Golf Tips Vol. 176

プレッシャーに抗する

 

筆者Corey Pavin(コリィ・ペイヴン、1959〜)は、U.S.オープン1995の優勝者で、2010年の欧米対抗戦Ryder Cup(ライダー・カップ)のキャプテンも務めました。ロング・ヒッターではないものの、ショット・メーキングは名人級とされています。

[Corey]

'Corey Pavin's Shotmaking'
Corey Pavin with Guy Yocom (NYT Special Services, Inc., 1996, $14.00)

「プレッシャーというものは個人個人に異なる様相で襲いかかる。だが、いずれの場合もショットメーキングを大きく弱める影響を与える。ショットを創造するには想像力とスッキリした精神が必要だ。ところがプレッシャーはあなたの思考力を曇らせてしまうため、ショットの視覚化が適切に行えなくなる。それはまた、肉体を強ばらせもするので、特殊なショットをする際に必要なスウィングの型を作るのを困難にする。

不幸にも、プレッシャーをうまく処理する王道はない。プレッシャーに対する最も一般的な反応は、失敗への恐れだ。誰しも見物人たちの前で馬鹿のように見えたくないし、誰しもプレッシャー下でビビった男という烙印を押されたくない。その失敗への恐れは、あなたにターゲットに果敢にボールを打たせるよりも、どこに打ったらいけないかに注意を向かわせる。あなたがプレッシャーに慣れていないゴルファーなら、フェアウェイやグリーンが目に入らなくなる。突如バンカーや池が大きく見え、あなたのボールを誘い込むために待ち受ける巨大な罠に思えて来る。ネガティヴ・パターンの思考が忍び寄って来るのだ。もしあなたが失敗すると考えるなら、あなたが失敗するのはほぼ確実となる。

メカニカルな観点から見たプレッシャー対処法は、可能な限りあなたが習熟している頼りになるショットを打つということに尽きる。もしドローが必要な場面に直面していても、あなたにはフェードの方が打ち易いと感じられたら、迷うことなくフェードを打つべきだ。あなたに可能な範囲でプレイせよ。

恐怖のもう一つのタイプは、ちょっと尋常ではない。それは成功への恐れだ。他の人々があなたに期待する成功と、あなたが守らねばならない名声・評判である。ある人々は次のように成功した後の影響を恐れる。『クラブ・チャンピオンを打ち負かしたら、以後クラブのNo.1ゴルファーとしてプレイしなければならない。日々そんなプレッシャーに耐えられるとは思えない』 他人の期待など気にすべきではない。唯一重要な基準はあなた自身のものだ。他の人々がどう考えるかを慮るのは、能力低下への一本道だ。あなたがどうすべきか考える時には、あなた自身の基準で考えるべきであって他の人々の想念など無視すべきである。

プレッシャーを一掃するのは不可能だが、緊張している時の助けとなるいくつかのテクニックがある。

・肩をリラックスさせよ

プレッシャーは肉体的緊張を生み出す。多くの場合、首と肩の辺りに緊張が忍び寄るので、肩が実質的に持ち上がってしまう。この強ばりはあなたの回転能力に影響し、スウィングを短く、急速にさせる。出来るだけ肩を楽にし続けることに集中すること。ボールに向かう前に、肩と腕をさらに緊張させ、ゆっくりリラックスさせる。こうすれば、肩が落ちるのを感じ取れる。

・深呼吸する

このtipは至極簡単に思えるだろうが、プレッシャー下では忘れ易いものなのだ。プレショット・ルーティーンを開始する前に、深呼吸する。鼻から空気を吸い込み、口から排気する。これは血流に必要な酸素を供給するだけでなく、心を落ち着かせる効果がある。

・全てをスロー・ダウンせよ

プレッシャー下では早く歩き、早くスウィングし、考えるのも早くなる。全てをスロー・ダウンさせるために意識的に努力せよ。ボールに歩み寄る際の速度を落とし、歩幅も小さくする。ボールの場所に到着したら、ゆっくり時間をかける。私はスロー・プレイを推奨しているのではない。そうではなく、これらの配慮によって通常のスピードに戻すのだ。最も重要なのはゆっくりスウィングすることだ。スウィングする前に考えるべきなのは、スムーズなテンポでリズミカルにスウィングするということだ」

(October 09, 2016)

喋ってすぐ打ってはならない

Lee Trevino(リー・トレヴィノ)は観客や同伴プレイヤーたちと冗談を云い、「ガハハ…」と馬鹿笑いした直後、一変真顔になって素晴らしいショットを放ったそうです。しかし、われわれはLee Trevinoではありません。打つ前の誰かとの会話は要注意です。

ゴルフ・スウィングは右脳の働きで遂行されるべきものと云われています。距離を測り、障害物や風向きを点検し、クラブとスウィングの種類を選択する…等は左脳の仕事ですが、そこからのスウィング遂行は右脳あるいは潜在意識(あるいはマスル・メモリ)に任せるべきなのです。お喋りをするのは言語を理解する左脳の仕事であり、われわれ人間は会話を止めた後もしばらくその意味を反芻したり、言葉の自他への影響を推し量ったりするものです。つまり、会話をピタッとやめても、われわれの左脳は依然として活動を続けており、右脳に行動の全権を委ねていないのです。

会話を終えて何分待つべきか、確たるデータは持ち合わせていませんが、アドレス中も喋っているなどは自殺行為でしょう。シニア・グループの中でもお喋りで冗談好きの男が、あるティー・グラウンドでアドレス前からアドレス中まで他の仲間と喋っていました。私は「まずいな。仕切り直ししないといかんぞ」と思いましたが、磊落な男はそのまま打ってしまいました。谷越えなので高いボールを打たなければいけない場面なのに、その男のボールはトップしてゴロ。彼の性格はLee Trevinoに似ているとしても、会話からスウィングへの頭の切り替えの技術は到底Lee Trevinoに及ばなかったわけです。

【註】'The New Golf Mind' (1978、邦訳『ゴルフ・マインド スコア・アップへの精神、感情、心理の技術』)という本に、「少なくとも打つ30秒前にはお喋りを止めること」と書かれていました。

"Game face"(ゲーム・フェース、勝負顔)という言葉があります。Lee Trevinoは「ガハハ…」と笑った後、一瞬にして"game face"に切り替えられるのです。しかし、われわれにはそんな器用なことは出来ないと知るべきです。われわれが"game face"に戻る策として、顔を両方の掌でピタピタ叩くという手がありますが、それでも冗談で笑った顔の緩みはすぐには締まりません。いつもより数回余計な素振りをし、精神がターゲットに集中し、「打つ気」が身体に漲るまで待つべきです。

(October 09, 2016、改訂November 01, 2016)

インパクトの研究(ドリル篇)

 

TV中継解説者を辞め、いまや純粋にインストラクターとなって'impact Zone'(インパクト・ゾーン)の伝道と布教に専念しているBobby Clampet(ボビィ・クランペット)の、スウィングの「五つの基本」とそのドリル。

'How to flush it'
by Bobby Clampet ('Golf Digest,' February 2013)

「手がトップで正しい位置にあるかどうかとか、体重移動が適切かどうかなどを思い煩うよりも、最も重要な《ボールとのコンタクト》に焦点を当てて欲しい。ボールをソリッドに打つ五つの基本とドリルをお届けする。ドリルは、最初はゆっくり始め、次第にルーティーンとなるようにスピードを上げて行く。これらをマスターすれば、どのクラブにおいてもより良く打つことが可能になる。

1) ラグ(=レイト・ヒット)

バックスウィングで左手首をコックしてパワーを充填したら、それをダウンスウィングで維持する。両手は受け身であるべきで、クラブヘッドがボールに到着する前に両手はボールの真上を通過していなければならない【=両手先行】。これが“クラブヘッド・ラグ”である。それがボールを地面に対して押し潰す。

ボールがあるべき位置に小さなタオルを置く。クラブの代わりにアライメント・ロッド(アライメント・スティック、棒)を握り、スウィングを模倣する。ダウンスウィングでタオルに触れてはいけない。タオルの前方(ターゲット方向)の地面を打つこと。このドリルを実施する時、ターゲットへと向かう棒は両手の後方で遅れていなければならない。アマチュアがよくやる弾くようなスウィングだと、タオルを先に打ってしまう。慣れたら、棒をアイアンに持ち替え、タオルの前のボールを打つ。緊張しなければ、楽に出来る。

2) ボールの前方(ターゲット方向)がスウィングの最低点

真にボールを押し潰すには、スウィング弧の最低点がボールのターゲット方向10センチの地点であるべきだ。理想的には、クラブはボールを打った後なおも下降を続けて地面を抉る。アマチュアは(ダウンブローでなく)打ち上げることによってボールを宙に浮かべようとする。これはダフるだけで、絶対に地面と接触しない。

ゴルフボールの代わりにプラスティックのポーカー・チップのようなものを地面に置く。サンドウェッジを手に、ポーカー・チップにアドレスし、短いピッチングのスウィングをする。ポーカーチップの上を通過し、その先の地面と接触する。これが繰り返し出来るようになったら、スウィングのスピードを上げる。このドリルに慣れたら、ポーカーチップの上にボールを乗せ、ボールを打ってから地面を打つ。フル・スウィングでもスウィング弧の最低点がボールの前方になるように努力する。

 

3) FLW(フラットな左手首)

多くのアマチュアは左手首を折った(凹ませた)状態でボールを打つが、これは弱々しい結果を得るだけだ。理想的には、左手首はフラットか凸型でなければならない。

パターを左手だけで持ち、左手首に意識を集中しながらストロークをする。あなたのゴールは、左前腕を一直線にし続けることだ。左手一本のストロークに慣れたら、通常のグリップでボールを転がす。次いで、ソリッドな左手首によるチッピング、ピッチング、そしてフルスウィングを試す。

4) 目標に向かうスウィング軌道

クラブフェースがターゲットにスクウェアで、クラブの軌道がターゲットに向かえば、ボールは真っ直ぐに飛ぶ。ソリッドに打っても、クラブの軌道が逸れていれば、ボールはターゲットに向かわない。

バンカーに三目並べの碁盤目を描く。両肩と平行な線がターゲットライン、垂直な線をボール位置とする。浅いディヴォットを取るスウィングをする。砂に残された痕が次のようなことを物語る。1) スウィング軌道がターゲットを向いていたかどうか、2) スウィング弧の最低点がボールのターゲット側であったかどうか、3) クラブフェースの真ん中で打ったかどうか。

【註】ヴィデオは練習場所としてバンカーを用いているだけで、バンカーショットの練習をしているわけではありません。

5) スクウェアなクラブフェース

グリップが前腕の回転を規定する。ストロング・グリップなら、両腕はターゲットから遠ざかるように回転するので、ウィーク・グリップのように前腕の回転を必要としない。

アイアンのシャフトの半ばでグリップし、脇の下にグリップエンドをアンカーリングする。捻転を含むスウィングをシミュレートし、ゴルフバッグのような柔らかいものに打ち付ける。クラブのリーディングエッジ全体がその表面を打つべきである。もし、ヒールが先に当たれば、もっと前腕の回転が必要だし、トゥが先なら回転は少なくてよい。正しい配分になるまで練習すること」

 

【参照】
・「インパクトの研究」(tips_112.html)
・「The Golfing Machine」(tips_87.html)
・「インパクトの研究(チッピング篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(ピッチング篇)」(tips_131.html)
・「インパクトの研究(フルスウィング篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(ドライヴァー篇)」(tips_114.html)
・「インパクトの研究(レイトヒット篇)」(tips_131.html)
・「インパクトの研究(パット篇)」(tips_112.html)
・「インパクトの研究(道具篇)」(tips_113.html)
・「インパクトの研究(練習篇)」(tips_131.html)
・「インパクトの研究(照準篇)」(tips_131.html)
・「なぜディヴォットが取れないのか?」(tips_131.html)

(October 16, 2016)

ボールを押し潰すドリル

'Strike zone'
edited by Devid DeNunzio ('Golf Magazine,' February 2016)

「ボールを押し潰せるかどうかは、全て攻撃角度の問題である。インパクトへの完璧な軌道に磨きをかけるには、次のドリルを試されたい。

「ボールの背面直近の地面にティーを斜めに刺す。【編註:ティーはターゲット方向に向かって刺され、頭だけ残して深く埋め込む】セットアップする際、トンカチで木に釘を打つようにクラブヘッドでティーを地面深く埋め込む様(さま)を視覚化する。その後、そのイメージ通りにスウィングする。ボールはあなたに借金してる奴のように素っ飛んで行くことだろう」

(October 16, 2016)

Speed Stik(スピード・スティック)類似品を作る

シニア・グループのゴルファーの一人Keith Adams(キース・アダムズ)は退職後、ほぼ毎日ラウンドしています。シニア・グループは月・水・金の三日しかゲームをしないので、火・木・土・日はゴルフ場で出会う誰彼構わず捉まえて一緒に廻っているようです。その彼が何度かラウンドしたゴルファーの目覚ましい進歩について話してくれました。

その男性(40代)はプライヴェート・ジェット機の雇われパイロットで、三週間前にトレーニング道具Speed Stik(スピード・スティック)【註】を購入したのだそうです。これはよくある練習用の重いクラブに特別な工夫を加えたものです。重いクラブ同様、先端にはクラブヘッドの代わりに錘(おもり)が付いています。手元に近い方のシャフトにある磁力設定ダイヤルに可動式錘が磁石でくっ付いています。スウィングすると磁石でくっついていた錘が遠心力によって離れ、シャフトを滑り降りて先端の錘に衝突して「ガチッ!」という音がする仕掛け。

【註】過去に同名の練習道具がありますが、今紹介しているものは最近売り出された新製品です。右のヴィデオ参照。

その「ガチッ!」という音はインパクト・ゾーンで出なければいけません。それがレイト・ヒットを実現している証拠です。インパクト以前に音が出るのは、早期にアンコックしてエネルギーを浪費しているサインで、スウィングそのものあるいはテンポを改造する必要があります。

なお、工夫されている点は磁力の強さを五段階に変えられること。「1」は磁力が弱く、遅めのスウィングでも磁力設定ダイヤルから離れますが、「5」にすると磁力が強くなり、かなりパワフルにスウィングしないと錘が離れない仕掛けだそうです。

私はこの製品のTV-CMを、The Golf Channel(ゴルフ・チャネル)で嫌と云う程見せられていました。しかし、こういう練習道具は出現しては泡沫(うたかた)のように消えて行くものと相場は決まっているので、注意して見たことは一度もありませんでした。

 

Keithは、三週間前と後でのこのパイロットの飛距離の差に驚かされたそうです。大雑把に云って20ヤードは伸びていたとのこと。この製品の謳い文句は「一日20回の練習スウィングで20ヤード伸びる」というものですが、それをそっくりそのまま実現したことになります。

私は俄にこの製品が気になり出し、販売元のサイトgetspeedstik.comを訪れてみました。価格が送料込み$99.00というのにびっくり。高い!

Speed Stikは磁石という工夫を織り込んではいるものの、基本的には練習用の重いクラブと同じ、筋肉鍛錬が目的の道具だと思います。それに、スウィングのどこでアンコックしているかを知る音を出す仕掛けが加わっただけ。後者はクラブヘッドを握ってスウィングしてハンドルが「ヒューっ!」という音を出す練習同様、その音をインパクトで出すように努力すべきだという、昔からよく知られたアイデアです。

GolfWRXというサイトに、Speed Stikを購入し、詳細なリヴューを投稿している人がいました。この人は40歳(ゴルフ歴30年)で、ハンデは4、スウィングスピードは44.7 m/sだそうです。【参照】http://www.golfwrx.com/forums/topic/1383104-review-of-speed-stik-xccelerator-training-aid/
以下はこの人のリヴュー要旨。

「・Speed Stikは3番ウッドか5番ウッドのシャフトの長さ(43インチ)なのに、440グラムという6番か7番アイアンのスウィング・ウェイトで、バランス・ポイントはシャフトの真ん中。計算上このスウィング・ウェイトは低過ぎる。ドライヴァーの長さの44〜45インチにすべきだ。

440グラムはドライヴァーの練習には重過ぎる。普通のドライヴァーの重さは330グラムなので、トレーニングのためには297〜363グラム以内にすべきである。あまりに重いものは、ゴルファーのスウィングスピードを増すどころか減少させてしまう。

・宣伝では磁石の強さが可変とされているが、レーダー分析装置を用いた検証によれば、磁力の最も弱い設定で17.9 m/s、最も強い設定で26.8 m/sであった。スウィングスピードが平均40.2 m/sの一般のゴルファーにとっては、これではトレーニングにならないし、44.7 m/sの私には弱過ぎる。初心者、女性、子供にはいいだろうが。

[my stik]

・可動式錘が磁力設定ダイヤルを離れて下の錘に衝突する際、手首と肘に痛みを感じる。双方の錘に音を出すための金属が固定されていて、衝撃吸収材が無いせいだ。痛いの何の。数回振るだけならいいとしても,毎日は使いたくはない」

私のスウィングスピードは遅めなのですが、その私にすら役に立たないスペックのようです。買わなくて良かった。

例によって類似品を作れないかと思案しました。私はドーナツ型の錘を二個持っており、それを利用出来るのではないか。ドーナツ二個だと約500グラムなので、上のリヴューによればこれは重過ぎます。一個で充分のようです。ドーナツに1.5メートルのゴム紐を通して、折り返して二重にし、ゴム紐の端を輪にして左手首に絡めて保持し、そのドーナツの穴を古いサンドウェッジのシャフトに通す。ドーナツの先端がクラブヘッドの上から13センチぐらい離れるように調節。スウィングするとドーナツが重力によってゴム紐を伸ばし、クラブヘッドと衝突します。これだけだと鈍い音しかしないので、ヘッドの根元に金属リングを針金で括り付けました。インパクトで錘がリングとクラブヘッドに当り、ガチャリと音がします。99ドルの節約、一丁上がり \(^o^)/。

この道具は重いクラブを振るのと実質的に変わりませんが、錘が動くのが面白いし、アンコックの瞬間が音で判るので目的意識が湧く効果があります。ダンベルを使うトレーニングよりは遥かにやる気が起きます。とりあえず、これを数週間振ってみようと思います。

なお、Speed Stik販売元は購買者に「毎日20回振れ」と指示しているのですが、筋肉鍛錬が目的ならこれは一日置きであるべきでしょう。理学療法と整形外科療法を修めたNeil Chasan(ニール・チャザン)は「鍛錬の中日(なかび)は筋肉組織を安定させ、翌日の鍛錬に備える日とすべきだ」と云っています【下記リンク参照】。毎日鍛錬したのでは折角鍛えた筋肉細胞が定着する間(ま)がないことになります。ただ、一日置きって、忘れ易いですけどね。

【参考】「生体力学的鍛錬ヴィデオ」(tips_50.html)

(October 16, 2016)

冗談のような本当の話

 

'And Then Jack Said to Arnie…'
by Don Wade (Contemporary Books, 1991, $10.95)

[Palmer]

「St. Andrews(セント・アンドリュース)のキャディTip Anderson(ティップ・アンダースン)は、Arnold Palmer(アーノルド・パーマー、1929〜2016)が全英オープンに参加する際の長年にわたるキャディとして有名だった。【編註:Arnold Palmerは1961年と1962年に全英オープンに優勝している】 様々な状況下で、ゴルファーたちがTip Andersonに『Arnold Palmerはどう打ったのか?』と尋ねるのは珍しいことではなかった。その一つのケースはこうだ。Arnold Palmerの古い友人がSt. Andrewsにやって来て、キャディとしてTip Andersonを選んだ。No.4をプレイしている時、彼はグリーンへの長く困難なアプローチ・ショットに直面した。その地点からArnold Palmerが選んだのと同じクラブを所望した彼は、グリーンに40ヤードもショートしてしまった。『このクラブでArnoldがグリーンに届かせたなんて、信じられない!』と彼はTip Andersonに云った。『そらそうです、へえ』とTip Andersonが云った。『あの人も大幅にショートしたっす』」

'Astonishing but True Golf Facts'
by Allan Zullo (Andrews McMeel Publishing, 2002)

・1980年のthe Masters(マスターズ)のNo.12で、Tom Weiskopf(トム・ワイスコフ、米、1942〜)が五回連続ボールを池に入れた時、ギャラリーの中にいた彼の妻Jeannie(ジーニィ)は大粒の涙を流した。友達の一人が彼女を慰めた、「心配しないで、ジーニィ。彼、ニュー・ボールを打ってるんじゃないから」

・1978年のthe Masters(マスターズ)において、"13"はTommy Nakajima(中島常幸、1954〜)にとって最も不吉な数字であった。彼は一つのホールにおける大会タイ記録の13を、他でもないNo.13で叩いたのだ。"Tsuneyuki"という彼の名前は"Always happy"(常にハッピー)という意味だが、ボールがRae's Creek(レイズ・クリーク)の周りで水しぶきを上げる様はハッピーとは云えなかった。後刻、記者団が一体何が起ったのか彼に尋ねた時、記者団は中島常幸の通訳が「彼は自信を失くした」と云ったと誤解した。通訳の真意は「彼は勘定出来なくなった」というものであった。

・“フェアウェイの孔雀”と呼ばれたDoug Sanders(ダグ・サンダース、米、1933〜)の絶頂期、彼の衣装部屋には200本以上のスラックス、そしてそれにマッチした多色の靴が100組以上収められていた。彼はある時次のような説明をした、「これらの衣装は自分をスリムにし続けてくれている。もし、お腹が1インチでも肥えたら、何しろ200本ものスラックスを直しに出さなきゃならないんだから」

・1979年のU.S.オープンはオハイオ州Toredo(トリド)のInverness Club(インヴァネス・クラブ)で開催された。そのNo.8、パー5で、Lon Hinkle(ロン・ヒンクル、米、1949〜)は、慎重にNo.17のフェアウェイに打てば、かなりのショートカットが出来ることを発見した。その奇策に青ざめたUSGA競技委員たちは、翌朝までに7メートルの高さのトウヒ(マツ科の木)を植えて、そうしたショートカットを許さなくした。この木は"The Hinkle Tree"(ヒンクルの木)と呼ばれるようになった。

・六度の全英オープン・チャンピオンのHarry Vardon(ハリィ・ヴァードン、英、1870〜1937)が1896年の全英オープンに優勝した時、彼は七本のクラブを携行していただけだった。絶頂期のOld Tom Morris(オールド・トム・モリス、英、1821〜1908)は四回の全英オープン優勝者だが、五本のクラブ(ウッド一本と四本のアイアン)を携えていただけだった。

'The Love of Golf'
David Barrett (Publications International, Ltd., 2007)

・1983年のBuick Open(ビュイック・オープン)最終日の前夜、日本のプロ青木 功は夕食を食べに中華料理店に行った。食後、彼がおみくじ入りクッキーを割ると、次のようなメッセージが出て来た、「砂漠への旅に出掛けるだろう」。当りだった。青木は翌日二回もバンカーに入れ、それらをボギーにして二打差で優勝を逸したのだ。

(October 19, 2016)

スコア誤記大全集

1968年のthe Masters(マスターズ)で、Roberto de Vicenzo(ロベルト・デ・ヴィセンゾ、アルゼンチン、1923〜)は実質一位タイでプレイオフのチャンスがあったのに、同伴競技者によるスコア誤記(バーディをパーと書いた)によって二位に甘んじる結果となりました。各ホール毎の打数をろくにチェックもせずにカードにサインしてしまった彼は、"What a stupid I am!"(おれは大馬鹿者だ!)と嘆きました。

'And Then Jack Said to Arnie…'
by Don Wade (Contemporary Books, 1991, $10.95)

「オーストラリアのプロで1960年の全英オープン優勝者のKel Nagle(ケル・ネーグル、1920〜2015)もスコア誤記の犠牲者である。彼は1969年のあるトーナメントの初日に70で廻り、幸先のいいスタートを切った。しかし、競技委員は彼のマーカー(記録者)が彼のスコアカードのNo.9の欄に、その日のハーフの合計である35と記入していることを発見した。Kel Nagleはワン・ラウンドを105で廻ったことになり、トップグループからビリへと転落した。

ある年のBing Crosby National Pro-Am(ビング・クロスビィ・ナショナル・プロ=アマ)で、プロMiller Barber(ミラー・バーバー、米、1931〜2013)とアマのHarvie Ward(ハーヴィ・ウォード、米、1925〜2004)がペアとなってプレイした。Miller Barberは個人として68で廻り、パートナーHarvie Wardの助けによってチームとしては62を記録した。悲しいかな、彼らはインのスコアの合計をNo.18の欄に記入してしまい、結果として101を叩いたことになってトーナメント・リーダーの座から転落した。

Jackie Pung(ジャッキィ・パン、1921〜)はハワイ生まれの女子プロ。彼女は1957年にWinged Foot(ウィングト・フット)G.C.で開催されたU.S.女子オープンに参加した。彼女は四日間トータルを298で廻った。しかし、競技委員たちは、彼女のマーカーが6とすべきホールに4と記入していることに気づいた。合計は正確だったが失格以外の選択肢はなかった。失意のJackie Pungを慰めるため、Winged Footのメンバーたちは彼女のために直ちに募金を行い、彼女に3,000ドルを進呈した。その額は優勝者Betsy Rawls(ベッツィ・ロウルズ、1928〜)の賞金を1,200ドル上回っていた」

'Astonishing but True Golf Facts'
by Allan Zullo (Andrews McMeel Publishing, 2002)

「Mac O'Grady(マック・オグレディ、米、1951〜)にスコアをつけさせてはならない。1997年のBuick Classic(ビュイック・クラシック)でPaul Azinger(ポール・エイズィンガー)と廻った彼は沢山のスコア誤記を犯した。Paul Azingerはスコアを正しく修正すべく気違いのようになった(全部で六ヶ所の間違いがあった)。その結果、Paul Azingerはカードにサインするのを忘れ、失格となった」

'And Then Chi Chi Told Fuzzy…'
by Don Wade (Contemporary Books, 1995, $11.95)

「Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)はゴルフ・ゲームのどの側面にも念には念を入れるタイプである。彼がルール違反で罰を受けるとか、最悪のミスであるスコア誤記のカードにサインするなどということは考えられない。

1963年にJack Nicklausがthe Masters(マスターズ)に優勝した後、開催コースであるAugusta National(オーガスタ・ナショナル)の共同設立者Bobby jones(ボビィ・ジョーンズ)とClifford Roberts(クリフォード・ロバーツ)やその他大勢は、Jack Nicklausがカードにサインするのを待っていた。

[Jesper]

Bobby jonesが次のような冗談を云った、『Jack Nicklausがオハイオ州大でなくGeorgia Tech(ジョージア工業大、Bobby jonesの母校)に行ってたら、もうとっくに計算を済ませてる筈だ。彼にスコアカード署名遅滞の罰で2ペナを課すべきかもね』」

'A dream dashed by an innocent mistake'
by Dave Kindred ('Golf Digest,' October 2003)

「ヨーロピアン・ツァーでは、No.1ティーでプレイヤー名が記されたスコアカードを渡される。プロたちはそのカードを同伴プレイヤーと交換するのが習わしである。2003年の全英オープンで、Mark Roe(マーク・ロゥ、英国、1983〜)も木曜日と金曜日にはその慣例に従った。しかし、土曜日、彼と同伴プレイヤーのJesper Parnevik(イェスパー・パーネヴィク、スウェーデン、1965〜、右図)はカード交換を忘れてしまった。【編註:しかし、彼らはいつものように交換したと勘違いして互いのスコアをつけ続けた】つまるところ、Mark Roeの"67"という素晴らしいスコアはJesper Parnevikの名前の下に書かれ、Jesper Parnevikのお粗末な"81"はMark Roeの名の下に書かれてしまった。二人ともスコア誤記で失格となり、Mark Roeは全英オープン最終日に首位と二打差のTiger Woods(タイガー・ウッズ)とプレイする好機を逸してしまった」

以下の記事はUSGAで長くディレクターを勤めたDavid Fay(デイヴィッド・フェイ)によるもの。

'Road Rage in the scoring tent'
by David Fay ('Golf Digest,' April 2015)

「Gary Player(ゲアリ・プレイヤー、1935〜)は最も入念なタイプのプロである。彼は自分のスコアを前からも後ろからも二回点検する。それからそのカードをスコア担当競技役員に手渡し(サインはまだしていない)、1ホールずつ記憶を辿りながら声でスコアを云う。その記憶と競技役員が見ているカードが合致した時だけ、Gary Playerはもう一度最後の点検をして、それからサインをする。

プレイヤーたちはホール毎のスコアにだけ責任を持つ。合計するのは競技委員会の責任である」

(October 19, 2016)

盲目ゴルファーのパーマーへの挑戦

最近亡くなったArnold Palmer(アーノルド・パーマー)が、自著に記した実話。

[Palmer]

'Go for Broke'
by Arnold Palmer with William Barry Furlong (Simon and Schuster, 1973)

「シカゴに近いあるゴルフ場の盲人ゴルフ大会は、年々参加者が増えているらしい。その中のあるゴルファーは、アドレス時に友人にボールをセットして貰いながら、ほぼ毎回90を切ることが出来るそうだ。彼の友人は、彼を驚かすため、ある日、“知る人ぞ知るアーノルド・パーマー”を招待して彼に引き合わせた。
『パーマーさん』と、その社交的な盲目ゴルファーは云った。『私と一緒に廻んなさい。私はあなたをこてんぱんにやっつけることが出来る。どうだろう、1ホールにつき1,000ドルって勝負じゃ?』
私は彼とお金を賭けてプレイする気はなかった。しかし、彼の言葉には私が無視出来ない挑戦的響きがあった。
『ちょっとあなた』と私は云った。『あなたはゴルフについちゃ有名な人だし、私も尊敬してる。だが、私は挑戦されると無視出来ない性分でね。どうだろう?お金はこの際おいといて、どうなるかちょっとだけ試してみるってのは?いつやりますかね?』
『夜だったらいつでも結構』盲目のゴルファーは勝ち誇るように破顔一笑した」


(October19, 2016)

悟り

 

不調だったので、しばらくラウンドしませんでした。ゴルフ場に雇われているパートタイマーのように数日おきに“通勤”しているみたいで、フレッシュな“やる気”が起らなくなったのです。日本の月一ゴルファーの皆さんから「何を贅沢な…」と云われそうですが、事実なのですから仕方ありません。問題は、いくら休んでも「ゴルフしたい!」という熱望が湧いて来なかったことでした。

この“休業”期間中に悟ったことがあります。私はもうこれ以上上達しないであろうということです。いろいろ勉強し、沢山tipsを仕入れても、もう限界である。ドライヴァーの飛距離はもうこれ以上伸びないし、アプローチ・ショットが毎回OKの距離に寄ることもない、完璧なパットなど望むべくもない。

私は夢を見ていたのです。才能に恵まれていなくても努力すれば上手くなる筈だ…と。それは幻想でした。いや、私が真剣に道を究めようと毎日一心不乱に練習すれば幻想ではなかったかも知れません。しかし、ものぐさで全て一夜漬けか付け焼き刃でこなそうとするような人間には、上達はあり得ません。ゴルフ本やゴルフ雑誌は、努力しなくても上手くなるような幻想をわれわれに売り込みます。いや、そう云っては酷か。それらは練習すれば上手くなると云っているのですから練習しなければいけないのです。ある人が云いましたが、ピアノの楽譜だけ見ていても、全く練習しなければ上手く弾ける筈がない…と。

私は今後ともBen Hogan(ベン・ホーガン)のような練習魔にはなれそうもありません。とすれば、私の限界は見えている。もうじたばたしない。上達ではなく、一打一打を楽しむだけにしようと決意をしました。

ゴルフは逆説のゲームと云われます。ボールを宙に浮かべたければ、(アイアンの場合)掬い上げるのではなくボールをヒットダウンしなければならないし、右へ出るボールが嫌ならクラブを内側から右へと(嫌な方へ)振らなくてはならない。全て初心者の直感と逆なのです。

私の上の悟りにも同じことが起りました。復帰後のラウンドで、私はチームの牽引車となる活躍を見せたのです。先日などは久方ぶりの3バーディを達成しました。これは逆説というより、諦めたら幸運が訪れたという「皮肉な結果」と云うべきかも知れません。

 

思うに「上達」にはいくつもの側面があるようです。1) 先ず、目標としている誰か(友人とか先輩とか)に追いつき追い越して上手くなりたいという上達。あるいは、あるグループにおいて上級者となって尊敬されたいというような上達。これらはまあ、云ってみれば「おれって結構上手いでしょ」とピクピク鼻を蠢かせ、自分のテクニックを見せびらかしたい範疇。次に、2) 吉川英治描くところの宮本武蔵か、映画『七人の侍』で宮口精二が演じた久蔵のように、道を究めたいという上達。これは80を切るとか、パープレイなどという数字を度外視し、完璧なプレイを目指す上達。人から褒められようが貶されようが関係ない。自分の究極のゴールしか考えない。3) 上の二つの中間に、コツコツとハンデを一つでも減らして行こうという地道なゴルファーが存在するでしょう。

私の場合は(1)の「おれって結構上手いでしょ」が上達の目的でした。これは云ってみれば不純な動機です。で、「もう限界は見えた」と悟ったら、その不純な動機が消え去りました。チームの誰かより飛ばしたいとか、皆に感心されるように寄せたい、見事にパットを沈めたい…という欲望が消滅。自分のプレイを他人と比較する気がなくなったのです。一打一打を楽しむ。それだけ。

しゃかりきに「バーディを射止めたい」、「パー・セーヴしたい」というプレッシャーが消え、「ベストは尽くすけど、入らないものは入らないのだから仕方がない」という心境に達したのです。大袈裟に云えば、一種の「解脱」です。この境地に達したら、先日いきなり3バーディ。これは私にはオリンピックの年ぐらいにしか起らないことです。

かといって、解脱したから上達したとは云うつもりはありません。そう思ったとしたら、まだ解脱していないことになります。プレイする自分は同じ。いい日もあり、悪い日もある。どちらも受け入れるべきである。いい日をも悪い日をも楽しむべきである。

もちろん、これはシニア世代の諦観でしょう。若い方々にまで諦観を押し売りするつもりはありません。青・壮年ゴルファーは野心を抱くべきです。Boys be ambitious. しかし、ゴルフは一筋縄では行きません。そして上達したからといって、墓石にハンデが刻まれるものでもないことをお忘れなく(^^;;。

(October 23, 2016)

Francis Ouimet(フランシス・ウィメット)の少年時代・前篇

 

Francis Ouimet(フランシス・ウィメット、1893〜1967)の名は知らなくても、20歳のアマチュア・ゴルファーが10歳の少年キャディを従えてフェアウェイを歩いている写真は御記憶にあるでしょう。あれは1913年のU.S.オープンで、そのゴルファーこそFrancis Ouimetでした。名前はヨーロッパ風ですが、彼はアメリカ生まれ。1913年のU.S.オープンで、二人のイギリスの強豪Harry Vardon(ハリィ・ヴァードン)とTed Ray(テッド・レイ)とのプレイオフを制して優勝。この物語は2005年に'The Greatest Game Ever Played'(邦題『グレイテスト・ゲーム』)という映画にもなりました。裕福な家の生まれでもなかった彼の優勝は一気にアメリカ人一般のゴルフ熱を煽り、それまで無いも同然だったパブリック・コースを沢山作り出す契機となりました。つまり、現在のアメリカのゴルフの隆盛は彼の活躍に負っていると云うことが出来ます。彼はまた1914年と1931年の全米アマ・チャンピオンでもありました。

[1913]

'A Game of Golf'
by Francis Ouimet (Houghton Mifflin, 1932)

「マサチューセッツ州【アメリカ北東部の大西洋岸にある州】のBrookline(ブルックライン)という、どちらかと云えば僅かな人口の町に生まれた私は、もし父が"The Country Club"(ザ・カントリー・クラブ)に隣接する家を買わなかったら、私のゴルフ活動はどうなっていただろうとよく考えたものだ。確かなことの一つは、素晴らしいコースの傍に住んでいなければ、ゴルフというゲームへの興味なぞ絶対に芽生えなかったろうということだ。実際には家から1768年に建てられた小さな学校に通うため、私は往きも帰りもコースのフェアウェイを横断した。そんな特権を与えられていたわけではないのだが、不法侵入者としてそのルートが時間を節約し、学校には定刻に着け、もっと重要なことには家にも遅滞無く帰ることを可能にしてくれることを発見したのだった。

だが、他にも密かな動機があった。フェアウェイ横断旅行の途次、様々なガッタパーチャ型のロストボールに出くわしたのだ。【註】 私が七歳の時、私はSilvertowns、Ocobos、Vardon Flyers(ヴァードン・フライヤーズ)、Henleysその他、1900年代のゴルファーに人気があり、プロ・ショップも推奨するボールのコレクションの持ち主となった。

【註】天然ゴムの樹液を固めたものを使ったボール。それが出現する以前は、革袋にガチョウの羽根を詰め込んだものがゴルフ・ボールだった。

ゴルフ・クラブを所有するずっと以前、私は数年にわたってプレイするに充分な数のボールを持っていた。しかし、クラブ無しのボールというのは、全然役立つ存在ではない。1900年代のアメリカはゴルフ黎明期だったため、クラブを手に入れるのは困難だった。クラブを失くすことは稀だったし、捨てられることもほとんどなかった。

私が熱心にゴルフ・ボールの貯蔵に邁進し始めて二年後、私の兄Wilfred(ウィルフレッド)に誰かが一本のクラブをくれた。私は兄がキャディの仕事で忙しい時、そのクラブを裏庭に持ち出し、貯蔵品のボールのいくつかを打った。兄が帰宅する前に、クラブを元あったところに同じ状態に注意深く戻した。でないと、家庭内暴力事件が勃発する恐れがあると思ったからだ。その当時、ザ・カントリー・クラブで時折トーナメントが行われ、私は放課後フェアウェイの端でゴルファーが通り過ぎるのを見守り、誰かが素晴らしいショットを放つと、彼がどのようにスウィングしたかを記憶し、急いで家に戻り、兄のクラブを取り出して見た通りのものを練習に取り込もうとした。こういう努力は可笑しかっただろうし、大したことではないとしても、結局それが私のゲームの始まりであった。

私は、初めてHaskell(ハスケル)製のボールを見つけた時のことをまざまざと記憶している。それは1902年の秋で、私が九歳の時だった。兄Wilfredはザ・カントリー・クラブのキャディとなっていて、そこで女性の全米トーナメントが開催された。学校から戻る途中、私は綺麗な新しいボールを拾った。それはこれまで見たものと全く異なり、もっとよく弾むように見えた。私がそれを兄に見せると、彼はそれはゴムを芯にした新型のボールで、持っている人は少ないと語った。兄は私にそれを手放すように懸命に説得したが、無駄だった。

私はそのボールをプレイし、弾ませ、塗料が剥げるまで使った。私は白いペンキを手に入れ、ボールに塗った。丁度母がパンを焼いていたので、こっそりボールをオーヴンに入れた。熱で早くペンキを乾かそうと思ったのだ。母は何か焦げる臭いが家中に篭ったのを感じ、その原因を探し出そうとした。何も見つからなかったが、悪臭は強くなる一方で、母は家が燃え上がるのではないかと心配した。ついに、母はオーヴンを開け、世界で最もひどい臭いは、新しく焼いたパンから出ていることを発見した。パンは台無しになり、私の宝物であるHaskellボールも同様だった。熱はガッタパーチャの皮を溶かし、縮み上がったゴム・バンドの塊以外何もなかった。私はこのボールの発明家ドクター・ハスケルがどんな風にボールを作り、固いガッタパーチャよりゴムを核としたボールが何故遥かに優れているかを学んだ。

Haskellボールはコースからガッタパーチャを駆逐し、プレイを楽しくした。いずれにせよ、私は固いガッタパーチャよりゴムを核としたボールによって上手く打てるようになり、ゴルフへの興味はいや増した。家の裏に牛の牧場があった。兄のWilfredがコース設計家となって三つのホールを造成した。No.1は150ヤードの長さで、小川をキャリーで越えねばならなかった。その小川はティー・グラウンドから100ヤードかそこらあった。兄が良いショットをすれば、彼はグリーン近くに近づけることが出来たが、私には遥かに遠過ぎた。実を云えば、私のベストのドライヴは小川の中に打つことでしかなかった。No.2はとても短く、50ヤードもなかった。No.3は上の二つを混ぜたようなもので、プレイヤーを出発点に連れ戻した。われわれはトマトの空き缶をカップの縁にした。われわれのこのコースを胸に思い描くと、それは砂利の窪地、湿地、小川、丈の高い草などによって、私がプレイしたどのコースよりも難しかった。われわれ、と云うより兄のWilfredは高めの乾いた場所を選んで打ったが、そういう場所は少なく、狙ったラインから3ヤード(約2.7メートル)逸れるとロスト・ボールとなり、われわれはそれを多発させた」

【次回完結】

【写真はimages.contentreserve.com/にリンクして表示させて頂いています】

(October 26, 2016)

Francis Ouimet(フランシス・ウィメット)の少年時代・後篇

 

[Ouimet]

'A Game of Golf'
by Francis Ouimet (Houghton Mifflin, 1932)

「兄は折りに触れ州都Boston(ボストン)に旅し、あるデパートにゴルフ用品売り場があるのを見つけ、さらに中古ボールと良いクラブを交換出来ることを発見した。3ダースの中古ボールと最良のクラブとを交換出来るのは、いい取引だった。兄のそんな旅行の一つで、彼はマッシー【註】を私に持ち帰ってくれた。私の若い人生で初めて、ことゴルフに関する限り私は独立出来たのだった。私は自分のクラブ、ボール、3ホールのゴルフ場を所有していた。誰であっても、これ以上何を望めるだろう!

【編註】"mashie":古くはピッチングに用いられたアイアン。後には5番アイアンの別名となった。

ザ・カントリー・クラブの芝刈り人たちは、グリーンの二つをよいコンディションに保っていたが、私の家に近い一つはあまりにも使われ過ぎてほとんど芝が無い状態だった。われわれが夕食を待っている間、われわれはそのホールの周りで遊び回っていたのだから、芝が生えるチャンスはゼロだったのだ。母の観点からすると、その利点は彼女がわれわれの居場所を知っており、家に呼び戻すのが実に簡単であるということだった。われわれはその特定の場所で早朝と夜暗くなるまで遊び回った。そうした練習によって、私のゴルフへの興味が増すのは不思議ではなく、私のプレイが上達するのに気づくのも自然の成り行きであった。私の母は、私の唯一の興味がゴルフしかないように見えることをクレージーだと考えていた。

私には兄よりも上達出来る時間があった。彼には家の周りや納屋での雑用があったし、長男として使い走りを頼まれて忙しかった。『練習は完璧さを生む』と云われるが、私もそれを信じる。何週間も何ヶ月も小川を越えることに懸命になった後、私はついに成功した。数年間の中身の濃い練習が、遠くへではなくとも正確なドライヴを放つことを可能にしたのだ。ある土曜日の朝、一時間の奮闘の後、私は小川を軽々と越えるショットを放った。私がその成果を兄に話すと、その話はほとんど信じて貰えなかった。その頃、私はマッシーに加えてブラッシー【註】も持っていた。牧草地に兄を連れ出して証明しようとしたが、朝の疲れが出たのか小川を越えることは出来なかった。翌日、日曜学校から戻ると、私はまたトライした。今度は兄も一緒だった。三個のボールのうち二個を小川越えに成功させ、兄に信じて貰うことが出来た。小川越えは習慣となり、それに失敗するととてもむかついた。

【編註】"brassie":二番ウッドに相当するクラブ。底部に"brass"(真鍮)製のソールが嵌めてあった。

ザ・カントリー・クラブでは沢山のトーナメントが開催され、ベストのプレイヤーたちが集まった。11歳となって私がキャディになると、有名プロたちやWalter J. Travis(ウォルター・J・トラヴィス、1862〜1927)のようなトップ・アマ、ザ・カントリー・クラブ専属のプロなどがプレイした。彼らのとりわけいいプレイに気づくと、私はそれを脳裏に刻み、機会が訪れると自分の私的コースに出掛けて、そのショットを練習した。

御覧のように、私はゴルフ的環境で育ち、ゴルフを愛することを学んだ。私はゴルフの記事が載っている雑誌や新聞を見つけると熟読した。近所にゴルフに興味を持つ少年たちがいると、熱心に勧めた。ある日、Samuel Carr(サミュエル・カー)という紳士のキャディを務めた。ミスター・カーはゴルフ狂だったが、それにも増してわれわれキャディに思いやりがある人だった。キャディはみな彼が好きだった。ある日のラウンドで、彼が『君はゴルフするのかい?』と私に尋ねた。私は『ハイ』と答えた。彼はクラブは持っているの?と聞き、私はブラッシーとマッシーの二本を持っていますと答えた。『このラウンドを終えたら、私と一緒にロッカー・ルームに来たまえ。何本かクラブを上げよう』と彼が云った。その日、ミスター・カーは四本のクラブを私にくれた。皮のフェースのドライヴァー、ロフター【註】、ミドル・アイアン、そしてパターである。それはそれまでの私の人生で最もスリリングな出来事だった。

【編註】"lofter":ロング・アイアンに相当するクラブ。

早朝(私が早朝と云うのは4:30か5:00である)、私は私的コースを見捨て、グリーンズキーパーが私を追い出すまでザ・カントリー・クラブの数ホールをプレイした。雨で誰もいないのが確実である時も同じことをした。私の活動に関する苦情が家に届き、母は私にコースに入るなと警告し、ゴルフは私にトラブルをもたらすだけだというお決まりの叱責で締め括った。

私はゴルフ・ゲームに夢中で、放っておくわけにはいかなかった。ある夏、私的コースのレイアウトにうんざりした私は、友達の一人にFranklin Park(フランクリン・パーク)へ一緒に行こうと誘った。Franklin Parkはパブリック・コースで、そこへ行けば誰にも邪魔されずにプレイ出来る。われわれはある土曜日を決行の日と定めた。そこへ行くには、電車の駅までクラブを担いで2.4キロ歩かねばならない。Brookline Village(ブルックライン・ヴィレッジ)まで電車に乗り、そこでRoxbury Crossing(ロックスベリィ・クロッシング)行きに乗り換え、さらにFranklin Park行きに乗り換える。最後の電車から降りるとクラブハウスまで1.2キロ歩いて、チェックイン。そして、計54ホールプレイして、同じ道筋を辿って、へとへとになって帰宅した。それは私が13歳の時のことだった」

【完】

【画像はhttp://images.amazon.com/にリンクして表示させて頂いています】

(October 30, 2016)

80を切るマジック・ナンバーは32

このパットのお話は、インストラクターの組織であるPGA of Amaricaの中の、GolfTec(ゴルフテック)というグループが'Golf Magazine'誌と提携して出版した本の一部。実際には32でなくて31.7なのですが、そういうパット数はないので切り上げました。

'Golf Magazine's The Par Plan'
powered by GolfTec edited by David Denunzio (Time Home Entertainment Inc., 2013, $29.95)

「ゴルファーはパッティングに真剣に取り組む者と、そうでない者の二つのグループに分けられる。最初のグループは、ドライヴァーやアイアンが不調でもまずまずのスコアで廻ることが出来る。後者のグループは、パッティングの腕前が支えてくれないので、まずまずのスコアで上がるには他の全てのショットが良くなくてはならない。

あなたがスライスを打とうがフックを打とうが、ラウンドを終了させるに必要なパット総数はトータル・スコアの40%である。もちろん例外はある。上級者がたまたま3パットしたり、初級者が何度かチップインさせたり、突如パットが入り出したり…。そういう場合には該当しないが、多くの場合40%の基準は信頼してよく、その基準の意味するところは《パット数が少なければ、スコアも良くなる》ということだ。

以下の表は、われわれGolfTec(ゴルフテック)がまとめたもので、最大のパット数でも40%の法則によってあなたの目標スコアが分るようになっている。あなたが日頃パット数を記録していないなら、是非とも記録すべきだ。それは、基準に照らしてあなたのレヴェルがどの辺に位置しているか、どの程度努力せねばならないかを教えてくれる」


目標スコア
71
73
75
77
79
81
83
85
87
89
91
93
95
最多パット総数   29  29.7 30.3  31  31.7 32.3  33  33.7 34.2  35  35.7 36.2   37 

[icon]

データ魔で有名なインストラクターで、’Putt Like The Pros'『パッティングの科学』の著者Dave Pelz(デイヴ・ペルツ)は「70で廻るプロの平均パット数は30である。85で廻るゴルファーの平均パット数は35、95で廻る人は38パット」の述べており、上のデータにほぼ類似しています。

「リッキオのパットの法則」(tips_101.html)には「常に80を切るゴルファーの1ラウンドの平均パット数は32である。ちなみに、PGAツァー・プレイヤーの平均パット数は28である」と書かれています。Lucius Riccio, Ph.D.(ルシァス・リッキオ博士)はUSGAのハンディキャップ委員会のメンバーで、コース・レイティング方式などの確立に貢献した人です。

【参考】「リッキオのパットの法則を活かす」(tips_101.html)

(October 26, 2016)

Jason Day(ジェイスン・デイ)の秘密兵器

 

Jason Day(ジェイスン・デイ、オーストラリア)が目をぱちぱちさせるプレショット・ルーティーンの正体。ショットの視覚化とは別の、ゾーンに突入するメンタル・テクニック。

'Use your noggin'
by Stephen Hennessey ('Golf Digest,' November 2016)

「Jason Dayは、ほとんどのショットの前に深呼吸しながら繰り返しまばたきする。妙な行動のようだが、意図があってのことである。それはFocusBand($500)と呼ばれるアプリ・ベースの製品を用いて、彼が脳をコントロールする作業をしている現れなのだ。その会社のヘッドギアを着用してボールを打つと、頭の中で何が進行しているかをセンサーが記録する。はっきり云うと、集中しているか、ぼーっとしているかが分るのである。

その装置は2009年にオーストラリアのGraham Boulton(グレアム・ブルトン)とHenry Boulton(ヘンリィ・ブルトン)親子によって発明されたもので、一般に『ゾーン』として知られ、Boulton親子が"Mushin"(無心)と呼ぶ境地に、全てのスポーツマンが達することを助けようとするものだ。目的:『心を訓練し、各スウィングの際、ルーティーンや成果を意識しないで遂行すること』

FocusBandアプリはショット毎に"Mushin Factor"(無心率)と呼ばれる脳のスコアを表示し、脳の色分けされた映像によって、どれだけ心を無に出来たかを簡単に解読出来るフィードバックを提供してくれる。赤い色合いは集中不足、緑色はゾーンに入っていることを示す。

そのゴルフ・アプリに、ローンチ・モニターを製造・販売するFlightScope社との提携が加わる。そのVX app($10)によって、脳の活動とスウィング・データが一緒に分析可能となる。

 

スウィングした感覚と、ショットの結果、そしてアプリが示す無心の度合い等の間に相関関係があるかどうかを知るのは、とても興味深いものだ。これは、練習場ではうまく打てるのに、本番でうまく行かないというお馴染みの挫折を説明するものかも知れない。無心になれない脳がスウィングを邪魔するのだ」

【参考】
・「Golf in the Zone(ゴルフ・イン・ザ・ゾーン)」(tips_16.html)
・「集中」(tips_26.html)
・「集中ゾーンに入る」(tips_53.html)
・「集中の神経メカニズム」(tips_160.html)

(October 30, 2016)

可動式錘とスウィング・スピード

クラブヘッドが軽ければ当然スウィング・スピードは増しますが、ボール軌道が定まらなくなる傾向があります。ヘッドが軽いとつい手・腕だけで振りがちになるのです。飛ばそうと思ったら、踏ん張った両足が上半身をリードしなければいけないのに、これでは逆効果。スウィング・スピードが早ければいいというものではないことに気づきました。

バックスウィングでクラブが重いと感じると、「ん?こりゃ身体全体でスウィングしなきゃいかんぞ!」と感知します。そして、下半身主導で振られるとクラブヘッドはスウィートスポットでボールを捉える確率が高くなり、大きな筋肉による大きなスウィングは最大飛距離を生み出すように思われます。

「重いクラブヘッドだとその反撥力で飛ぶのではないか」と思ったのは間違いで、重いと手打ちじゃなくなるというのが真相だったようです。私の場合、R 11の可動式錘の配分は、トゥ12g+ヒール20gが最高のスウィング・スピード(当社比)を発揮するのですが、それが実際に最も飛ぶ組み合わせではありませんでした。16g+20gが、これまでのところ最高です。で、現在この組み合わせの錘がヘッドに常駐しています。

(October 30, 2016)

心を身体から遊離させてスウィングする

 

この記事の筆者は『8ステップ・スウィング』や『Xファクター』などの著書で有名なインストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)。これは「Jason Day(ジェイスン・デイ)の秘密兵器」(このページ上)に出て来た「無心」に通じる内容です。

'The 3 Scoring Clubs'
by Jim McLean (Gotham Books, $30.00, 2005)

「私のヒューストン大学時代のルームメイトで大の仲良しであるBruce Lietzke(ブルース・リーツキ)は、天才の一人である。彼はほとんど練習しない。何ヶ月もツァーを休んで家族と過ごし、なおかつプロフェッショナル・ゴルフで数百万ドルを稼ぐ。彼はツァーのどの常連よりもトーナメント参加数が少ないのだが、何年もの間、事実上休暇の合間に優勝して大金をせしめている。

彼の成功の理由の一つは、ボールを長く真っ直ぐに打つ能力である。私は、ろくに練習もしないでそんな風に素晴らしいボールが打てたら、どんなにゴルフが楽しいだろうと考えてしまう。ツァー・プロたちに、同時代の最高のボール・ストライカーは誰かと尋ねたら、多くはBruce Lietzkeと答えるだろう。彼らに『誰のようになりたいか?」と聞けばBruce Lietzkeを選ぶ筈だ。何しろ練習しなくていいんだから。

Bruce Lietzkeがドライヴァーを手にティーに立つ時、木とか特定の地点を狙ったりしない。その代わり、彼は心の中でプレイされるショットの形を見る。それは彼にとって中くらいの高さのフェードである。ひとたび彼がボールに向かってセットアップすると、彼は非常に変わったことをする。彼の心が身体を離れるのだ。つまり、彼は自分の身体を離れて7メートルほど上空に浮遊し、自分自身のショットを見守るのである。誰かが彼にそうしろと訓練したわけではない。それが初めて起った時のことを、彼は説明出来ない。彼はこの経験を疑問に思ったりせず、むしろ受け入れている。

私は重量挙げの選手がこの種の心体遊離を研究しているのを読んだことがある。これは、東洋文化において一層馴染み深いものだと思う。身体の無心な業務遂行を傍観者である自分自身が見守るというのは、プレッシャーを取り除き、スウィング動作から心を取り除く驚くほどパワフルな方法である。多くのゴルファーがこの禅のような解離を学ぶべきだと信ずる。特に、重圧に押し潰されそうな状況下では」

 

 

[icon]

スポーツ心理学者Dr. Nick Rosa(ニック・ローザ博士)制作のテープには、見事なティー・ショットを放った時や長いパットを成功させた場面を思い出し、その場面をヴィデオのように再現する(=自分が主役の映像を観客として見る)という視覚化が含まれています。これも一種の心体遊離です。

同博士の「ヴィデオ視聴を活かす」(tips_71.html)には、プロなどのスウィングのモデル映像を観客として眺めた後、今度は自分が主役でスウィングするという視覚化も紹介されています。

いずれにせよ、「心体遊離」、「無心」などの禅の境地がゴルフ・スウィングに役立つことは確かなようです。

車で初めての土地、初めての場所を訪れる時は、頻繁に地図を見たり、ガイドブックの説明を読み返ししたりしなければなりません。しかし、自分の家に帰る時は何も考えなくても本能的にいくつもの角を曲がり、ちゃんと家の前に着くことが出来ます。これぞ「無心」ですね。

私もドライヴァーが安定していれば「さっきと同じことをすりゃいいんだ」と何も考えません。同じように真っ直ぐなティー・ショットを放てます。フェアウェイ・ウッドからウェッジに至るまで、「さっきと同じことをすりゃいい」と思っている限り予測しないことは起りません。これが「無心」の恩恵です。しかし、「好調だから、一発ぶっ飛ばしてみるか!」と欲を出すと突如プッシュだのスライスが出たり、「よーし、あいつよりピン傍につけておれの実力を見せつけてやろう!」などと考えるとシャンクしたりします。「無心」でない心が身体のフリーな業務遂行を妨害してしまうのです。自滅行為。

自分の家に戻ることも、ドライヴァーを打つことも、何度も経験した自信の裏付けがあればこそ、何も考えなくても遂行出来るわけです。将棋やチェスの序盤と同じで、何も考えずにとんとんと手順を実行する。われわれのスウィングやストロークもこうあるべきなのでしょう。

(November 09, 2016)

ボールに魔法をかける

 

ボールがまるで人間であるかのように語りかけたSam Snead(サム・スニード)のメンタルtip。

'Golffirmations'
by Hugh O'Neil (Rutledge Hill Press, 2002, $16.99)

「自分が打ったボールが飛行中に、われわれは『もっと上がれ!』、『止まれ!』、『曲がれ!』、『そこで跳ねてくれ、頼む!』などと叫ぶ。われわれは、時として怒鳴り、時としてボールにおべっかを使い、多くの場合われわれはボールに懇願する。聞くところによれば、中には野卑な罵り方をする輩もいるそうだが、ボールを罵って軌道が変わるものなら、スコアも間違いなく少なくなる筈だが。

歴史上最もスムーズなスウィングの持ち主と信じられている飛ばし屋Sam Snead(サム・スニード)は、ちと異なる態度で臨んでいた。彼は打ち出す前にボールに語りかけたのだ。『ちーとも痛くないかんね』と彼は小声で囁く。『サムちゃんがキミにちょっとした遊覧飛行をプレゼントするだけだかんね』あるいは、『ヘロー、ディンプルちゃん。どっかりティーに座って馬鹿に暢気そうじゃないか。よーし、一緒に楽しもうぜ』

あなたもボールに向かってアドレスする際、次のSam Sneadの次の言葉に耳を傾けるべきだ。『ボールをあたかも人間のように扱うことによって、私は自分自身の気を紛らす。それによって、ああしようこうしようと考える時間をゼロにするんだ。パーとかバーディが欲しいのなら、あなたのボールに魔法をかけ、うっとりさせるべきだ」

 

 

(November 09, 2016)

念力でパットを沈める

「パッティングにForce(フォース)を使え」(tips_155.html)の、さらに上を行く方法です。Tiger Woods(タイガー・ウッズ)、Adam Scott(アダム・スコット)らのキャディを勤めたSteve Williams(スティーヴ・ウィリアムズ)は、現在引退し故郷のNew Zealand(ニュージーランド)で家族との生活を楽しんでいます。もし、また誰かのキャディをすることがあっても、それはパートタイムの仕事に過ぎないそうです。

彼はTiger Woods以前にGreg Norman(グレッグ・ノーマン)など何人かのツァー・プロのキャディでしたが、以下のはRay Floyd(レイ・フロイド)と組んでいた頃の話。

'My shot'
by Steve Williams with Guy Yocom ('Golf Digest,' July 2015}

「Ray Floydは、意志の力でボールを沈めることが出来ると信じていた。彼は私が彼と一緒にグリーンの上にいるだけでは満足しなかった。彼は云ったものだ、『Stevie(スティーヴィ)、おれと一緒に、あのボールがカップに入るように念じるんだ。おれたち二人して念じれば、入るチャンスが50%増える』と。

科学は、実際のところそんなことは起らないと告げている。だが、カップインを念じれば、頭からあらゆるネガティヴな想念を取り去るのは確かだし、何とも云えないよ。Ray Floydのかなり多くのパットは、カップの端を捉まえて最後の瞬間に落っこちるように見えたからね」

(November 09, 2016)


『フィーリング』でパット

スポーツ心理学者Dr. Deborah Graham(デボラ・グレアム博士)の下記の本に次のような部分があります。

'The 8 Traits of Champion Golfers'
by Dr. Deborah Graham and Jon Stabler (Simon & Schuster, 1999, $25.00)

「多くのゴルファー、特にかなり知的なゴルファーはゴルフ・コースで考え過ぎる傾向がある。彼らにとって、ラウンドの最初から最後まで知らず知らずにゴルフを機械的動作として、また分析の対象として扱うことが珍しくない。彼らはスウィングの機械的動作や、打つために必要とするテクニック、これから先のホールをどうプレイするか、あるいは前のホールでのミス等々を分析することを絶対にやめない。彼らは練習した技術や生来の能力を、視覚化やフィーリング、目前のショットに自ずと反応するような仕方によって解き放とうとは絶対しない」

 

 

 

私は自分が知的なゴルファーであると主張するつもりはありませんが、左脳派人間として動作を厳密に遂行したがり、またそのミスを分析したがるタイプであることは疑いようがありません。

上の引用部分は「コントロール・フリーク」という言葉を連想させます。私のゴルフ仲間にいるのです、そういうのが。根は悪い奴ではないのですが、何でもかんでも自分で仕切ろうとする。声はでかいし、態度もでかいので、蔭では彼を"drill seargent"(ドリル・サージャント、訓練軍曹)と呼んでいます(彼は実際に元軍人)。映画なんかでよく見るでしょう、新兵に怒鳴り散らし懲罰を与えるのが生き甲斐の奴。あれが訓練軍曹です。

「練習した技術や生来の能力を目前のショットに反応するような仕方によって解き放とうとしない」というのは、訓練軍曹的、コントロール・フリーク的態度であるように思います。しかし、左脳派人間に「目前のショットに自ずと反応する」というようなことは困難、というか不可能に近い。出来るのはコントロール・フリークの自分を黙らせることぐらいです。

ドライヴァーを打つ時に、頭の中で『スケーターズ・ワルツ』のメロディを繰り返すというアイデアは、以前に紹介しました。パッティングの際にいい曲はないか?と探していたのですが、ありました、その名もずばり『フィーリング』。1977年にハイ・ファイ・セットがヒットさせた曲です。厳密なメカニカル動作を強制しようとする訓練軍曹を、「♪フィーリン、ウォウ ウォウ ウォウ、フィーリン…」ととろけさせてしまうのです。これ中々いいです。「そんな懐メロ知らないよ」という世代に云ってもしょうがないですが(^^;;。

これは「でしゃばりコーチをブロックする」(tips_3.html)の応用篇であり、「無心」を目指す一法とも云えます。そして、左脳派に欠けている“フィーリング”に身を委ねさせるという作用もあります。

 

(November 09, 2016、改訂January 01, 2017)


生涯ベスト・ラウンド達成のための戦略

80を切る、パーで廻る、アンダーで廻る…等の生涯初のベスト・ラウンドはどう達成すべきか。下記の本はインストラクターの組織であるPGAの中の、GolfTec(ゴルフテック)というグループが'Golf Magazine'誌と提携して出版したもの。『30日でパープレイを目指すプラン』という趣旨なのですが、私は沢山詰まったTipと情報の本として読んでいます。

'Golf Magazine's The Par Plan'
powered by GolfTec edited by David Denunzio (Time Home Entertainment Inc., 2013, $29.95)

「・ラウンド前夜

少なくとも八時間の睡眠を取るべし。充分な睡眠は注意深さを保ち、あなたの最高の能力を発揮する助けとなってくれる。ラウンドする時刻の決定も重要(下方の「午前中にプレイせよ」参照)。

【編註】興奮して寝付けない場合は「眠られぬ夜のために」(tips_75.html)が役に立ちます。

・一匹狼であれ

生涯ベストのスコアを仲間や家族の前で達成出来れば最高だろう。だがベスト・ラウンドはあなた個人とそのスコアに関わるだけであって、典型的な仲間意識とは全く無関係である。加えて、あなたが打ち解けた会話や、あなたが達成しようとしている望みを熟知している人々と一緒の重圧で頭を一杯にしていたら、あなたは集中するのが難しい筈だ。ベストのスコアを記録しようと思うなら、一人でラウンドするのが望ましい。コースがそれを許してくれないのなら、見知らぬ三人組に加わってプレイする。

・見栄を張るな

ベスト・ラウンドをしたければ、6,500ヤード以下のティーからプレイせよ。プロがプレイする7,500ヤードのコースは、芝が短く刈られていてランが稼げるが、あなたがプレイするコースはそんな状況ではない筈だ。最前方のティーからプレイしてベスト・スコアを達成出来たら、次に後方ティーからベスト・スコアを目指せばよい。

 

・自然現象に注意

風速14メートルとか絶え間なく降る雨の中でのラウンドは、実際のヤーデージよりコースを長くする。猛暑もまた避けるべきである。天候が悪くなることを知ったら、スケジュールを変更すること。天候も含めて全てがあなたを助けてくれる日を選ぶべきだ。

・午前中にプレイせよ

午後のラウンドはあなたの大望を助けてくれない。時間が経てば経つほど芝が伸びる。これはグリーンで特に顕著で、長い葉はブレイクを大きくし、読むのを困難にする(ゴルファーたちによる踏み跡の凸凹も増加する)。仕事で多忙だった翌朝も避けるべきだ。仕事のことが頭から離れない日に、ベスト・スコアを達成するのは無理である。

・ウォームアップすべし

データ集めに強いインストラクターDave Pelz(デイヴ・ペルツ)は、2006年に興味深いリサーチ結果を発表した。ゴルファーたちは、最初と最後の4ホールよりも、中間の10ホールをいいスコアで廻ると云うのだ。最後の4ホールはいいスコアを記録しようと緊張してお粗末なプレイをしてしまう結果だと容易に推定出来る。しかし、最初の4ホールでお粗末なプレイとはこれいかに?このデータはスタート前に充分にウォームアップすることの重要性を強調している。また、ラウンド開始直後は冷静さを保ち、ラウンド中間に達する前にいいスコアで廻れるチャンスをつぶさないよう、守りの姿勢を取るべきだ。

・攻撃的にフィニッシュせよ

Dave Pelzのデータは、アマチュアの詰めの甘さも指摘している。あと数ホールでベスト・スコアを達成出来ると知ったら、攻撃的精神でプレイせよ。そこまでいいプレイをして来たのは明白なのだから、自信を持って驀進すればよい。終盤になって守りの姿勢で失敗するより、攻めに攻めて一歩及ばなかったという方がベターである。目標達成に限りなく近づいたという事実に慰めを見出すべきだ。実際のところ、あと数ホールでベスト・スコアというチャンスが到来したのなら、目標達成は時間の問題と云ってよい」

(November 16, 2016)

上役とのラウンド、べからず集

 

上司、CEO、首相、大統領、雇い主、顧客、婚約者の父親…等々、目上の人とのラウンドにどう対処すべきか、各界の名士から聞き出した心得の数々。

'How to play golf with the boss'
by Lisa Furlong ('Golf Digest,' July 2007)

「パニックに陥ってはいけない。この好機をフルに活かすのだ。しょっちゅうプレイする重役たちは、プレッシャー下の同伴者の振る舞いをつぶさに観察するそうだ。あるハンデ2のCEOは、『毒づいたりクラブを投げるような人物は見たくない』と云う。『ボールマークを修理せずディヴォットを戻さないような、コースをいたわらない人物も願い下げだ。そういう人物は、会社の中で首をすげ替えたくなる』

【編註】バンカーの砂をきちんと均(なら)すのもお忘れなく。

ラウンドの日が近づくまで、ゴルフの練習をしておくことも大切だが、クラブや衣類も綺麗にしておくこと。泥まみれの雨具などをバッグに入れたままではいけない。

あるCEOは云う、『ゴルフコースへの道順も確認しておく。また、ボスに聞いたりせず、どれだけフォーマルであるかを察知しておく』遅刻は問題外である。早めに到着して、そのクラブハウス内を詳しく調べ、ウォームアップもしておく。事前にプロショップに電話し、ロッカーや練習場、チップの相場、ドレス・コード【註】などを聞いておく。コースによっては、女性のショーツは厳禁でスカート着用を原則にしているところがある。タートルネック風シャツでなく、襟付きシャツの方が安全である。靴も泥だらけだったりしないように。

【編註】'Golf Digest'誌October 2010は、同誌がこの年に2,600の米国内のパブリックとメンバーの両コースで調査した結果を掲載しています。その中の数例を紹介すると、49%のメンバー・コースが襟無しシャツ着用を禁止、63%のメンバー・コース(32%のパブリック)がブルージーンズ着用を禁止、31%のメンバー・コース(4%のパブリック)が屋内での帽子着用を禁止しています。

 

ラウンド当日は慎重に話すこと。会話のための会話であってはならないし、突如ボスと親友になったかのように冗談を云ったり皮肉を云ったりしてもいけない。話題作りのために、新聞を隅から隅まで読んでおくこと。あるCEOは『原則としてビジネスの話、特にオフィスでのゴシップは御法度』と云う。『もしボスがビジネスの話をしたければ、彼の方から切り出す筈だ。それまではスポーツ、家族などの話題に限定すべきだ』

あるCEOは、過去の苦い思い出を語る。『ミスター・トーマスと呼ばれることを好むボスとの30回目のラウンドの後、ビールを呑みながら私は彼をついファースト・ネームで呼んでしまった。顧客の面前で彼は「ミスター・トーマスと呼べ」と云った。私は縮み上がった。ビールは控えるべきだね』

どんなゲームをするか(マッチ・プレイか否か)、賭けの額をどうするか等はボスに決めさせよ。ボスが云い出さない限り、No.1でのマリガンを勝手に打ったりしないこと。

あるCEOは云う、『典型的な週末ゴルファーの慣習に従え。ボールを失ったら、暫定球を打ったり元の場所に戻って打ち直ししたりするな。だが、それが正しい手続きでないことを知っておくべきだし、【編註:マッチ・プレイであれば】そのホールの敗北をいさぎよく認めること』

パットのOKはインサイド・ザ・レザー【編註:パターヘッドをカップに引っ掛け、ボールが金属シャフトのどこかに位置すればOKとする】がよい慣行だが、もしボスがそれ以上長い距離をOKしてくれても、長いものには巻かれるべきである。

権力を持つ人々は闘争によってその位置に到達したのであり、あなたにも競い合いを期待する。勝つためのプレイだ。あるCEOは昔ボスとプレイした時期を振り返って云う、『私は常にベストを尽くした。ボスに勝てれば最高。上司と部下ではなく、競争を楽しむゴルファー同士に過ぎないのだから』 勝っても負けても気持ちよく振る舞うこと。

あなたはボスとのラウンドをエンジョイし、再度の招待を欲している。だったら、フォローアップすべきだ。電子メールが使えるとしても、あるCEOが云うように『手書きの手紙の方が印象が強い』 文例集にあるようなフォーマットでなく、その日のラウンドで嬉しかったことや感謝の言葉を書く。繰り返すが、ラウンドを共にしたからといって、あなたがボスと親友になったわけではないことを肝に銘ずること。ボスがひどいラウンドをしたのなら、それを同僚たちに詳しく喋ったりしてはならない。ボスがいいラウンドをしたのなら、そう伝えるのは問題ない。ボスが自ら彼のラウンドについて喋り出したのなら耳を傾ければよい(聞いている振りでも可)」

(November 16, 2016)

マッチ・プレイの高等戦術

Horace Hutchinson(ホレス・ハッチンスン、1659〜1932)は、英国アマに二度優勝のほか、全英オープンの六位に入ったこともある英国のアマチュア・ゴルファー。

'Hints on Golf'
by Horace Hutchinson (William Blackwood and Sons, 1886)

「あなたが対戦相手の切れ味のよいアイアンのせいでいくつものホールを負け続けている場合、時によって次のような言葉をかけるのはいい作戦である。

(友情の篭った声音で)『今日のあんたのアイアンは、これ迄に見たこともないほど実に素晴らしい。どうしてなのか、説明出来るかい?』

これは、あなたの相手が次にアイアン・ショットを打とうとする時、いくばくかの神経過敏な状況を生み出す。そしてこの神経過敏さはあなたに味方してマッチを僅差にしてくれるに違いない。相手を誉めるのはルール違反ではない。ただ、人々があなたとプレイしたがらなくなる恐れはある」

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戦術ではなく素直に誉めたのに、上の作戦の効果を確認することになった私の事例。

ある日、一緒に廻っていた男の何回かのバンカー・ショットが非常に素晴らしかったので、心から賞賛しました。「とてもスムーズでソフトなスウィングだ。暴力的なパワーなど全くない。どうやってそのやり方を覚えたんだい?」彼は、別に本や雑誌やYoutubeヴィデオで学んだわけではなく、練習してるうちにこうなったんだと説明しました。ところが、その後のバンカー・ショットではチョロの連続。多分彼は私が使った形容詞「スムーズでソフトな」バンカー・ショットを再現しようとして、砂を弾き出すパワーを生み出せなくなったんだと思われます。私に悪気はなかったのですが、誉めるのはラウンド終了後まで待てば良かったと反省したことでした。

上役のプレイをみだりに褒めると、逆効果になって怨まれる恐れもあるので要注意です。

(November 16, 2016)


ラウンド後の練習

 

「げっ、ラウンド後に練習なんて出来るかい。相乗りの同僚を待たせるわけにはいかんし、陽があるうちに家に帰りたいし…」解ります。東京から千葉・茨城方面へゴルフに行くと、帰り道は真っ暗でした。現在私はゴルフ場まで片道たった15分なのですが、それでもラウンド後に練習したなんて、三回ぐらいしかありません。ですから、この記事を読んで本気で実行するゴルファーがいるとは思えませんが、不調の原因を見つけ対策を練るのに参考になる点が多々ある記事なので紹介します。筆者は『8ステップ・スウィング』や『Xファクター』などの著書で有名なインストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)。

'The 3 Scoring Clubs'
by Jim McLean (Gotham Books, $30.00, 2005)

「あなたがプロ・ツァーのトーナメントを観に行ったら、多くのプロがラウンド終了後に練習場に戻るのに気づく筈だ。その時がスウィングに取り組むには最も有益なタイミングなのだから、あなただってそうすべきなのだ。悪かったラウンドの直後なら、あなたにトラブルをもたらしたショットに即応出来る。よいラウンドの後なら、よいスウィングを定着させ、あなたのスウィングの留意事項を整理出来る。

ただし、ラウンド後の練習をするには肉体的にも精神的にも疲れていないことが条件だ。その気になれないのなら、スウィングについて肉体的・精神的に分析したメモを書いておくに留め、元気もりもりの翌日に練習場へ向かえばよい。疲れている時の練習は時間の無駄である。

あなたが再ウォームアップし、練習のための準備OKと仮定し、ラウンドで明後日(あさって)の方に飛んだドライヴァー・ショットの原因を突き止めたがっているとしよう。あなたのスウィングに大きな欠陥があると看做すよりも、先ずグリップやアドレス体勢などの基本をチェックすべきだ。プロもそうするのだが、彼らはオン・プレーンでのスウィングやターゲットを狙う能力を、たとえマイナーでもセットアップのミスがあれば惨事に至ることを知っているからだ。例えば、左手のグリップが過度にストロングだとティーショットのミスに繋がったり、爪先体重に偏っていると急角度過ぎるプレーンとなってスライスやアイアンでのダフりを招いたり、踵に偏った体重配分は過度にフラットなプレーンとなり、ドライヴァーによるごくありふれたミスを引き起こす。

 

基本をチェックした後は、スウィングのテンポをスローダウンするためウェッジで短いショットを打つ。Sam Snead(サム・スニード)は、ドライヴァーに移る前に、7番アイアンのショットを20〜30発打つことを好んだ。彼がコースでお粗末なショットをしたら、ラウンド後に7番アイアンで100〜150発打って、スウィングをいい状態に引き戻した。あなたのスウィングは、コースでちょっとだけテンポが早過ぎたのかも知れず、それによってタイミングとリズムがずれていた可能性がある。

上級プレイヤーでさえ犯すミスにアライメントの問題がある。ドッグレッグでのボールのコントロールに失敗した時など、スウィング・ミスを疑ってかかったりするが、実はアライメント・ミスであることが多い。このミスは誰もが犯すものだ。練習場に何本かのクラブを横たえて、アライメントを確認しながら打ってみるべきである。

ここまで読んで来れば、私が云わんとすることはもう察しがついていることと思う。多くの場合、ゴルファーたちは、完全なセットアップやスウィングの感覚を回復しようとする代わりに、完璧な動作を求めてスウィングを弄くり廻そうとする。一旦ソリッドなセットアップあるいは感覚を取り戻せたら、問題なくいいスウィングでボールが打てるものなのだ。

プロたちは風の強い日には練習を避ける。あなたもそれを見習うべきだ。

ドライヴァーを練習する際、ドローとフェードを交互に打つように。全盛期のJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)はそうしていた。そうすることによって、どちらか一方が強くなり過ぎることを防ぐことが出来る。

トップ・プロはトーナメント会場にもコーチを呼び寄せたりするが、あなたの場合はたった一人であろう。何がいけないのか困惑することが多い筈だ。上述の基本をチェックした後もなおミスの原因が解らなければ、ボールの軌道を分析すべきだ。コースでプッシュしたのなら、あまりにもフラットなプレーンでスウィングしたのかも知れない。プルは多くの場合、アウトサイドインのスウィング軌道のせいであることが多い。スライスはクラブフェースをオープンにしたインパクトでターゲットラインを横切ったのが原因であることが多い。プル・フックはクラブフェースをクローズにしたインパクトでターゲットラインを横切ったのが原因かも知れない。ゴルフは真に《微調整のゲーム》であるとも云え、ドライヴァーを一年中完璧に打てる者など存在しない。

最後に、あなた自身では自分が抱えている悩みの原因が判らず、レッスン・プロに見て貰うことも出来ないのなら、スウィングをカメラで撮影し、自宅でじっくり研究すべきだ。理想的には、あなたが絶好調だった時のヴィデオがあれば、比較して簡単にミスの原因を突き止めることが出来る。

あなたがかなり経験のあるゴルファーで、さらなる上達を望むのならヴィデオ撮影を強くお薦めする。しかし、先ず問題点を診断出来る経験豊かで、評判のよいインストラクターを得るのが第一だ。さらに、撮影する際、アングルとカメラからの距離を常に一定にすることが必須である。僅かなカメラ位置の変化も全てを変えてしまう恐れがあるからだ」

(November 23, 2016)

パッティング・ポスチャーの大きな過ち

 

Hank Haney(ハンク・ヘイニィ)の、当たり前に見えて結構見逃されているパッティングの基本。

'Get square to make putts'
by Hank Haney ('Golf Digest,' January 2011)

「多くのミスはセットアップのミスに起因するが、特にパッティングでそれが顕著である。ゴルファーたちは、ターゲットラインに平行に両足を揃えるが、それだけでは不十分だ。両足、腰、肩、両目、そして腕などの全てがターゲットラインに揃っているべきである。

等身大の鏡に向かって構えた時、あなたの左肩は右肩を覆い隠していなければならない【編註:右肩が見えるか見えないか紙一重の角度】。最も一般的な過ちは、両足はターゲットラインに平行だが、腕と肩をオープンにしているというものだ。これは、パターフェースもオープンにしてしまい、一貫性のないパッティングの原因となる。身体全体をスクウェアにせよ。そうすればスムーズなパッティングによって、どんな距離からでもボールを沈められるようになる」

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私はHank Haneyの指摘以前から、長いこと鏡を使うアライメント・チェック法を行って来ましたし、右肩が出しゃばってプルする弊害にも気づいていました。しかし、それでもパットのラインが定まりません。ある時、《脚の長さの違いは、両手の向きに影響する》ということを知りました。左右の脚の長さが異なると、両手はターゲットラインに完全に平行に動かないのです。私はボールにアドレスした後左膝を僅かに内側に押し込み、左右の脚の長さが同じになるように努めました。

【註】以前LPGAツァーの賞金王だったYani Tseng(ヤニ・ツェン、台湾)も、パッティングの際に左膝を内側に押し込んでおり、両膝は平行ではありません。彼女も両脚の長さが違うのでしょうか。

 

その後、《ハンドルの太さがパット軌道を変える》ということも知り、パター・ハンドルを肥満化しました。これを握ると左右の膝は自然にターゲットラインに平行になり、肩もほぼスクウェアになります。しかし、上の「スタンスと肩の向き・総点検」に書いたように《左膝を内側に押し込むと肩は90%スクウェアになり、僅かに右肩を引くと100%スクウェアになる》のはパッティングでも同じであることが最近判明しました。これは正確なストローク動作の決め手となるだろうと思います。

パッティングの上達のためには等身大の鏡が必須です。上等な鏡は必要なく、プラスチック製の安物で充分です。ストレート・ストロークを志向する場合、アドレス時だけでなく、ストロークの最初から最後まで右肩が見え隠れしない体勢を見つけなくてはなりません。なお、服を着ていると肩の動きがよく判りませんので、上半身は袖無しのシャツ一枚で行うことをお勧めします。パット練習器などで時間を費やすより、鏡を見ながら「右肩が出て来ないストローク」をマスターする方が100倍効果的だと考えます。

【参照】
・「脚の長さの違いは、両手の向きに影響する」(tips_169.html)
・「ハンドルの太さがパット軌道を変える」(tips_173.html)

(November 23, 2016)

ツァー・プロの契約金

 

ツァー・プロの身体は、NASCAR(ナスカー)のレーサーほどではないとしても、「歩く広告塔」あるいはサンドイッチマン以上と云えるほどロゴだらけ。帽子(正面、左・右、後部)、襟(左・右)、袖(左・右)、胸(左・右)、首の後ろ(紋付の紋の部分)、スラックスの太腿、手袋等々。そのウザったい広告(=ダサい身なり)によって、プロたちは一体いくら貰っているのか?その料金は極秘なのだそうで、業界通の証言から類推するしかないそうです。

[Sung hyun Park]

この記事は六年前のものなので、現在では契約料が変わっていると思われます。なお、ドル→円変換してみましたが、ドルや円の値打ちは日々変わることを御承知おき下さい。

'Logo lotto'
by Peter Finch ('Golf Digest,' October 2012)

「Jim Furyk(ジム・フューリク)は'、2012年に'5-hour Energy'(ファイヴアワー・エナジー)というスポーツ・ドリンクと契約した。彼のエージェントはその契約の額を明らかにしない。だが、業界通数人は約12億〜15億円だと推測している。

Jim Furykは帽子の正面と胸の左側(ゴルファーの身体における一等地)に'5-hour Energy'のロゴをつけている。【註】これは普通のPGAツァー・プレイヤーなら年に約2,550万〜2億円、LPGAあるいはChampions(チャンピオンズ)ツァーなら約1,300万円〜5,100万円、Web.comツァーなら約255万〜510万円だそうだ。

【編註】Jim Furykの'5-hour Energy'との契約は満了したようで、現在彼は'Callaway'(キャラウェイ)ロゴの帽子をかぶっています。

Nike(ナイキ)とTaylorMade(テイラーメイド)は少し変わっていて、プロが他の会社のロゴを身につける付ける余地があっても、エクストラの金を払ってそれを阻止している。

【編註】Nikeは2016年をもってゴルフ用品製造・販売から手を引く決断をしました。莫大な契約金でウハウハしていたTiger Woods(タイガー・ウッズ)、Rory Mcilroy(ロリィ・マカロイ)、Michelle Wie(ミシェル・ウィ)などはショックでしょうね。

プロの契約金は競技大会にロゴを身につけて出場するためにだけ支払われるのではない。会社主催のいくつかの催しに個人として出ることと、宣伝のためのイメージ製作(CM、ポスター、パンフレット等)に協力することなども含まれている。三社か四社と契約している典型的なプロの場合、一年に6〜15日ほどそれらに拘束される。

能力が同レヴェルであれば、控え目なプロより活発で派手なプロ、年寄りより若いプロの方が契約を得るのに有利である。

優勝し始めたりRyder Cup(ライダー・カップ)に出場が決まれば、契約料は三倍や四倍になる。『それは練習に励む大きな動機づけとなる』とヴェテラン・ツァー・プロは語っている」

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「Titleist(タイトリスト)は、私に彼らのボールを使わないでくれと多額の契約金をオファーして来た」
Bob Hope(ボブ・ホープ)【編註:下手っぴに使われると逆宣伝になるから…という冗談】

【おことわり】画像はwww3.pictures.zimbio.comにリンクして表示させて頂いています。

(November 30, 2016)

PGAツァー・キャディがPGAツァーを告訴した結果

 

2015年にツァー・キャディ168名が「自分たちの収入と無関係な広告(ロゴ)を印刷したビブ(よだれかけ)を着せるのは、強制的にキャディを歩く広告塔とするもので、キャディの権利を侵害している」とPGAツァーを訴えました。彼らはPGAツァーが得た2013〜2014年シーズンの広告収入約50億をキャディに還元せよと主張。公判は、2016年三月、カリフォーニアの連邦裁判所が全面的にキャディたちの主張を退けて幕を下ろしました。

裁判長は、「ビブはキャディのユニフォームと云えるものであり、何十年も続いている伝統的な慣習である。トーナメントの間、ビブを身につけるのはキャディの仕事の一部である」と、キャディたちの主張を認めなかったそうです。

キャディたち多数は、抗告してこの件でこれからも思い煩うよりは、本来の仕事に戻りたい…と考えたそうです。

(November 30, 2016)

プロも木から落ちる

 

インストラクターDr. T.J. Tomasi(T.J.トマシ博士)による丸山茂樹の'58'に関する考察。

'Ask The Pro'
by Dr. T.J. Tomasi (Andrew McMeel Publishing, 2001, $12.95)

Q: 私も仲間たちもプレイにムラがある。われわれのスウィングは褒められたものじゃないから、まあ理解出来る。理解出来ないのは、ツァー・プロたちが、ある日は目の覚めるようなプレイをし、次の日には惨めなプレイをしたりすることだ。彼らはスウィングを確立しているわけだから、メンタルな問題に違いないと思うが。

A: メンタルで正解。日本の丸山茂樹は2,000年のU.S.オープンの参加資格認定ラウンドで驚くべき58を記録した。彼はWoodmont C.C.(ウッドモントC.C.)の南コース(パー71)で11バーディと一つのイーグルで29-29=58を達成した。No.6からNo.13までのスコアカードは、3-3-3-2-3-3-2-3と、まるでパットパットゴルフのようだった。だが丸山は初日に73を叩いていて【註参照】、それは58を16打も大幅に上回っている。

【編註】初日が58だったという説もありますが、初日でも二日目でもこの記事の趣旨には関係ないので、そのままにしておきます。

一体どうなっているのか?一人のゴルファーが、ある日は73で足を引きずりながらとぼとぼと帰宅し、24時間後には58でコースをぶちのめして降伏させることが出来るなんて?いったんスウィングを修得したら、こうした大変化の原因は脳を流れるメンタル・サイドの問題なのだが、スウィングは目に見えるので好調なら褒められるし、そうでなければ貶(けな)される。

問題は、スウィングにあまりにも重きをおくことが、あなたの今後のゴルフ人生にずっと続く悪循環に繋がることだ。大抵のゴルファーが悩む基本的誤解は、いいショットを放つことに関わる唯一無二のものはスウィングの機械的動作だと思うことであり、正しい動作を身につければいいゴルファーになれると思い込むことだ。丸山はある日彼のスウィングを忘れ、翌日に思い出したのであろうか?否。彼はある日は脳を貧弱に働かせ、次の日にはうまく働かせたのである」

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プロでさえいい日と悪い日があるのですから、私などの好調が二ラウンド続かなくても当たり前ですね。三日お寒い日が続き、やっといい日が一日。これを私は「三寒一温」と呼んでいます。

 

1999年にミシシッピ州で初めて開催されたメイジャー(現在までこれが唯一無二)U.S.女子オープンを見に行きました。会場へ着くなり、練習場からクラブハウスへ戻るNancy Lopez(ナンスィ・ロペス)と遭遇。私がすれ違いながら"Good luck!"(幸運を!)と云うと、彼女は"Thanks!"(ありがと!)と応じてくれました。二年前、悲願のU.S.女子オープンに王手をかけたのに惜しくも二位に甘んじたNancy Lopezは、全英女子オープンを除く他のメイジャーに複数回優勝しているのにこの大会だけ優勝を逸していたのです。このU.S.女子オープン、彼女は残念ながら予選落ちしてしまいました。

2001年、ミシシッピ州の州都Jackson(ジャクスン)近くで開催されたSouthern Farm Bureu Classic(サザン・ファームビューロー・クラシック)を見に行ったところ、練習場へ向かう丸山茂樹とすれ違いました。私が「頑張って下さい!」と声を掛けても、返事は無し。無言で頷いただけでした。メイジャーに多数優勝しているNancy Lopezでさえ返事してくれたのに、「何だ、偉そうに!」と思いましたね。「や、どうも!」とか、「ありあたっす!」とか云えば、ファンになったかも知れないのに。

(November 30, 2016)

ゴルフGPS

 

日本では「ゴルフ用GPSナビ」と称されているようですが、ここでは単に「ゴルフGPS」と呼ぶことにします。

これまではIZZO Golf製のSWAMI 1500という、文字表示しかない廉価版を使って来ました。友人が別の友人から買ったものを25ドルで買い受け、私が三人目の所有者となったのですが、それは一年経った頃機能しなくなってしまいました。同じSWAMI 1500を使っていた友人Keith(キース)が高機能のものに買い替えると云い、お古のSWAMI 1500を私に只でくれました。これも二年もしないで衛星からのシグナルを受信しなくなってしまいました。

使っている時はさほど便利だとも思っていなかったのですが、無くなってみると突然盲目になったような気がしました。ゴルフGPSに完全に頼り切っていたわけではなく、常に地面に設置されたヤード表示や立ち木の目印を第一の目安とし、それらの中間に位置した時に、自分の勘によるヤーデージをGPSで確認していたという感じ。GPSのいいところは、コースが設置した目印から離れたところにボールがある場合です。GPSが無いと「ピタゴラスにキャディをさせる【斜めヤーデージの研究】」(tips_156.html)のような足し算・引き算をしないといけませんが、GPSは正確に計算してくれます。

私はおっちょこちょいで、地面の100ヤードの表示から10ヤード後方にいるのに、引き算して90ヤードとしてプレイしたり、逆に10ヤード前方にいるのに足し算して110ヤードとしてプレイしたことが何度かあります(T_T)。GPSを併用すれば、そういう馬鹿げたミスは無くなります(^^;; 。

[GPS]

というわけで、GPS抜きのラウンドは考えられず、高い買い物を覚悟しました。友人Keithが使っているのは道路や空路などのGPSを開発したGarmin(ガーミン)という会社の"Approach G7"というモデル。彼が機能をデモして見せてくれました。これはホールのレイアウトがグラフィック表示されます。年中プレイしているコースにこんなグラフィック表示は不要なので文字表示だけにも出来るのですが、知らないゴルフ場へ行くと見えないバンカーや小川などを教えてくれるので助かるとのこと。勾配を計算してヤーデージを増減したり、タッチパネル方式でピンの位置を指で動かすと、即座にヤーデージも変わるのが凄い。自動的にホールが前進してくれる機能も便利。液晶というのは日陰でないとよく見えないという先入観があったのに、これは陽光の下でもクリアに見えるのに驚きました。彼が「充分満足している」というので、私も同じものを購入することにしました。

Approach G7の写真は、左から文字表示、レイアウト表示を順に表しています。この他にグリーンだけを拡大表示するモードもあります。

Keithは新品を180ドルぐらいで買ったそうですが、私はオークション・サイトeBayで"refurbished"(店頭展示品とか返品された製品を、メーカーが新品同様に再整備したもの)を見つけ、それが130ドルと格安だったので注文しました。私のiMacも"refurbished"でメーカーの保証もあり、無償修理して貰えましたから心配しませんでした。そして、現在このGPSは期待通りに私を助けてくれています。

私の仲間のゴルフGPS所有者たちの多くは、15〜35ドルもするGPSホルダーを購入してカート上に設置しています。私は有り合わせのプラスティックと薬の空き瓶で、見てくれも機能も申し分無いGPSホルダーを製作し、35ドル節約しました。これで私のGPSは、実質的に95ドルになりました\(^o^)/。

【おことわり】画像はwww3.pictures.zimbio.comにリンクして表示させて頂いています。

(November 30, 2016)

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