[Poison] The Adventures of Tom Sawyer
『トム・ソーヤ』

【Part 2】

これを“原作に最も忠実な映画化”と評する向きもあるようです。例によって私は原作を読んでいないので、それが本当かどうかは確認出来ません(早く読もうと思っているのですが)。云えるのは、この映画のTom Sawyer役の少年が大人みたいであまり可愛くなく、茶目っ気や悪戯っ子らしい性質を持った子供に見えないことです。こういう大人しい子役なら撮影は楽だったでしょうが、画面から弾けるような元気が伝わって来ないのではどうしようもありません。同じことはHuckleberry Finnにも云えます。Tomに比べて汚い格好をしていますが、野性味が全く感じられません。

この映画では「猫」が活躍します。先ず、Tomが歩いていると「ミャーオ」という声がし、頭上の木からHuckleberry Finnが現われます。彼は死んだ猫の入った袋を持っていて、Tomに「墓場で真夜中に猫の屍骸を置いておくと悪魔が現われるんだ」と云い、その晩二人で墓地に行くことにします。Tomが「家の外でミャーオって合図して」と頼むと、Huckleberry Finnは「お前よりホントの猫の方が早く出て来るからな」と不平を云います。

その夜、約束通りHuckleberry FinnがTomの家の外で「ミャーオ」を繰り返します。すると、家の下の穴から「ミャーオ」と鳴きながら猫が続々と出て来ます。なおもHuckleberry Finnが「ミャーオ」を続けると、隣りの家の主人が二階から古靴を投げつけ、Huckleberry Finnに命中します。Tomが出て来た後、Huckleberry Finnは古靴を隣りの二階目掛けて抛り、見事にガラスを割ります。

殺人を目撃したTomはいつもの活発さを失い、一日中椅子に腰掛けて呆然としています。未亡人のPollyは病気かと思って、痛み止めをTomに与えます。それは口が爆発しそうな猛烈な味の薬です。二杯目を貰ったTomは自分で服まずに猫に舐めさせます。ぺちゃぺちゃと舐め始めた猫は突如「ガビーン!」と毛を逆立てて跳び上がり、狂ったように走り去ります。

弟Sidneyは賢く抜け目が無く、いつもHuckleberry Finnを出し抜いたり未亡人Pollyに云いつけたりする憎まれ役ですが、非常に小憎らしく描かれているので観ていて不愉快になります。毎回SidneyがHuckleberry Finnに逆襲される場面は、製作者にとってはコメディ味を足したつもりかも知れませんが、Sidneyが惨めに思えるだけで面白くも何ともありません。

1973年版の'Tom Sawyer'『トム・ソーヤーの冒険』も、少女時代のJody Foster(ジョディ・フォスター)が観られることを除けば誉められる出来映えではありませんでしたが、この1938年版の元気のないTom Sawyerよりは良かったと思います。

なお、ミズーリ州出身の人に聞くと、中学校では一年かけて'The Adventures of Tom Sawyer'『トム・ソーヤーの冒険』や'The Adventures of Huckleberry Finn'『ハックルベリィ・フィンの冒険』を講読するそうです。'Tom Sawyer'の山場は、小学生たちが大きな洞窟を見学に行き、TomとBeckyが迷子になった末、逃亡殺人犯のインディアンと出会って追い廻されるシーンです。この洞窟は現地では"Mark Twain's Cave"(マーク・トウェインの洞窟)と呼ばれて観光名所になっているそうです。

(January 22, 2007)





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