[Poison]

Wrestling Ernest Hemingway

『潮風とベーコンサンドとヘミングウェイ』

【Part 2】

息子のプレゼントのツバ二つの帽子を愛用するRichard Harrisが哀しい。彼は息子から大して愛されていないことに気づかない、というより気づきたくない。自分の孫がいるわけでもない少年野球を応援に行くRobert Duvallも哀しい。40以上も年の離れた娘に恋する姿も哀しい。

映画館で上映される映画が'A Summer Place'『避暑地の出来事』(1959)だったり、'The Thomas Crown Affair'『華麗なる賭け』(1968)だったりしますが、どちらもキス・シーンが画面に登場します。それを老人たち(Piper LaurieとRichard Harris)が食い入るように観ているのも哀しい。

Richard HarrisがShirley MacLaineの部屋にアイリッシュ・ウィスキーを持参し、二人で呑み、帰りがけに「今日は独りで寝たくない。このカウチで寝せてくれ」などと頼むのも哀しい。

ダンスの上手いRobert Duvallがエンディングでダンス・パーティに出掛けます。それは老人ばかりのパーティ。これも哀しい。

映画の中の排泄行為について、一言。なぜ、日本映画もアメリカ映画もこう男性が小便するシーンが好きなのでしょうか?御丁寧に飛沫まで見せる映画さえあります(例:『駅 STATION』)。トイレ、屋外を問わず、やたら出て来ます。排泄行為に重要な意味があるわけでもなく、他の行為に置き換えてもいい場合がほとんどです。私は排泄行為は見たくありません。珍しくもないし:-)。女性観客は見たいんですかね?

この映画では花火に向って二人揃って立ちしょんべんすることで、友情が深まるとでも云いたげですが、私には花火の美しさを汚し、プラスマイナス・ゼロとしてしまった気がします。

日本で販売されているヴィデオのタイトル『潮風とベーコンサンドとヘミングウェイ』ですが、随分安易ですなあ。どれも重要な要素ではないものを並べています。原題の'Wrestling Ernest Hemingway'はRichard Harrisの唯一の自慢「1938年にプエルト・リコでヘミングウェイとレスリングをして勝った」という、老人の懐古趣味、虚栄心を暗示しているだけで、大した意味はありません。Robert Duvallのベーコンサンドの食べ方は確かに異常で、何か神聖なものを頂くようにためつすがめつしてから食べます。しかし、これもSandra Bullockと結びつける存在でしかありません。何でも並べて済むのであれば『デュヴァルとハリスとマクレイン』でも良かったと思います:-)。

なお、フロリダ州の物語ですが、全編カリフォーニアで撮られています。

(September 16, 2002)





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