[Poison] Miracle in the Woods

【Part 2】

ピカンは南部特有の木の実とも云えないのですが、分布の中心はやはり南部です。この映画の“南部らしさ”はピカンぐらいしかないように見えます。しかし、私に云わせるともう一つあるのです。

Sanaa Lathan(シナ・レイザン、若き日のDella Reeseの役)は、何も知らずに夫の仕事の運び屋を務めていたのですが、ある時その品物は密造酒であることを発見します。彼女は夫が違法行為をしていることをシェリフに密告します。シェリフが夫を逮捕しに来る時刻に、彼女は幼い息子を抱え、トランク一つ下げて家出しようとします。ところが、現れたシェリフは突如子供を取り上げて、逆に彼女を逮捕します。一寸訳が分らないと思われますが、このシェリフが"redneck"の典型だと思えば一挙解決です。レッドネックは、頑迷固陋、人種差別主義者、ヤンキー嫌い、男尊女卑などの特徴を持った南部人を指します。黒人を蔑視している上に男尊女卑ですから、夫を密告するような黒人女は許せないということのようです。この見方が合っていれば、これも“南部らしさ”ということになるわけです。

しかし、いくら真正直な人間でも、共に子供をもうけた夫に意見一つせず、いきなり密告するものでしょうか?先ず「子供のために、まともな商売をしてくれ」と頼むのが普通でしょう。それでも夫が聞かなければ、別に密告するまでもなく子供と家出すれば済むことです(どうせそうするつもりだった訳ですし)。夫が家庭内暴力を振るうとか、浮気しているのなら罰したい気持も分りますが、この映画ではそうなっていません。どうやらこの無理な筋立ては、シェリフと夫の追跡を恐れるSanaa Lathanが、白人の仲良し娘Field Peaの助けによって森の奥の小屋に隠れ住む理由を作り出すためだったようです。人間の心理を無視したこういう「筋を作るための筋」はよくありません。

原題"Miracle in the Woods"(森の中の奇跡)とは何なのか?というと、それは森の奥の住人Della Reeseをめぐって起った姉妹の対立が、同じDella Reeseの息子探しによって姉妹の和解に終わるということのようです。

40代後半になろうかというDella Reeseの息子は「ずっと自分を見捨てていた母親などに会いたくない」と素っ気ない態度なのが面白い。この俳優が実に地味で、俳優らしくない点もリアルさを醸し出しています。

17歳の少女Anna Chlumskyが、終始ヴィデオ・カメラでDella Reeseの言動を撮影しているというのは(その年齢からして)妙なのですが、そのヴィデオを、最後にDella Reeseの息子に母の形見として上げるというオチがついています。

このDVDには字幕がなく、TVを"Closed Caption"(クローズド・キャプション)表示モードにしても字幕が表示されませんでした。TV放送された時には"Closed Caption"が活きていた筈なので、それを敢えて含めなかったという不親切なDVDです。姉妹は結局土地を売らずにピカン農園として復興させることにしたようですが、だとすると留置場に入っているMeredith Baxterの夫を保釈で出す資金が捻出出来なかった筈です。この夫は見捨てられたのかどうか(そんなことはないでしょうけど)、字幕がないので分りませんでした。トホホ。

(May 24, 2009)





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