[Poison] Wild Things
『ワイルドシングス』

【Part 2】

私はDVD視聴前に、IMDbとallcinema ONLINEにアクセスして映画のデータ(製作年、監督名、俳優名など)を収集しました。その時、ついallcinema ONLINEの読者の感想に目を走らせてしまい、“どんでん返し”という言葉が目に入って来て「しまった!」と思いました。“どんでん返し”があると知って映画を観ると、面白みが半減するからです。しかし、それは杞憂でした。この映画の“どんでん返し”は目が眩むように二転、三転、四転します。ここまであるとは、誰も予測出来ません。

しかし、その“どんでん返し”のどれもが納得出来るものだったか?というと、ちと疑問です。先ず、「レイプは狂言であった」というのは、観客誰しもが思うことですから、これは“どんでん返し”には入りません。しかし、
・「狂言は金持ちの娘Denise RichardsとMatt Dillonがグルになって行なったものだった」というのは驚きです。
・さらに「全ては狂言であると暴いた娘Neve Campbellまでグルだった」というのは、なおさら凄い。
・Kevin Baconもグルだったというのはもっと凄い。
・グルでなかったのは地方検事と裁判長ぐらいのものではないでしょうか:-)。
・Kevin Baconまでがグルだったというのは少しあざと過ぎる感じですが、本当に彼を仲間に引き入れる必要があったのかどうか?Matt Dillonに彼を仲間にしろと示唆したのはNeve Campbellです。Kevin Baconの重要な役目は、Neve Campbellが“殺害された現場を発見”し、世間に彼女は死んだと思わせることです。彼女が死んだことになる利点は、最後に彼女が一人勝ち残って大金を抱えてトンズラする時に役立つだけで、他の仲間Matt DillonやDenise Richardsには何のメリットもありません。仲間を増やすことは分け前が減ることを意味するわけで、Kevin Baconを引き込むことをどうやって他の二人に説得したのか?
・Kevin Baconも仲間なら、なぜ「この一件は示談金を得るために三人で共謀した狂言だ」と本当のことを同僚の女性刑事に喋ったのか?
・Kevin Baconが仲間なら、彼から「おれはカラクリを知ってるぜ」と云われたNeve Campbellが慌ててMatt Dillonに電話したり、恐れ戦いてDenise Richardsに会いに行く必要はありません。これは余計なシーンだったと思います。
・Matt DillonはDenise RichardsにはNeve Campbellを殺したと思わせます。しかし、Neve Campbellの身体をビニール袋に包んだのでは、本当に窒息死してしまうではありませんか。
・Kevin BaconがDenise Richardsを殺したのは筋書きにないことで、Matt Dillonはショックを受けます。Kevin Baconは彼女に怨みがあるわけでもなく、彼女を殺さなければならない理由はなかった筈です。分け前は増えるでしょうが。
・Kevin Baconは、殺される前にNeve Campbellの登場にびっくりします。彼は予定より一日早くMatt Dillonのビーチハウスに着いたわけですから、家の中でNeve Campbellとバッタリ出会うか、彼女の持ち物や衣装・化粧品などを目にしてもいい筈です。Neve Campbellだけヨットに寝泊まりしているというのはちと不自然です。彼女がヨットに乗り込んでいるのを、外洋に出るまで気づかないというのもかなり妙です。
・Neve CampbellがなぜKevin Baconを怨んでいるかは台詞で説明されるだけで、全く説得力がありません。本当は映画が始まる前に三人の前史を点描しておくという手があったと思います。Matt Dillonは妻の散財で苦しんでいる、Neve Campbellはセミノール・インディアンの友達をKevin Baconに殺され、しかも自分が罪をなすりつけられて刑務所に入れられたことを怨んでいる、Denise Richardsは贅沢したいのに信託財産に手を出せない等々。いずれにせよ、Neve CampbellがKevin Baconを殺したい理由は分りました。しかし、何故彼女がMatt Dillonまで殺したがったのかはよく分りません。
・弁護士Bill MurrayがNeve Campbellに大金を届けに来ます。金はMatt Dillonの口座に入っていた筈なのに、一介の弁護士が他人の口座から金を下ろせるものでしょうか?
・Bill Murrayは死んだと思われていたNeve Campbellを見ても平然としていますが、いつ彼女に雇われたのでしょう?

この映画を観終わった後、私には上のような数々の疑問点が残りました。相当多いと云わねばなりません。そして、その大半はKevin Baconにまつわるものです。製作者Kevin Baconはその辺の弱点について気づかなかったのでしょうか?

ここで、DVDのコメンタリーを聴いてみることにしました。監督だけならいいのですが、音楽担当の男性と編集担当の女性も加わっているという、ちとウザいコメンタリーです。がっかりしたことに、上の疑問のどれ一つとして解明されませんでした。

なお、この作品でも“映画慣れ”した観客の鑑賞眼を見損なっている点があります。われわれは映像として人が死ぬ場面を見なければ、たとえ凶器が振りかざされ被害者が喚こうとも、その人物は死んではいないという例を嫌になるほど観て来ています。現場が血の海であっても息をしない死体がなければ、殺人は行なわれていません。火事で黒焦げの死体が見つかれば、それは身代わりにされた哀れな浮浪者の死体なのです。この映画ではMatt DillonがNeve Campbellを殺したように見せるシーンと、あたかも湿地に彼女の死体を埋めたような風で戻って来るシーンがあります。これらが眉唾であると思わない映画ファンがいるでしょうか?

'Wild Things'という題名通り、'Everglades'国立公園の野生生物が沢山登場します。特に鰐の恐さが強調されています。ポスターの水面から顔を出している二人の娘は、よく見ると鰐の二つの目のように見えます。野生の鰐よりも恐いのは人間であり、その中でも女性が最も恐い存在であるという暗示でしょうか:-)。

【極秘情報】ベッド・シーンにおけるDenise Richardsの胸部も見ものですが、アメリカ版(私が観たのはスタンダード・サイズ)ではシャワー・シーンにおいてKevin Baconも見事なものを誇示しています。製作者として話題を作ろうと思ったからでしょうか?単に自慢したかっただけでしょうか?日本版では暈かされているかも知れませんが。

(March 10, 2007)





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