June 04, 2022
●ダウンの開始で右肘を引き下ろせ
17年もかけて100人以上の男女ツァー・プロのスウィングを撮影・分析し、それらの最大公約数をまとめた本のエッセンスを紹介するシリーズのパート7。
'Swing Like a Pro'
by Dr. Ralph Mann and Fred Griffin (Broadway, 1998)
「巷間『飛距離と正確性は両立せず、片方を選べば片方が犠牲になる』と云われる。これは真実に基づいているものの、実はトップ・クラスのゴルファーたちのジレンマに過ぎない。一般ゴルファーにとっては両立するのである。
多くのゴルファーがダウンスウィングの動きを良くしようと非常に熱心に努力するが、問題はそこにあるのではない。アドレス、グリップ、バックスウィング、切り返し、あるいはお粗末なトップなどが、ダウンスウィングを効果の無いものにしているのだ。
① バックスウィングで体重は右足に乗る。
② ダウンスウィングで腰を急速にターゲット側に廻す。この時のターゲットにオープンになった腰と、まだターゲットに背を向けている背中との組み合わせは、正確なショットを打つという観点において極めて重要である。
③ 肩が回転する前に、クラブ軌道をフラットにする(=低くする)。右肘を身体の右側に近づける(左のアニメ参照)。クラブは振り上げたバックスィングとは異なる軌道で動く。クラブ軌道をフラットにするのは全てのトップクラスのゴルファーに共通する要素であり、自動的にインサイドからのインパクトへの道筋と、スクウェアなクラブフェースとを生み出す。これは正しく切り返しを行えば、結果として起ることである。
④ 右足を蹴って(浮かして)体重を完全に左足に移す。両腕がインサイドからボールに向かうのを助けるため、腰をターゲットに向かって追いやる必要がある(=両手の邪魔をしないように道を空ける)。そうしないと両腕とクラブは腰に行く手を阻まれて立ち往生してしまう。【編註:チキン・ウィングになり易い】
⑤ 身体の右脇を擦るように近づけられた右肘は、まだ折られたままである。そのため、左手との間に“窓(空間)”が開いている。これはインパクトまでパワーが蓄えられている証拠である。
《ダウンスウィング軌道の諸問題》
・上図の③のようにクラブをダウンスウィングで落下させないと(フラットな軌道にしないと)、アウトサイドからの軌道でボールと接触するため、プルかスライスを生む。
・急激なアウトサイド・インのスウィングだと、最も有害なプル・スライスを生む。
・ローハンデのゴルファーによくあることだが、アウトサイドから急激にインサイドの軌道でスウィングするとフックを生ずる。
・フラットな軌道にしたのはいいが、それがあまりにもフラットだとインサイド過ぎる角度からのインパクトとなるため、右へ出て左にカーヴするボールを生む。
【右手一本でのドリル】
5番アイアンを右手一本で、しかもシャフトに近い部分を握る。左手は背中に廻しておく。イーズィなフル・スウィングの素振りをし、インパクトで停止し、以下の諸点をチェックする。
・右手はボールに先行してターゲット寄りに位置していなければならない。
・右踵は地面から浮いていて、右脚は膝の柔軟性を保ち、左脚は伸ばされていなければならない。
・腰はターゲット方向に45°の角度でオープンになっていて、肩はターゲットラインに平行でなければならない。
・体重の90%は左サイドにかかっていなくてはならない。
チェックポイントの全てを満足させることが出来たら、実際にボールを打つ。正しく遂行されれば、両手で打つのとほぼ同じ距離を打てる筈だ。
【クラブ軌道をフラットにするドリル】
クラブシャフトをフラットにするのは、原因ではなく結果である。切り返しが正しく行われ下半身が正しく用いられていれば、結果としてシャフトはフラットになるものだ。
・どのクラブでもいいので、そのハンドルの末端に空いている穴にティーを刺す。正面から見てシャフトが垂直になるまでバックスウィングして一時停止。ティーは両爪先を結ぶ線とボールの間の一点を指しているべきだ。
・スウィングを継続しダウンスウィングとなってまたクラブシャフトが垂直になった時点で一時停止。シャフトが正しくフラットになっていれば、ティーはボールの遥か向こうの正面を指している筈だ。
・実際にボールを打ってみる。この際も、ダウスウィングでティーがボールの遥か向こうを指していることを心に描くこと」
小柄な身体なので意図的にオーヴァー・スウィングをするBrooke Henderson(ブルック・ヘンダースン、カナダ、写真右上)のトップからの手の落差は凄い。右肘を身体の右脇にがくんとくっつけるように下降させています。下半身は僅かにターゲット方向に廻っていますが、頭の位置は変わらず、左肩もまだ大きく右には廻っていません。
Lydia Ko(リディア・コゥ、ニュージーランド、写真右)のアニメを御覧下さい。ダウンスウィングの最初は腰が逆転したあと肩や両手を逆転させるのではなく、クラブを下降させているだけです。ダウンの最初は右肘が身体の右脇に向かって引き下ろされるだけで、左肩はボールを向いておりまだターゲット方向には回転していません。しかし、腰は早くもターゲットラインと平行からオープンへと推移しつつあります。ダウンスウィングの最初は手・腕を廻すのではなく、下降させるだけである…というのが、今回学ぶべき骨子です。
このtipは即効性があります。これを習い立ての頃、以前と同じように打っていたためドライヴァーもアイアンも方向がバラけていました。「ダウンで右肘を身体につける」を思い出して実行した途端、ボールは狙ったところへ真っ直ぐ飛ぶようになりました。
【シリーズ目次】
・'Swing Like a Pro'(プロのようにスウィングせよ)[本の紹介]
・ニュートラル・グリップはなぜいけないのか?(tips_203.html)
・アップライトにアドレスすべき理由(tips_203.html)
・アドレスで決まるショットの成否(tips_203.html)
・正しいバックスウィングの手順(tips_203.html)
・スウィングのトップで為すべきこと(tips_203.html)
・プロ的切り返しをすべし(tips_203.html)
(June 04, 2022)
●パターの種類と構え方の相性
パターにはバランスをとった時に、図のように1) フェースが水平になるもの("face-balanced putter")と、2) 斜めになるもの("toe-weighted putter")とがあります。
'The right putter for you' by Mike Adams
from 'The Best Instruction Book Ever!--Expanded Edition'
edited by David DeNunzio (Time Home Entertainment Inc., 2012, $29.95)
「あなたのパッティング・スタイルがボール位置やパッティング軌道を決定するのではない。逆に、パターのデザインがパッティング・スタイルを決定するのだ。
Aタイプ(シャフトがヘッドの真ん中に埋め込まれているか、二重に曲げられている型)のパターはストレート・バック、ストレート・スルーのパッティングをするように設計されている。Bタイプのパターはオープン・バック、クローズのフォローをするように設計されている。だから、パターに合ったストロークをするか、あなたのストロークに合ったパターを選ぶか、どちらかである。
《Aタイプ》のストローク
・両腕は肩から直接ぶら下がるように
・両目がターゲットラインの真上になるように腰を屈める
・ボール位置はスタンス中央のややターゲット寄りで、パターヘッドは鼻の真下
・肩をシーソーのように動かしてストレート・バック、ストレート・スルーのパッティングをする。この動きを身につけるには、クラブを一本両脇の下に挟んでターゲットラインと平行にし、そのクラブと両腕で構成される三角形を崩さないようにストロークする
《Bタイプ》のストローク
・ボール位置は左脇の真下
・目はターゲットラインの内側(身体近く)にし、腰を伸ばして立つ
・両手は両肩を結ぶラインの前に出す
・両手は両腕より前に出ているので、パターを自然にインサイドに引くことになる。流れるように弧を描く動きを妨害しないことが鍵である。そのためには、左腕一本でスウィングする練習を行う。スウィング・ドア(前後に開き、手を離すと自然に閉まるドア)の動きを模倣するのがよい
(June 04, 2022)
Copyright © 1998−2022 Eiji Takano 高野英二 |