【Part 2】
この映画の監督は編集で遊ぶのが好きなようです。冒頭のカシノの場面も先ずNorman Reedusがカシノの用心棒二人に追われている場面を見せ、それをヴィデオの巻き戻しのように高速で逆回転させてから、ポーカーの台で彼がイカサマをするシーンを見せるという趣向。
カーニヴァル会場でNorman Reedusが蛇女の美女をストーキングするシーンでも、二人が歩くシーンの途中をバサッと落とし、中抜きでスピーディに編集しています。
また、Norman Reedusと美女Dagmara Dominczykが単に話している場面に、まだ実現していない二人のベッド・シーンを挟んだりします。これはNorman Reedusの欲望を表しているようでもあり、Dagmara Dominczykが感じる「いずれ二人は結ばれる」という“予感”を表現しているという風でもあります。
映像だけでなく、音声の遊びも出て来ます。Dagmara DominczykがArmand Assanteの金を奪おうとNorman Reedusに持ちかける時、彼女の声がフーガ(遁走曲)のようにダブって聞こえるのです。エコーをかけるのはよくある手ですが、それとは違います。この映画では台詞Aが話された後、台詞Bが話されている途中で台詞Aが再生され、二つの台詞がダブるのです。これが数回繰り返されます。
こういう試みは枚挙に暇がないのですが、慣れると『又か」という気になるものの、最初は高校生か大学生が面白がって編集しているように思えます。アイデアというより“小細工”に見えてしまうのが難です。
映画の冒頭で、射たれ血を流しているNorman Reedusがポケットから写真を出し、あの世への土産のように写真の赤ん坊を見つめます。そして、やって来た白髪の男にとどめの銃弾を三発浴びせられます。このシーンは、実は終盤の出来事を“予告編”のように見せた編集テクニックであることが分ります。しかし、この場面は脚本と監督が観客を騙そうとしただけに過ぎず、赤ん坊の写真を見る必要などさらさらないことが判明します。フェアではありません。
この映画の撮影はアラバマ州Mobile(モビール、ニューオーリンズのすぐ傍)で行なわれています。ニューオーリンズでの撮影は、(ドラマ部分ではなく)街頭芸人などの実景部分だけのようです。
(July 17, 2007)