[Poison] The War
『8月のメモワール』

【Part 2】

この映画は娘のナレーションで始まります。"Mah name's Lidia Simmons, an' Ah'm 12 yeahs ol'. An' these here're mah memoirs." 私の出身地の茨城弁ですと「あだしの名はリディア・シモンズ。んで、12歳になんだわ。これがら思い出話すっがらな」。博多弁だと「あたきの名はリディア・シモンズたい。12歳になるとよ。思い出話ばするけん、聞いてつかあさい」という感じ。南部訛りでこういう風に始まるのは"Mah name's Forrest Gump. People call me Forrest Gump."そっくりです。

大人の戦争、子供の戦争を並列するという着想は素晴らしいのですが、子供の戦争が過剰に描写されているため、嘘っぽくていけません。迷彩服を着たり顔を黒く塗ったり、バンダナをしたり、ヴィエトナムにおける米兵そっくりです。火炎瓶を投げあって砦に火を点けてしまいますし、敵は親のブルドーザーまで運転して小屋を倒壊させようとします。銃を持ち出さなかったのがせめてもで、これでは死人・怪我人が出ないのが不思議なくらいです。

木の上の砦というのは、いつの時代でも子供の夢だと思いますし、この映画の樫の木に作られた小屋は最高に魅力的です。これで子供の戦争がもっと原始的で微笑ましいようなものなら良かったのですが、ああまで危険と紙一重ではとても笑っていられません。

子供達の度胸試しの場としてオンボロ給水塔が登場します。これも珍しい趣向ですが、いかんせん子供には危険過ぎるし、狭い水桶の中のアクションなのでスケールが小さいのです。それを二度も出すというのは感心出来ません。アイデア不足です。

クレディット・タイトルではKevin Costnerがトップではなく、Elijah Woodになっています。多分、少年・少女観客を多数動員しようという魂胆だったのでしょう。子供達の“戦争”をスケール・アップしたのも、同じように少年・少女観客への媚びだったのではないでしょうか?

立派な父、勇敢な息子、利発な娘、郷愁を誘う背景、田舎の暮し…と、'To Kill a Mockingbird'『アラバマ物語』に共通する要素を沢山持ちながら、残念ながらこちらは“名作”になれない出来栄えに終っています。'Fried Green Tomatoes'『フライド・グリーン・トマト』(1991) の監督というので期待したのですが、がっかりでした。

(June 01, 2001)





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