[Poison]

The Longest Yard

『ロンゲスト・ヤード』

【Part 2】

お話は面白い。公開当時に観た時は「Robert Aldrich監督もふやけてしまったな」とガッカリしたのですが、2002年に観てもそう古くないというのは偉い。

御都合主義の脚本のせいでしょうが、いくつかの疑問。先ず、「ミーン・マシーン」はどうやって新品の揃いのヘルメットやユニフォームを揃えることが出来たのか?所長も看守長も試合になってから驚くわけですから、囚人達が独自で入手したわけです。資金は?経路は?看守長も当日まで知らないで、こんな大荷物(段ボール箱の山)が囚人たちの手に届くというのは不思議です。女装チア・リーダー達の衣装も立派なものです。これはどこから出て来たのか?ブラスバンドが囚人チーム応援のため演奏していますが、刑務所にバンドがあったのでしょうか?あったとすれば、それは看守チームの応援に使われる目的だったのでは?

もう一つ。マネージャーを殺した陰険なスパイ老人に何の因果応報もありません。これは落ち着きません。特に娯楽映画としては。

ハーフタイムで所長はBurt Reynoldsに、看守チームに21点を先取させることを約束させます。これを果たさないとマネージャー殺しの罪をなすりつけて刑期を30年延長すると脅します。閉ざされた世界ではこういう奴のやりたい放題ですから仕方がありません。Burt Reynoldsは仲間の非難を浴びながら敵に21点与えます。しかし、勝ちが見えた看守チームなのに、さらに暴力で囚人チームを叩きのめします。Burt Reynoldsは刑務所で長く暮している親切老人に聞きます、「30年も刑務所にいる価値があるかね?」老人は「まんざら悪くもないよ」と答えます。これを聞いてBurt Reynoldsは所長の脅しに屈せず、21点をハネ返して逆転勝利を目指します。前半で「(チームには)プライドと尊厳(dignity)が必要だ」と云わせていたのは、このための伏線だったわけです。彼は自分のプライドと尊厳、率いて来た囚人チーム全体のプライドと尊厳のために30年を棒に振ろうというわけです。

'Life'『エディ&マーティンの逃亡人生』(1999)は無実の罪で刑務所で40年も過ごした二人の男の物語でした。あちらは官憲にハメられただけで、自分で選んだ道ではありません。Burt Reynoldsの30年は、プライドと尊厳のために自分で選ぶ自己犠牲です。プライドと尊厳のために人生の大半を失うというのは大変なことです。人はこういうことが出来るものでしょうか?私には出来ません。綺麗ごと過ぎる気がします。ここには赤狩り(マッカーシズム)に抗して仲間を売らず、黙々と刑務所に入って行った映画関係者の姿がオーヴァラップするのでしょうか?

面白いシーンはいくつもありますが、私の好きなのは…フィールドで看守チームの一人が倒れる。看護の男が大した手当もせず場外に連れ去ろうとする。看守チームの仲間が「マウス・ツー・マウスとか何かやったらどうだ?」と云うと、看護の男が倒れているむさくるしいな男を一瞥して「あんたやったら?」と応じる。仲間は「俺も嫌だ」と消える。

所長Eddie Albertはいつも副所長(?)めいた男を引き連れて歩いています。何か名文句が浮かぶと副所長に目配せし、副所長はテープレコーダーのスウィッチを入れ、名文句を録音します。自伝でも作ろうとしてるんでしょうか?このテープレコーダーはSonyのTC-1000というタイプです。スウィッチの部分しか見えないのに、何故そんなことが分るかというと、実は私は今もこのテープレコーダーを持っているからです。電池を入れると最近の薄型テレコの十倍は重いでしょう。しかし、モノラルですがまだ録音も再生もちゃんと出来ます。思えばもう30年近く使っているわけです:-)。この映画を再見するまで気づきませんでした。

(July 07, 2002)





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