April 08, 2022
●アップライトにアドレスすべき理由
「インパクトの物理学(トゥ寄りでアドレスすべき理由)」(tips_175.html)は「(ドライヴァー・ヘッドの)トゥ寄りでアドレスせよ」という説で、その証明は右の図のようなものでした。図のシルエット表示がアドレス、写真表示がインパクトです。シルエットの方はクラブへッドのトゥ寄りでボールにアドレスしていることを示しています。写真の方はインパクトですが、よく見るとクラブシャフトがしなっていて、それでもボールをヘッドの真ん中で捉えているのが分かります。これがトゥ寄りでアドレスすべきであるという理論でした。
別な角度から同じ結論に達した理論を紹介します。次の本は17年もかけて100人以上の男女ツァー・プロのスウィングを高速度カメラで撮影・分析して最大公約数を求めた結果を上梓したものです。
'Swing Like a Pro'
by Dr. Ralph Mann and Fred Griffin (Broadway, 1998)
「全てのクラブヘッドは僅かにアップライト(トゥが地面から浮くよう)に作られている。手や上体によってアップライトにすべきものではない。理由、以下の通り。
1) ダウンスウィングの段階で、遠心力は左腕とクラブシャフトを引っ張って一直線にしようとする。この力は実際上両手をアドレス時よりも高く持ち上げてしまう。この手の動きはシャフトをも持ち上げるので、結果的にアドレス時にアップライトだったクラブヘッドを地面と平行に置いたのと同じ状態にしてしまう。
2) 高くなる手の位置に加えて、遠心力はまたクラブシャフトを僅かに撓(たわ)めてしまう(左の写真)。この作用は"droop"(下垂)と呼ばれるが、これがさらにクラブヘッドを下向きにする。その結果、クラブのライは、アドレス時より最高で10°も変化する。
これらの変化を相殺するには、アドレスする際にクラブヘッドのトゥが地面から浮くぐらいにアップライトに構えるべきなのだ。そうしないと、あなたのクラブヘッドはインパクトで垂れ下がり、フェードやスライス・スピンの量を増加させてしまう。あなたが多くのゴルファーと同じなら、これは絶対に避けるべきことである」
結論として、クラブヘッドの真ん中をボールに当ててアドレスしてはいけないし、無理にクラブヘッド(特にドライヴァー)のライを地面と平行にしようとしてもいけないのです。ボールへの正しいアドレスは右図の左のようなものです。心配しなくてもインパクトでは遠心力の作用で図の右のようになります。私は2016年以来ずっとこの方法を用いて真っ直ぐ飛ばしています。
【参考】
・'Swing Like a Pro'(プロのようにスウィングせよ)(tips_202.html)[本の紹介]
・ニュートラル・グリップはなぜいけないのか?(04/01)
(April 08, 2022)
●レイトヒットでスコアを減らす
レイトヒット(=レイト・アンコック)は飛距離を増すだけでなく正確無比な方向性をもたらしてくれる強力なテクニックです。私が発見した考え方でレイトヒットを実践していた頃、あるパー4で9番アイアンで打った二打目がチップインし、イーグルを得たことがあります。正確な方向性が得られればスコアが減るという実例です。
しかし、これまでレイトヒットの重要性はさんざん語られ書かれて来たものの、どうすればわれわれ素人がマスター出来るのか具体的な手順は全く見つかりませんでした。
プロの中にはトップからの切り返しの際に再コックして(コックを強めて)クラブシャフトの角度を狭める人がいます。鐘楼の紐を引くように両手を垂直に引き下ろしてコックを保つ人もいます(右の写真)。どちらも修練の賜物であって、素人にはおいそれと真似出来ない方法です。
私は2000年にFred Couples(フレッド・カプルズ)のスウィングを分析・研究した結果、ある秘訣を発見しました。その発見とは《ダウンスウィングの際、右肘はインパクト直前までズボンの右ポケットを越えてはならない》というものです。【参考:「正確無比なショットの秘訣」(tips_185.html)】これはインストラクターJim McLean(ジム・マクレイン)が雑誌に書いた《右肘がズボンのポケットに入り込もうとする感じ》に先立つ9年も前の発見でした。
私は自信を持って《身体に引きつけた右肘がズボンの右ポケットを越えないようにする》が、レイトヒットを実現するコツであると断言します。「クラブヘッドの動きを遅らせろ」とか、「ダウンで再コックせよ」などと難しいことを教えられるよりも、この動作は具体的で実行しやすい。右肘が右ポケットを越えないということは、下半身(脚と腰)が先行してそれにクラブヘッドが追いつかないということを意味します。「意地でも右ポケットを右肘から逃げ切らせてみせる」と決意すると、信じられないようないいショットが出来ます。
上の手順が完全遂行されると、自然に(副次的に)次のようなことが起ります。左下の写真の円内のように、インパクト直前に右前腕とクラブシャフトが完全に重なるのです。これはFred Couplesだけに見られるものではなく、「ダウンスウィングの研究」(tips_185.html)に写真(下図)を掲載した10人のプロたちのように、一流と云われる人々はみな一様にこの形を見せています。
インパクト直前にクラブシャフトが右前腕に重なるのは、下半身のリード(足・腰の逆転)が遂行されている証明ですが、逆に意識的にシャフトを右前腕に重ねる努力をすると、否応なく下半身でリードしなければならなくなるので、どちらにしてもこの形を追求することはゴルファーにとって有益この上もありません。
と、 以上は真っ当なレイトヒット修得法でした。身につけるには少し時間がかかります。「そんな時間はない!」とおっしゃる御用とお急ぎの向きにふさわしい方法もないではありません。
下のヴィデオのインストラクターPaul Wilson(ポール・ウィルスン)は"lag"(læg、レァグ)と呼んでいますが、この言葉は“レイトヒット”と同じことで、両手とクラブが身体の動きに遅れて追随するという意味です。彼は『二分で身につくレイトヒット』と豪語しています。二分で理解出来るのは確かですが“身につく”かどうかはゴルファー次第。私が試したところ、ろくに練習もしないのに驚くほど真っ直ぐ飛び、しかもいい飛距離が得られました。
彼の理論は簡単至極、「①左肘を曲げていいから、②トップで地面と水平にしたクラブシャフトで首を叩け(右図)」というものです。実際にシャフトで自分の首を打つのです。結果的にコックが最大になります。「そのトップを作ってからボールを打つ。自信がついたら次第にシャフトを少しずつ首から離していく」というプロセスで常識的なスウィングに変えて行きます。「左肘を曲げていい」とか「首を叩く」とか云うと、上級者は「何だ、そりゃ?」と眉を顰(ひそ)めるでしょう。しかし、結果オーライなのですから「邪道だ!」と決めつけることは出来ません。事実、このYoutubeヴィデオの下には感謝のコメントがわんさと届いています。
この方法を用いる際、注意すべき点がいくつかあります。 もしうまくいけば、これはシニアが飛距離を増す最適の方法と云えるでしょう。実はこれに似た方法を、私がプレイするシニア・グループの若手(と云っても60代)の一人がやっていて、飛ぶ時はベラボーに飛ぶのですが方向が全く安定しないという症状を呈していて、私は日頃それを見ながら苦々しく思っていました。この方法はその彼のスウィングにそっくりなのです。私は、彼のトップでクラブヘッドの跳ねるような切り返しが方向性を損なう原因ではないかと考えていました。そうではなく、実際には彼のトップでの手首が真っ平らでなかったからのようです。 |
上のどちらの方法でもいいので、レイトヒットをマスターして楽しくスコアを減らしましょう^^。
【おことわり】最初の画像はhttps://lh3.ggpht.com/にリンクして表示させて頂いています。
(April 08, 2022)
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