本書'The PGA Manual of Golf'はインストラクターの団体であるPGA of America（PGAツァーとは別）が、マスター・インストラクターであるGary Wiren（ゲアリ・ワイレン）博士に委嘱して公式に出版した450ページの大著。

'The PGA Manual of Golf'
by Gary Wiren, Ph.D. (MacMillan Publishing, 1991, $39.95)

「【初級篇】

あなたが目にしそうな芝はベント、ライ、バミューダ、poa annua（ポアナ、スズメノカタビラ）のどれかであろう。ベント、ライ、ポアナの芝目は無視してよいが、バミューダは広い葉でパットの方向と距離に重要な影響を与える。バミューダの新品種であるTif-dwarf（ティフ・ドウォーフ）は、葉が狭いので強い芝目を持ちそうにない。強烈なバミューダの芝目を読む有益な情報は以下の通り。

1. 草が日光で照り輝いていれば芝目は順目であり、ボールは早く転がり、草の表面の反射が鈍ければ逆目で転がりは遅い。

2. カップの1サイドが褐色になっていれば、芝はそちらに向かって生えている。

3. カラー（フリンジ）の草を擦って芝目を知る。（グリーン上ではルール違反だが、カラーではOK）

4. 日没の方向を調べれば、一般的に云って芝の生長はその方向である。ただし、芝は排水設備の方向や卓越風（ある地域で常時支配的に吹く風）にも向かう。

【上級篇】

以下は'Vector Putting'（ベクトル・パッティング）という、グリーンの科学的読み方に関する本を著したテキサス州のH.A. Templeton（H.A.テンプルトン）氏の結論のいくつか。

・重力と傾斜は、ボールの転がる時間の長さに比例した影響を与える。早いグリーンでは初速を遅めにする必要があり、カップへ向かう時間を長くして重力と傾斜の影響を許す。

・パットすると先ず芝に沈んでいたボールが浮き上がり、次いで転がり始める前に全体の15%を滑走する。この区間で、ボールはほとんどスパイクマークや他の凸凹に影響されず芝の葉の上を滑る。パットされたボールの勢いが弱まる終盤は、再び芝の中に沈み始め、グリーンの不完全な状態（凸凹など）が狙ったコースを逸らしてしまう。

・パターフェースの中心で打たれなかったパットは、距離と方向に重大な影響を及ぼす。フルショットでセンターを外すとわれわれは腹を立てるが、スコアに影響するパッティングではもっと重要である。

・ボールに余分のトップスピンを与えようとする試みは、たとえうまく行ったとしてもムラを生じ、25フィート（約7.6メートル）のパットにほぼ3/4のエクストラの転がりを増すに過ぎない。

・攻撃的なパットをする人たちが、カップを3.5〜4フィート（約1〜1.2メートル）オーヴァーするように打つと、スピード違反によりカップのセンターを通過したとしてもカップインすることは叶わない。

・ボールがカップで頓死するように打つ人たちは、ボールが減速し停止しようとする時期、芝目、地面の凸凹、僅かに盛り上がったカップの周囲、スパイクマーク、ボールマークなどの犠牲者となる。

・パッティングにとても役立つ考えは強さの判断であり、たとえミスしてもカップを30センチ越えるように打つことだ。

・平均的パットのブレイクの60%はカップの3フィート（約91センチ）以内で発生する。だから、パットのゴール周辺を念入りに調べる必要がある。

・X-OUT（規格外の不良品）のボールは一般的に最もバランスがお粗末で、1.8メートルのパットだと約10センチほどカップの左右に逸れかねない。

・芝目はパットのスピードに影響するものの、パットのゴール周辺に至るまではさして影響は及ぼさない。

・傾斜が関係してくると、初速の許容誤差は大幅に減少する。急傾斜のグリーンでの12フィート（約3.7メートル）のパットは、平坦なグリーンの50フィート（約15メートル）のパット同様に難しい。

・カップから2.5フィート（約76センチ）のパットのアライメントにおける許容出来るエラーは、プラス・マイナス4°であり、これらのパットは自動的に入るということを意味している（ビビらなければ…だが）」

【参考】
・「パットの手帖」（tips_139.html）
・「寄せの手帖」（tips_139.html）
・「バンカー・ショットの手帖」（tips_141.html）
・「練習の手帖」（tips_158.html）
・「コース戦略の手帖」（tips_172.html）

インストラクターDr. Craig L. Farnsworth（クレイグ・L・ファーンズワース博士）はアーク（円弧型）ストロークのメソッドを「“パット・ドクター”のストローク法」と呼び、彼の著書の大半をその説明に費やしています。しかし、アーク・ストロークだけでは本が売れないと考えたのか、一部で伝統的なストレート・ストロークのメソッドについても触れています。以下は、ストレート・ストロークをする際に押さえておくべき重要ポイント。

'The Putting Prescription'
by Dr. Craig L. Farnsworth (John Wiley & Sons, Inc., 2009, $24.95)

「ストレート・ストロークの流儀には二つある。一つはあまり見かけない方法だがかなり効果があると思われる腕回転ストローク、もう一つはバックストロークで右肩を上げ、フォワードストロークで左肩を上げるもので、これは前者よりも一般的である。

ストレート・ストロークをする場合、次のようなポイントを忘れてはいけない。

・上体を地面と平行にすること。これはパターを真っ直ぐ引くことを助けてくれる。

・パターをアップライトな角度（多分75°あるいはそれ以上）で構える。こうすると手首と手を弓なりに下に曲げることになり（右図）、ボールにより近いアドレスが可能になる。ただし、目がターゲット・ラインを越えないように注意すること。

・アドレス時に顎を引くか尻を上げること。

・フェース・バランスト型【編註】で、しかも30インチ（76センチ）以下のパターが望ましい。

【註】"Face-balanced"（フェース・バランスト）とは写真のAとCのようなマレット型に多い、手でバランスを取った時にフェースが水平に空を向くタイプ。

・重いヘッドのパターを選ぶか、あるいはパターヘッドの底部に鉛を貼って、望ましい重さになるよう調整する。

・このストロークは、パターフェースをターゲットラインにスクウェアにするため、バックストロークで手首をフッディング（かぶせる）する動き、そしてフォワードストロークでオープンにする動きを生じる。そのパターフェースのコントロールには、左右両手の生命線でハンドル（グリップ部分）を握ることを勧める」

「体を地面と平行にする」は、Jack Nicklaus（ジャック・ニクラス）スタイルです。やってみましたが、私にはちと窮屈です。彼のように屈むツァー・プロがあまり見られない点から云って、首・頭を地面と平行にするだけで充分だと思われます。

「顎を引くか尻を上げる」は重要です。これは「首・頭を地面と平行にしてパット」（11/12）と同じ結果を実現してくれます。尻を上げると自然に背筋が伸び、頭が地面に近づきます。ここでさらにもう一押ししたいのであれば、地面に何か白い円形の物が落ちており、「お？百円玉かな？」と首を落として凝視する感じがいいと思います。否応なく首と頭が地面と平行になります。

【参考】「パターがパッティング・ストロークを決める」（tips_110.html）

Maggie Will（マギィ・ウィル）は、LPGAツァーで三勝した経歴を持つ女性インストラクター。彼女は下記の本でストレート・ストローク派を代表する栄誉を担い、独自のメソッドを“Brush Stroke”（ブラッシュ・ストローク）と命名して18ページにわたって解説しています。それはJack Nicklaus（ジャック・ニクラス）などの深く屈んだアドレスと、Dave Stockton（デイヴ・ストックトン）のストローク、そして私の「チキンウィング・ストローク法」をミックスさせたようなものです。“Brush Stroke”とググっても本の紹介記事しか出て来ませんから、世に広まったメソッドとは云えません。しかし、彼女がそのメソッドを開発した経緯が面白いのと、インストラクターDr. Craig L. Farnsworth（クレイグ・L・ファーンズワース博士）がまとめた「ストレート・ストロークの必要条件」との共通点が多いので紹介することにしました。

'Golf Magazine's The Best Putting Instruction Book Ever!'
Edited by David DeNunzio (Time Home Entertainment Inc., 2010, $32.00)

「私はLPGAツァー参加当時、3フィート（約1.8メートル）以内の距離なら安定してパットを沈められた。10〜20フィート（約3〜6メートル）の距離も沈めてもっとバーディが得られてよい筈だと思っていたのだが、右方向にショートすることが多く、それに欲求不満が高じると左方向にオーヴァーする始末だった。（これって、よく聞く話じゃありません？）その頃、もし尋ねられたとしたら、私のメソッドはストレート・ストロークだと答えただろうが、実際の所、注意深く分析するとそれは右インサイドに引き、インパクト後左インサイドに押すもので、かなりの手加減が必要なものだった。

もし、私がその手加減に長け、成功を収めていたら他のメソッドを考えることもなかっただろうが、努力は報いられなかったし、年齢とともに決定的瞬間に合わせる手加減が困難になり、YIPSさえ忍び寄って来るのを感じた。

私はLPGAツァーの三勝と何度もトップ10に入ったパッティング好調の日を反芻した。『あの時、あの強風の最中に、なぜ私はあれほどの数のパットを成功させられたのか？』強風に抗するため、私はアドレス体勢を変更したのだった。スタンスを広げ、背中を丸めて屈み、頭を垂れ、ウィンドブレイカーに引っ掛からないようにパター・ハンドルを身体の前に突き出していた。私はパター・シャフトを左手の"heel pad"（生命線の下の膨らみ）ではなく"thumb pad"（生命線の上、親指の下の膨らみ）で握って垂直に近い角度で持ち、それがパターフェースの回転をほぼゼロにしてくれた。これが、私が“Brush Stroke”と呼ぶものの特徴である。

伝統的ストロークとして教えられているのは肩と手・腕を振り子のように動かすもので【縦の振り子型】、バックストロークでパターヘッドを上昇させ、インパクト後またもパターヘッドをターゲット方向に上昇させる。これは髪一筋のボール位置の違いでもショートしたりオーヴァーしたりする。振り子ストロークはまた、ボール位置によってインパクト直後にボールを滑走させてから宙に浮かべたり、ボールを地面に埋め込んだりする。このメソッドには精密なインパクトが必須だが、それは選り抜きのゴルファーにとってさえ難しいことである。

信じられないような才能の持ち主Ben Crenshaw（ベン・クレンショー）に代表されるアーク（円弧型）ストローク【＝横の振り子型】をする人々もいる。このメソッドもボール位置がほんの僅かズレても失敗する恐れ大である。

私の“Brush Stroke”では、両掌がターゲット・ラインと直角に交わるようにパターを握る。"thumb pad"（生命線の上）でパターを保持すれば、自然にその手は弓なりに垂れる（手首に皺を生じない）。これがパターフェースが捩じれるのを防いでくれる。ボール位置は背骨の数センチ左。目はボールの真上。純粋に肩の上下運動だけでストロークする。長めのバックストローク、短めのフォワードストローク。

パターヘッドを絵筆として地面に絵を描くように、地面に対し水平に動かす（これが“Brush【絵筆】Stroke”なる命名の由来）。ヘッドを上昇させないこと。縦の振り子型で、インパクト・ゾーンで左手首を折るのは"hari kiri"（ハラキリ＝自殺行為）に等しい。フラットにした左手首で、手がパターヘッドに先行すること。そのために、ピストン運動のように右手を伸ばし、左肘をターゲット方向に折る（左図）。こうすれば、パターフェースを捩じることなく、ボールをカップに送り届けることが出来る」

Maggie Willのメソッドが新機軸でも、奇を衒（てら）ったものでもないことは次のような点で証明出来ます。

1) 彼女の屈み込んで、首を地面と平行にするアドレスはほとんどJack Nicklaus（ジャック・ニクラス）のポスチャーに類似しています。彼女は股関節から上体を折るのではなく、猫背のように肩を丸めていますが。

2) 「低いバックストローク、低いフォワードストローク」はパット名人Dave Stockton（デイヴ・ストックトン）のメソッドに似ています。Dave Stocktonは「インパクト後、パターヘッドをトンと地面に下ろすのが望ましい」と云うほど、かなり低い軌道を推奨しています。

3) インパクト後、左肘を折るのは、私の「チキンウィング・ストローク法」（tips_120.html）と全く同じです。私の記事の公開の方がこの本の出版より早いので、私が真似したわけではありません。

4) 「フラットにした左手首」は、アイアンの方向性を司る重要ポイントです。これがパッティングにも役立たない筈はありません。

'Golf Magazine'『ゴルフ・マガジン』誌編纂のゴルフ百科全書ともいうべき本の「バックスウィング」の項より。

'Golf Magazine's Complete Book of Golf Instruction'
by George Peper et al. (Harry N. Abrams, Inc., 1997, $45.00)

「バックスウィングの最初の30センチほどは"takeaway"（テイクアウェイ）と呼ばれる。これはスウィング全体のトーンと方向性を決める重要な部分である。

多くのプレイヤーが、手を動かすのではなく、左肩を顎方向に廻すワンピース・テイクアウェイを志向する。肩と腰は廻るが、頭は比較的静止している。クラブが最初の45センチほどを過ぎるとバックスウィングに突入する。

Fred Couples（フレッド・カプルズ）は、ターゲットラインの少し外側にテイクアウェイしてスウィングを開始する。その後、彼は手首をセットし、右腕を折る。この動きの組み合わせは、トップで彼の左手甲側への僅かな凹みを作る。Fred Couplesは云う、『僅かにオープンなクラブフェースをもたらすこの手首の折れは、荒っぽいフックを打つ恐れなしにダウンスウィングでボールを鞭のように打つことを可能にしてくれる。だから、甲側に凹んだ手首は、究極的にパワフルなショットをもたらす』

Ray Floyd（レイ・フロイド）はバックスウィングでの勢いのいい腰の回転を助けるため、ターゲットラインのかなり内側にクラブを引き摺るように引き、体重が右に移らない場合に起るリヴァース・ピヴォットを防ぐ。いったん腰が捩られたら、Ray Floydは急角度のバックスウィング・プレーンをなぞってクラブを下ろす。

Seve Ballesteros（セヴェ・バレステロス）は、右手でクラブを穏やかに引く。彼は云う、『これはスムーズな身体のフル回転と素晴らしいリズムの好ましい連鎖反応を生む」

われわれは練習の時やヴィデオで自分のスウィングを分析する際、トップにおけるクラブフェースがオープンかクローズかをチェックし、方向性の善し悪しを考えます。しかし、意外や意外、以下の記事でそういう方法が当てにならないことが明らかになります。

この本は、70年代の先進的インストラクターだったJim Flick（ジム・フリック）やPGAプロ（インストラクター）たちが提唱した"Square-To-Squre"（スクウェアからスクウェアへ）メソッドをまとめたものです。

'The Square-To-Squre Golf Swing'
by Dick Aultman and the editors of Golf Digest (Golf Digest, Inc., 1970)

「これまでの古い理論では、バックスウィングのトップにおけるクラブフェースの向きは、次の三つと説明されて来た。

a) クローズ
トップでクラブフェースが天を向いている場合。この向きのトップだと、インパクトでフェースをスクウェアにするにはゴルファーが何らかの調節をしなければならないが、そんなことが出来なければ、フェースはクローズのままインパクトを迎え、ターゲットの左を向いたフェースでボールと接触する。

b) オープン
クラブフェースがターゲット方向を向いている場合。この向きからインパクトでフェースをスクウェアにするにはゴルファーが何らかの調節をしなければ、ターゲットの右を向いたフェースでボールと接触する。

c) スクウェア
クラブフェースが上の二つの丁度中間にある場合。このトップからだと、理論的には調節など何ら必要とせずスクウェアなインパクトが迎えられる。

しかしながら、"Square-To-Squre"メソッドを教えるインストラクターたちは、上のような旧式のシステムには同意しない。

ストロング・グリップ（両手を右側に廻したグリップ）でトップを形成した場合、ゴルファーのクラブフェースはクローズになるし、ウィーク・グリップ（両手を左側に廻したグリップ）によるトップのクラブフェースはオープンになる。だから、グリップがクラブフェースの向きに影響を与えるのであって、トップでのクラブフェースの向きはスクウェアか否かを示すものではない。

また、スウィング・プレーンもトップでのクラブフェースの向きを変えてしまう。フラットなスウィング・プレーンのゴルファーは、比較的クローズ目のクラブフェースでバックスウィングのトップを形成しがちであり、アップライトなスウィング・プレーンのゴルファーは、トップでオープンなクラブフェースを生じがちである。

上の事実はあなた自身が証明可能である。鏡の前に立ち、意図的にフラットなプレーンでクラブをトップまで上げ、その時のクラブフェースの向きを確認されたい。その位置からアップライトなプレーンのように両手を肩の上まで上げる。すると、両手の位置が変わるにつれクラブフェースがオープンになって行くのが判る。

かように、クラブフェースの向きはバックスウィングの有効性に関する信頼出来る尺度とは云えない。トップでクラブフェースがスクウェアだからといって、インパクトでのスクウェアなフェースを保証するものではない。

ゴルファーのグリップとスウィング・プレーンがクラブフェースの向きを歪めてしまうのである（バックスウィングの長さも影響する）」

やってみると、確かに両手が肩を越すくらい上げればオープンに、肩より下げればクローズになります。私が不調の日、思い余っていつもよりフラットなプレーンでスウィングしてみたら、ひどいプル・フックを生じたことがありました。それはかなりクローズになったフェースで横殴りに打ったせいだったようです。

Jack Nicklaus（ジャック・ニクラス）の「クラブフェースを僅かにオープン（クローズ）にする」という弾道制御術（tips_155.html）がありますが、右が恐いレイアウトならフラット目のプレーン、左が恐ければアップライトなプレーン…という、もう一つの選択肢として使えるかも知れません。

この記事は、パッティングの際の手首について焦点を当てています。

精確な方向性を希求するなら、Bernhard Langer（ベルンハード・ランガー）考案のグリップ（左図）が最高です。これは欧米では"Bavarian Stranglehold"（バイエルンの喉輪）と呼ばれています。彼はドイツのバイエルン地方の出身で、右手がレスリングの禁じ手である喉輪（のどわ）に見えるからでしょう。私がつけた綽名は「脈拍チェック型グリップ」。彼の右手はそんな風にも見えますからね。今後はこれを「ランガー・グリップ」と呼ぶことにします。私は過去に一年近くこのグリップでパットしていたことがあります（2010年〜2011年頃）。

Bernhard Langerは、このグリップを用いて1993年のThe Masters（マスターズ）に優勝しました。「ランガー・グリップ」の詳細説明は彼の自伝にも書かれておらず、左の写真一枚を手掛かりにするしかありません。左手はパター・ハンドルの下方を握り、右手は掌でハンドル上部と左前腕部を一緒に抑えるように握ります。これですと絶対に左手首が折れることはありません。しかし、当時の私にとっては、さして目覚ましい成果を挙げられなかったため、いつの間にか他のメソッドに目移りしてしまいました。

先日紹介した女性インストラクターMaggie Will（マギー・ウィル）の「“Brush Stroke”（ブラッシュ・ストローク）」（このページ上）は、左肘をカップに向かってチキン・ウィングのように折ってスクウェアなフォワードストロークを追求するというものでした。しかし、フェースをスクウェアにするためにそんな苦労をするぐらいなら、「ランガー・グリップ」の方が簡単かつ完璧です。

「ランガー・グリップ」を久し振りに試してみると、なぜ以前私がこのグリップで成功しなかったか、その原因が判りました。盲点がいくつかあったのです。右手でがっちりとパター・ハンドルを握っていたつもりでしたが、実際はそうでなかった。私のパターヘッドが重いせいかどうか、バックストロークでグリップエンドが僅かですが動くのです（当時、私はこれを気に留めませんでした）。これだとパターヘッドのロフトが変わり、多少なりとも捩れも出る恐れがあります。右手で左前腕部を鷲掴みに（隙間が出来ないように）ぎゅっと抑えつけないといけなかったのです。これが第一の盲点。

「スクウェアなスウィングのための訓練」(tips_157.html)の著者は「不幸にして多くのゴルファーは右利きであり、日常生活で意識するとしないとにかかわらず右手・右腕・右サイドを強化している。それが右利きのゴルファーのスウィングを右サイド主導にしてしまう。"Square-To-Squre"メソッドでは、弱々しい左サイドにインパクト・ゾーンでクラブフェースをスクウェアに保たせるため、ボールに向かってクラブヘッドを引っ張らねばならない。だから、"Square-To-Squre"メソッドを遂行するにはゴルファーの筋肉構造を鍛え直す必要がある」と述べています。実はパッティングにもこの見解が当てはまるのです。

英国の高名なインストラクターJohn Jacobs（ジョン・ジェイコブズ）は、50人の偉大なプロの特色あるメソッドを選び抜いて解説した本'50 Greatest Golf Lessons of the Century'（2000）で、Bernhard Langerのパッティングについて次のように述べています。「ゴルファーには右利きが多く、右利きだと右手がストロークをハイジャックする危険が常に存在する（特にプレッシャーを感じる時点で）。これは絶対に許してはならないことだ。右手のどんな介入もパターのリズミカルな流れを狂わせ、正しいスピードでラインに乗せるプロセスを破壊してしまう。Bernhard Langerの試みは極めて異端ではあったが、右手の動きを封じ、肩、腕、手とパターが一体となって調和した動きをする点では有効であった。あなたがパッティングのラインと距離に問題を抱えているなら、Bernhard Langerのメソッドを考慮してみる価値があるだろう」

「ランガー・グリップ」を最大限活かすには、フォワードストロークで左手甲をターゲットに向けて動かさねばなりません。しかし、われわれの弱々しい左手はぎごちなくおどおどした動きになりがちです。だからと云って筋肉構造を鍛え直して左手を強化する必要はありません。手でストロークするのではなく肩を動かせばいいのです。Bernhard Langerは「普通にパットすると、六つの関節を使うことになる。左右の手首、左右の肘、左右の肩の計六つである。私のグリップは二つの手首の動きを度外視出来るので、私は両肩の動きだけに集中すればよいことになった」と云っています。両腕と胸で出来る四角形を維持しつつ、肩の動きでストロークするのです（腕主体の動きだと四角形は歪んでしまい、正確な方向性は失われる）。この部分が、以前、腕主体でストロークしていた私の第二の盲点でした。「ランガー・グリップ」は肩の動きだけで遂行すべきだったのです。

【参考】
・「脈拍チェック型パッティング」（tips_126.html）
・「Bernhard Langerの右手封じ」（tips_126.html）
・「Bernhard Langerのパッティング」（tips_139.html）

"eye-hand coordination"（アイ＝ハンド・コーディネーション）は「目と手・腕の協調作業」です。その最もいい例は針に糸を通す作業でしょう。利き目で針の穴を凝視し、手の微細な上下左右の動きで穴に糸を通します。これほど目と手の協調作業が緊密に要求されるものはありません。ゴルフのヘッドアップ（＝ルックアップ）というのは、針の穴を見ずに糸を通すという名（迷？）人芸に近いものでしょう。「ヘッドアップするな！」というのはよく聞く言葉ですが、それは「針の穴を見ずに糸を通そうとするな！」という意味なんですね、実は。

しかし、ボールが針の穴であるうちはまだいいのです。バンカー・ショットでは針の穴の右横を凝視してスウィングしなければなりません。われわれは架空の針の穴を、ボールの背後数センチのところに視覚化しなくてはならない。曲がりなりにもバンカー・ショットが遂行出来るなら、われわれはアイ＝ハンド・コーディネーションの達人と云ってもいいでしょう。

われわれは興奮し過ぎたり緊張し過ぎたりすると、ボールを見なくなります。アイ＝ハンド・コーディネーションは断ち切られてしまい、脳は実行対象の消失によってパニックに陥ります。しかし、もう振りかぶってしまったものは止められません。「えーい、ままよ！」と打ってしまいます。私はBritish Open '99のNo.18で、Jean Van de Verde（ジャン・ヴァン・デ・ヴェルデ）に起ったのはこの現象ではなかったか？と想像しています。アイ＝ハンド・コーディネーションの喪失によるミスの極端な例は空振りです。

パットにおいてもスウィートスポットで打つためにはアイ＝ハンド・コーディネーションは欠くべからざるものです。真っ直ぐターゲットに転がすためだけでなく、リップアウトの原因となるサイド・スピンを防止するためにも、ボールの真ん中をパターのスウィートスポットで打たなくてはなりません。

そのための秘策（！）を考えました。ゴルフ・ボールの直径は約4.3センチですが、それを約1/4の1センチだと考えるのです。小さ過ぎるですって？針の穴に糸を通すよりは簡単でしょう。直径1センチのボールを打つことには以下のようなメリットがあります。
a) スウィートスポットで打てる。
b) 対象（1センチの円）が小さいので身体を静止せざるを得ず、身体の横揺れ・縦揺れが不可能になる。
c) ルックアップ（＝ヘッドアップ）を防止出来る。

普通のボールを見ながら小さいボールを視覚化するのは結構難しいので、ボールに1センチの円を描くことにします。【円を描くのが面倒な方は、ディンプル四つ分を塗りつぶすだけでもいいかも知れません】 ボールに狙いを定める線が既に描かれている場合には、写真のように直径1センチの円を追加します。パターヘッドに当たる側に円が位置するようにしてターゲットに線を揃え、アドレスしたら1センチの円をボールだと思ってストロークするのです。

'Golf Magazine'誌主催の「トップ100インストラクター」に選出された人々による、パワー増へのヒント集。

・《インパクトを越えてスウィングせよ》by Jack Lumpkin（ジャック・ランプキン）

ボールを打とうとしてはいけない。ボールを通り越すようにスウィングせよ。このメンタルな鍵は、ボールの場所で停止することや、ダフり、舵を取る動き、インパクト・ゾーンでの減速などを防いでくれる。テンションのない動きで加速すれば、ボールに接触する時に最大のスピードが得られる。

・《ダウンスウィングで、ボールから可能な限り遠くにクラブを保て》by Phil Ritson（フィル・リットスン）

このtipは、右サイド（手・腕・肩）が左サイドより優勢になるのを防止する。ダウンスウィングの初期にアンコックするのではなく、手首の角度を保持したレイト・ヒットが出来るようになる」

ハリウッドのスターたちを教えたインストラクターEddie Merrins（エディ・メリンズ）の、ユニークなアイデア。

'The Best Advice Ever for Golfers'
edited by Robert McCord (Andrews McMeal, 2001, $12.95)

「私は生徒たちに、《ボールは砂の中にずっぷりと埋め込まれたティーに乗っかっていると思え》と教える。このアイデアは、ボールを見つめつつも【註参照】その下にあるティーの真ん中をへし折るようにスウィングするのがポイントだ。このイメージには二つの効果がある。クラブヘッドをボールの下に過不足なく潜らせることと、クラブを砂の中で動かし続けるスウィングを達成出来ることだ」

【編註】原文は「ボールを見つめつつ」となっていますが、もちろんボールを直接見つめるとホームランになります。「ボールの数センチ後ろを見つめつつ」でなければなりません。

これは素晴らしいtipです。否応なくボール後方にウェッジを打ち込むことが出来るようになり、しかも砂の抵抗が予期出来るのでパワフルなスウィングを遂行出来ます。これを実行する前に、先ずボールの下の砂にティーを埋め込んで練習することから始めると良さそうです。ティーなしで練習する際にも、実際にティーを打った経験が蘇るので、単に視覚化するよりも具体的イメージが持てます。

【参考】
・「バンカー・ショットの基本理解」（tips_76.html）
・「バンカー・ショットの秘伝」（tips_116.html）
・「バンカーで二番目に重要なポイント」（次項）
・「バンカー脱出の4ステップ」（このページ下）
・「グリーンサイド・バンカー・ショットの秘訣」（このページ下）

LPGAの新星Jessica Korda（ジェシカ・コルダ）によるtip。ボール位置を前方にすることやウィーク・グリップ採用、オープンにするクラブフェースなど諸々は、バンカーに入ったら自動的にすべきセットアップなので省略。ボールの数センチ後方の砂を打つことを一番目に重要なことと考えた場合、彼女は二番目に重要なことを次のように教えてくれます。

'Shots that save shots'
by Jessica Korda and Dean Reinmuth with Ron Kaspriski ('Golf Digest,' April 2014)

「両手が肩の上に達するまでフォローを取ること」

これはシンプルですが、とても重要な心構えです。普通のチップショットのようなフォローではバンカーからの脱出は不可能。たとえピンまで10ヤードであっても、上のJessica Kordaの言葉を真剣に受け止めて実行しなくてはなりません。

ボールの後方にクラブを突入させ、肩の高さまでスウィングすれば、（ピン傍に寄るかどうかは別として）少なくともグリーンに乗せられることだけは間違いありません。それだけでも有り難い御利益と云えましょう。

2004年に考案し掲載したtipですが、最近これを復活・実行して成果を挙げていますので再掲します。「これは科学的だぞ」と主張するには恥ずかしいほど原始的な方法であるとはいえ、ボールに描いた線をターゲットラインに揃えてアドレスするゴルファーには最も頼りになる狙い方と云えます。

「プラム・ボビング」はパターをぶら下げて垂直にし、カップ周辺の傾斜を知ろうとする方法ですが、「逆プラム・ボビング」は逆にパター・シャフトを立てて、ボールとターゲット（カップあるいはブレイクの頂点）が揃うようにして狙いの正確性を追求する方法です。

写真のAは、ターゲット・ラインの前後に何か目印を見つけ、ストロークの助けとする方法で、これは既に行っている人がいるかと思われます。

写真Bは私の工夫で、ボールに引かれた直線にパター・シャフトを揃え、狙いがターゲット（カップあるいはブレイクの頂点）に合致しているかどうかをチェックする方法です。ストレートなラインの場合は、写真Bのようにカップにボールの線が完全に合致するよう調節します。ブレイクがある場合にはその頂点にシャフトを向け、そのシャフトにボールの線を揃えます。シャフトを立てるか寝せるかの傾斜次第で、どんな距離であってもこの方法を使うことが出来ます。

最近、私はこの手順をボールの後ろでしゃがんで行うようにしています。パターのネックを持って、手元のシャフトをボールの直線に合わせ、ハンドルの下方のシャフトがターゲットに揃うかどうかチェックします（写真とはパターの上下が逆）。この手順を立ってすることも可能ですが、もし狙いがズレていてボールの線の向きを変えなければならない場合、しゃがんだままの方が立ったり座ったりの時間の無駄を省けます。

これに要する時間は普通のプラム・ボビングとさして変わりませんから、他のゴルファーの顰蹙を買うこともない筈です。

【参考】「逆プラムボビング」（tips_84.html）【2004年のオリジナル記事】

Jack Nicklaus（ジャック・ニクラス）が'Golf Digest'誌に四年間連載したアメコミ風カラー・イラスト満載のインストラクション'Jack Nicklaus' Lesson Tee'（ジャック・ニクラスのレッスン・ティー）より。なぜ、フェードとドローを打つ必要があるかは、「Jack Nicklausの ボールを曲げる戦略」（tips_158.html）を参照のこと。

'Jack Nicklaus' Lesson Tee'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (Golf Digest/Tennis Inc., 1977)

「フェードとドローをムラなく打てるようになるには、その醜い兄弟たち（スライスとフック）との違いとその違いをもたらす原因とを明確に理解しておく必要がある。

【編註】Arnold Palmer（アーノルド・パーマー）は"Fade is the well-bred brother of the slice."（フェードはスライスの行儀の良い兄弟である）と云っています。

フェードでは、ボールは若干ターゲットラインの左（あるいは真っ直ぐ）にスタートし、飛行の終わりに若干右にカーヴする。ドローは逆のパターンである。ボールは若干ターゲットラインの右にスタートし、飛行軌道の終端で若干左にカーヴする。スライスとドローは単純にもっと曲がりが大きく、懲罰も決まったように重い。

では、どうしてそういう風にカーヴするのか？その答えは、クラブヘッドの軌道とインパクト時のクラブフェースの角度との相互作用であるというに尽きる。クラブフェースがクラブヘッドがスウィングされる方向の右を向いていれば、ボールは常に右にスピンする。反対に、クラブフェースがクラブヘッドがスウィングされる方向の左を向いていれば、ボールは常に左にスピンする。フェードもドローもボールはほんの僅かカーヴする。何故ならクラブフェースとクラブヘッドの角度の不一致は最小限だからだ。もし不一致の度合いが大きければ、カーヴの度合いも増える。だから、スライスやフックをフェードとドローに変えるための主な研究分野はインパクト時のクラブヘッドとクラブフェースの相互作用の起る部分である。

あなたがトップ・プロたちを注意深く見ていれば、短いショットになればなるほどボールをカーヴさせていないことに気付く筈だ。あなた自身のゲームを分析しても、短いショットになればなるほどスライスやフックが減ることを発見するに違いない（プルやプッシュしてターゲットをミスすることはなおも起るだろうが）。これはゴルフ・クラブに備わっている特質に由来する。

簡単に説明すると、クラブのロフトが増せば増すほどバックスピンが大きくなり、バックスピンが大きければ大きいほどサイドスピンの影響を減らす。だから、ロフトの大きいクラブでは飛行中のカーヴは少ないのだ。短いショットであればあるほど、あなたが狙ったターゲットに真っ直ぐ向かう。プルやプッシュはどうなのかって？それはあなたのスウィングがもたらしたインパクトの反映であり、練習で改善すべきポイントだ。

長いクラブでフェードやドローを打つには二つの方法がある。

1) フェードにはウィーク・グリップで握り、アウトサイド・インにスウィングする。ドローにはストロング・グリップで握り、インサイド・アウトに振る。この技法が常に一貫して役に立つなら、これを用いなさい。しかし、そうでないなら、次の私のメソッド（ずっと簡単）を試しなさい。

2) フェードを打ちたい時は、グリップはそのまま通常通りだが、アドレスでクラブフェースを若干オープンにする。身体はターゲットの若干左に揃え、普通に打つ。ドローの場合は、手順を逆さまにする。グリップは平常通り、クラブフェースを若干クローズにし、身体をターゲットの若干右に揃える。

注意！どちらの場合も「普通に打つ」というのは、バックスウィングとインパクトのクラブヘッドの軌道があなたの身体のアライメントに合致するようにスウィングするということだ。ボールからターゲットへの真っ直ぐなラインではない。【編註：足・腰・肩が向いている方向に振るということ。フェードならターゲットの左へ、ドローなら右になる】

最後にtipを三つ。1) ワグルは上に述べたスウィングの方向に合致させること。フェードならアウトサイド・イン、ドローならインサイド・アウト。2) 練習の際、腰の動きを使い分けること。フェードでは腰のターゲット方向への逆転を早く（しかしスムーズに）行えば、オープンなクラブフェースを保つことが出来る。ドローでは手と腕がクローズに回転するのを助けるため急がずに腰を廻す。3) 手と手首のリリースの感覚を使い分ける。フェードでは右前腕が左腕にかぶさるのを遅くし、ドローでは右腕を出来るだけ早く返すようにする」

【編註】フェードをかける場合のフィニッシュは、右手を返さないのでArnold Palmer（アーノルド・パーマー）風に飛行線に沿って腕を高く上げたフィニッシュになります。

'Golf Magazine'『ゴルフ・マガジン』誌編纂のゴルフ百科全書ともいうべき本より。

'Golf Magazine's Complete Book of Golf Instruction'
by George Peper et al. (Harry N. Abrams, Inc., 1997, $45.00)

「あなたも気付いているように、多くのツァー・プロは高い軌道のフェードを打つのだが、ハンディキャップでプレイするアマチュアは低く距離の出るドローを学ぶべきである。でないと、大抵のコースはそういうアマチュアにとって長過ぎる。Titleist（タイトリスト）が実施したテストで、ドライヴァーで打たれたドローはフェードより大幅に距離が出ることが分った。使用されたロボットは、シングル級のゴルファーに対応する40 m/sにセットされていた。1/3はクラブフェースを1.5°オープン（フェード）、1/3は1.3°クローズ（ドロー）、1/3はターゲットにスクウェアに打たれた。

向かい風に抗して打った時、ドローは平均233ヤード（ラン込みの数字）、フェードは平均216ヤード（同左）の、中央から平均18ヤード左か右に飛んだ。ストレートなショットはドローと同じ距離であった。

USGAのテクニカル・ディレクター【編註：当時】のFrank Thomas（フランク・トーマス）は以上の結果を次のように説明する。『インパクトでスウィング軌道に対しクラブフェースがオープンだと、クラブにロフトが増し、ボールは高い角度で打ち上げられ、バックスピンも増して、揚力（上昇する力）と抗力（後方への力）という空気力学的効果も増加する。だから、ボールがオープンなクラブフェースによって与えられた時計回りのスピンで、高く上がり、最終的に右に向かい、あまり距離は出ない。

一方、インパクトでクラブフェースがクローズだと反対のことが起る。クラブのロフトと打ち上げ角度が減り、バックスピン少なく、揚力と抗力の効果も少ない。ボールはインパクトで作られた反時計方向のスピンによって低く飛び、左に曲がる。ボールが宙に浮くためにはバックスピンが必要だが、 明らかに少ないバックスピンの効果は前進するスピードを帳消しにせず、従ってボールは遠くに飛ぶ』

PGAツァー・プレイヤーのドライヴァーの平均的速度48.7 m/sだと、空気が重たく地面が湿っている時でドローでは平均275ヤード、フェードでは平均265ヤードだった。この距離では、プロにとって数ヤードを諦めるのは大したことではないが、ドローやストレートなボールを打たないアマチュアは17ヤード諦めるしかないことになる」

'Mastering the knockdown wedge'
by editors of 'Golf Magazine’ ('Golf Magazine,' September 2007)

「ノックダウン・ウェッジを御存知だろうか？低く出てすぐ止まるこのショットは、100ヤード以内において、安全かつ面白く、しかも役に立つショットである。

ピンがグリーン奥に切られていてボールを転がす距離が充分あり、オーヴァーするとトラブルが待ち受けているような状況が、このノックダウン・ウェッジの出番である。ボールを高く上げると風に遮られるような、風の強い日にもとりわけ効果的である。

ノックダウン・ウェッジには二つの利点がある。
1) 簡単にソリッドに打てる。
2) ボールを終始飛行させて停止させるショットとは違うので、簡単に距離のコントロールが可能である。

ただし、このショットはボールをクラブフェースと地面の間で押し潰さなければならないので、フェアウェイのいいライか、裸地でしか使えない。フライヤー・ライ【註】にボールがある場合は、伝統的なウェッジの技法を用いること。

【註】「フライヤー・ライ」は、ボールとクラブフェースの間に草が挟まることが避けられないライ。スピンがかからないので、とんでもなくオーヴァーし易い。

【テクニック】

・ノックダウンには、ピッチングウェッジとサンドウェッジ、どちらを使ってもよい。

・クラブのリーディングエッジをターゲットにスクウェアにし、狭くややオープンなスタンスを取り、体重は左足にかける。

・ボール位置はスタンス後方でハンドファーストの構え。ここまでのセットアップがディセンディング・ブローを促す。

・クラブをやや短く持ち、きつめに（特に左手）グリップする。

・意識的にコックはせず腕主体のバックスウィングで、クラブを真っ直ぐ持ち上げる。

・必要とされる距離に相応しい長さのバックスウィングをするが、絶対に3/4の長さを越えてはならない。

・左手と腕でクラブをボールめがけて引き下ろす。するどい『ガツン！』という音がする筈だ。こういう低いボールを打つ場合は、ボールの天辺に打下ろしても構わない。

・フィニッシュで、腕とクラブはターゲットを指すように。

このように短いスウィングをしても、ロフトを減らしたことによって、ボールは予想以上に遠くに向かう筈だ」

Tiger Woods（タイガー・ウッズ）が、あるトーナメントでピッチングウェッジでチップインさせイーグルを射止めた技法。

'How to hit it close and keep it there'
by Tiger Woods with Pete MacDaniel ('Golf Digest,' August 2000)

「スピンをコントロールすることがピン傍につけるコツである。数年前まで、私はサンドウェッジによるハードなスウィングで、グリーン外からボールをバックスピンで戻す方法しか知らなかった。だが、私はワンクラブ長いものでスピンを減らし、浅めのスウィングでゆっくり打つ方法を学んだ。

これは複雑なショットではない。

1) ボールの軌道を低くするため、ボールはスタンス中央からやや後方。

2) 3/4のバックスウィングをし、通常より遅めのダウンスウィングをする。腕と身体のスピードを一致させること（これもスピンを減らす）。

3) インパクトにかけて、左手首を反らしたままにし、クラブフェースをスクウェアに保つ。

4) 短いフォロースルー（これがボールの軌道を低く保つ）。

この結果、ボールはソフトに着地し、その近くに留まってくれる」

これはJack Nicklaus（ジャック・ニクラス）が旧著や雑誌などに書いた原稿をまとめたパッティングの本から、短いパットに関する彼の考察。

'Putting My Way'
by Jack Nicklaus with Ken Bowden (John Wiley & Sons, Inc., 2009, $25.95)

「スムーズで平らな表面で、直径約4.3センチのボールを直径10.8センチに入れる（あるいは寄せる）のにさしたるテクニックは必要としない。プレッシャーがなければ、大抵の場合片手でだって入れられる筈だ。しかし、短いパットには（たとえ一人でラウンドしている時でさえ）常にプレッシャーが存在する。

その理由の一つは、あなたがそういった短いパットは当然入れなければならないと感じることと、他人が見守っている場合、下手っぴに見えること及び恥をかくことへの心理的恐怖があなたにミスを犯させるのだ。

私の持論だが、もっと大きな理由はわれわれが意識的であれ本能的にであれ、どんなに理論的に容易な“入れ頃”のパットも、それはゴルフの“最後のチャンス”であるということを認識しているからである。他の全てのミス・ショットはリカヴァーするチャンスが残されているが、ほんの短いパットをミスすることは永久に一打を無駄にすることだと弁えているためプレッシャーがエスカレートするのである。

だから、大抵のギミー（OK）に近い距離のパット・ミスはテクニックの拙さそのものというより、恐怖に先導されたネガティヴな態度の影響であるように思える。そして、それに対する唯一の答えは（もちろん堅実なテクニックを想定してのことだが）意志の力と決断力である」

これはJack Nicklaus（ジャック・ニクラス）が旧著や雑誌などに書いた原稿をまとめたパッティングの本から、パッティングの強さに関する考察。

ロング・パットのラインを読む際、ラインと共に強さにも充分に注意すべきである。同伴競技者たちのロング・パットをよく見れば、彼らは方向のミスよりもショートし過ぎたりオーヴァーし過ぎたりするミスを多く犯していることに気付く筈だ。

そのミスの理由は、大抵の人は直観的にラインを見るか感じ取るものであり、計算したり記憶したり、その重さ【註参照】をコントロールしようとしないからだ。そのような状況下では、パットが長くなればなるほど、心の重要部分を占める『方向』よりも『強さ』の方がきわめて重要になるのだ」

【編註】Jack Nicklausは、ここで英米人として画期的な概念を提起しています。英語によるパットの距離のコントロールは、通例"speed"（速度）あるいは"pace"（速度、ペース）として表現されます。私の知る限り、これは日本では「強さ」と表現されるので、この『日記』においては"speed"と"pace"は常に「強さ」と置き換えています。しかし、上の記事でJack Nicklausは"weight"（重さ）という概念を導入しています。グリーンの勾配、芝目、湿気、風向などによるラインの“重さ”を計測し、それをコントロールしてカップに届けるべきだという意味であり、その“重さ”に対抗するのはパットの「強さ」に他なりません。このJack Nicklausの表現によって、初めて日米の表現が一致することになったと云えるのです。

2ThumbハンドルをデザインしたインストラクターPhilip H. Gazeley（フィリップ・H・ガジリィ）は、メーカーのサイト（http://www.golfputting.com/information/2thumb%20putting%20tips.asp?cartid=）で以下のようなパッティングtipを公開しています。私はそれにプラスして、YouTubeのデモ・ヴィデオにおける説明も【デモ】として付け加えました。なお、以下のtipの大半はPhilip H. Gazeleyが教えている一般的パッティング・メソッドであって、2Thumbハンドルに特化したtipとは限らないようです。

・両方の掌の生命線がハンドルの角に当たるように握る。【デモ】
・左右の親指は隣り合わせで、しかも平行に並ぶようにし、手の甲はターゲットラインに直角にする。
・他の指はオーヴァーラップさせても、全ての指をインターロックさせてもよい。【デモ】
・両方の人差し指はハンドルの側面に伸ばしても、裏側で丸めてもよい。【デモ】デモで、インストラクターDenis Pugh（デニス・ピュー）は、「自分は側面で伸ばすのを好む」と云っています。
・両腕は自然に垂らす。
・ボールの背（打つ方の側）がスタンス中央になるように。
・目はボールの真上。
・両足は快適に広げ、ターゲットラインと平行に。
・パターのソールが地面に平らになるように（トゥを上げてはいけない）。
・パター・シャフトは常に地面に対して垂直であるように。
・ストロークの間、ボールの背面（打つ方の側）を凝視するように（ボールの中心ではない）。
　【編註】これはいいtipです。ぼんやりとボールを見るのではなく、一点、それもパターとの接触点を見ることはスウィートスポットで打つことを促してくれます。
・パットの長さはバックストロークではなく、フォワードストロークで調節する。例えば1/4のバックストロークに対し、3/4のフォワードストロークで加速させる。
・当てるのではなく、ボールを打ち抜くように。
・ストロークの間、膝を静止させておく。
・ストロークの終点でパターヘッドを静止させること。

【参考】YouTube: '2Thumb Putter Grip - The Complete Guide - Chapter 4'（https://www.youtube.com/watch?v=KzQxooUEKtU）

これは「体型別スウィング」を補完する記事です。この記事に興味のある方は、先ず元の「体型別スウィング」（tips_54.html）をお読み下さい。'The LAWs of the Golf Swing'（ゴルフ・スウィングの三つの型）というこの本は、ゴルファーの体型別にベストのスウィングを構築する助けをしてくれる、世界に類のない技術書です。最近この本を読み直して、以前気に留めなかった重要な記述がいくつもあったのに驚かされました。遅ればせながら、それらを補っておきたいと思います。

'The LAWs of the Golf Swing'
by M. Adams, T.J. Tomasi and J. Suttie (HarperCollins, 1998, $25.00)

この本では三つのスウィングの型が代表として取り上げられており、それらは1) Leverage （テコ型）：中肉中背の人および大抵の女性、2) Arc（円弧型）：背が高く腕の長い、痩せ型の人、3) Width（幅広型）：中背ではあるが胸幅の厚い人…となっています。それぞれの頭文字を合わせると"LAW"になり、これが書名の由来です（法律、法則の"law"ではありません）。かく云う私は、(1)のテコ型であります。

「・テコ型プレイヤーのグリップ

テコ型プレイヤーは次の要領でグリップすること。

右手でクラブを45°の角度にして持ち、それを左手で握る。"heel pad"（ヒール・パッド、生命線の下の膨らみ）でグリップエンドを押さえる。こうすると、クラブは全部の指の根元の関節に接することになる。【編註：これは写真のDavid Leadbetter（デイヴィッド・レッドベター）推奨のグリップと同じになります】"heel pad"はクラブを支え、抜け出せなくし、"death grip"（デス・グリップ、指が白くなるようにきつく締めるグリップ）になることを防止してくれる。"heel pad"で握ると、手首に正しいコックを促すことも可能になる。【注意】クラブを地面に置いてからグリップするプレイヤーは、手を横切るようにグリップしがちで、それはあまりにも掌の上方で握ることになってしまう。

左手の親指は"long thumb"（ロング・サム、伸ばした親指）でも"short thumb"（ショート・サム、縮めた親指）でもなく、"medium-long thumb"（ミディアム・ロング・サム）にする。クラブを前方に突き出して左手をグリップすると、左手の親指はややハンドル上部の右に位置する筈だ。これはスクウェアなクラブフェースを実現するために、重要なポイントである。【注意】ハンドルに刻まれた指の位置は無視するように。それはあなたの体型に向いた指の位置ではない。

左右の掌が向かい合うように、右手を重ねる。左右どちらの手の圧点も最後の三本の指にある。

テコ型プレイヤーのパワー源は90°のコックであり、インパクト直前までそれを維持することが鍵である。しかし、あまりにもグリップ圧を増すと充分コック出来ず弱々しい一撃にしかならない。両手をリラックスさせ、“グリップする”というより“持つ”という感じ。最も強く握る度合いを1〜10の10とすれば、真ん中の5の強さ。

・テコ型プレイヤーのテイクアウェイ

テイクウェイでなすべき二つのことがあるが、それらは両方同時になされなくてはならない。右腰が右踵の上に回転するにつれ、左腕は胸を横切らねばならない。左腕は45°の角度で最高のパワーを発揮する。なぜならダウンスウィングの間、胸と一体になることでクラブの背後にある身体全体がサポートするパワーを得られるからだ。テイクアウェイの間にこの角度を作り出し、バックスウィングの間じゅうそれをそのまま維持すれば、正しいダウンスウィングの位置を確立出来ることになる。

同時に、体重を右腰に移し、右腰が右踵の上で回転しながら右サイドの回転軸を確立する。【注意】体重を右に移さないまま右腰を回転させると、リヴァース・ピヴォット（身体がターゲット方向に弓なりになるミス）になり易い。

テイクアウェイでボールから遠ざかる左腕に押されるまで、胸も肩もどちらも回転させてはならない。順序は、先ず腕、それから肩、そして胸である。いかなる場合もだらけたバックスウィングをしてはならない。だらけたバックスウィングは、回転不足によってインパクトで弱々しくポカンと叩く一撃しか生まない。左腕を最高に伸ばして振ることが筋肉をコンスタントに緊張させ、インパクトでその緊張をパワフルに振り解くことに繋がる。もっとスウィング弧を広くすれば、クラブヘッド・スピードが増しパワーが得られる。

遅かれ早かれ『もうこれ以上腕は伸びない』という合図として、左腕が胸を押す動きを感じ取る筈だ。そうなったら捻転を開始し、左腕が逆転しないではいられなくなるまで後方に引っ張る。

★この間、右肘を浮くままにすること。そうすると右肘と右脇の間に“窓”が開くことになる。【図の赤い部分】もし、右肘を身体にくっつけたままだと、クラブは身体の右サイドを回転軸としてしまい、トゥ・ライン（両爪先を結ぶ線）の内側で手を持ち上げることになり、取り返しのつかない困難な状況に陥ってしまう。テイクアウェイの鍵は両手がトゥ・ラインに沿って動きつつ、クラブヘッドが両手より外側を動き続けることだ。右肘を浮かせれば、両手がトゥ・ラインの内側で動くことを防止出来る。

【編註】「右肘を浮かせ」は「右手を伸ばしてスウィングせよ」（tips_155.html）ほど過激ではないものの、かなり似ています。右手を伸ばしてスウィングすると距離が伸びます（タイミングが狂うとスライスが出ますが）。なお、右肘を浮かせてトゥ・ラインに沿ったテイクアウェイを実行していますが、アイアンの精度が格段に増しました。

左腕と手首は、腰の高さまで上がった時もまだ真っ直ぐで、クラブも（コック以前なので）地面と平行である。言葉を替えれば、ここまでのところ、コックによってクラブヘッドは高さを獲得していないのだ。この時点からは、両腕は身体に近く留まり、折られた右腕と捻転の動きによって、クラブがトップの位置にセットされることになる」

【参照】
・「体型別スウィング（序章＋テコ型篇）」（tips_54.html）
・「体型別スウィング（幅広型篇）」<（tips_92.html）BR> ・「体型別スウィング再履修」（tips_107.html）
・「体型別スウィング（プレーン篇）」（tips_137.html）
・「体型別セットアップ法」（tips_165.html）
・「体型別・腰のアクション・ドリル」（tips_165.html）
・「体型別スウィング【微調整ポイント一覧】」（tips_165.html）
・「体型別スウィング【微調整ポイントの相性を知れ】」（tips_165.html）
・「体型別スウィング【妙薬と毒薬を見分けよ】」（tips_165.html）

'The LAWs of the Golf Swing'
by M. Adams, T.J. Tomasi and J. Suttie (HarperCollins, 1998, $25.00)

「・テコ型プレイヤーのパワー充填

テイクアウェイの最終段階はクラブヘッドとシャフトがトウ・ラインとターゲット・ラインに平行であるべきだ。そこを越えると、折られた右肘は上方・後方へと進み、右手は野球のボールを投げる時のように右肩の上に位置する。

バックスウィングでクラブヘッドを上げる勢いと右腕が折られるのに応じて、右手首は前腕の方向に曲げられ、手首のトップ（関節部）に皺を作る。これはアドレスで形成された角度を維持する最も重要な動きであり、これがシャフト・プレーンの角度を決定する。

左手首は、クラブがトゥ・ラインから遠ざかるに従って角度を増す。右手首がコックされるので、左手首は上方にコックされ（左親指の根元に皺を作る）、クラブヘッドを高く上げる。

腕は後方に、そして上方へと上がり続け、それが肩を背骨に対して正しい角度で回転させる。

この後は腕が肩を廻しコイル（捻転）を作り出し、肩の回転によってバックスウィングが完了する。トップで右手はウェイターがお盆を支える形を作る。

テコ型プレイヤーの主なパワー喪失の原因は、左踵を地面から上げるせいだ。左踵を上げると、左膝が右膝に近づいてしまい、最初のコイル（下半身の捻転）とそのパワーを失ってしまう。最初のコイルに失敗すれば、第二（腰）、第三（肩）のコイルは絶対に達成出来ない。

腰は膝の柔軟性を保つため地面に対して平行に回転する。

・テコ型プレイヤーのダウンスウィング

ダウンスウィングの最初で、クラブは（ボール方向へと前方に向かうのではなく）下降せねばならない。ということは、両手は右肩から独立して離れるということだ。われわれの用語で、これをセパレーション（分離）と呼ぶ。

左腕が地面と平行になるまでに、（横幅の観点からすると）右腕はクラブヘッドを身体から引き離すように真っ直ぐになり始める。【編註】このように、左腕とシャフトで形成される90°の角度を保持しながら、クラブを下降させクラブヘッドの運動の弧を広げるのである。

【編註】左の写真のように、Ben Hoganは（グリップエンドをボール目がけて引き下ろすのでなく）グリップエンドを出来るだけ身体から離れた飛行線後方を目指して引き下ろしています。なお、彼の角度は90°以上に見えますが、これは彼が非常にフラットなスウィングをしているための錯覚です。上空から見れば90°の筈。

クラブを落下させるのに加えて、左の股関節に体重をかけ始め、これによって下半身の回転とエネルギーの解放の準備のための左サイドの回転軸を確立する。

・テコ型プレイヤーのインパクト・ゾーン

左の股関節を回転軸として確立したら、右サイドのパワー・リリースの準備が出来たことになる。この時点で、左サイドは右の攻撃に抵抗する壁のように機能する。右サイドは、左肩が顎を離れて腕がクラブをインパクト・ゾーンに落下させても、なおも後方に留まる。クラブは先ず下降し、それから回転するのであって、回転してから下降するのではない。これは、クラブが前方に動く前に腕がクラブをシャフト・プレーンに落下させるので重要なことである。一旦これが実現すれば、右サイドがターゲット方向に回転し、それによってクラブフェースがターゲットにスクウェアなインパクトが迎えられる。

テコ型のプレイヤーは、手の動きを最少限にしながら身体をほどくべきである。両手はスウィングの間中身体近くに留まり、左足は地面に付いたままである。

・テコ型プレイヤーのフィニッシュ

多くの場合、右肩は（ターゲットから遠くでなく）ターゲットの近くが終点となる。体重は左足に乗り、胸はターゲットの左を向く。上体はアップライトだがやや右に傾ぎ、右肩が左より少し低目。クラブシャフトは地面と斜めになって頭の後ろでフィニッシュする」

【参照】
・「体型別スウィング（序章＋テコ型篇）」（tips_54.html）
・「体型別スウィング（幅広型篇）」<（tips_92.html）BR> ・「体型別スウィング再履修」（tips_107.html）
・「体型別スウィング（プレーン篇）」（tips_137.html）
・「体型別セットアップ法」（tips_165.html）
・「体型別・腰のアクション・ドリル」（tips_165.html）
・「体型別スウィング【微調整ポイント一覧】」（tips_165.html）
・「体型別スウィング【微調整ポイントの相性を知れ】」（tips_165.html）
・「体型別スウィング【妙薬と毒薬を見分けよ】」（tips_165.html）

インストラクターJimmy Ballard（ジミィ・バラード）による、正しいバックスウィングの作り方。

'Triangle test'
by Jimmy Ballard ('Golf Magazine,' February 2000)

「多くのアマチュアがボールを遠くへ真っ直ぐ飛ばそうと、複雑なダウンスウィングの動きで何年も藻掻き苦しむ。不幸にしてその努力は、バックスウィングの間違いが正されないため、大体において報われない結果となる。

バックスウィングの位置をチェックする三角テストは、簡単でしかも効果的である。アドレスであなたの両腕は左右の肩を結ぶ線と共に三角形を形成する。正しいバックスウィングはその三角形を保ったまま両腕、クラブ、肩を振り上げることで始まる。【編註】動作がトップへと進むにつれ、右腕は自然に折られて前腕部によって新しい三角形が形成される。（左図）

【編註】「アドレスで出来た三角形を崩さずにテイクアウェイする」と、奇しくも「体型別スウィング（テコ型の補遺）パート１」の「右肘を浮かせてテイクアウェイせよ」と同じことになります。偶然の一致ではなく、二つのメソッドが正しいことの証左であると考えます。

★鏡を使ってその三角形を確認されたい。両肘を結ぶ仮想の線が底辺となり、左右の前腕部によって三角形となる。この底辺が地面に対して平行であれば、あなたのバックスウィングは正しく完成されている。

最も一般的なバックスウィングの過ちは、右肘が身体の脇にきつくたくし込まれていたり、両肩が地面に平行になるほど廻されて起る。どちらのミスもトップで三角形の底辺が斜めに傾いでしまう【編註：底辺の左端が下がり、右端が極端に上がる】。この位置からではソリッドなコンタクトは不可能で、最高のクラブヘッド・スピードも生み出せない。

同じように取り返しがつかないミスは、肩の回転を最少限にして腕・手でクラブをトップに引っ張り上げるものだ。急なバックスウィングは右前腕を地面に対してほぼ平行にして三角形を歪め【編註：底辺の左端が上がり、右端が極端に下がる】、ソリッドなコンタクトを困難にする。

バックスウィングの三角形を練習しなさい。特にトップにおける正しい三角形を。そうすれば、ダウンスウィングにおける“魔法の動作”など必要なくなる。

【参考】「Jimmy Ballardメソッド ⑤《三角形とセンターを保て》」（tips_151.html）

2016年以降グリップエンドを身体につけたり、前腕部を身体につけるのはアンカーリングとしてルール違反となりますが、肘を身体につけるのは問題ありません。以下の名人たちが、肘の使い方の重要性を説いています。先ずはNick Faldo（ニック・ファルド）から。

'A Swing for Life'
by Nick Faldo with Richard Simmons (Penguin Books, 1995, $19.95)

「右肘を身体近くに保ち続けるべく集中するのは、有益なtipの一つである。それはパターが揺れるのを防ぎ、安定した軌道で動かすことを助けてくれる。それが、多くのプロが短い距離でリヴァース・オーヴァラップ・グリップを採用する理由の一つであると思っている。右手を左手の上に置くと、自動的に右肘は身体に近づく。ストロークの間じゅう、両腕はレールの上に乗っているように行ったり来たりする。

肩主導の振り子式ストロークを習得するドリルがある。アドレスし、両肘の上の脇の下で傘【編註：クラブ、棒、物差し等でも可】を挟み、両手、両腕、肩によって形成される三角形の関係を感じとる。傘を動かさずに、肩を上下に揺らし、パターヘッドを後退・前進させる。このメカニズムを一体として機能させる。頭を動かさずに、いいリズムを潤滑油としてストローク動作をすれば、あなたは両腕と肩と身体の間のコネクションを感じとることが出来るようになる」

Bobby Jones（ボビィ・ジョーンズ）も「チキンウィング・ストローク法」を推奨しています。

'Bobby Jones on Golf'
by Bobby Jones (Main Street Books, 1992)

「私のパッティング・ストロークを最も助けてくれた一つは、左肘に関係するものだ。私は、腕に明白な湾曲を作るくらい充分に屈み、ほとんどカップを直接指すぐらいまで左肘を身体から離して動かすことによって、リラックスした状態とほかの方法では得られない安楽な自由を作り出せることに気づいたのだ。それが役立つ理由は、この左肘の位置が左手と手首を完全にコントロール出来るからである」

The Masters（マスターズ）とPGA選手権ほかで全18勝を挙げたJackie Burke, Jr.（ジャッキィ・バーク二世）は、Jack Nicklausにパッティングを指南したほどのパット名人。

'It's Only a Game'
by Jackie Burke, Jr. with Guy Yocom (Gotham Books, 2006, $22.50)

「私は常々、両手を身体近くに保てばパターフェースをコントロールするのが容易だと感じていた。私は腕と手が上体からあまりにも遠くに離れるのを好まない。腕と手を自由に振り回したら、パターフェースは好き勝手な方を向いてしまう」

2Thumbパター・ハンドルにしてからしばらく、その素晴らしい効果を期待していましたが、一向に芳しくありませんでした。現在の私はストレート・ストロークをしているので、手首と手を弓なりにするメソッドを取り入れていました。その時、われ知らず両肘を身体から離していたのです。パットが安定しないので悩んでいた時に読んだのが、今回のtips群です。両肘が身体を擦るようにストロークし始めてから、かなり安定してストローク出来るようになりました。

バンカー・ショットのtipはもう充分だと思っていましたが、インストラクターJeff Ritter（ジェフ・リッター）による今回の記事は、具体的かつ明快に重要ポイントをまとめてくれているので、是が非でも追加せざるを得ません。

'Sand strong'
by Jeff Ritter with Peter Morris ('Golf Digest,' June 2014)

「バンカー・ショットに上達するには成功をイメージしなくてはいけない。クラブで砂を打つドスンという音を楽しみに待ち受け、ボールがふわーっと浮くように飛び上がる映像を頭に描き、大きなスウィングをしてもたった20ヤードしか飛ばないことを知るべきだ。ここではいくつかの技術的ポイントを説明するが、つまるところは偉大なバンカー・ショットをするあなた自身を視覚化出来れば、間違いなくそうなるということを知っておくことだ。

1. 角度のセット

良いセットアップは、ボールの真下を振り抜く地点を確立する。それはまたクラブヘッドのソール（底面）のバウンス（日本方言で「バンス」）が砂の中でスライドする動きを作り出す場所でもある。

ボール位置を左足踵の内側とし、その左足を左手で掴み、強く下に押す【編註：四股を踏む感じ】。この傾斜が左肩を下げ、体重をターゲット方向に寄せる。その後、シャフトをターゲットと反対方向に傾げる（グリップは右膝の近くになる）。これによってバウンスが剥き出しになる。両手を一緒に股の間に持って来てグリップを形成する。

2. クラブフェースをオープンにする

どのようにクラブフェースをオープンにするかを理解する最良の途は、グルーヴ（溝）に焦点を当てることだ。アドレスし、クラブを右（時計回り）に回転させ、グルーヴが左足踵と靴の突端の間を向くようにする。これによって、ロフトとバウンスを増したことになる。クラブヘッドで砂の中をスライドさせ、ボールを噴き上げる準備が出来た。

3. 近接状態を保つ

バンカーでのスウィングは急角度であるべきで、"U"の字よりは"V"の字に近い。伝統的インストラクションはボールをアウトサイド・インの軌道でカットするというものだが、1ラウンドで三回や四回はそれでは処理出来ないショットがあることに気付く筈だ。

急角度なスウィングを生む良い方法は、両腕を身体に近づけたままにすることだ。両肘を折りさえしてもよい。スウィングを劇的に変えることなくスウィング弧を狭くすることが出来る。

4. 勇敢であれ

バンカー・ショットを成功させるには、上に述べた良いセットアップと両腕を身体に近接させ続けることで事足りる。スウィングの最中での鍵は攻撃的な態度を保つことだ。信頼して実行あるのみ。

私は、常にきびきびしたリズムでグリーンサイドでは強気なTom Watson（トム・ワトスン）のイメージを好む。砂から脱出するには、相応のスピードが必要であることを忘れてはいけない。恐れるな。スウィングにエネルギーを与え、フィニッシュでポーズをとること。結果を見て満足することであろう。

・短い距離の留意点

多くのアマチュアは短いバンカー・ショットを情けなく早漏気味に終えてしまい、ボールを依然として砂の上に残してしまう。上に述べた4ステップをちゃんと実行して欲しいが、短い距離の場合一つだけ特例を付け加える。

グリップダウンし、右の先頭の二本の指はシャフト（金属あるいはグラファイト部分）にかかるようにする。ボールに近づくには、短く持った分だけ膝を折る必要があるだろう。グリップダウンしたことによって、クラブはジュニア用の軽さとなる。同じスウィングによって、ボールは3メートル飛ぶ筈だ。

・長い距離の留意点

長い距離の場合はクラブを替える。フェースを少しオープンにすればどのクラブでもバウンスを備えることが出来る。例えば、9番アイアンのフェースをオープンにして前に述べたスライド動作を生み出すことが出来る。低く、長い距離になる筈だ。

ステップ4の「勇敢であれ」は重要です。「乱暴であれ」、「暴力的であれ」ではなく、「勇敢であれ」です。砂の抵抗を突き破るには、バックスウィングを想像以上に大きくしなければならず、それに対応した大きなフォローをするにも勇敢でなくてはなりません。「暴力的であれ」だとヘッドアップし、砂への突入地点がいい加減になったりします。これはホームランかチョロへの招待状です。

“秘訣”と豪語していいと思います。ここのところ、私はある二つのtipsを頼りにバンカー・ショットし、一度も失敗していません。ホームランもチョロッたりも皆無。その二つについて記す前に、先ずErnie Els（アーニィ・エルス）執筆によるバンカー・ショットの基本のおさらい。

・ボールはターゲットの左に向かい、着地して右へ転がる」

さて、以下が私のバンカー・ショットを支えてくれている二つのtips。

①《急速にコックせよ》

しばらく前のある日の早朝、シニア・グループのゲームの前に、私は人気（ひとけ）のないNo.18のグリーンサイド・バンカーでバンカー・ショットの練習をしていました。そこへ私のゴル友でありグールー（導師）でもあるJack Rushing（ジャック・ラッシング）がカートで通りかかり、私を手招きしました。（何事？）と思ったら、彼曰く「エイジ、バンカー・ショットはテイクアウェイと同時にコックしなきゃ駄目だよ」。そう云うなり、彼はカートでトコトコといずれかのホールに去って行きました。

サンドウェッジのバウンスを利用するためにフェースを開いたら、ザックリを恐れずに安心してクラブヘッドを砂に突入出来ることは悟っていたのですが、私は比較的フラットなスウィングをしていました。なおかつ、Jack Rushingが遠くから目撃しても明瞭だったようにほとんどコックしないスウィングだったようです。それが私の砂の取り方にムラを生じていた原因だったのでしょう。

私はJack Rushing推奨の早めにコックするテイクアウェイで練習を重ねました。これですと否応なく急角度のダウンスウィングとなり、砂への突入は間違いなく保証され、過（あやま）ってホームランを出す気遣いはなくなります。そして、コックが作る梃子の原理のパワーによって、砂をドン！と弾き出すのも容易になります。これは、特に湿って重い砂のバンカーで役に立ちます。

②《ボールの下の（仮想の）ティーの真ん中をへし折れ》

これは「メンタルなバンカー攻略法」（tips_157.html）として採録したインストラクターEddie Merrins（エディ・メリンズ）のtipです。私は実際にティーを用いた練習はしませんでしたが、ボールの下に埋め込まれたティーを視覚化出来ますので、それをへし折るようにスウィングします。これですと、結構深く砂を抉ることになるので、力強くスウィングしなければなりません。このtipによってもホームランは防げますし、それどころか多くの場合ピン傍に転がって行きます。

私にとって愉快なのは、Jack RushingもEddie Merrinsも現在私が住んでいるミシシッピ州Meridian（メリディアン）の生まれだということです。Eddie Merrinsは請われてカリフォーニア州の有名ゴルフ場のレッスン・プロとなり、多くの有名映画俳優や歌手たちを指導し、本やDVDも出版しています。二人の地元出身者によるtipsによって私がバンカー・ショットに開眼出来たというのは、偶然にしても出来過ぎた話だと思います。

私は10〜20ヤードならサンド・ウェッジ、20ヤード以上ならギャップ・ウェッジを使用し、1/2インチ（1.27センチ）ほどクラブを短く持ち、フェースをややオープンにし、ターゲットの少し左を狙います。ボールは右方向へ転がります。【註：現在「バンカーからピン傍へつける“三倍の法則”」は利用していません】なお、ボールを見ちゃうとやっぱりホームランになりますので、ボールの数センチ後方を親の仇のように睨みつけながらスウィングしないといけません。

二つのtipsのお蔭で何度もピン傍に寄せるショットが出来るようになりました。最近のある日、10ヤードほどのバンカー・ショットをチップ・インさせ"sandy birdie"（サンディ・バーディ）を達成しました。"sandy par"（サンディ・パー）は珍しくありませんが、バーディは滅多に見られない逸品です。Gary Player（ゲアリ・プレイヤー、バンカー・ショットの名人）に見せたかった（笑）。

'Quantum Golf'（邦訳『クォンタム・ゴルフ』）の再読を終えました。これは技術書でもあり心理学的書でもあり哲学的啓蒙の書でもあります。こういう示唆に富んだ本は、毎年一回は再読すべきだと思いました。

"Quantum"とは、理学用語では「量子」（原子・電子・微粒子などの最小の単位量）という意味。物理的状態には固体、液体、気体があるが、四つ目として"superfluid"（超流動体）という状態があって、量子界の特質はその超流動体が淀みなく流れる状態だそうです。

著者Kjell Enhager（シェル・イエンハーガー、スウェーデン生まれ）は経済学を学び、経営、ビジネス、リーダーシップなどの講演者、コンサルタント、コーチとなった人ですが、スポーツ心理学の分野にも分け入っており、テニスのBjörn Borg（ビヨン・ボルグ）、ゴルフのNick Faldo（ニック・ファルド）などをサポートしたことがあるそうです。

'Quantum Golf'
by Kjell Enhager and Samantha Wallace (Warner Books, 1991, $9.99)

この物語の主人公ニューヨークの実業家John Smith（ジョン・スミス）は、一旦ゴルフを諦めたものの、藁にもすがる思いで謎のインストラクターLinc St. Clair（リンク・セント・クレア）に教えを乞いにアイオワ州の田舎へと飛んで行きます。

インストラクターは、次のようにスウィングのコツをSmithに伝授します。
「バックスウィングでクラブを後退させつつ"super"（スーパー）と云いながら、穏やかにゆったりと息を吸い、ダウンスウィングとフォロースルーでは穏やかに息を吐きながら"fluid"（フルイド＝流体、液体）と云いなさい。二つの言葉の間には、スウィングのトップであたかもクラブが停止するかのように見えるのに相応する明確な間（ま）がなくてはならない」
「ああ、リズムに乗れってんでしょ？あるコーチはバックスウィングで『ワン』、ボールを打ちながら『ツー』と云えと教えてくれましたよ」
インストラクターは頷いた。「目的はリズムの構築なのだが、ほかにも重要な理由があるのです。あなたの心にデリケートな"superfluidity"（スーパーフルイディティ、超流動体）の感覚を呼び起こすことなのです」

"superfluidity"については医学博士Deepak Chopra, M.D.（ディーパック・チョプラ）の'Perfect Health'という本に簡潔な説明があります。「超流動体（superfluidity）という言葉は、50年以上前の物理学的発見である"superfluid"と呼ばれる特殊な素材に由来する。例として液体ヘリウムを取ると、液体ヘリウムが絶対零度（-273゜C）に近づいた場合、それは容器の側面を這い上がる能力を獲得し、限りなく小さい穴を通り抜け、もしモーションを与えられれば永久運動を繰り返す。十分に低い温度の下で、ヘリウム原子はランダムな形態で動くのを止め、軍隊のパレードにおける行進のように整然となる」

インストラクターLinc St. Clairから「"fluid"という言葉で、あなたはどんなものをイメージしますか？」と問われたJohn Smithは、「えっと、何かスムーズなもの、流れる液体のような…。浴槽を滑る石鹸ってのはどうです？」と云います。「いいでしょう」とインストラクター。「人によっては高純度の油とか氷の上を滑るものとかをイメージするようですが、どれでも構いません。重要なのは、あなたにエフォートレスなスムーズさを持つダイナミックなスウィングのイメージをもたらすものであるべきだということです」

ここでLinc St. Clairは生徒に、ショット毎に吸気と共に"super"と口に出せと云うのですが、息を吸いながら"super"というのは困難です。少なくとも私には至難の業。で、私は心の中だけで"super—fluid"と唱えることにしています。以前'Quantum Golf'を紹介した折り、「"super—fluid"と英語で発音するのは難しい」という読者からのお便りがありました。そう感じる方は「超・流動」と呟くのはどうでしょうか？「ワン・ツー」は無色透明で超流動体のニュアンスなど微塵もありません。しかし、ここにはどうしても「流動」のイメージが不可欠なのです。

本の中で、生徒のJohn Smithはスウィングでの"super—fluid"の成功に味を占め、自発的にパッティングにも応用して良い結果を得ます。しかし、この経緯は本では詳細に語られていません。

パッティングのスランプに陥っていた私は、John Smithが成功した"super—fluid"利用のパッティング・ストロークに強く惹かれました。私の"fluid"のイメージは、『ターミネーター２』に出て来たT-1000（水銀のような液体金属で出来た変幻自在のターミネーター、上図）のような流動体です。スムーズなストロークに必要なのは、まさしくそんな風に活動的に流れ動く"fluid"のイメージでありフィーリングです。

本の後半で、John Smithの3ホールの卒業ラウンドに付き合ったLinc St. Clairは、長いパットに入念なプレストローク・ルーティーンで臨み、見事に成功させます。「凄いパットだ！」とSmithが賛嘆すると、インストラクターは「superfluidですよ」と云います。というわけで、Smithの"super—fluid"のパッティングへの応用は、インストラクターからお墨付きを貰ったことになります。

インストラクターLinc St. Clairは次のように説きます。
「パッティングで最も大事なのは作業を複雑にしないことと、内面のレヴェルの深奥に留まることです。ボールを打つ前にボールの軌道を“見る”こと、ボールがその軌道に沿って転がるのを“見”、ブレイクやボールが転がる間のスピードを“感じ取る”。私は、あなた自身がボールであるようにイメージして貰いたいと思う。出来る限りパットを見る、出来れば感じる。可能なら“味わい”、かつ“匂いを嗅ぐ”ことも出来ればよい」
Smithは呆れます。「ボールの匂いを嗅ぎ、味わえですって？」
「もっと云えば、ボールがカランカランと転がり込む音も“聞いて”ほしい。そのカランカランという音を聞くまでパットを始めてはなりません」
Smithは笑うしかなかった。
「このプロセスに時間はかけないこと」とコーチ。「他のプレイヤーがパットしている間に済ませられる筈です」
「superfluid（超流動体）の流れでボールがカップに入るんですか？」とSmithが驚きながら云った。「いいですね。見えますよ、感じて聞くことも出来ます。イエス、気に入りましたよ、それ」

ここでLinc St. Clairは視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の、五感全部を使えと云っているわけです。これは、これまで量子界の超流動体という物理学の高度な話だったものが、突如野生動物の原始的行動に転じたような大変化ですが、よく考えると中々面白い。野生動物が獲物を狙い、自分の身の危険を避けつつ襲撃のタイミングを計る際は、本能的に五感をフルに働かせる筈です。でなくては、獲物を狙っている自分が上空を旋回している鷹の餌食にされかねませんし、人間に見つかって撃たれるかも知れない。パットの軌道を読み、ボールの転がりを想像するわれわれにも、野生動物のように鋭敏な五感が必要なのです。とすれば、われわれは四つ足動物のように地面に這いつくばってラインを読むCamilo Villegas（カミロ・ヴィジェイガス）を見習わなければならないのかも知れません（笑）。