[Poison]

The Adventures of Mark Twain

(未)

【Part 2】

ミシシッピ川で蒸気船を操縦しながら、ワニについて話すところがあります。アメリカのワニには二種類あり、アリゲーターと呼ばれる獰猛な種類はフロリダからルイジアナにかけてのメキシコ湾岸部で見られます。もう一つはクロコダイルと呼ばれるもので、この種類はフロリダの一部にしか棲息しないおとなしい性格のワニです。ただし、フロリダの自然破壊が進み、絶滅が心配されています。ミシシッピ川にワニがいるとすれば、それはアリゲーターです。

もう一つ動物の話題。Mark Twainが求婚中、Alexis Smithの家でそぞろ歩きしながらリスを撫でます。深山でしかリスにお目にかかれない日本と異なり、アメリカではどこにでもリスがいます。人によっては「ネズミと同じじゃない」と云うほどです。リスは凄く臆病で、普通は撫でたり出来ません。この映画ではトレーニングされたリスを使っているのは明白です。ワシントンのホワイトハウス前の小公園にもリスが沢山います。ここで撮影していた時、「触っちゃ駄目ですよ、伝染病が恐いから」と云われました。どういう病気か知りませんが、アメリカではリスはネズミ同様疎まれているというのが現在の状況です。

西部でMark Twainが蛙を掴まえようとする沼地にはガマの穂が生えています。私の子供の頃は、このガマの穂は珍しくもなかったのですが、近年は人里離れた湿地でしか見られないようです。私は矢のような茎と、柔らかい茶色の部分の対比が好きで、今でも沼地へ行くと自然にガマの穂を探しています。この映画で沢山のガマの穂を見て感激してしまいました。

ミシシッピ川で真っ暗闇を航行する場面ですが、当人がイチかバチか面子を賭けるのはいいとしても、もし座礁したり、土手にぶつかって船が浸水したらどうするつもりだったのでしょう。乗客への迷惑を全く考えていないのが気掛かりです。

Mark Twainが真面目な小説を出版すべく、自分で会社を興します。その中軸は巨大タイプライターとも云うべきタイプ・セッターです。ほとんど冗談っぽいマシンですが、どうやら本当みたいです。しかし、あんな巨大装置で、よく小さな活字を拾えたものだと思います。

北軍の英雄グラント将軍の自伝の刊行を引き受けますが、ほとんど利益ゼロだったため、Mark Twainの会社は倒産しかけます。その赤字を補填するため世界各地に講演旅行に出掛けます。相変わらずユーモリストとして聴衆を笑わせますが、彼の胸中は察すべきものがあります。

オックスフォード大学の名誉博士号を授与し、続いてアメリカのいくつもの大学からも博士号を貰い、彼の努力も報われたかに見えます。しかし、愛する妻亡き後の人生は虚しく、誕生後75年目のハレー彗星の夜、Mark Twainは静かに息を引き取ります。トム・ソーヤーとハックルベリィ・フィンが迎えに来て、彼等と手を取り合ってMark Twainの魂は天国へと向います。羨ましい死に方です。

(March 26, 2002)





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