[Poison] The Waterboy
『ウォーターボーイ』

【Part 2】

ルイジアナ州はもとフランス領でしたし、カナダから流れて来たフランス系移民も多く、フランス文化の影響が強く残っています。主人公が'Bobby' Boucher(ボビィ・ブシェー)、恋人がVicki Vallencourt(ヴィッキ・ヴァレンコート)、コーチがRed Beaulieu(レッド・ボーリュー)などと、フランス風の名前になっているのは、そのためです。

Kathy Batesはナマズを滅多切りにしながら登場します。ナマズはミシシッピ州を筆頭とする南部諸州の名物です。養殖池が方々にあります。普通は食料品店で切り身を売っているので、こんな風にぶっ叩く必要はありません。大抵はフライにして食べます。

彼女はワニの赤ちゃんのBBQ(バーベキュー)も披露しますが、これは悪質な冗談です。こんな料理は聞いたことがありません。固くてまずいでしょう:-)。ワニの赤ちゃんそのものは見たことがあります。ニュー・オーリンズ郊外へ行くと、「スワンプ・ツァー」の看板が沢山あります。大型ボートで湿地の中を縦横に走る水路を巡って、ワニとの遭遇をするツァーです。船長が馴らしてあるので、ボートの音がすると寄って来ます。その船長の家に何頭ものワニの赤ちゃんがいたのです。30cmぐらいの可愛いワニでしたが、船長が突っ突くと「クワッ!」と口を開けます。一人前に獰猛な感じでした。

蛙の料理は実際にあります。しかし、脚を食べるのであって、映画に出て来たような全身を使った料理(それもケーキ!)というのは聞いたことがありません。サヴァイヴァル・ゲームなら丸々食っちまうでしょうが。

最後の方でKathy Batesが運転するボートは“エア・ボート”と呼ばれます。湿地ではスクリューがすぐ水草に絡まってしまうので、スクリューの代りに大型ファン(扇風機)を推進力として使います。フロリダ州のEverglades(エヴァーグレイズ)国立公園に行くと、大型観光エア・ボートに乗れます。

Jerry Lewis(ジェリィ・ルイス)も『底抜け』シリーズでこういう知能発育不良青年を演じていました。私は映画の中のこのテの人物を観るとイライラして駄目です。役柄そのものにイライラし、こういう人物を笑い物にしようという製作者たちにもイライラします。「知能発育不良青年に同情しているわけだし、ハッピーエンドだからいいだろう」という問題ではありません。

主人公がヒーローになるという定型的な物語で、芸の無い脚本です。'Forrest Gump'『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)のユーモアもなく、やれば出来た筈のSFXもありません。

(January 29, 2002)





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