[Poison] Tom and Huck
トム・ソーヤーの大冒険

【Part 2】

この映画に何故か引き込まれない理由は、Tom役のJonathan Taylor ThomasもHuck役のBrad Renfroも可愛くないからです。「可愛い」という尺度は個人個人で異なるわけで、私に可愛くなくても他の人には可愛いと思えるかも知れません。では言葉を替えて「子供っぽくない」としましょうか。Brad Renfroは格好良くクールな(冷めた)Huckを演じていて、感情を全く表に出しません。これは明らかに定型となっているHuckleberry Finnの性格とは異なります。そういう意味では、ハンサムではないJonathan Taylor Thomasはまだ子供っぽく見える方ですが、それでも素朴でやんちゃ坊主らしい雰囲気に欠けています。二人とも、飾らない、自然な子供っぽさがないのです。この点は役作りを指導した監督の責任でしょうね。

ところで、Brad Renfroは背も高く大人っぽい顔つきなので、Jonathan Taylor Thomasより数歳は上のように見えます。実際には逆でJonathan Taylor Thomasの方が一歳年上なのです。

ユーモアが不足していると書きました。そうは云っても、いくつかユーモラスな場面は用意されています。ペンキ塗りの場面やBeckyとの“婚約”、そして教会でのTomの“葬儀”など。しかし、折角のこれらの場面がちっとも可笑しくないのです。淡々と撮られているだけで、面白く見せようというサーヴィス精神が感じられません。これも監督のセンスの問題でしょう。

Tomが“婚約”したがるBeckyですが、彼女はTomよりずっと背が高いのです。“婚約”を滑稽に見せるために、わざと“ノミの夫婦”みたいにしたのでしょうか?だとしても笑えないのですから意味がないのですが。また、脚本上でこのBeckyを乱暴な今風の女の子に仕立て上げていますが、この扱いも疑問です。橋の欄干を歩いているTomを川に突き落とすとか(そこは背が立つぐらい浅いんですよ。危険じゃありませんか)、“葬儀”の最中天井から落下して来たTomにびんたを食らわすとか、Tomが洞窟の中に詳しいのが癪でずんずん勝手に奥へ入って行くとか。Beckyを演じたRachael Leigh Cookは可愛いのですが、役柄が可愛くないのです。

ナイフ投げの上手いインディアンのJoeに対し、Huckのナイフ遣いもなかなか出来るように描写されていて、観客はクライマックスで二人の対決が見られるものと期待します。それはあっさりはぐらかされ、Huckのナイフの見せ場は全く出て来ません。思わせぶりなことするなってえの、ったく。これは脚本の責任。

なお、この映画のHuckleberry Finnも例によってパイプ煙草をふかします。撮影時、Brad Renfroは13歳でした。未成年の喫煙も問題ですが、映画俳優一般に折角禁煙しても役柄によっては煙草を吸う場面があったりするわけでしょうから、辛い職業ですよね。

(February 20, 2007)





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