[Poison]

The Wishing Tree


【Part 2】

映画の最後で、Alfre Woodardは母親の役目を継いで"wishing tree"について町の子供たちに語り聞かせます。映画の終わりとしてはいいでしょう。しかし、「願いが叶う木」が実在し、Alfre Woodard自身が「木に祈った」と公言してしまうと、その木の在り処を秘密にしておくことは難しいでしょう。子供たちが先ず「どこにあるの?教えて、教えて!」と云うに決まっていますし、大人たちだって知りたいでしょう。それを隠し通すことは至難の技です。木の在り処が公開されたら、近郷近在はおろか世界中からどっと人が押し寄せるでしょう。もうメルヘンどころの騒ぎではありません。というわけで、この映画のような終わり方は出来ません。してはいけません。「後は知らない」という無責任なエンディングです。

Alfre Woodardが独身みたいに描かれているので、黒人青年Blair Underwoodとのロマンスに発展するのかと思っていましたが、さすがにそれはありませんでした。しかし、彼女が木に祈った時、「唖の青年の口がきけるように」と祈ったのか?と想像しましたが、これも外れました。ま、私の想像はどれも大甘ですが…。こちらの想像通りにはしないという脚本はいいのですが、それにしてはあまりズシンと来るエンディングでもありません。

教授の娘Helen Shaverは、子供たちが黒人青年と接触していたことを秘密にしていたことでAlfre Woodardを怨みます。これは母親として当然でしょう。しかし、予審で黒人青年が事実を告げた時、自分の怒りが間違っていたことを悟り、Alfre Woodardと和解します。もし、黒人青年が嘘をついていたらどうなのか?その嘘で急に和解というのも乱暴です。

そもそも、黒人青年は予審になるまで、何故真実を官憲に告げなかったのか?手話の通訳を依頼すれば出来ないことではなかったでしょう。「それではAlfre Woodardの弁護士としての活躍を見せられないではないか」多分、そうでしょうね。映画には、往々にして意味もなく真実を語らない人々が登場し、そのおかげで40分ぐらい(上映)時間を無駄に使うことがあります。これは脚本家の得手勝手な所業です。

いかに法律事務所のボスとはいえ、Alfre Woodardが郷里で過ごす時間は長過ぎる。Atlantaの事務所と電話連絡でもしているシーンがあればまだしも、彼女はすっかりこの田舎に埋没してしまっています。これも不自然です。

「願いが叶う木」というテーマは現実離れしているとしても、登場人物にリアリティがないと全体が嘘っぽくなっていけません。

(September 14, 2003)





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