[Poison] Thelma & Louise
『テルマ&ルイーズ』

【Part 2】

Susan Sarandonは何故かテキサス州を毛嫌いし、足を踏み入れようとしません。メキシコへ向うならテキサス経由が早道なのに、何故かオクラホマ、コロラド、ニューメキシコと大迂回します。何かテキサスで悪いことをした過去があるのかも知れません。彼女は真相を洩らさず、Geena Davisも追及を諦めます。

Susan Sarandonはかなり女性蔑視の言葉に敏感です。過剰反応と云ってもいいでしょう。ホンキイ・トンクの男を射殺したのもそうなら、ガソリン輸送のタンク・ローリィの運転手の下卑た呼びかけに対し謝らせようと試みるのも同じ趣旨です。彼女は女性をセックスの対象、道具としてしか考えない男どもが我慢ならないのです。多分、テキサスでも過剰反応で事件を起し、その時は大目に見て貰ったのではないでしょうか?しかし、二度とテキサス州には足を踏み入れられないと誓ったとか。

おかげで、我々はコロラド州やユタ州の美しい景観を見ることが出来ます。脚本の上手さです。

「Geena Davisが次第に逞しく行動的になって行く」と書きましたが、スピード違反でパトロールの警官に捕まり、免許証のSusan Sarandonの氏名を本部に通報されそうになった時、Geena Davisが警官をホールド・アップします。彼女は「彼のピストルを奪って!」とSusan Sarandonに指示し、ついで「ラジオを撃つのよ!」と云います。Susan Sarandonはパトカーのラジオを破壊しますが、それはAM、FMのラジオです。Geena Davisは微動もせず「警察無線だわよ」と付け加えます。ここで「馬鹿ね」と云わなかったのは、彼等の仲間意識を表しています。Susan Sarandonは(そっか!)という思い入れで警察無線に弾丸を撃ち込みます。ユーモラスで、しかも二人の立場の逆転をうまく表現しています。

Harvey Keitelはアーカンソーの刑事だと思われますが、オクラホマ・シティまで捜査に行き、またアーカンソーに取って返しGeena Davis宅で電話を待ったりします。非常に短時間に行ったり来たりするのがちと異常です。

主役二人の女優の演技は非常に見応えがあります。Geena Davis演ずる主婦にとっては、これは日常を逃れる一寸したヴァケーションだった筈ですが、とんでもない破天荒なヴァケーションに変貌します。二人ともそれを実感し、笑うしかありません。Geena Davisは強盗やタンク・ローリィ爆破が楽しくなってしまいます。そのままメキシコに逃げられればよかったのでしょうが…。

いずれにせよ、アメリカの良識(あるいはハリウッドの良識)は彼等をメキシコに送り届け、のうのうと暮させるわけにはいかなかった。'Bonny and Clyde'を殺し、'Butch Cassidy and the Sandance Kid'を殺したように、'Thelma & Louise'を殺さなくてはならなかった。

最後に死へのジャンプを示唆するのもGeena Davisです。彼女は当初強姦されそうになった被害者であり、逃亡しなければならない理由はありませんでした。下らない夫との日常に戻りたくない思いが、Susan Sarandonとのメキシコ行きを決意させます。犯罪を重ねるに連れ、彼女の有罪は確定的となって行き、しかも彼女は結婚生活より退屈な刑務所生活などまっぴらだった。この数日で、彼女は十分に生きた。彼女はSusan Sarandonに「前進」を命じ、Susan Sarandonもそれに応じます。「二人で死ねば恐くない」ということでしょうか。

この映画のDVDには監督が当初考えていたエンディングが収録されていて、それは二人を乗せた車が谷底に激突し、大破するというシーンだそうです。これはあまりに酷いということで、空中でのストップ・モーションに変更されたとか。これも'Butch Cassidy and the Sandance Kid'と同じですね。

(January 06, 2002)





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