Golf Tips Vol. 139

パワー・フェードの条件

これはJack Nicklaus(ジャック・ニクラス)と、彼の生涯二人目のコーチJim Flick(ジム・フリック)との二人三脚による記事です。

'Hit a fade with power'
by Jack Nicklaus with Jim Flick ('Golf Digest,' October 2011)

Jack Nicklaus:「私のゴルフ歴における基本的ショットはパワー・フェードである。これは距離は充分出るがランが少ないのでフェアウェイをキープ出来る。これは是非身に付けておきたい素晴らしいショットだが、あなたがドローを打てないのであれば、このショットは無理だ。

と云うのは、あなたがターゲット・ラインのインサイドからの軌道で打てず、インパクトでクラブのトゥがヒールを追い越すようにターンさせることが出来なければ、ボールに最大のパワーを与えることは不可能だからだ。

ドローを打つ際には、大地をしっかりと踏まえた足と脚のリードによるダウンスウィングが不可欠だ。これがインサイド・アウトの軌道を準備し、インパクトでクラブフェースをクローズにさせる。

で、フェードを打つために必要なのは、身体で若干ターゲットの左を狙い、クラブフェースをオープンにして、上に述べたドローを打つようにスウィングすることである。

残念ながら、アマチュア・ゴルファーの多くがパワー・フェードを試みる際、アウトサイド・インのスウィングになってしまい、弱いプル・スライスに堕してしまう」

Jim Flick:「伝説的コーチHavey Penick(ハーヴィ・ピーニック)は、先ず生徒にドローを打たせた。Jack Nicklausの最初のコーチJack Grout(ジャック・グラウト、1910〜1989)も同じだった。彼は当初Jack Nicklausに地面から足を離すことを許さず、それがインパクトでクラブのトゥがヒールを追い越すリリースによってドローを打つことを教えた。

最もパワフルなフェードはプッシュ・フェードである。なぜなら、クラブはボールに対し浅いインサイド・アウトの軌道で向かって行くが、これはより早いクラブヘッド・スピードを生むことが証明されている。アウトサイド・インでカットするように打つゴルファーは、ボールを斜めに打ってしまう。これだとクラブヘッドはボールを効果的に圧し潰すことが出来ないので、必要とする飛距離を得られない。

だから、あなたがパワー・フェードを打ちたいと思うなら、先ずドローの打ち方を習得すべきなのだ」

前に紹介した「ショート・アイアンではボールを押し潰せ」というtipにも「(ショート・アイアンでは)インパクトの瞬間、クラブのトゥがヒールを追い越すようにスウィングせよ」、「ボールは下降して来るクラブヘッドと地面の間で押し潰される」と書かれていました。《1) インサイドからの、2) トゥ先行のヘッド軌道で、3) インパクトでボールを押し潰す》の三点はどちらにも共通しています。向こうは「ドロー」と云い、こっちは「パワー・フェード」と呼んでいますが、結果はどっちも真っ直ぐ飛ぶようです。上級のゴルフに突入するには不可欠の打法と云えそうです。

(April 01, 2012)


Bernhard Langer(ベルンハード・ランガー)のパッティング

Bernhard Langer(ベルンハード・ランガー)は1996年以降はロング・パターを使用していますが、それ以前はスタンダードな長さのパターで通していました。彼は1978〜79年にかけてのyips(パッティングのスランプ)をレフトハンド・ロー(=クロスハンデド)のグリップを開発して克服、1988年のyipsではスプリット・クロスハンデド・グリップ(私は「脈拍チェック型グリップ」と呼んでいます)を開発し、その後七年間成功を収めました。以下の記述は、スタンダードなパターで成功していた時の秘訣を公開した部分です。風変わりなグリップの話としてではなく、「三角形を保つ」努力としてお読み下さい。

'My Autobiography'
by Bernhard Langer (Hodder & Stoughton, 2003, £7.99)

[langer]

「スプリット・クロスハンデド・グリップは、左前腕部に沿わせたパターを右手で軽く押さえるものだ。一方の腕は完全にリラックスし、もう一方は非常に軽くパターを保持する。これはストロークから小さな筋肉の動きを除外する。基本的に手首の動きは消滅する。

普通にパットすると、六つの関節を使うことになる。左右の手首、左右の肘、左右の肩の計六つである。私のスプリット・クロスハンデド・グリップは、二つの手首の動きを度外視出来るので、私は両肩の動きだけに集中すればよいことになった」

Bernhard Langerのこのグリップは、世界で最高に難しいグリーンのThe Masters(マスターズ)での優勝に貢献しました。

'50 Greatest Golf Lessons of the Century'
by John Jacobs with Steve Newell (HarperCollins, 2000, $25.00)

これはプロ・プレイヤーでもあった英国の高名なインストラクターJohn Jacobs(ジョン・ジェイコブズ)が、50人の偉大なプロの特色あるメソッドを抜き出して解説した本。

「ゴルファーには右利きが多く、右利きだと右手がストロークをハイジャックする危険は常に存在する(特にプレッシャーを感じる時点で)。これは絶対に許してはならないことだ。右手のどんな介入も、パターのリズミカルな流れを狂わせ、正しいスピードでラインに乗せるプロセスを破壊する。Bernhard Langerの試みは極めて異端ではあったが、右手の動きを封じ、肩、腕、手とパターが一体となって調和した動きをする点では有効であった。

あなたがパッティングのラインと距離に問題を抱えているなら、Bernhard Langerのメソッドを考慮してみる価値はあるだろう。グリップの形態は問題ではない。パターを前後させるために肩を揺らすセットアップを体得することが重要なのだ。両肩、両腕とクラブで形成される三角形を、(各部がてんでに動くのではなく)一つの単位として維持する感覚を得るべきである。肩の動きの度合いで距離をコントロールし、緊張を寄せつけず滑らかでスムーズな動きを達成出来る」

(April 05, 2012)


Gary Player(ゲアリ・プレイヤー)の読み方のヒント

Gary Player(ゲアリ・プレイヤー)はグリーン上のどんなものも見逃さなかった。以下は、Gary Playerが語るカップを覗いて勾配や芝目を見分けるtips。

'The Methods of Golf's Masters'
by Dick Aultman & Ken Bowden (The Lyons Press, 1975, $19.95)

「・カップの上の土の深さを測れ。ピンが傾かずに垂直に立っているなら、斜面の高い側の土の厚みの方が多い筈だ。

・カップの周りのどこか一方の芝が痛んでいないか調べよ。痛んでいる側が低いほうである。パットの多くが、高い側から低い側に転がるので、そちらが痛むからだ。

・カップの周囲のどこか一方に、枯れた芝がないか探せ。そちらの方に芝目が流れているという目安になる。なぜなら、カップが切られた時に根が切断され、残された葉は枯れるしかないからだ」

(April 05, 2012、改訂June 04, 2015)


Gene Sarazen(ジーン・サラゼン)勝利の秘密

Gene Sarazen(ジーン・サラゼン、1902〜1999)はメイジャー優勝七回(生涯グランドスラムを達成した最初のプロ)、PGAツァーで計39勝を挙げ、1935年のThe Masters(マスターズ))におけるアルバトロスや、サンドウェッジの発明・開発者としても有名です。

以下の本から、Gene Sarazenのゴルフと考え方を抜き出してみました。

[Sarazen]

'The Methods of Golf Masters'
by Dick Aultman & Ken Bowden (The Lyons Press, 1975, $19.95)

Gene Sarazenはキャディとして八歳の頃からゴルフを始めた。彼は長じても167.6センチ、66キロと小兵だったため、ボールを遠くに運ぶ様々な工夫をした。

彼は二つのグリップで大成した。ショートゲームではオーヴァラッピング・グリップ、フル・スウィングではインターロッキング・グリップである。そのインターロッキング・グリップは、左手のほとんどをシャフトの真上にかぶせるというもので、アドレス時、彼には全てのナックルが見えた【編註:もの凄いストロング・グリップ】。右手はさほどストロングではなかったが、右手親指をシャフトからはみ出して握ったので、引き金を引くように曲げた右手人差し指に接触した。これは万人がヴァードン・グリップを採用すべきだと思われていた時代には、(容認されないとは云わぬまでも)異常な選択であった。

彼が誰かに教える際一般的にはオーヴァラッピング・グリップを推奨し、相手が手の小さい人(主に女性)だけにインターロッキング・グリップを勧めた。しかし、彼は終世全ての人に左手のストロング・グリップを採用する助言を与え続けた。彼は云った、「左手は四つのナックルが目の隅で見えるほど右に廻されるべきである。右手の(親指と人差し指で形成される)"V"の字はクラブフェースの上端に揃って見えるように握る。この形をスウィングの間中しっかりと保持すること。緩めてはならない」

当時のあるゴルフ・ライターは、Gene Sarazenのグリップについて次のように書いている。「これは木樵(きこり)と空手の専門家に通じる特質である。左手のほとんどがクラブの真上に位置しているので、インパクトの瞬間、ボールと接触する衝撃は手首を横切るだけで、関節が突然の重圧によって屈することはない。彼のインパクトの瞬間のグリップは、斧や大ハンマーを使う人のそれとほとんど同じである。空手チョップも手の側面による効果的な一撃で、その際のショックによって手首が折れることはない。これはまた、テニスのバックハンドの特質でもある。剣士がこの原理を利用しなければ、その武器をたった一つの(突く)方向でしか使えないことになる」

ストロング・グリップと、体型による自然なフラット目のスウィング・プレーンは、インパクトでインサイド・アウトの軌道を生む。また、ストロング・グリップとフラットなプレーンは、早期にクラブフェースをクローズにする危険を孕んでいる。初期のGene Sarazenはフックに悩んでいた。彼はボール位置を左足踵の前方とし、スクウェアかややオープンなアライメントによって、ボールを望む方向に打ち分けられるようになった。

Gene Sarazenは理想的なレイト・ヒットを行っていた。彼が、そのグリップで手打ちをしていたら、彼の生きる道は野球しかなかったであろう。彼のショットのどれもが三塁方向へ転がるだけだっただろうから。

彼の成功は、先ず最初に最大のパワーを生むベストのグリップを発見し、そのグリップに合わせたスウィングを構築し、それに執着したせいである。

ろくに練習もしないでGene Sarazenのストロング・グリップを採用したゴルファーは、ストレートなボールに混じって、(左手首が折れたり強過ぎる右手によって)押し潰したようなフックを打つか、ブロック(身体を左にスライドすること)によって手首のリリースに失敗してプッシュなどを経験するに違いない。しかし、メイジャー優勝七回、ツァー優勝39回という実績があるのだから、このグリップが間違っているとは云えない。

Gene Sarazenは練習魔であった。彼は次のように云っている。「ゴルフには相当量の練習が必要だ。私は練習が好きである。ある人が『一つのクラブで三時間も四時間(あるいは五時間)も練習したら、ゴルフは楽しみでなく仕事になってしまう』と云った。それは正しいだろう(あなたが練習嫌いなら)。私にとっては、100ヤード離れて100個のボールがピンに近寄って行くのを見るのは、とても興味深いことなのだ。こういう練習が、私に正確なショットを可能にしてくれる。私は一本のクラブで六〜七時間練習したことがある。それが、実際にそのクラブを使う時にどうすればよいかを私が知っている理由である。私は練習によって、特定の距離からピン傍60センチでボールを停められるかどうかを知っている。私は常に遂行するショットを熟知している。もちろん、時折失敗もするが、それは練習を怠ったからであると認める。そして、望んだショットの遂行に完全に自信がつくまで練習する」

彼はこうも云っている。「もしパーで廻れるのなら満足だ。対戦相手はバーディやイーグルを出すだろう。しかし、長い目で見れば、パー(あるいはそれに出来るだけ近いスコア)で廻るプレイヤーが結局は勝利するのである」

(April 08, 2012)


青年よ、左へ行け

筆者Jerry Heard(ジェリィ・ハード)はJohnny Miller(ジョニイ・ミラー)などと同じ時期に活躍したプロ。この記事の見出し"Go Left, young man, Left"は、西部開拓時代の"Go West, young man"のもじり。

'The Golf Secrets of The Big-Money Pros'
by Jerry Heard with Paul Dolman (The Hanford Press, 1992)

「下半身が上半身に先行してダウンスィングを開始するのは周知の事実。しかし、その下半身の向かう方向はどこか?青年よ、左へ行け、左だ。腰を(ターゲット方向へではなく)左へ廻せ。

地面に平行に腰をスライドさせるのではなく、回転させること。その結果、完全なフォロースルーでは右腰は左腰よりもターゲットに近いフィニッシュとなる。

ごく僅かな平行移動は許容範囲だが、ターゲットに向かう大幅横滑りは厳禁である」

(April 08, 2012)


Rocco Mediate(ロッコ・ミディエイト)かく語りき

U.S. Open 2008でTiger Woods(タイガー・ウッズ)と互角に闘ったRocco Mediate(ロッコ・ミディエイト)の卓見(?)。

'People person'
by Rich Learner ('Golf Digest,' March 2011)

「どのスポーツでも身体は右に動き、その後で左に向かう。野球のボールを投げるにせよ、テニスのボールを打つにせよ、絶対に頭を静止させたりしない。

狭いスタンスでプレイするスポーツというのも殆どない。時速120マイルで打たれたサーヴを、両足を揃えてレシーヴするプレイヤーなんて存在しない。ワイドなスタンスで、すぐ動ける体勢であるべきだ。Ben Hogan(ベン・ホーガン)のスタンスは広かったし、身体の右に大きく動いた。Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)だって、Lee Trevino(リー・トレヴィノ)だって広いスタンスだったじゃないか」

(April 11, 2012)


パワーが欲しけりゃ肩を廻せ

'Golf Tips from the Pros'
edited by Tim Baker (David and Charles Limited, 2006, $14.99)

「Henry Cotton(ヘンリィ・コットン、1907〜1987、英国の有名プロ)は次のように云っていた。『身体の捻転を完結させることは、全てのいいゴルファーのプレイに見られる特徴である。ある人々は踵を地面につけたままでそれを行い、他の人々は踵を浮かす必要がある。それはゴルファーの身体の柔軟性次第だ』

彼の言葉は50年経った今でも正しい。PGAツァー・プロDavid Toms(デイヴィッド・トムズ)を例に取れば、彼は、エネルギーを無駄にすることなくエレガントでリズミカルなスウィングをする。彼は目立つようなパワーではなく、正しい基礎によってボールを飛ばす。

彼の身体は柔軟なので、地面から僅かでも左踵を浮かすことなく大きな捻転が可能である。しかし、左踵を地面につけているかいないかは問題ではない。重要なのは、あなたがDavid Tomsを見習って、バックスウィングのトップで肩の捻転を完結させることが出来るかどうかである。

バックスウィングのトップで背中がターゲットを向いていることを確認せよ。それが充分身体を捻転させている証(あかし)である」

インストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)によれば、ツァー・プレイヤーの30%は左踵を浮かすそうです。

(April 14, 2012)


Less + more = double more!

"Less is more"(レス・イズ・モア)というフレーズについては何度か書いて来ました。その原典は英国の詩人Robert Browning(ロバート・ブラウニング、1812〜1889)が1855年に発表した'Andrea del Sarto'(アンドレア・デル・サルト)という作品だそうですが、実際にはドイツの建築・家具デザイナーが装飾を省いた機能的なデザインを提唱する表現として引用して一般的になったようです。この場合、"Less is more beautiful"(簡素な方が美しい)、あるいは"Less is more functional"(簡素な方が実用的)という意味になります。

私が"Less is more"という文句をゴルフに当てはめる時は「オーヴァー・スウィングよりはコンパクト・スウィングの方が飛ぶ」とか「ドライヴァーを短く持つと、スウィート・スポットで打てる確率が増え、飛距離も増え正確さも得られる」というような意味に解釈しています。"Less is more effective."(控えめの方が効果的)という感じです。下世話な日本的表現を選ぶなら「損して得とれ」でしょうか。一見損なように見えても、結果として得になるという…。

先頃のラウンドで、より多く肩を廻せば飛距離が増すことを発見(再発見?)したのですが、フェアウェイ・キープ率がやや落ちたことにも気づきました。で、ドライヴァーを1インチ(約2.5センチ)短く持って打ってみました。ビンゴ!スウィート・スポットで打てるようになり、飛距離も伸び(当社比)、かつ方向のコントロールも良くなりました。

Less + more = double more!

Less: クラブを短く持つ
more: もっと肩を廻す

結果のmore No. 1: 飛距離が増す【more distance】
結果のmore No. 2: 正確さが増す【more accuracy】

これは必勝の公式だと思います。

ただし、すんなりこの公式が導き出されたわけではありません。左肩を廻そうという努力が、左手を突っ張り手首を強ばらせる(or 曲げる)ことに繋がり、右や左の旦那様になった日もありました。肩は廻しても、手・腕はゆったりとリラックスしていなければなりません。《Less + more = double more!》が完全成立したのは、それを克服してからのことです。

しばらく前のラウンドで一緒のチームになったKen(ケン、Kennethのニックネーム、73歳)は、引退する前は鉛管工だっという腕っ節自慢の男。彼は野球のような打ち方で、腕力で飛ばします。その彼が、ハーフを終えたあたりで私に「あんたのティー・ショットに毎度毎度"Good ball!"と云うのに疲れたよ」と(ふざけて)愚痴り、「あんたはそんな体型【細くて短い】なのに、どっから力が出て来るんだい?」と云いました。頑健な彼をアウトドライヴする私に呆れたようです。私のボールがよく飛んでいたとしても、右のホールへ行くか左のホールに行くか分からないような不正確なショットばかりだったら、彼も感心しなかったでしょう。飛距離と正確さがセットだったから印象的だった筈です。もし「クラブを短く持ってるせいだ」と云ったら、彼は「冗談だろ?」と云ったことでしょう。

前回、飛ばし屋Mike Reekie(マイク・リーキィ)とラウンドした時、《Less + more = double more!》という公式について話しました。彼は元数学の教授ですから「公式」という言葉を聞き咎めて懐疑的になり、根掘り葉掘り聞かれました。しかし、彼を何度かアウトドライヴするティーショットを放ったら「その公式は成立するようだね!」と認めました。論より証拠。

(April 14, 2012)


パワーが欲しけりゃ腰を廻すな

有名インストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)は、1992年にTaylorMadeのコンサルタントになり、SMT(SportSense Motion Trainer)という分析装置を用いて、150人以上のプロのスウィングを分析しました。その時のデータから発見したスウィングの秘密を、彼は"X-Factor"(Xファクター)と呼びました。

'McLean's Secret'
from 'The Secret of Golf' edited by George Peper (Workman Publishing, 2005, $18.95)

「私はゴルファーたちのパワーへの執着を熟知している。彼らの90%が肩と腰をもっと廻すべきで、そう努力すればするほど飛距離が伸びると考えている。SportSense社のMichael McTeigue(マイケル・マクティーグ、有名インストラクター)と私がSMTによって発見した"X-Factor"について知っていれば、彼らはそんな誤解はしないだろうに。

分析の結果われわれは、クラブヘッドのスピードとパワーは、肩と腰の回転にギャップ(差)を生み出すことに密接な関連があることを発見した。一般的に云って、その差が大きければ大きいほどボールを遠くへ飛ばすことが出来る。

[X factor]

当時、Ben Hogan(ベン・ホーガン)の本の影響で肩を90度、腰を45度廻すのが理想であると考えられていたのだが、われわれがテストしたパワー・ヒッターの誰一人そんな捻転をしていなかった。例えばJohn Daly(ジョン・デイリィ)だが、彼は肩を114度、腰を66度回転させていた。その差は48度で、これは飛び抜けて大きいギャップである。

ツァー・プロたちのテスト結果から、全てのロング・ヒッターが大きく肩を廻しているわけではなく、大きく肩を廻しているプロがボールを遠くに飛ばせるわけでもないことが分かった。ただ、どのロング・ヒッターの場合も、肩と腰の回転の差が大であった(=肩の回転より腰はかなり抑えめ)。

肩の回転が80度でも、腰の回転が40度なら(差は40度)非常にパワフルである。だが、肩を90度廻しても腰を80度も廻したのでは(差はたった10度)、パワーは非常に弱い」

Jim McLeanは、腰を横切る線と両肩を結ぶ線の二つが"X"の文字になることから、上の発見を"X-Factor"と命名し、二つの線のギャップが大きいほどパワーが増すと結論づけたのです。

しかし、ツァー・プロの強靭な身体を持っていないわれわれに、「腰を廻さず肩だけ廻せ」と云うのは無理な注文です。腰の動きを抑えると肩も動かなくなってしまいます。次の記事は、Jim McLeanの"X-Factor"理論の32年前に出版されたものですが、われわれにうってつけの方法を教えてくれます。筆者Mindy Blake(ミンディ・ブレイク)は身長1.7メートルと西洋人としては小柄ながら、60歳代になっても平均280ヤード飛ばせたというインストラクター。彼はその独自のメソッドを1973年に'The Golf Swing of The Future'(未来のゴルフ・スウィング)として出版しました。以下は、そのセットアップの一部です。

'Blake's Secret'
from 'The Secret of Golf' edited by George Peper (Workman Publishing, 2005, $18.95)

「腰と肩の関係は、ゴルフ・スウィングの中で最も難しいものであろう。古い理論では、肩を90度、腰を70度廻すのが理想とされていた。最近の理論では肩は同じく90度だが、腰は45度以下が良いとされている。実際のところ、下手なゴルファーは腰を肩と同じ度合いで回転させてしまい、上体と下半身の間のテンションはゼロである。ダウンスウィングは肩を引き戻すだけのパワーで遂行され、結果は飛距離不足のフックやスライスでしかない。

アドレスで腰を僅かにオープンにするとよい。バックスウィングでは肩を腰よりも多く回転させれば、肩と腰の筋肉をフルに伸張させ、ショットのためのパワーがトップで充分に蓄積される。身体の柔軟性など問題ではない。右足を10度ターゲット方向に廻し、両膝を僅かに左に押し込めば、どんなに身体の固いゴルファーでも簡単に腰と肩のいい関係が構築出来る。このアドレス体勢は、本能的に両脚からのダウンスウィングを促す。すぐに肩を振りほどく手打ちとはおさらばである」

なお、Jim McLeanは'X-Factor II'(2008)というDVDで、「腰の回転が少なければいいと云っても、右膝を全く動かさないというのは不自然である。45度ぐらいまでは肩と腰を一緒に動かし、そこから先は肩だけを廻すという練習を勧める」と云っています。

以下は「体型別スウィング」の著者の一人Jim Suttie(ジム・サッティ)の助言。

'Golf swing misconceptions'
by Dr. Jim Suttie
from 'The PGA Manual of Golf' by Gary Wiren (PGA of America, 1991, $39.95)

「『バックスウィングで腰の動きを制限し、腰に対抗して肩を廻せ』というのは間違いである。ゴルファーがバックスウィングで腰の動きを制限すると、肩の回転幅をも制限してしまう。腰の回転の制限は凄く柔軟性に富んだ、身体の動きが調和したゴルファーだけがすべきことだ。

実際には、腰はバックスウィングとフォワードスウィングの両方の肩の動きをコントロールする。だから、ゴルファーが腰の回転を制限すると、肩の回転まで制限してしまう。肩の回転が制限されていると、腰よりも肩の逆回転によるダウンスウィングを先行しがちになり、プルかプル・スライスを生じてしまう」

編者の体験談ですが、《右足を10度ターゲット方向に廻したアドレス》は、下半身主導のダウンスウィングを促し、飛距離増にも繋がるようです。一回だけのテストですから絶対に正しく有効であると断言は出来ませんが…。右足を10度ターゲット方向に廻しても肩を廻すことは可能でしたし、飛距離も充分満足出来るものでした。

【おことわり】画像はhttps://tpiprodfilescdn.azureedge.net/にリンクして表示させて頂いています。

(April 17, 2012)


パットの手帖

いろいろパットのことが ここには書きつけてある
このなかの どれか一つ二つは すぐ今日 あなたのパットに役立ち
せめて どれか もう一つ二つは すぐには役に立たないように見えても やがて 心の底ふかく沈んで
いつか あなたのパットを変えてしまう そんなふうな これは あなたのパットの手帖です

[PGA]

'The PGA Manual of Golf'
by Gary Wiren(PGA of America, 1991, $39.95)

PGAというのはアメリカのゴルフ・インストラクター(レッスン・プロ)たちの組織であり、この本はそういうインストラクター(レッスン・プロ)たちの教科書として出版されたものです。執筆・編集はマスター・プロフェッショナル(コーチ達のコーチ)Gary Wiren(ゲアリ・ワイレン)。彼は博士号を持つトップクラスのインストラクター、ゴルフ歴史学者、著作家です。

「・ボールを両目を結ぶラインの内か外に置くと、カップへの道程を見極める知覚作用が歪んでしまう。外側だと左へ、内側だと右に歪む。

・パターをボールの後ろに置いた時の両手の位置がターゲット方向に寄っているか後方かによって、パターのロフトが変わる。ターゲット側だとクローズ、後方だとオープンになり易い。

・ゴルファーは、フルスウィング同様、パットする際にもボールに囚われがちである。ボールを打つのでなく、ボールを通過するようにストロークすることを忘れてはいけない。

・フォワード・ストロークで両手に左脚を通過させることに集中すると、ストロークを減速させてしまうミスを防止出来る。

・パター・シャフトを左前腕部に揃えると、ストロークの間の手・腕のいい位置が得られる。

・非常に早いグリーンでは、金属シャフト部分を握るほどパターを短く持てば、ヘッド・スピードを減らすことが出来る。

・ボール位置(スタンスの前方か後方か)は、ストレート・ストローク以外の全てのパッティング・メソッドにとって重要である。クラブフェースがボールに接触するタイミングに影響するからだ。

・アマ・サイド(カップの下側)にミスすることを嫌うゴルファーは、右から左へのブレイクではパターのトゥで打ち、左から右へのブレイクではパターのヒールで打つ。

・左右の肩を結ぶ線はパターの軌道(バック・ストロークとフォワード・ストローク両方)に影響する。クローズ目の肩の線はインサイド・アウトのストローク、オープン目だとアウトサイド・インのストロークを誘発する。ストレートにストロークしたければ、肩をスクウェアに揃えるべきである。

・体重のどこか一点に意識を集中すると(例えば、左足踵の後ろなど)、身体が無意識に動いてしまうことを防止出来る。

・完璧にストロークされたボールであっても、次のような理由で必ず入るとは限らない。a) お粗末な読み、b) お粗末な狙い、c) お粗末なグリーン。

・ボールの実際の道程に関係するフェース角度のエラーは、パッティング軌道の角度エラーより、70%も影響が大きい。

・狙いをつける際、頭を平行にせよ。頭を傾げると正しく視る能力が損なわれる。

・平均的パットのブレイクの70%はカップの周囲約1メートルに出現する。だから、パットの終点近くのブレイクをよく調べるべきである。

・芝の順目・逆目によってボールの速度が影響されるものの、ボールが息絶える直前までは芝目はブレイクには影響しない。

・X-OUTのボールは一般的に云ってバランスがかなり悪く、2メートルのパットであれば左右どちらかに7〜10センチはブレる。バランスが悪いタイヤをつけた車と同じである」

【参考】
・「芝とパッティングの研究」(tips_157.html)
・「寄せの手帖」(このページ)
・「バンカー・ショットの手帖」(tips_141.html)
・「練習の手帖」(tips_158.html)
・「コース戦略の手帖」(tips_172.html)

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(April 20, 2012、増補December 04, 2015)


センター・ヒットのご利益

"Less is More"の一例として紹介した、《ドライヴァーを1インチ(約2.54センチ)短く持って打てば、方向性が良くなるだけでなく飛距離も伸びる》の傍証です。

'The Search for The Perfect Swing'
by Alistair Cochran and John Stobbs (Lippincott, 1968)

「飛距離について議論される際、クラブヘッド・スピードがうんぬんされるのが常である。しかし、クラブフェースの中心でスクウェアにボールと接触するという重要な要素も忘れてはならない。

・ドライヴァーのオフセンター・ヒットによる飛距離の変化

ヒット位置 飛距離
センター・ヒット 250ヤード
1/4インチ(約6.4ミリ)
オフセンター・ヒット
245ヤード
1/2インチ(約1.27センチ)
オフセンター・ヒット
235ヤード
3/4インチ(約1.92センチ)
オフセンター・ヒット
215ヤード

【編註】上の例はキャリーなのか、ラン込みなのか不明ですが、どちらにしてもかなり飛ばす人のようです。それでも、クラブのセンター(スウィート・スポット)を外すと、ぐんぐん飛距離が減ることが解ります。

以下は、'Golf Digest'誌がロボットを用い、93 mph(41.6 m/sec)のクラブヘッド・スピードで打たせた結果です。

'How to make solid contact'
by Hank Haney with John Huggan ('Golf Digest,' June 2003)

・ドライヴァーのフェース各部で打たれた時の飛距離(キャリー)の変化

ヒット位置 飛距離
センター・ヒット 212.7ヤード
1/2インチ(約1.27センチ)
フェース頭部寄りでヒット
206.6ヤード
1/2インチ(約1.27センチ)
フェース底部寄りでヒット
198.8ヤード
1インチ(約2.54センチ)
フェーストゥ寄りでヒット
198.3ヤード
1インチ(約2.54センチ)
フェースヒール寄りでヒット
185.3ヤード

フェースのセンターを離れるに従い、少なくて6ヤード、多くて14ヤードも減ってしまいます。簡単に云って、二打目がワン・クラブ違うことになります。

「飛距離を増やしたければ長尺ドライヴァー」というのが通説であり、出版物、TV、インストラクターなどの多くも「スウィング弧を大きくせよ」と講釈するのが常で、「ドライヴァーを短く持て」などという理論にはそうお目にかかりません。しかし、《コントロールが必要な場合はクラブを短く持て》というのも通説です。短く持てばそれだけボールに近くアドレス出来、スウィング弧が小さくなってスウィングはコンパクトになり、スウィート・スポットで打てる確率が増大します。労せずして飛距離が得られるのです。しかも正確な方向性付きで…。常に「80を切る!」のが目的であれば、われわれに必要なのは300ヤード・ドライヴではなく、着実にグリーンに攻め寄せて行く距離と方向性です。センター・ヒットのご利益を利用しないテはありません。

(April 23, 2012)


忌むべきヒール・ショットを回避せよ

'Golf Digest'誌がロボットを用いたテスト【上記「センター・ヒットのご利益」】によれば、ヒールで打つとクラブフェースのセンターで打った場合より27.4ヤード(約13%)も距離を損することが判明しました。以下は、Hank Haney(ハンク・ヘイニィ)が授けてくれるヒール・ショット回避の処方箋。

'How to make solid Contact'
by Hank Haney with John Huggan ('Golf Digest,' June 2003)

「ヒールで打つ原因は二つある。

a) スウィング軌道の過ち

バックスウィングでターゲットラインの内側にクラブを引き過ぎ、ダウンスウィングでラインの外側にスウィングしようとする。この場合、インパクト時クラブのヒールはアドレス時より身体から遠ざかっている。

クラブを内側に引けば引くほど、トップから打ちに行く手打ちになり易い。だから、テイクアウェイでクラブを上方に、多少ストレートに動かすことに集中すべし。こうすると、ダウンスウィングでクラブを外側に動かすのは難しくなる。

b) インパクト・エリアでのお粗末なバランス

ゴルファーの中には、スウィングの間に上体をボールに向かって近づけてしまって、ヒールで打つことになる人がいる。頭を下降させるのを防ぐには、友人にクラブのグリップエンドを額に当てて貰ってスウィングする。頭が僅かに水平移動するのは許されるが、上下動は不可である」

【参考】「頭の回転」(tips_41.html)

(April 23, 2012)


スウィング・プレーンの重要性

'The Big Miss'(大チョンボ)はインストラクターHank Haney(ハンク・ヘイニィ)が、Tiger Woods(タイガー・ウッズ)との出会いから、彼との六年間の交流を綴った話題の書。インストラクターがコーチしたプロについて一冊の本を出版するというのは、極めて異例のことです。しかし、Tiger Woods(タイガー・ウッズ)の性格、性向、思考・行動パターンについて、これほど赤裸々にした本はありません。以下はスウィング・プレーンについての彼の考えを披瀝した部分ですが、Hank Haneyの師匠は「二つのプレーン」(tips_90.hrml)で有名なJim Hardy(ジム・ハーディ)なので、Hank Haneyがスウィング・プレーンを重要視するのは当然です。

'The Big Miss'
by Hank Haney (Crown Archetype, 2012, $26.00)

「【Tiger Woodsのコーチに就任した当時】私のインストラクションの底流には、単一の原理があった。ゴルフ・スウィングにおける全ての美点は、正しいスウィング・プレーンから湧き出て来るというものだ。私は正しいボールの飛行の全てを研究してその啓示を受け、インストラクターとして格段の飛躍を遂げたのだった。

スウィング・プレーンの重要性は、ことにトップ・レヴェルの人々にとって重要である。ツァー・プロがクラブを正しいスウィング・プレーンにすれば、もっといいショットが生まれ、悪いショットでさえそこそこの程度に収まることを発見した。ゴルフというものに完璧なショットというのは稀で、名人級にとってさえゴルフはミスをカヴァーするゲームだと云ってよい。

私のスウィング・プレーンに関する概念はこうだ。プレーンはアドレス時のクラブ・シャフトの角度によって確立され、スウィンの間中その角度を維持出来れば、いいショットを打つ確率が高くなる。

1980年代初期に、私は歴史に残るゴルファーたちのスウィングのヴィデオを研究した。全てのゴルファーがプレーン上でスウィングしていたわけではないが、中でも最も多才な人物─Ben Hogan(ベン・ホーガン)はそうしていた。私は彼の本'Five Lessons'(『モダン・ゴルフ』)を何度も読み返したが、私にはよく理解出来なかった。本には有名な、肩に立てかけられたガラス板から首を出してアドレスしたBen Hoganのイラストがあり、『クラブは常にそのガラス板の下で回転すべきで、ガラスを破ってはならない』と書かれていた。しかし、そのイラストのガラス板の角度は、アドレスのプレーンと異なる、過度にアップライトなものであった。私は、正しいプレーンは胸骨を貫く角度であるべきだと思った(少なくともスウィング初期においては)。

私はTVの'Shell's Wonderful World of Golf'シリーズの一つ:Ben HoganとSam Snead(サム・スニード)の対戦ヴィデオ【参照「'Hogan vs. Snead'」(tips_54.html)】を、それこそ何百回も見ていたが、ある時、ブラウン管上に印をつけてBen Hoganのシャフトの角度をなぞってみた。彼の完璧なショットの秘密は、私の単一原理を裏書きするものであった。私は、過度にアップライトだったMark O'Meara(マーク・オメラ)に試して貰い、私の考えが正しいことを知った。

 

正しいスウィング・プレーンが得られると、クラブ・シャフトは常にアドレスで確立されたプレーン上か、プレーンと平行な角度でスウィングされる。トップでクラブが地面と平行になった時、クラブヘッドは真っ直ぐターゲットラインを指していなければならない。細かいと思われるだろうが重要な相違は、クラブヘッドがターゲットそのものを指すのでなく、『ターゲットラインに平行であるべきだ』ということだ。【註参照】もし、クラブがターゲットを指していれば、それは"across the line"(ラインを横切っている)ということになる。

【編註】アライメントの方法として、両足・両肩をターゲットそのものに向けるのではないとされるのと同じ。ターゲットに向かう線路があるとすると、向こう側のレールはターゲットに向かうが、手前のレールは先のレールと平行になる。両足・両肩のアドレスは、この手前のレールに沿うべきです。Hank Haneyは、トップでのシャフトの方向も手前のレールと同一線上にあるべきだと云っているわけです。

私にとっては、クラブはプレーン上か、プレーンを外れているかどちらかででしかない。この点は、ことTiger Woodsに関して云えば、Butch Harmon(ブッチ・ハーモン)と私の間の最も大きな相違点である。Tiger Woodsが私に語ったところによれば、Butch Harmonは正しいプレーンは幅のある範囲内にあり、私が正しいプレーンと考えるものの10%上か下の許容度を持つと云っていたという。私はもっと厳密であるべきだと考える。

Butch HarmonがTiger Woodsをコーチし始めた時、Tiger Woodsのトップは正しいプレーンの上にあったことは間違いない。また、彼のクラブシャフトもターゲットの右を指していたことだろう。"across the line"である。トップに達したクラブのリーディング・エッジはプレーンの角度とマッチしないわけだから、クラブフェースはプレーンに対してクローズ(シャット・フェース)になった。しかし、Tiger Woodsのタイミングが完璧な時は、本能的にその齟齬を克服して数々の優勝を遂げた。しかし、そうでない時には狙った地点からかなり逸れたり、距離のコントロール失敗に陥った。

"across the line"は、Bobby Jones(ボビィ・ジョーンズ)からFred Couples(フレッド・カプルズ)までがやっていることだが、Tiger Woodsの場合、ダウンスウィングでシャフトをプレーンの下に落とす傾向によって、(ターゲットラインに沿ってではなく)あまりにもターゲットラインのインサイドからクラブをボールに近づけた。これを調整するのは彼の天才をもってしてもかなりの負担だった。彼が不調の際、ドライヴァーでフックするのを恐れるあまり、大きく右へ打つのが常であった。短いクラブでは、クローズドなフェースのせいで左へミスした。どちらにしても、そのミスの大きさは彼の処理能力を越えることがしばしばだった。

それが、The Masters(マスターズ)1997に大差で優勝した直後に、Tiger WoodsがButch Harmonにスウィングの大改革を提案した理由だった。Butch Harmonは、Tiger Woodsのプレーンを若干フラットにし、クラブフェースをオープンにして"across the line"の度合いを減らした。Mark O'Mearaの懇願で、私は【まだButch Harmon門下だった】Tiger Woodsに『プレーンがアップライト過ぎる』と助言した。彼は私の指摘を真剣に受け止め、1999年以後六回のメイジャーに五勝を挙げた。2002年にTiger WoodsはButch Harmonと別れ、私にコーチを依頼した。

(April 26, 2012)


グリーン上でボールを弾ませるな

このtipはBernhard Langer(ベルンハード・ランガー)の執筆によるもの。

'Golf Tips from the Pros'
edited by Tim Baker (David and Charles Limited, 2006, $14.99)

「私はパッティング・スタイルを何度も変えたが、たった一つ、常に変えない目標がある。それは、ボールにいい転がりを与えるということだ。

いい転がりという意味は、ボールがパターフェースを離れた瞬間から地面の上を這って進むということだ。これは重要なことである。何故なら、ボールが(下降気味に地面に埋め込まれて飛び上がるか、上向きに打たれるかして)一度でも弾むと、ボールの強さとラインをコントロールすることは不可能になってしまう。

特にブレイクがある場合にボールを弾ませたりすると、カップに沈めることは絶対に出来ない。安定したストロークをするための一つの方法は、バックストロークとフォロースルーの幅を同じ長さにすることだ」

(April 26, 2012)


ショート・アイアンでもフルターンせよ

インストラクターの世界No.1として長く君臨するButch Harmon(ブッチ・ハーモン)のtip。

'Knock it closer'
by Butch Harmon with Ed Weathers ('Golf Digest,' March 2003)

「多くのアマチュア・ゴルファーが、ショート・アイアンでのバックスウィングを短くする。そして急速に、可能な限りハードにボールを打つ。そういう打ち方はお粗末なテンポ、お粗末なボールとの接触、距離コントロールのムラなどを生じる。

そうではなく、通常のフルなバックスウィングをし、通常のテンポで振り抜くべきである。覚えておくこと、ボールに当てようとするのでなく、ボールを打ち抜くように。長いクラブを選んで力まずに打つ。それがボールにエクストラのスピンを与え、宙に浮かべてくれる要因である」

[icon]

これは金言です。左肩をボール位置まで廻さないと、クラブから得られる正しい距離も方向性も得られません。スウィングは一定にし、距離調節はクラブを持つ長さで定めるのが確実だと思います。

(April 29, 2012、改訂August 30, 2018)


左腕を過度に伸ばすな

インストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)の警告。

'McLean's Swing Fixes'
by Jim McLean ('Golf Digest,' July 2003)

「バックスウィングにおいて正しく左腕を伸ばすことは、広いスウィング弧を作り出すのでパワー源の一つである。

しかし、多くのゴルファーが腕の拡張を正しく行っていない。確かに左腕は伸ばされているとしても、身体が回転していない。この連携の悪さはバックスウィングでのお粗末な腕の位置、左腕の過度の緊張、限定された身体の捻転に繋がる。人々は、過度に腕を伸ばし、それを硬直させていても「おれは正しいことをしているのだ」と考える。それがスウィングから全ての自然さを損なっているのに気づかずに…。

バックスウィングしながら、左腕にソフトなフィーリングを保ち続けよ。その感覚は、手首をコックすることを助けてくれる。左腕はあなたのスウィングの半径である。あなたの肩、腕、手は同調して巻き上げられるべきである。左腕を独立して過度に伸ばさぬよう警戒すべし」

私の経験でも、左腕を伸ばすと真っ直ぐいい距離のショットが得られます。しかし、だからといって「左腕を伸ばす」ことに集中すると、肩から手先までが木の棒のようになってしまい、柔軟なスウィングが失われてしまいます。それだけならまだしも、左腕・左手を突っ張る努力が左手首を凸型(甲を尖らす)にしたり凹型(甲をへこませる)にしたりして、プルやプッシュを誘発します。大変危険です。

私の解決策は、肩を廻すことだけに集中し、腕と手を意識しないというものです。これですと手首には何らテンションを生じさせません。無理に伸ばそうとすると百害あって一利無しです。何ごとも、ほどほどがよろしいようで…。

【参考】「左腕の伸張は慎重に」(tips_133.html)

(May 02, 2012)


真のニュートラル・グリップを見出せ

これは、Pia Nillson(ピア・ニルソン)と共に"Vision 54"を目指すゴルフ・スクールを運営しているインストラクターLynn Marriott(リン・マリオット)のtip。

'Find your natural neutral'
Lynn Marriott with Lorin Anderson ('Golf Magazine,' July 1997)

「ゴルファーたちは、インパクトでクラブフェースをスクウェアに戻すには、クラブをニュートラル・グリップで握るべきだと教えられる。全てのゴルファーの約2/3にとって、“ニュートラル”とはアドレスした時の左手に二つのナックルが見えるものを指す。しかし、人には腕と手の骨格の違いがあり、二つのナックルが全ての人に適切とは云えないし、それがクラブフェースをスクウェアに戻すのを困難にしたりもするのだ。

[palm]

身体の各部はアドレス時の自然な構えに戻ろうとするため、ニュートラル・グリップはゴルファーが腕をだらんと垂らした際の静止状態にマッチしていなければならない。立って両肩を後ろに引き、両腕をだらんと垂らして掌の向きをチェックをする。

A) 掌が45度の角度で向き合う体型。【写真A】
B) 掌同士が完全に向き合う体型。【写真B】
C) 掌がゴルファーの背後を向く体型。【写真略】

左手のナックルがいくつ見えるか、数えてほしい(左利きの場合は右手)。もし、二つのナックルが見えるなら【写真A】、クラブも左手のナックルが二つ見えるように握るべきである。左手にナックルが一つだけ見えるなら【写真B】、クラブも左手のナックルが一つだけ見えるように握る。これは伝統的にはウィーク・グリップと呼ばれるものだ。もし、左手に三つのナックルが見えるなら、クラブも左手のナックルが三つ見えるように握るべきだ。これは伝統的にはストロング・グリップと呼ばれるものである。

伝統的な呼称とは無関係に、上のグリップ法があなたにとっての真のニュートラル・グリップであり、ショットに安定性をもたらしてくれるものである」

(May 05, 2012)


この角度では上達しない

この記事の筆者は、Jim McLean(ジム・マクレイン)が"X-Factor"を発見したのと同じセンサーを付けて身体各部の位置や角度の情報を得る装置を用い、プロから上級アマ、中級アマ、入門者まで多くのゴルファーのアドレス体勢を調べました。その結果、驚くべき差異が見られたそうです。

'The keys to consistency'
by Tom Stickney II with Peter Morrice ('Golf Magazine,' October 1999)

「アマチュア・ゴルファーのショットが安定しないのは、ショット毎にセットアップが変わってしまうせいもあるが、多くの場合セットアップそのものが間違っていることが判明した。そして、ハンデが増えるにしたがって同じパターンに陥っている。例えば、ハンデの多いゴルファーほど背を伸ばして立つ傾向がある。幸い、セットアップはスウィング開始前に、簡単に修正出来る。

以下は5番アイアンを打つ際に、最も重要と思われる要素を比較したものだ。

プロ ハンデ5 ハンデ15 ハンデ25
1. 股関節からの前傾角度

33〜34°

30〜33°

28〜32°

22〜26°
2. 背骨の右傾角度
(ゴルファーの正面から見た場合)

8〜9°ターゲットの反対側

6〜9°ターゲットの反対側

     2〜5°ターゲットの反対側     

2°ターゲット側
3. 肩のターゲットに対する角度
【解説参照】
5〜6°オープン
5〜7°オープン
6〜9°オープン
7〜12°オープン
4. ボール位置

胸骨から8cmターゲット寄り

胸骨から3〜5cmターゲット寄り

胸骨の真下

胸骨から少しターゲットの反対側

【解説】

1. 股関節からの前傾角度

正しい前傾角度は、プレーンに沿ったゴルフ・スウィングをお膳立てする。プレーン上のスウィングには、物理の法則がスウィングに最大のサポートをしてくれ、クラブを最速で動かす。速度が増せばパワーも増す。

アドレスであまりにもアップライトに立つゴルファーは、テイクアウェイでクラブを急角度で持ち上げる傾向がある。それはあまりにも急激なスウィング・プレーンを作り出し、バランスの悪い、パワーレスなスウィングを生む。

2. 背骨の右傾角度

右手が下になったグリップは自然に右肩を下げ、背骨をターゲットから遠ざかる方向に傾げるものだ。これが、スタンス前方のボール位置と相まって、自然な背骨の角度を作る。この体勢はバックスウィングで右への体重移動、ダウンスウィングでの左への体重移動を自然に実現してくれる。背骨を真ん中にしてアドレスするゴルファーはリヴァース・ピヴォットになって、スウィング弧の最低点をボールの遥か手前にしてしまうため、ダフったりトップしたりする。

3. 肩のターゲットに対する角度

ツァー・プロの5〜6°オープンな角度は、彼らがアウトサイド・インのスウィングでパワーフェードを打つ体勢である。アマチュアの多くはオープンな肩によるアドレスでカットするように打ち、スライスを生んでしまう。ローハンデのゴルファーでない限り、スクウェアな肩の角度がお勧めである。

4. ボール位置

スタンスのどこにボールを置くかを、スタンスの前方何センチ、後方何センチと云うことは出来ない。スタンスの幅はゴルファーによって異なるからだ。胸骨(みぞおちの上の骨)はスウィングの中心なので、こことの関係でボール位置を論じることにする。

5番アイアンの場合、ボール位置は8センチほど胸骨からターゲット寄りであるべきだ。なぜなら、ダウンスウィングではスウィングの中心がターゲット方向に移るので、この8センチの場所でクラブフェースがオープンからクローズに瞬時に回転する。ここでボールを捉えるべきなのだ。

多くのゴルファーがあまりにも後方にボールを置くため、インパクトでクラブフェースをスクウェアにし切れない。この場合、早期にオープンなクラブフェースでボールを捉えてしまい、結果はスライスとなる」

(May 08, 2012)


左手でリードせよ

インストラクターHank Haney(ハンク・ヘイニィ)による、スクウェアに打つコツ。

'Left hand leads'
by Hank Haney with Mathew Rudy ('Golf Digest,' September 2003)

「スウィングの他の部分でどんなことをしようが、重要な瞬間はインパクトである。左手甲がターゲットにスクウェアであり、ニュートラル・グリップをしているなら、ボールは真っ直ぐ飛ぶしかない。他の道筋はあり得ない。

私がしばらくラウンドしなかった場合、私の目標は左手がクラブフェースをリードし、左手甲がターゲットを向くフィーリングを強化することである。私はチップショットの小さなゆっくりしたアクションで練習を始める。この動きをするには、かなりのコントロールが必要だ。その後、パンチ・ショットや3/4スウィングをし、次第にフル・スウィングへと移る。

もしあなたがスライスしたら、それは左手の(甲ではなく)側面で打っているからだ。フックしたなら、手の返りが過大なのだ」

(May 08, 2012)


ストローク・メソッド別グリップ法

この記事は、「体型別スウィング」(tips_54.html)の著者の一人で生体力学の博士号を持つDr. Jim Suttie(ジム・サッティ博士)によるものです。その肩書きから云って、身体の構造と動作の関係について彼ほど信頼出来るインストラクターはいないでしょう。ここでは、円弧型とストレートの二つのパッティング・メソッドについて、一般には知られていない(あるいはごっちゃにされている)グリップ法とポスチャーの違いを明解に教えてくれます。

'Match your grip to your stroke'
by Dr. Jim Suttie ('Golf Magazine,' January 1999)

「a) 円弧型ストローク

これはターゲットラインに対してインサイド(右)→スクウェア→インサイド(左)に動く肩の動きにつれ、パターフェースは僅かにオープンになり、インパクトでスクウェア、そして最後にクローズ目になるメソッド。

・左右の掌が向かい合い、両方の親指がパター・シャフトの真上になるグリップをする。これによって、パターフェースは僅かな肩の動きに追随出来るようになる。
・目はターゲットラインの内側。
・両腕はリラックスさせた状態で伸ばす【編註:原文の写真では、ターゲットライン後方から見た時、パター・シャフトと前腕部が完全に一直線になっている】。
・このメソッドには、ヒール・シャフト型のパターで、パター・ハンドルの真上が平になっているものが相応しい。
・右肩を低くしたセットアップをする。これは上昇軌道のインパクトに繋がる。
・シャフトを僅かにターゲット方向に傾ける。
・体重はスタンス中央。
以上のアドレスは肩の動きに追随する両手のストロークを助けてくれる。

[Grip A]

b) ストレート・ストローク

・雨粒を受けるようにやや上を向いた両掌によってパターを握る。【右の写真】
・上のグリップをすると、バックストロークで肩がクローズ目になっても、パターフェースはスクウェアなまま留まる。また、フォワードストロークで肩が僅かにオープンになってもパターフェースはスクウェアなままである。
・目はボールの真上か、内側(身体寄り)に位置させる。
・【ターゲットライン後方から見た時】手首をやや下に折って弓なりにする【パターを垂直に吊り下げる感じ】。これはパターフェースの回転を防ぐ助けとなる。完全なストレート・ストロークをしたければ、手首を廻してはならない。
・体重は左側、両肩は水平でターゲットラインに平行。
このアドレスは、パターフェースの回転を最小限にしてくれる。ストレート・ストロークの場合、円弧型ストロークに比べて振り幅が短いのが普通である」

[palm]

「手首をやや下に折って弓なりにする」という部分ですが、近々紹介予定の「Hunter Mahanのパッティング」で、PGAツァー・プロHunter Mahan(ハンター・メイハン)も、「ストレート・ストロークでは、両手をやや高めに構えることが不可欠」と云っています。しかし、もし、このグリップでボールが左右に逸れる場合は、弓なりにする必要はないかも知れません。「パットの応急手当て」(tips_62.html)という記事で、Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)は「パットが左へ逸れたら両手を上げる。右に逸れたら、両手を下げる」と云っています。つまり、弓なりにすることは両手を上げるのと同じことですから、過大になる恐れがあるわけです。どの程度弓なり(高め)にすべきか、試す必要がありそうです。

[Grip B]

私はレフトハンド・ロー(=クロス・ハンデド)のストレート・ストロークを行っていますので、Jim Suttieのグリップをレフトハンド・ローに変えてやってみました。練習している内に思い出したのが、「真のニュートラル・グリップを見出せ」(5/5)の、掌の向きの個人差です。Jim Suttieのグリップは、左の写真Bの(左手のナックルが一つだけ見える)タイプの人に相応しいだけではないか?私の掌は写真Aのように45度の角度で向かい合い、左手に二つのナックルが見えるタイプです。フル・スウィングに二つのナックルが見えるグリップが自然なら、パッティングでも同じ筈でしょう。やってみました。それが【右の写真】です。

Jim Suttieのオリジナルは仰向けの掌で、右手の親指はパター・ハンドルの右上角に触れ、左手の親指はパター・ハンドルの左上角に触れています。私の個人的グリップは、掌は伏せ目、右手の親指はパター・ハンドルの左上角に触れ、左手の親指はパター・ハンドルの右上角に触れる…というもの。現在、オリジナル版と個人ヴァージョンの両方を較べているところです。理論的には後者が優っている筈ですし、練習でもいい感じですが、本番でどうか?


(May 11, 2012)


レーザー光線でパット練習

以前、キーホルダー型ミニ・レーザーポインタ($10.99)をレンズなしの眼鏡に装着した、フル・スウィング用「ヘッドダウン矯正器」というものを発明しました(tips_60.html)。その器具をパッティングのアドレスに利用して、ボール位置が目の下であるかどうかの確認に使ったこともあります(「ボールを見る方法」tips_72.html)。今回は同じレーザーポインタをストローク・チェックに利用してみました。

これはパター・フィッティングの専門家David Edel(デヴィッド・イデル)の狙いのチェック法にヒントを得たものです。彼の方法はレーザー発光装置をターゲットとし、パターフェースに鏡を取り付けます。パターの前にボールを置いてターゲットを狙った後ボールを取り除き(誰かに助けて貰わないと、パターを動かさないでボールを取り除くのは無理です)、パターフェースの鏡で反射したレーザー光線がどこを指しているかで、ゴルファーのミスの原因を調べるというもの。レーザー光線が真っ直ぐターゲット方向を指していれば完璧ですが、ターゲットの右や左、人によっては飛んでもなく上や下を指していることもあるそうです。

[Laser]

私はレーザーポインタをパターのスウィート・スポット上に取り付けました。そのままではレーザー光線はあまりにも上向きなので、やや角度を下向きに調節します。ターゲットとして直径10センチほどの円(カップの直径は10.76センチ)を描いた的を置きます。アドレスしてレーザー光線をその的に合わせます。

ストレート・ストロークの場合はスローモーションでストロークし、レーザー光線の軌跡によってパッティング全体の軌道のぶれ具合をチェック出来ます(これは非常に効果的です)。ストレート・ストローク、円弧型ストローク、どちらの場合も、インパクトで動きを止めてレーザー光線がどこを指しているか、確認することが出来ます。

もう一つ、パターのスウィート・スポットで打っているかどうかのチェックも出来ます。レーザーポインタをターゲットとして置いて点灯し、光線がアドレスしたパターのスウィート・スポットに当たるようにします。【背後の壁あるいはドアのパターヘッドの高さのところに目印としてテープを貼っておくと調整が簡単です】光線がパターヘッド上部に当たるようにすると、アドレスした姿勢でもパター上端に赤い光りが見えます。バックストロークし、インパクトで止めます。その時、赤い光りがスウィート・スポット上にあれば合格です。

なお、キーホルダー型ミニ・レーザーポインタはいくつもの種類が売られていますが、そのほとんどはボタンを押すと発光するタイプで、これは上のような練習には向いていません(何らかの方法でボタンを常時締め付けるようにし、電池の着脱でオン/オフせねばならず、面倒です)。"Red Laser 1AAA Silver"というキーワードで検索するとヒットする製品があります。これはボタンを一度押せば発光し続けるタイプなので、パッティング練習に最適です。

(May 17, 2012)


グリップ圧のTPO

インストラクターMike McGetrick(マイク・マゲトリック)が詳述するグリップ圧の使い分け。

'Squeeze play'
by Mike McGetrick with Dave Allen ('Golf Magazine,' February 2001)

「ドローを打つにはストロング・グリップ(左手を時計回りに廻して握る)というのが相場だが、グリップ圧を弱めることによっても簡単に実現出来る。事実、グリップ圧の変化は、スウィングやセットアップを変更することなく、ボールの軌道をドロー、フェードその他に変えることが出来るのだ。

グリップ圧を1(クラブがすっぽ抜けるに近いほど緩い)から5(最もきつい)という尺度にすると、通常のショットは3になる。グリップ圧による打ち分け方は以下の通りだが、スウィングの最初から最後まで同じ圧力を保つことが肝要である。

a) グリップ圧 2

・ドロー
 緩めのグリップは前腕部の回転と共にクラブフェースをスクウェアにし、ドローを誘発する。緩めのグリップはまた、リラックスした筋肉によって長く自由なスウィングとクラブヘッド・スピードを作り出すので、長い飛距離も生む。

・グリーンサイド・チップ
 緩いグリップはフィーリングとタッチの度合いを高めるので、様々なグリーンサイドのショットに最適である。

・ロブあるいはフロップ
・バンカー・ショット
 グリップ圧を低下させることは梃子の作用を増す。バックスウィングでクラブは正しく持ち上げられ、プレーン上を動く。これは、バンカー・ショットや高くソフトなショットに不可欠の要素である。

・パッティング

b) グリップ圧 4

・フェード
 きつめのグリップはクラブのリリースを抑制するので、インパクトでオープンなクラブフェースは左から右へのボール軌道を生む。

・濃いラフ
 草がホーゼルを捉えてクラブフェースをシャットにするので、ボールとのソリッドなコンタクトと、ボールを宙に浮かべることを困難にする。よりきつめのグリップをすることがフェースをクローズにすることを防いでくれ、ストレートに打つ確率を増やしてくれる。

・フェアウェイ・バンカー
・ノックダウン・ショット(=スティンガー)
・バンプ&ラン」

(May 20, 2012)


ホームラン防止策・その2

'Stop the skull'
by editors of 'Golf Magazine' ('Golf Magazine,' April 2003)

「バンカーからのトップの原因は、主にボールを上げようとして右手を返してしまうことと、左腕を折ってしまうことである。これが起ると、クラブフェースをボールの下で滑らすための腕の伸張が不足するため、トップするしかない。次の方法を試されたい。

普通のバンカー・ショットのセットアップ(クラブフェースとスタンスはオープン、ボール位置は前方)をし、両足をボールの下になるように砂に潜らせる。左手を時計回りに回転させ、四つのナックルが見えるようにする。このストロング・グリップは、左腕を折ることを防止してくれる。最後に、インパクト・エリアまで左手の甲が天を向き続けるように注意して振り抜く」

【参照】「ホームラン防止策」(tips_128.html)

(May 20, 2012)


寄せの手帖

いろいろ寄せのことが ここには書きつけてある
このなかの どれか一つ二つは すぐ今日 あなたの寄せに役立ち
せめて どれか もう一つ二つは すぐには役に立たないように見えても やがて 心の底ふかく沈んで
いつか あなたの寄せを変えてしまう そんなふうな これは あなたの寄せの手帖です

[PGA]

'The PGA Manual of Golf'
by Gary Wiren(PGA of America, 1991, $39.95)

PGAというのはアメリカのゴルフ・インストラクター(レッスン・プロ)たちの組織であり、この本はそういうインストラクター(レッスン・プロ)たちの教科書として出版されたものです。執筆・編集はマスター・プロフェッショナル(コーチ達のコーチ)Gary Wiren(ゲアリ・ワイレン)。彼は博士号を持つトップクラスのインストラクター、ゴルフ歴史学者、著作家です。

「・コントロールを良くするためグリップダウンせよ。グリップ圧はしっかりしたものでも軽くでもいいが、絶対にきつくはしないこと。

・両足と腰はターゲットに対しオープンにする。スタンスはフル・ショットより狭め。普通のピッチングとチッピングのボール位置は、スタンス中央。両手は快適に肩からぶら下がっていること。

・グリーン周りの短いショットでは加速することが必要である。

・ピッチングとチッピングにおいて確固たる加速が必要なら、“ちょっと長め”のバックスウィングより、“ちょっと短め”のバックスウィングの方が望ましい。【編註:バックスウィングが長いと感じた場合、減速しがちになる】

・短いショットにもっとタッチと判断力が必要なら、視覚化と身体を動かすリハーサルが必要である。

・初心者は、ピッチングやチッピングしたボールに着地後どのようなことが起るか視覚化するため、グリーンをよく読む必要がある。

・ショットを視覚化しリハーサルを終えたら、直ちに実行に移せ!過度に長くボールに相対してはならない。フィーリングはそう長く留まってくれないからだ。Tom Watson(トム・ワトスン)は有名なPebble Beach(ペブル・ビーチ)のNo.17グリーンサイドでのショット(=チップイン)を、どう打つか決定した3秒後に実施している。

・同一のクラブを用いて異なるスウィングをするのと、同一のスウィングで異なるクラブを用いるのと、どちらに利点があるか?一般的には同一のスウィングを異なるクラブで行う方が易しい。しかし、ゴルファーがあるクラブに熟練していて、そのクラブで望んだ結果を達成出来ると感じたら、そのクラブを使うべきである。クラブに関する自信を伴った慣れは、計り知れない効果をもたらす。

・アップライトなアドレスでスウィングすると、ショットの高さが増す。フラットなアドレスとスウィングは低い軌道を生む。

・ピッチングとチッピングにおいて、左手のグリップをオープンな(ウィークな)位置にすると、フェースの捩れを回避し、ショットをソフトにし、インパクト以前に左手首と左手甲が折れ曲がるのを防いでくれる。

・グリーンにピッチングやチッピングをする場合、約1メートルはフリンジを越える着地点を選ぶこと。エラーの余地を少なく出来る。

・一般的に云って、タイトなライから強く打たれるボールより、草の上に乗っているボールはソフトに打てる。これは部分的にはセットアップの問題である。われわれはタイトなライではハンドファーストの構えによってクラブフェースのロフトを減らすのに対し、よいライでは両手をスタンス中央にしてロフトを増すからだ。

・通常のピッチングやチッピングをする場合、バックスウィングとフォロースルーの長さを同一にすべきである。

・ソフトな高いピッチ・ショットは、普通ゆっくりしたテンポでなされるべきである。バックスピンを生じるノックダウン・ピッチは、もっと早いテンポと手の動きによって行われる。

・ピッチングとチッピングにおける身体の重力の中心は、ほぼ不変である。バックスウィングで体重を右足に水平移動させるのは、極めて危険で、ムラのある結果を生む」

【参考】
・「芝とパッティングの研究」(tips_157.html)
・「パットの手帖」(このページ)
・「バンカー・ショットの手帖」(tips_141.html)
・「練習の手帖」(tips_158.html)
・「コース戦略の手帖」(tips_172.html)

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(May 23, 2012、増補December 04, 2015)


骨盤の幅でスタンスをとれ

飛ばそうとしてスライス製造に明け暮れているゴルファー必読のtip。

'Bust big drives'
by Mike Adams ('Golf Magazine,' April 2007)

「一般的な説は『遠くに飛ばすには、出来るだけスタンスを広げよ』というものだ。だが、肩幅より広いスタンスは、足から膝までの脚の角度を内向きにさせる。これはパワーを支える姿勢ではあっても、パワーを生む姿勢ではない。

両足を骨盤の真下に置くべきである。こうすると、上体が下半身の上端であるそれぞれの脚の上に積み重ねられ、脚全体のパワーをフルに用いることを可能にしてくれる。

上の利点に加えて、骨盤の広さのスタンスは左右どちらへの回転も楽に行えるようにしてくれる。これは、いかなる打つ動作においても不可欠のものだ。もし、骨盤より広いスタンスだと、腰を回転させるのではなく水平移動を余儀なくされる。水平の動きはリヴァース・ピヴォットに繋がり、大きなスライスを生む」

(May 23, 2012)


ドライヴァー yips(イップス)

インストラクターHank Haney(ハンク・ヘイニィ)がTiger Woods(タイガー・ウッズ)との六年間の交流を綴った話題の書に、“driver yips”(ドライヴァー・イップス)という言葉が出て来ます。"yips"は、普通パッティングの不調によって自信喪失したゴルファーが陥る、アドレスの状態で身動き出来なくなる症状ですが、driver yipsというのは初耳。Hank Haneyばかりか、Tiger Woods(タイガー・ウッズ)までがこの病気に罹っていたというのですから驚きです。

'The Big Miss'
by Hank Haney (Crown Archetype, 2012, $26.00)

シカゴ生まれのHank Haneyは、1974年にUniversity of Tulsa(タルサ大、オクラホマ州)にゴルフの奨学金を得て入学しますが、当時からインストラクターを目指していたため、教育学部に入りました。卒業後、いくつかのゴルフ場でレッスン・プロの助手として働き、その後Pinehurst(パインハースト)ゴルフ場のヘッド・インストラクターに就任します。そこで開かれたあるトーナメントで、PGAツァー・プロMark O'Meara(マーク・オメラ)の不調を救ったことが、彼を一躍有名にしました。

「1980年代中頃は教えるのに忙しく、自分のゲームをする暇がなかった。ゴルフから遠ざかると、上達は阻まれる。とりわけ、ドライヴァーでどうしようもない経験をした。特に、右にボールをばらまく傾向があった(ひどいスナップ・フックを打つことも出来たのだが)。病状は悪化し、45度の滑稽な角度で右に出たボールは、ラインから100ヤードも逸れてしまうほどだった。9ホールのラウンドで、少なくとも三個、普通は六個のボールを失くしたものだ。

1985年以後15年間、私は年に一度か二度しかプレイしなかった。他人のスウィングは直せるのに自分のスウィングを直せないので、もの凄い欲求不満に陥った。

 

私は“driver yips”に罹っていたのだ。パッティングのyipsは、脳からの運動技能指令が歪められるかブロックされる運動感覚障害である。それがフル・スウィングに当てはめれることはなかったのだが、私はSeve Ballesteros(セヴェ・バレステロス)、Ian Baker-Finch(イアン・ベイカー=フィンチ)、そしてDavid Duval(デイヴィッド・デュヴァル)に、それが起ったのだと確信している(特に彼らがドライヴァーを打つ際)。その障害が私にも起ったのだ。私は“driver yips”は、心理的なものというより生理的なものだと結論づけた。無論、不安な心理は症状を悪化させる要因であるが。

“driver yips”を克服する方法の一つは、Annika Sorenstam(アニカ・ソレンスタム)やDavid Duvalがやっているように、インパクトでボールを見ずに打つことだ。

もう一つの方法は、パッティングのyipsにベリィ・パターやクロー・グリップを採用するように、大変革を施すことだ。私はフィンガー・グリップでなく、パームで握るようにしてみた。これはカナダの天才Moe Norman(モウ・ノーマン)のスタイルである。加えて、スウィング軌道をアウトサイド・インにしたら、フックはなくなって弱いフェードになった。以前より飛距離は落ちたが、60台のスコアが出せるようになり、一時、全くペナルティ(OBなど)無しのラウンドを156回も連続させたほどであった。

私がTiger Woods(タイガー・ウッズ)のコーチになった時、彼のゲームに三つの問題点があった。
1) 壊れた左膝
2) 頭がバックスウィングで右に動き、そのまま留まってしまう癖
3) ドライヴァーを打つ恐怖

ショックだった。Tiger Woodsに関して頻繁に用いられる形容詞の一つは"fearless"(恐れを知らない)だが、実際にはこれは相応しくない。私は、トーナメントでTiger Wodsがドライヴァーでアドレスすると、平静でいられたことがなかった。彼がいいショットを放つとホッとしたものだ。私は彼の"big miss"(大チョンボ)を常に恐れていた。

ある時、Tiger Woodsの機嫌がいい時を見計らって、慎重にフィンガーからパームへのグリップの大変革を提案した。プロにとってグリップの変更はおおごとである。落ち着かないし、フィーリングが損なわれるからだ。私はグリップを見せ、5番アイアンを彼に握らせた。『出来ないよ』とTiger Woodsは即座に拒否した。『気持ち悪いだろうが、やってみて?』と私。『コック出来ないじゃん』と彼。『一度だけ打ってみて』と私。

彼のショットは快音を放ち、ボールの軌道も理想的だった。そんな落ち着かないグリップが完璧なショットを生んだことに、Tiger Woodsは明らかに愕然としていた。『もう一度、グリップを見せて?』と彼。私が彼のグリップを調整すると、『こんなグリップじゃ打てない』と云った。『たった今、やったじゃないの』と私。彼はもう一度打ち、『あらま』と云い、十個ほどのボールを打った後で、『これでやってみる』と云った」

(May 26, 2012)


スムーズなストロークを生む前戯

これは素晴らしいtipです。このtipを実行したある日のハーフのパット数は12でした。

'Make a smoother stroke'
by Chuck Winstead ('Golf Magazine,' February 2008)

「あなたは、パターをぐいっと引いたり、インパクトで突くような動きをしていないだろうか?こういうパッティングをしていると、プレッシャーが増した時は度を超して悪くなる筈だ。加えて、あなたはロング・パットをひどくショートしたり、ショート・パットをオーヴァーさせたりするに違いない。

ラインを見定め、スタンスをとったら、次のように三つ数えながらパットしてほしい。

1(ワン)浮かしていたパターヘッドでボールの後ろの芝を軽くポンと叩く。
2(トゥー)芝からパターをほんの僅か上げる。
3(スリー)もう一度ボールの後ろの芝をポンと叩き、すぐさまバックストロークに移る。

この一連の動作は正しい心の状態と、スムーズで対称的なストロークを遂行する正しいリズム感覚とを作り出す」

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なぜ上のtipが役に立つのか、私の謎解きはこうです。

ラウンド前夜に眠れない場合、《100から1まで逆に数える》という妙案があります。1から100までだと上の空でも数えられますが、逆だと難しい。必死になって1ずつ減らさないといけません。そのお蔭で、翌日のラウンドでどうすべきかあれこれ悩んだり案じたりする想念はどっかへ行ってしまい、いつの間にか熟睡しています。

上の「ワン・トゥー・スリー」のパターの上げ下げも全く同じ仕掛けなのです。「バックストロークはああして、こうして」、「フォワードストロークはああしてこうして」というメカニカルな想念が入り込む隙間がありません。潜在意識が記憶している筋肉の動きが、スムーズにパッティング動作を遂行します。

これは、左脳派でメカニカル過ぎる私などにはぴったりの方法です。やってみると、メカニカルな思考は全く浮上せず、思い切りのいいリズミカルなストローク出来ます。「ワン・トゥー・スリー」のテンポは、ゴルファーの好みで早くても遅くても構いません。

(May 29, 2012)


ピュアに転がす秘訣

この記事に出て来る「第七頸椎」について:首を前傾させ、首筋を頭の方から撫でると、大きな凸起にぶつかります。その骨が「第七頸椎」と呼ばれるものです。筆者Paul Marchand(ポール・マーチャンド)はFred Couples(フレッド・カプルズ)の元コーチ。

'Roll it pure'
by Paul Marchand ('Golf Magazine,' April 2008)

「パッティングは、煎じ詰めればある一点を中心とした自由な振り子運動である。鍵はその一点を定め、そこに他の動きを収斂することだ。

第七頸椎に触れてみてほしい。そこが回転軸である。前傾し、第七頸椎が地面と平行になるようにアドレスする。腕はだらんとぶら下がり、手が肩の真下になることにお気づきだろう。

このポスチャーは、好ましい振り子運動を自動的に作り出す。あなたがしなければならないのは、あなたが設定した軌道でパターを左右に動かすことだけだ。単純で、ほぼ何も考えずに出来るストロークなので、容易に反復可能であり、どんな長さのパットでもソリッドなコンタクトが得られる」

(May 29, 2012)


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