙なゴルフの症候群が浮上し始める。その賭けの前の彼のストロークは自信に満ち、気楽でスムーズだったのに、今や彼は500カラットの石をカットしようとするダイヤモンド研磨工の集中心と厳粛さでラインと打つ強さを検討する。彼は過度に長い時間をかけ、それが筋肉を硬直させ、神経は緊張し始め、両手が引き攣り始める前にボールを打った方がいいと捨て鉢で考える迄に、既に悲観的な想念が忍び込んで来てしまっている。

彼がパットに失敗した時、腹を立てるのは不自然ではない。彼は自分自身がパットの妨害工作をした張本人であることを知っているからだ。彼が気楽にパターを用いた短い経験がパットを沈めるのは難しくないことを証明しており、実際に重要な時点で失敗した自分が許せない。無論彼が認識しないのは、彼が失敗したのはそれが極めて重要な時点であったことだ。

ビビる状況は絶えずゴルファーの前に立ちはだかる。それがU.S.オープンであれ、新鮮な空気を楽しむための日曜の9ホールの当てもない散歩のようなラウンドであれ…。60センチのパットは、ハンデ10のゴルファーにとってはバーディ・チャンス、ハンデ22のプレイヤーにとってはパー・チャンスであろうが、ビビりを生じるに充分な状況であり、ゆえに失敗は避けられない。だから、たった一人でさしたる目的もなくラウンドしていて、あなたの屈辱を目撃している者は皆無であっても、それが同伴競技者や数千のギャラリーの前であると同じように腹立たしくなる。

もちろん、ビビるのはパットに限定されたものではなく、チッピングにおいても単に突くようなショットで最も顕著である。だがビビりは、あなたが常人で思考能力を備えているなら、実際には長いのはドライヴから短いのは60センチのパットに至るまで、どのゴルフの一打にも重要な要素たり得る。思考は全てのビビり状況において蔭に潜む妨害工作者である。

 

このビビり症候群は常に長いスランプの原因となる。たまには、数週間から数ヶ月完全に哀れなラウンドとなり、ドライヴも、アプローチも、チップ、パットもまともでなくなり、何も期待出来なくなる。この状況は、あなたが心配し始める時、筋肉の緊張を継続させ、バッグの中の全てのクラブに悪影響を与える。多くの場合、ドライヴが悪党の親玉である。それはあるホールの最初の、そして普通スコアリングに決定的要素となるショットだからだ。

幸い、あなたのスランプはレッスン・プロか誰かによって何がいけなかったのかの指摘を受け、それを正せば常に終わりを告げる。そうなれば、自信が回復するにつれ以前のようにボールを上手く打てるようになり、ゲームのどの分野も向上を見せ始める」

【参考】Tommy Bolt(トミィ・ボルト)の記事:
・「クラブ投擲王Tommy Bolt(トミィ・ボルト)の助言」(tips_170.html)
・「パーなど相手にするな」(tips_170.html)
・「マスル・メモリを信頼せよ」(tips_172.html)
・「恐れを知らぬ若者のようにパットせよ」(tips_173.html)
・「君よ憤怒のウォーター・ハザードを渉(わた)れ」(tips_174.html)

(December 11, 2016)

Tommy Bolt(トミィ・ボルト)かく語りき

 

'My shot'
Interviewed by Guy Yocm {'Golf Digest,' November 2002)

「見物人たちは、プロが苦しむ姿にゾクゾクするものだ。それが、私がしばしばクラブを投げる理由だ。初めは怒りでクラブを投げた。しばらくするとそれは受けを狙った単純な芸になった。オーヴァーハンドでなく水平に投げれば、クラブシャフトが折れない。それは芸なんだよ。

投げた時、ドライヴァーは最も飛ばない。パターが最も遠くに飛び、ウェッジがその次だ。ボールの飛距離と正反対だ。

私が1958年にSouthern Hills(サザーン・ヒルズ)でU.S.オープンに優勝した時、われわれはまだ土曜日に36ホールをプレイするフィニッシュだった。日曜日は礼拝日だからプレイしなかったのだ。だが、七年後、USGA(U.S.オープン主催者)とTV局は礼拝日に金が稼げることを発見し、それが36ホール・フィニッシュの終焉だった。

アイアンを打つ時は長く薄いベーコンのようなディヴォットを取るべきだ。そうするには左右の手を同等の強さで打たなきゃならない。あなたのディヴォットが短く深いようだと、それは右手が強過ぎるせいだ」

(December 11, 2016)

Butch Harmon(ブッチ・ハーモン)推奨の筋肉鍛錬法

 

トップ・インストラクターButch Harmon(ブッチ・ハーモン)による飛距離を増す方法のいくつか。

'The Four Cornerstones of Winning Golf'
by Claude "Butch" Harmon, Jr. and John Andrisani (Fireside Book, $15.00, 1996)

「筋肉鍛錬は飛距離を伸ばすだけなく、様々なトラブルを克服すべき時に利益をもたらす。深いラフ、ディヴォットや凹んだ地形からのショット、木の下から低く打って長い距離を得たい場合等々。

[ball]

・ メディシンボール

これはGreg Norman(グレッグ・ノーマン)が忠実に実行している運動だ。このボールはバスケットボールよりやや大きく、重さは約3キロほどである。

アドレス体勢で、ボールの左右を(下ではない)両手で持ち、身体の前でスウィングするように左右に動かす。胴体を使うのであって、手・腕で動かすのではない。最初はボールを腰の高さでゆっくり(あるいは一分間)動かす。正しく遂行すれば、お腹の筋肉を酷使する筈だ。

慣れたら、次第にボールを前方に突き出し、ボールが胸郭と平行の高さになるようにする。【右図】 あくまでも、手・腕ではなく、胴体を使うこと。

これは胴体を鍛えると同時に、手と前腕部をも鍛える。

・重いクラブ

これはメディシンボールの代用にもなる鍛錬法である。重いクラブを得るには次のような選択肢がある。

a) 古いウッド・クラブのハンドルを外し、シャフトに砂を詰めた後、ハンドルを戻す。注意:砂がこぼれないように穴を塞ぐこと。
b) ドーナツ型錘を用いる。
c) ヘッドに鉛を貼る。

最初は筋肉を痛めないよう軽い重さから始める。加える重さは280〜340グラム程度で充分である。

通常のセットアップで、胴体を使って(手・腕ではない)ゆっくりバックスウィングし、トップで一時停止、再びゆっくりのペースで、左サイド全体がリードすることに集中しながらダウンスウィングをし、バランスの取れたフォロースルーを行う。終始クラブヘッドをコントロールすること。ダウンスウィングでクラブヘッドがあなたを振り回すような力を使ってはいけない。全体のスウィングに3秒間費やすぐらい、スローに行う。

[steps]

しばらく練習した後、もっと重いクラブをコントロール出来ると思ったら、次第に数グラムずつ重さを増す。

・階段上り

飛距離を生む主な源は太腿、はっきり云えば尻である。ハムストリング腱(膝腱)と大臀筋(尻の筋肉)は、身体の中で最も大きな筋肉である。これらを鍛え、ダウンスウィングの開始で正しく用いれば、あなたの全てのショットの飛距離が増す筈だ。

最近のフィットネス施設にはStairMasterとかVersa Climberなどの装置があり、実際に階段を上り下りしないで階段上り運動が出来る。これらの装置は、足を踏むことで階段を昇る動作をシミュレートする。フィットネス施設を利用出来なければ本当の階段を昇らなければならないが、階段の固い抵抗を我慢しなくてはならない。

日常でもエレベーターではなく、出来るだけ階段を使うことをお薦めする」

【編註】最近引退したSe Ri Pak(セリ・パク)は韓国での修業時代、父親に命じられて家の近くの墓地の階段を上り下りさせられたそうです。彼女の太腿はとても太かったことを覚えています。

【参考】
・「飛距離を伸ばすトレーニング」(tips_13.html)
・「簡単な腕の体操でヤーデージ増」(tips_175.html)


【おことわり】画像はhttps://hips.hearstapps.comと、https://encrypted-tbn0.gstatic.comにリンクして表示させて頂いています。

(December 25, 2016)

Harvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)のヨガで上達せよ

 

伝説的インストラクターHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)によるヨガのゴルフへの応用。

'The Game for a Lifetime'
by Harvey Penick with Bud Shrake (Fireside, 1996, $10.00)

「私は、ゴルファーのために役立つ活動としてヨガの研究に優るものを想像出来ない。ヨガは、心の完璧で極度の集中と、同時に筋肉(特に小さな筋肉の強化)の技巧的で健康的なストレッチングを教える実習である。

私は小さな筋肉はボールを遠く真っ直ぐ打つために大きな筋肉と結びつかなければいけないと考える。John Daly(ジョン・デイリィ)のもの凄いターンと身体の長い巻き上げ方を見てみなさい。彼の背の大きな筋肉、腰、脚が暴力的なスウィングになだれ込むが、350ヤードのドライヴを発射する機敏な動きと精度は小さな筋肉の賜物である。彼が心を静めるためにヨガを研究し、小さな筋肉を調和させたら、どれだけ素晴らしいゴルファーになるか計り知れないものがある。

Greg Norman(グレッグ・ノーマン)は集中力を構築するため、禅と武術を応用していると聞く。経験豊富なプレイヤーは知っていることだろうが、ベストのプレイをする時は、瞑想にふけっている状態とかなり似通っている。緊張とお喋りから解放されて、一つのことに集中している。これはいいゴルフのための理想的状態だ。

私が常に教えていることだが、ゴルフには重いバーベルを持ち上げる筋肉より、鞭を振るうような筋肉が必要だ。現在、ツァーで重量挙げは推奨されているが、多分、前腕と手を鍛える運動は、身体の中央の筋肉を構築するのと同じくらい良いことだろう。また、腰と脚を強化する運動もプラスである。

ヨガは呼吸に精神を集中することでもある。正しい深呼吸は喜びであり、気分を爽快にし、心を静めてくれる。深呼吸は酸素と身体中のパワーの供給源として、ゴルフ・コースで驚異的な助けとなる。ヨガの教えのストレッチングは、柔軟性を身につけさせてくれる。身体が柔軟なら、命ある限りいいゴルフを続けることが出来るのだ」

 

(December 25, 2016)

Nancy Lopez(ナンスィ・ロペス)の飲食法

 

Nancy Lopez(ナンスィ・ロペス、1957〜)はメイジャー三勝を含むLPGAツァー48勝(その他四勝)を挙げ、ゴルフの世界名誉の殿堂入りしているプロ。

'The Complete Golfer'
by Nancy Lopez with Don Wade (Contemporary Books, 1957, $15.95)

「私の秘密をお教えしよう。私はNabisco(ナビスコ)と契約してTeam Nabiscoのメンバーとなっている。ナビスコ主催の催しに参加し、ナビスコ・ロゴの衣類を着て、ナビスコのゴルフ・バッグでプレイする。ナビスコのためにしなければならない役目は、製品の味見をすることだ。だから、私はクッキーや、クラッカー、キャンディ・バーなどのエキスパートである。仮にナビスコがダブルベーコン・チーズバーガーを作ったとしたら、彼らは私の食べ物への熱望を満たしてくれたことだろう。

悲しいことに、もし私が自分の好きな物を全部食べていたら、私は80を切れず、トーナメント優勝数もずっと少なかった筈だ。そんなことをしたら、一つには、プレイするような身体じゃなくなり、もっと重要なことには、私の崩壊するゲームがどう見えるか考えて恥じ入ったことだろう。私は、《見え方がプレイを規定する》と信じている。それはプライドの問題に帰着する。

【編註】私はLPGAツァーのTV中継をよく見ますが、お腹の出た女子プロ、股擦れしそうな太腿のプロからは目を背けてしまいます(>_<) 。ツァーで各地を転戦していると、ついハンバーガーなどで食事を済ませてしまうせいかも知れませんが…。例えば、Laura Davies(ローラ・デイヴィス、英)、Pat Hurst(パット・ハースト、米)、Shanshan Feng(【米】シャンシャン・ファン、【日】フォン・シャンシャン)、Inbee Park(【米】インビー・パーク、【中】朴 仁妃、【日】パク・インビ、韓国)、Brittany Lincicome(ブリッタニィ・リンサコム、米)、Christina Kim(クリスティーナ・キム、米)、Lizette Salas(リゼッテ・サラス、米)、Ariya Jutanugarn(アリヤ・ジュタヌガーン、タイ)など。Yani Tseng(ヤニ・ツェン、台湾)、Ha Na Jang(【米】ハ・ナ・ジャン、【中】張 哈娜、【日】張ハナ、韓国)なども若いのにお腹が出て来ており、心配しております(^^;;。

身体的外見だけでなく、ダイエットはあなたが望むプレイの鍵となる役割を果たす。もしあなたが過度に肥満だったり痩せ細っていたら、プレイに必要な強靭さを備えていない。あなたの体形がいいとしても、よくない食べ物の摂取をすればトラブルは避けられない。

私はお酒は飲まず煙草も吸わない。コーヒーも大して飲まない。紅茶も滅多に飲まないし、ソフト・ドリンクスも多くの場合避ける。原則としてダイエット・ソーダにも手を出さない。どちらかと云えばジュースを飲む。ドラッグに関して云えば、それを摂取してゴルフは出来ないということだ。何てこと!私はデイトの相手としてはとても安上がりみたいね:-)。

説教ではなく、もしあなたが真剣にこのゲームに上達したいなら、アルコールの摂取はすべきではない。少なくともラウンドの前と最中には。人々は、ビール一杯ぐらいは問題無いと云うが、ビール抜きだったらどれだけいいラウンドになるだろうと考えてしまう。私は前夜のカクテルでさえ飲まない方がいいと助言したい。何故なら、アルコールが体内から抜けるには時間がかかるからだ。

カフェインの摂取については議論が別れるが、私はそれは神経に(特にプレッシャーがかかった状況下で)影響を与えると云わざるを得ない。同じことは砂糖入り飲料にも云える。

 

【編註】糖分の一気飲みは、糖分が血糖を増加させるため膵臓は多量のインシュリンを放出する。この結果、血糖値は逆にプレイを阻害するまでに下がってしまう。←「タフ・ゴルファーへの道(第二部)」(tips_32.html)を参照。

コースでは私は多量の水を飲む。特に暑く湿気の多い場合に。脱水状態になってはいけない。各ホール毎に少しずつ水を飲む方が、数ホールおきに沢山飲むよりもいいと思う。この方が身体の状態を安定させる。

体力を保つために充分な食事を摂るのは大切だが、私はラウンドの前の大食は避けるようにしている。それは私をグロッギーにしがちだからだ。私は、果物、卵、トースト、そしてジュースなどの、よい朝食を摂る。ラウンド中にお腹が空いたり少し力が抜けて来たり、集中力が欠けて来たら、ピーナッツバター・クラッカーかレーズンを食べる。ある時、ラウンド中にホットドッグを食べたら、死んでしまうか80を切れないのではないかと思ったものだ。

【編註】普通、私のラウンド前の朝食はSPAMのスライスを二枚と野菜サラダが定番(超簡単、栄養充分)。ある日、前夜に揚げた「かき揚げ」が残っていたので、かき揚げ丼にしてみました。丼には通常の倍ぐらい御飯が入っちゃうので、大きなかき揚げと相俟ってお腹一杯になってしまいました。その日のラウンドは全く集中出来ず、散々な結果でした。朝食に丼物はいけません(;_;)。

飲食で重要なポイントは、あなたの体力と集中力を維持するのを助けることだ。それはあなたのゲームに大きな差をもたらす。それはごく小さな差に過ぎないとしても、多くの場合小さな差が勝者と敗者を分けるのだ」

【参考】
・「シニアの栄養補給術」(tips_134.html)
・「ゴルファーが最低知っておくべき栄養学」(tips_174.html)

(December 25, 2016)

スウィングの鍵は少ないほどよい

 

Byron Nelson(バイロン・ネルスン、1912〜2006)は、ヒッコリー・シャフトの時代にキャディをしながらゴルフを覚えましたが、スティール・シャフト時代に突入した時、それを使いこなした最初の人となったことから『モダン・ゴルフの祖』と呼ばれています。彼は1945年にPGAツァー11連勝、年間計18勝を挙げるという記録を樹立し、この記録は今も破られていません。以下の記事は名人Byron Nelsonのスウィング動作に関する助言。

ここで「スウィングの鍵」とは、スウィングの際に守ろうとする遵守事項"swing keys"のことで、"swing thoughts"(スウィングの想念)と呼ぶ人もいます。

[Byron]

'Shape Your Swing The Modern Way'
by Byron Nelson with Larry Dennis (Golf Digest, 1976)

「私のゴルフ人生の初期には、スウィング動作について多くのことを考えた。クラブをターゲットラインに沿って引くべきか?バックスウィングで両手をどれだけ高く上げるべきか。どのようにダウンスウィングを始めるべきか。これらは、ヒッコリー・シャフトからスティール・シャフトに移行するスウィングの大変更に伴うものであった。しかし、多くのゴルファーにはそのような変更は絶対ない筈だ。

1937年以降私のキャリアの最後まで、私はスウィングする際に考えることはしなかった。私はこの時期に用いたスタイルを確立していたからだ。スウィングはかなりオートマティックでエフォートレスになっていた。私は心にターゲットを抱き、バックスウィングでボールからクラブを引き、ダウンスウィングで戻したいラインを視覚化する。それが私のスウィングの引き金を引く想念である。あなたには他の想念があるだろうし、それはバックスウィングとダウンスウィング、それぞれで計二つかも知れない。そうした想念はスウィングの前に出来る限り潜在意識に手順を覚え込ませておくべきである(心で意図的に順を追って遂行するのでなく、本能的に身体が動くように)。

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)が次のように云った時、全く正鵠を射ていた。すなわち、『スウィングの間に三つのことを考えていると、プレイはお粗末だった。二つのことを考えているとパー・プレイのチャンスがあった。たった一つのことだけ考えている時はトーナメントに優勝出来た』

あなたがそんな風にプレイ出来れば、スウィングについて一手、一手、順に考えなければならない人よりずっといい結果が得られるだろう。それが、ゴルファーが練習する理由であり、ショットの遂行について考えなくてもいい境地に到達するためである。あなたは自分のスウィングに充分な自信をつけ、完全に信じられるようにすべきである。それを達成する唯一の途は、充分な数のいいショットを、意識的に分析せずとも打つことが出来るまで練習することだ。

いったんそのような自信が(潜在意識が遂行するスウィングによって)構築出来たら、あなたが考えるべきことはショットそのものと、そのために何が必要であるかだ。どこへ着地させるか?高く打つか、低くか?フェードかドローか?こうしたオートマティックなスウィングをするために自信を構築するのが簡単だというつもりはない。しかし、その域に達するために懸命になるのは意味があることだ。なぜなら、それこそがいいゴルファーになるために必要なものだからだ」

(December 28, 2016)

Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)のスコア・メーキングの秘訣

'Astonishing but True Golf Facts'
by Allan Zullo (Andrews McMeel Publishing, 2002)

「1930年、偉大なBobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)の絶頂期、彼は次のように語った、『ゴルフ・コースで不注意な一打を未然に防げるようになるまで、私の成功はおぼつかなかった。四年間の五つの選手権のほとんどの勝利に貢献した小さなことは、単純に1ラウンドにつき一打節約するということによって、不注意な、あるいは馬鹿げたミスを免れるというものだった』」

(December 28, 2016)

悟り(第二弾)

 

第一弾は「私はもうこれ以上上達しないであろう」というものでした。【参照 : 「悟り」tips_176.html】悲しいかな、その正しさはその後のラウンドで証明されています(;_;)。

最近悟ったのは、われわれは完璧なスウィングを追い求める余り、スウィング理論にがんじがらめにされ、錯乱状態になっているのではなかろうか?ということです。それを悟ったのは、ゴルフと日本人の語学習得に共通項があるような気がしたからでした。

日本には小学校、中学校、高校、そして大学にすらネイティヴ・スピーカーがゼロに近いせいで、英会話の授業はなく、英文解釈、英文法、英作文だけをみっちり教えられます。高校入試、大学入試にもそれらが重視されるため、ますます読み書きと文法の勉強を強いられます。

カミさんの友達のジョージア州に住むアメリカ人で、以前日本で英会話学校の講師をしていた女性がいます。日本人留学生とアメリカ人との交流の場で、この元講師はいつも苛々させられるとこぼしていました。アメリカ人の質問に、日本人留学生たちはすぐには答えず沈黙しているのだそうです。元講師は"Say something! Say something!"(何か云いなさい!何でもいいから云いなさい!)とハッパをかけなくてはならないとか。アメリカでは、何も云わないのは意見がない、即ち低能であるとみなされるのだ…と説明してくれました。

私には日本人留学生の態度がよく解ります。彼(あるいは彼女)は頭の中で英作文をし、その文が文法的に正しいかどうか秘かにチェックしているのです。「これでよし」となって初めて口を開くのです。しかし、私の経験から云うと、もうその頃にはグループの話題はとっくに別なものに移っていて、いまさら答えても場違いなタイミングとなっています。仕方なく日本人留学生は沈黙を続けるしかない。日本人留学生は、会話を優先させない日本の英語教育の犠牲者なのです。

今は変わったでしょうが、中国から全世界に商売に飛び出して行った昔の華僑たちは「通じりゃいいんだ」という会話をしました。彼らは文法なんか教わっていませんから、単語を並べるだけ。食っていかなきゃならないので真剣です。「これ買うよろし。これ真好(Very good)。低廉低廉(安い安い)。あなた奥さん完全幸福。さ、買うよろしね!」てな調子。

 

われわれはゴルフも,日本人留学生のように文法に忠実に実行しようとします。体重よし、グリップよし、アライメントよし、左腕を伸ばすんだ!スウェイするなよ!ターゲットに背中を向ける!よし、行け!どっかーんっ!

言語というものは「初めに言葉ありき」であって、「初めに文法ありき」ではありません。みんなが喋っている言語を体系化したものが文法に過ぎません。それなのに、日本人は英文法でがんじがらめにされている。ゴルフも、羊飼いがモグラの穴に石ころを入れるという「初めにゲームありき」でした。ゴルフ理論は、上手い人がやっていることを体系化したものに過ぎません。例えば、Tom Morris(トム・モリス)親子とかJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)などの技法。ゴルフ場は遠いし料金が高いせいもあって(←ネイティヴ・スピーカーと会話する機会が少ないことに類似)、日本人は理論(=英文法)の研究に余念がなく、練習だけに精を出す。

ツァー・プロTom Kite(トム・カイト)は「パットのタッチを身につけよ」という記事で、「練習道具は完璧なストロークを習得する助けにはなるだろうが、活き活きしたパットをするタッチが身につくわけではない」と断言しています。文法的に完全な英文を作り上げたとしても、現実の場面で即座に発言出来なければ活き活きとした会話に参加出来ないのと同じことです。

私の住んでいる町には、独立したゴルフ練習場(打ちっ放し)というものがありません(昔あったけど、つぶれた)。四つあるゴルフ場はそれぞれ練習場を備えていますが、グリーン・フィーに較べて練習ボール代が高い。従って、大人も子供もいきなりコースに出て行くというケースが多くなります。云ってみれば、文法を習わずに外国語を喋る華僑のようなもの。私の知っているアメリカ人で、この方式によって二年ぐらいの間にめきめき上達した男がいました。日本のゴルフの反対です。

われわれも文法(理論)に縛られない自由闊達なゴルフをすべきではないでしょうか。本能的に球を打つ。見てくれが悪くたっていい、上がってなんぼなのですから。

(December 28, 2016)

ゴルフ金言集 Part 25

 

[Player]

以下の名言集は当サイトが独自に収集・翻訳したものです。無断転載・引用を禁じます。

「ゴルフは答えのないパズルのようなものだ。私は40年以上プレイしているが、どうやったらいいのか今も途方に暮れている」
Gary Player(ゲアリ・プレイヤー、図上)

「ゴルフで最も困難なのは、何千人もの観衆が見守る前で最初のティー・ショットを放つ際に、ボールがどこへ飛ぶかさっぱり見当がつかないことだ」
Byron Nelson(バイロン・ネルスン)

「全てのホールでパットを捩じ込もうというゴルファーは、スリー・パットするのが常である」
Sam Snead(サム・スニード)

「多くのパットを捩じ込もうなどと夢見たことはさらさらなかった。多分、それが多くのパットに成功した理由だろう」
Calvin Peet(カルヴァン・ピート、各ツァーで14勝した黒人プロ)

「1メートル以下のパットでカップの縁の外を狙ってはならない。カップの下側でブレイクすることは稀である」
Curtis Strange(カーティス・ストレンジ)

[Langer

「ゴルフにおいては、他のいかなるスポーツとも異なり、主な敵は自分自身である」
Herbert Warren Wind(ハーバート・ウォーレン・ウインド、ゴルフ・ライター)

「ショットを台無しにするのは、身体のせいよりも精神によってである」
Tommy Bolt(トミィ・ボルト)

「決断せよ。間違った決断でさえ、一般的に云って不決断ほど悲惨な結果は招かない」
Bernhard Langer(ベルンハード・ランガー、図下)

「Tiger(タイガー)をストップさせられるのはたった二つ、怪我か不幸な結婚だけだ」
Dan Jenkins(ダン・ジェンキンズ、ゴルフ・ライター)【編註:2001年に発せられた見事な予言】

「ホッケーは白人のスポーツ、バスケットボールは黒人のスポーツ。ゴルフは黒人のポン引きのような出で立ちをした白人のスポーツだ」
Tiger Woods(タイガー・ウッズ)

「これまでの人生を、ずっとJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)のようにプレイしたいと願って来た。いまやそれが叶ったのだ」
Paul Harvey(ポール・ハーヴィ、ラジオのキャスター、Jack Nicklausがあるトーナメントで83を叩いた際のコメント)

「ゴルフは服を脱がずに楽しめる最高のものだ」
Chi-Chi Rodriguez(チ・チ・ロドリゲス)


(January 01, 2017)

二つのボックスの深化

スウェーデン出身のコーチPia Nilsson(ピア・ニルソン)は、Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)に「全てのホールをバーディで廻る」という'Vision54'という理念を植え付けた女性。彼女はアメリカ人女性インストラクターLynn Marriott(リン・マリオット)と組んで'GOLF54'というゴルフ・スクールをアリゾナ州に開設しました。二人の共著の三冊目は「今すぐ、あなたのベストのゲームをせよ」というのが原題。この本には、本編に入る前にゴルフ・プロ男女12人、有名コーチ18人、業界人14人、ゴルフ・ライター9人、リサーチャー6人、計59人の推薦文が並べられています。こんなに多数の推薦文を並べた本も珍しい。推薦者の一人、宮里 藍は次のような文を寄せています。

「Lynn(リン)とPia(ピア)は、私がゴルフというゲームに抱いている喜びと情熱を、さらに完全に実感する方法を教えてくれた。二人は、魔法のような力は実現可能であり、ゴルフ・コースで私が達する限界というものは、私の信念の限界に過ぎないことを示してくれた。偉大なプレイを信ずるなら、それは実現するのだ」

先ず、二人の最初の著作'Every Shot Must Have a Purpose'(原題:どのショットも意図がなくてはならない)で提示された「二つのボックス」という概念についておさらいしておきましょう。

[2 boxes]

「ティー・グラウンドにボールをセットしたら、ボールの周りにバッター・ボックスのような領域を視覚化する。そのターゲット・ライン後方にも同じ大きさのボックスを視覚化し、後者を"THINK BOX"(思考ボックス)と呼び、前者を"PLAY BOX"(実行ボックス)と呼ぶ。二つのボックスの間に線があると想定し、それを"DECISION LINE"(決断ライン)と呼ぶ。『思考ボックス』においては、風・湿度・地形・レイアウト・ライ・作戦・軌道・体調など全てを勘案して、クラブ選択の是非やターゲットの設定に思考を凝らす。そして、「これでよし!」となったら『決断ライン』を越えて『実行ボックス』に移動する。いったん『決断ライン』を越えたら一切の思考活動を停止し、自分の持てるベストのスウィングを実行することに集中する」

'Play Your Best Golf Now'
by Pia Nilsson and Lynn Marriott with Ron Sirak (Avery, 2011, $23.00)

この本では、最高のパフォーマンスを発揮するための「八つの必須技能」というものが提示されていますが、「決断ライン」を越えて「実行ボックス」に移った時、何も考えないことが最も重要とされています。「心を置き去りにせよ」と題されたこの章は、ゴルフの本としては(女性が執筆した本としても)非常に珍しく、F-16ジェット戦闘機のコックピットの描写で始まります。

「F-16のコックピットには無数の計器があり、無数の情報が表示される。ターゲットを捉えたことを表す計器、こちらがターゲットにされたことを警告する計器もある。人間(パイロット)と機械類は一体化しなければならない。いざ戦闘状態に入ったら本能によって行動する。考えている余裕はない。これは文字通り生きるか死ぬかの状況である。成功するには疑念を持ったり逡巡してはならない。何千時間もの訓練と経験が、戦闘機パイロットの使命遂行に必要な瞬時の判断、行動、反応の連続に転化される。F-16ジェット戦闘機のコックピットにいるのは、『実行ボックス』にいることと同じである。

『実行ボックス』の重要性を単に理解するだけでは充分ではない。『実行ボックス』を機能させるルーティーンをマスターせねばならない。

『実行ボックス』で成功するにはいくつかの学習段階が必要であることが判った。先ず第一に、思考と感覚の違いを知らねばならない。それはダンスについて考えることとダンスすることの違いであり、正しいグリップについて考えることと、それを実際に感じることとの違いである。リサーチは、最高のパフォーマンスを生むには右脳を働かせる必要があることを示している。右脳は直感、視覚化、知覚認識等の仕事を担当する。ベストのプレイをするには『思考ボックス』で左脳を用い、『実行ボックス』で右脳を用いる。その切り替えを学ばねばならない。

 

『実行ボックス』では現在時制に留まることを学ぶ必要もある。未来時制に走ったり技術的な想念に囚われてはいけない。心を現在から彷徨い出させてはいけないのだ。

感覚的に現在時制に留まるベストの手段をも、試行錯誤しつつ見つける必要がある。Tiger Woods(タイガー・ウッズ)は彼がベストの状態の時、彼の両手にショットを感じ取るそうだ。Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)はショットを視覚化し、次いでそのショットをお腹で感じてから『実行ボックス』に踏み込んだと云っている。あなたもスウィング全体やストロークにそんな風な知覚認識出来る手段を発見し、それを開発すべきである。

水泳をする時、どう泳ぐか考えたりしない。自転車に乗る時、どういう風に乗るか考えたりしない、歩く時、歩行動作に心を集中させたりしない。単に泳ぎ、乗り、歩く。ゴルフでも同じ。考えるな、プレイせよ!ゴルフはスポーツである。チェスの試合ではない。どちらかと云えば、F-16を飛ばすのに似ている。ボールにアドレスしながら、心の中で手をどうすべきか、脚をどうすべきか等のチェックリストに従ってボールを打つなど、超音速で飛ぶジェット戦闘機のコックピットでチェクリストを読み上げるのと同じように不可能である。何をすべきかはよく分っているのだから、ただ実行せよ。

『実行ボックス』に疑念や躊躇いなどを持ち込んではいけない。ボールを打つ段になったら、泳ぎ、自転車に乗り、歩く時と同じように、不安や疑念や躊躇を持ち込んではいけないのだ。何が何でも、考えないこと。ショットを感じ、そのショットを生きる。だが、その境地は長続きするものではない。だから『実行ボックス』の滞在時間は短い方がよい。よいゴルファーたちは、『実行ボックス』に踏み込んでからスウィング開始までのルーティーンを、4〜9秒で完了する。それ以上長いと、自分で自分の心をかき乱し、自分自身への余計な語りかけが始まる恐れがある。

『実行ボックス』滞在時間は、どのホールでも常に一定であるべきだ。プレッシャー下であっても遅くしたり早くしたりしないこと。

『実行ボックス』にスウィングのチェック・リストを持ち込んではいけないが、心を空っぽにして『実行ボックス』に踏み込むのも無謀である。自然というものは真空状態を嫌い、すぐさま何かで埋め尽くそうとする。特に、知性は『実行ボックス』に何かを持ち込むのが好きだ。知性を沈黙させよ。

No.15にさしかかる頃になると『実行ボックス』はその輝きを失い、パワーが衰え、あなたの心も『実行ボックス』にいるという自覚を薄れさせてしまう。ゴルフする喜びは、No.1ティーでのチクチクするような感覚から、ごた混ぜの気が散るような想念大全集へと変貌し、あなたの集中力は風前の灯となっている。『実行ボックス』は、能動的でなく受動的になり下がっているのだ。『実行ボックス』での成功の秘訣は、『実行ボックス』に入っているという自覚を強固にすることだ。それがあなたを交戦状態に留まらせる。これがプレイするプロセスと常に一体化し続ける方法である」

この本の第六章は「自分のテンポを感じとり、そのリズムに合わせて踊れ」という題で、主役は宮里 藍です。

 

【参照】
・「二つのボックス」(tips_101.html)
・Tommy Bolt(トミィ・ボルト)の「マスル・メモリを信頼せよ」(tips_172.html)
・「Jason Day(ジェイスン・デイ)の秘密兵器」(tips_176.html)
・「Golf in the Zone(ゴルフ・イン・ザ・ゾーン)」(tips_16.html)
・「集中」(tips_26.html)
・「集中ゾーンに入る」(tips_53.html)
・「集中の神経メカニズム」(tips_160.html)

(January 01, 2017)

破滅的ラウンドから優勝戦線へと逆転する秘策

 

PGAツァー・プロと臨床心理学者による共著という珍しい本。著者の一人Chip Beck(チップ・ベック)はPGAツァー他で五勝しか挙げていませんが、1991年のあるトーナメント(パー72コース)の三日目に、五つのパー、13のバーディで59を達成したことで有名。

'Focused for Golf'
by Waynen Glad, PhD and Chip Beck (Human Kinetics, 1950, $16.95)

「自分に心理的後押し、もっと懸命にプレイする動機、困難に耐える心…などが必要な時、私は頭の中で“TPC体験”を再現する。目を閉じ、1989年のTPC【註】の最終日にプレイしている自分をイメージするのだ。私はトップとタイでスタートしたのだが、お粗末なスタートを切った。No.1のティー・ショットをフェアウェイに放ったものの、4番アイアンをグリーン左にプルし、パーが得られなかった。アウトを42にした私の目に涙が滲んだ。私は落ち込んだ。インに向かう際、私はトーナメント・リーダーからかなり下になっていたが、インで頑張ればどうなるか分らないと考えた。

【編註】TPC Sawgrass(TPCソーグラス)で行われたTHE PLAYERS Championship(プレイヤーズ選手権)。

その時点で、私は自分にこう語りかけた。『よし、素晴らしいハーフを終えたフリをしよう』 何もかも良くなかったのだから、心理を変えようとしたのだ。No.10ティーから、結構うまくグリーンを攻め、3〜4.6メートルのダウンヒルのパットが残った。実際のところ、この時点で私にはそれを捩じ込む自信のかけらもなかったので、私はこれ以前に似たようなパットを成功させたフリをし、『あんれまあ、結構じゃないの!前に成功したんだし、これが沈むところをイメージ出来れば、またもや成功もあり得るぜ』と自分に云い聞かせた。こうして私は、頭の中で“見事なパット”をでっち上げておさらいし、目の前のもまた沈めるつもりでストロークした。何と、そのパットは成功した。これは鍵となるパットだった。

この時私の同伴競技者はTom Kite(トム・カイト)だったが、私が基本的にアウトで戦線から脱落した後、彼は私が後半になって彼を脅かす存在になるなどと考えてもいなかったと思う。私だって最後の最後まで、私がもし最終ホールでバーディ・パットを沈めれば、私に優勝のチャンスが巡って来るだろうなどとは夢にも思えなかった。私は7.5〜9メートルの信じられないようなバーディ・パットを成功させた。Tom Kiteはグリーン手前から2パットで優勝出来る余裕があり、事実彼が優勝した。

 

私にとっては、42の失望を克服し、32で廻れて二位に入れたフィニッシュは勝利そのものであった。私は、自分が感じていた落ち込みを大変換出来たこの瞬間が誇らしかった。失望を克服出来れば、偉大なことが達成出来るのだ。私は、競り合う心理状態に留まる必要がある時、今もこのTPC体験を頭の中に蘇らせる。

トーナメント終了まで諦めてはいけない。あなたの心に落胆と失望が押し寄せた時、それらにあなたのゲームを破壊させるのでなく、自分の気持ちと心理を少しでも変えることが出来れば、いいフィニッシュを迎える素晴らしいチャンスと、優勝の可能性さえも持てるのだ。もちろん、いつも望ましい結果が得られるわけではないだろうが、あなたは自分のベストを尽くしたという満足感に浸ることが出来る。私には、その満足感は究極的成功であると思う」

【参考】「可能性を信じる」(tips_111.html)…Chip Beckの59のスポーツ心理学者による分析。

(January 11, 2017)

君、練習名人となる勿れ

 

'GOLF54'の二人組のコーチPia Nilsson(ピア・ニルソン)と女性インストラクターLynn Marriott(リン・マリオット)の三冊目の共著「今すぐ、あなたのベストのゲームをせよ」より。

[2 boxes]

'Play Your Best Golf Now'
by Pia Nilsson and Lynn Marriott with Ron Sirak (Avery, 2011, $23.00)

「現在のあなたの練習法は、コースでよいプレイをするための練習になっていない。あなたはターゲットやプレショット・ルーティーンも無しに、完璧なライから1ダースもの8番アイアンによるショットを打ったりする。そういう練習は完璧なライから完璧な8番アイアンの距離で、しかも何発も打ち直し出来る状況での助けとなるだけである。あなたの過去にそんなラウンドが何度あっただろう?【編註:あるわけない】

リサーチの結果は、練習すればその技能に習熟出来ると伝えている。箸の使い方を練習すれば箸で食べることが上手になる。練習場で練習すれば、練習場でうまく打つことが上手になる。しかしあなたの目的は、練習場でうまく打つことではなく、ゴルフ・コースでよいプレイをしたいということの筈だ。その目的を達成するには、ゴルフ・コースでのプレイに向けて全力を傾注することだ。あなたがコースでプレイ出来ない時でも、出来る限りラウンドしているような練習をすべきである。これをシミュレーション・ゴルフと呼ぶ。ゴルフが上手くなりたいのであれば、練習の少なくとも半分は実際のゴルフ的状況で時間を使う必要がある。

熟練したピアニストは、ある楽節だけ何度も何度も弾いたりしない。実際に演奏するように練習する。ゴルフでも、同じショットを続けざまに打ったりすべきではないのだ。

何も考えずにボールを打ってはならない。コースではどのショットも異なり、どのショットも挑戦であり冒険である。では、練習場でどうやってそういう状況を作り出すか?
・毎回クラブを替える。
・ターゲットも変える。
・必ずプレショット・ルーティーンを実行する。
・競技に参加しているイメージによってテンションを作り出す。

シミュレートする状況を具体的にすること。例えば、一打差でリードしており、グリーンに乗せて2パットで上がらねばならない…というように。また、向かい風が吹いているため、5番アイアンにすべきか6番にするか決断を迫られている…とか。練習場で想像上のラウンドを遂行するべし。スロープレイに悩まされているとか、群衆がひしめき合ってお喋りしているという風な、集中困難な場面も導入せよ。完璧なライ・完璧なシチュエーションだけで練習してはならない。心を毎回調整し直すこと。フルショットではない部分ショットも交えること」

(January 25, 2017)

[Kite] Harvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)が教えた練習法

伝説的インストラクターHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)の愛弟子の一人Tom Kite(トム・カイト)が明かす練習法の奥義。'GOLF54'の「君、練習名人となる勿れ」に通じるものがあります。

'How to Play Consistent Golf'
by Tom Kite with Larry Dennis (Pocket Books, 1990, $14.00)

「Mr. Penick(ミスタ・ピーニック)No.1の優先事項は、ゴルフをプレイすることを教えることだった。彼は私たちがプレイするように練習し、練習のようにプレイすることを望んだ。彼は練習場でも全て本番のように行えと強調した。

例えば、われわれが(多くのゴルファーがやるように)ボールの山から一個掻き寄せて、ディヴォット跡の前や後ろに置くのを好まなかった。彼はわれわれがゴルフ・コースで滅多に見かけない理想的なライで練習するのを好まなかったのだ。コースでボールがディヴォット跡を転がり出て、その端の上にちょこんと座るなんて確率は、一生の間に1ダースも見られない凄いことだ。丸いゴルフボールは、最も低い地点に入り込む傾向があるのだから、そこから打つ練習をすべきなのだ。コースではプレイ中のボールにタッチ出来ない。だったら、どうして練習場でボールにタッチするのか?

Mr. Penickはわれわれがボールの山から一個をポンと弾き、どこであれそれが止まった場所から打つのを好んだ。それがディヴォット跡で止まったら、そこから打つ。あなたが私と同じように練習していれば、地面はディヴォット跡だらけの筈だ。私は成長期に、沢山ディヴォット跡から打った。そういう練習をしておくと、コースのライはみなティーに乗っているも同然に見えるようになる。

この練習法は、スウィングの基本を学んでいるゴルファーには向いていない。気を挫かぬよう、彼らにはいいライが必要だ。だが、彼らがコースに出る頃になれば、コースで遭遇するライから打つ必要が出て来る。Mr. Penickはどうスウィングするか以上に、どうプレイするかを教えてくれた。生徒たちに実戦モードの考え方を身につけさせたのだ。

勿論、目的を持って練習せねばならない。セットアップの基本や、プレショット・ルーティーン、そしてスウィングの練習は必須である。練習すればするほど、それを繰り返すことが容易になる。だが、練習が単に"swing thought"(スウィングの留意事項)に寄りかかっているとしたら、効率のよい練習とは云えない。コースで"swing thought"を忘れられるように練習するのだ」

【参考】「Tom Kite(トム・カイト)の練習」(tips_75.html)

 

(January 25, 2017)

Corey Pavin(コリィ・ペイヴン)の クリエイティヴに練習せよ

Corey Pavin(コリィ・ペイヴン、1959〜)は、U.S.オープン1995の優勝者で、2010年の欧米対抗戦Ryder Cup(ライダー・カップ)のキャプテンも務めました。ロング・ヒッターではないものの、ショット・メーキングの名人と云われています。

'Corey Pavin's Shotmaking'
Corey Pavin with Guy Yocom (NYT Special Services, Inc., 1996, $14.00)

「私が練習場で見かける“練習みたいなもの”は、永続的上達に貢献するものとは思えない。ハイハンデの者はどう練習すべきか、計画を立てない。彼らは三本か四本のクラブで、バケツ一杯のボールを機関銃のように乱射し、No.1ティーへと向かって行く。そういうアマチュアたちは、効果的練習法を知らないのだ。私がいくつかのtipを上げよう。

・同じショットを二度続けるな

コースでは、OBでも出さない限り、あるショットを打つ機会はたった一度しかない。その心構えを練習場でも抱くべきだ。ドローを10発も続けて打つのは建設的とは云えない。何故なら、最初の一発だけがドローに相応しいスウィングだったかどうかを教えてくれるに過ぎないからだ。

ごた混ぜの練習をすべきだ。7番アイアンを手にしているなら、最初の一打を高く上げ、次のを低く打つ。続けてフェードを打ち、ドローを打つ。こうした変化はあなたをセットアップに集中させ、心を新鮮にし続ける。どのショットも挑戦であり、ボールを効率的に働かせるために必要な理解と動作を身につけさせてくれる。

・練習場ではなく、コースでプレイしているイメージで打て

 

漠然と広い練習場を見ているのでは、ターゲットも遠くのぼやけたものになり易い。アマチュアの多くは、打ったボールがまだ地面に届いてもいないうちに次のボールを掻き寄せたりする。ターゲットを特定せよ。練習場内でグリーンやフェアウェイを想像し、それに向かって正確に打つよう努力する。特に距離に注意。練習場のヤード表示は正確でないことで有名だから、それらは無視し、前のショットと較べてどうだったかに注目すること。

・馬鹿げたショットを数多く打て

フェードやドローを急速にマスターしたければ、通常のコースでの本番では夢にも打とうとしないショットを練習すべきだ。5番アイアンで10ヤード曲がるドローを打とうとするのでなく、凄いフックを打つように誇張したセットアップで20ヤードのドローを打つ。ドライヴァーで150ヤードを打つとか、4番ウッドで頭の高さのパンチ・ショットを打つ、2番アイアンで大きなスライスをを打つ…等々。これらはトラブル・ショットの練習としても最適だし、とても愉快なものだ」

(January 25, 2017)

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