[Poison] Whistling in Dixie
(未)

【Part 2】

このシリーズのRed Skeltonのトレード・マークは"The Fox"に由来する「ウォゥーッ、ウォゥウォゥウォゥーッ!」という吠え声ですが、これが狼とも犬ともつかぬもので、到底狐には聞こえません。私は稚内周辺の原野で何日も狐を撮影したことがありますが、ついぞ狐の吠え声というのは聞きませんでした。http://www.tokyo-zoo.net/cry/ で狐の吠え声の音声が聞けますが、「キャウ!キャウーッ!」という感じで、やはりRed Skeltonの鳴きまねは狼に近いようです(上記サイトには狼の鳴き声もあり)。

舞台となる'Fort Dixon'(ディクスン砦)というものは、ジョージア州には実在しません(ニュージャージー州にはある)。何故、"Dixon"という名前が採用されたかですが、私の推測では「アメリカを地理学的・文化的に北部と南部に分けるMason-Dixon line」のDixon(人名)からの頂きと、南軍の愛唱歌'Dixie'を想起させる“南部らしい”響きからの命名だったと思われます。

原題の"whistling"(口笛)というのは、このシリーズの三作を通してさしたる意味を持っていないのですが、この二作目では結構重要な役目を果たしています。何回か聞かれる南軍の愛唱歌'Dixie'(http://www2.netdoor.com/~takano/southern_film/dixie.html)の口笛は、南軍の格好をして常に散弾銃を手にしている老人のペット(オウム)の歌なのです。終盤、Red Skelton、Ann Rutherford、Diana Lewis、Rags Ragland(弟)らは砦の一室に閉込められ、全員水死させられそうになります。脱出の手段は皆無。その時、壁の穴の向こうにオウムがやって来て、'Dixie'を口笛風に奏でます。それにヒントを得たRed Skeltonは、オウムに北軍の愛唱歌'Yankee Doodle'を口笛で吹いて教え込みます。老人に気づかせて助けに来て貰おうという作戦です。この趣向は面白いと思うのですが、たった数分でオウムにメロディを覚えさせることは出来ないと思います。私はセキセイインコの経験しかありませんが、言葉ではなくメロディの一節だけでも教えるのにかなり時間がかかりました。オウムの方はもっと利口だとしても、'Yankee Doodle'を丸々教えるには数日かかると思います。

Red Skeltonは最後に真犯人を突き止め、死んだ筈だが実は納屋に閉込められていたGordonを助け出そうとします。ここで場面をさらってしまうのがRags Raglandです。凶悪なRags Ragland(兄)は金貨を盗もうとやって来て、Rags Ragland(弟)はRed Skeltonらを助けに来るのですが、二人が顔も服装もそっくりなので大混乱。滑車にかけられた縄の両端にRags Ragland兄弟が釣瓶のようにぶら下がると、二階にいるRed Skeltonはどっちがどっちか分らず、交互に上って来る兄も弟も殴ることになります。際限なく殴られるRags Ragland兄弟。善人の弟の方こそいい迷惑です。

CATVのTurner Classic Moviesが三作を一挙放映したので、全部まとめて観ました。三作目の'Whistling in Brooklyn'が最も良く出来ています。プロ野球の試合もあったり、エレヴェーター・ホールにRed Skeltonら全員が宙づりになったり、仕掛けも盛り沢山でお金もかけています。なぜそこでシリーズが打ち切りになったのか理解出来ません。

(November 18, 2007)





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