[Poison]

The Badge

『ジャスティス』

【Part 2】

Sela Wardはミシシッピ州の生まれというだけではなく、実は私が住んでいるMeridian(メリディアン)という町の生まれです。彼女は映画俳優というより長くTVドラマに出ている人気女優で、町には彼女の名を冠した通りまであります。彼女も町の子供の施設の募金に協力したり、オペラハウス再建などの大きな催しには帰って来て募金に一役買ったりしています。最近、半生を語る思い出話の本を出版しました。

Billy Bob Thorntonはドライヴ中に車を停めて、道路横断中の陸亀を道端に送り届けます。私の町にも陸亀は一杯いまして、私も二度ほど助けたことがあります。家の庭に入って来たのを見かけたこともあります。

私はゲイやホモの世界とは無縁なので、この映画のBilly Bob Thornton同様、同性愛者への偏見というか嫌悪感というか、薄汚いものを見るような感じを抱くのを否定出来ません。そういう異常な世界を描くのにはニュー・オーリンズは相応しいし、それに影響されたイカレポンチの若者がいるルイジアナ郡部というのもうまい設定です。しかし、私は映画の最後のBilly Bob Thorntonのようにゲイやホモに暖かい目を注ぐようにはなれませんでした。

この映画の製作・配給会社は'Monster's Ball'と同じなんです。Billy Bob Thorntonは'Monster's Ball'への御礼に出演したんでしょうか。なお、IMDbでは、これはTV映画として分類されていますが、DVDは上下を黒くした横長画面になっています。劇場用映画の間違いではないか?と思うんですがねえ。

Billy Bob Thorntonは蛇革のブーツかなんかで登場するんで、マッチョなレッドネックの役かと思うとそれほどでもありません。トラックの積み荷を住民に上げちゃうなんて、幌馬車を襲ったインディアンみたい。信じられない行動です。酔っ払いの娘を家に泊めるなんてのも、馬鹿げた行動です。「李下に冠を正さず」と云うではありませんか。疑われるだけでも職業的生命の危機でしょう。

原題が'The Badge'ですから、Billy Bob Thorntonが誇りと意地で保安官のバッジを守る闘いをするのかと思いますが、彼に誇りなんてものがあるようには見えず、単に仕返しをしたいというだけに感じられます。バッジは深い意味を与えられていません。

この物語の時期はクリスマス前後となっていますが、「ジングルベル」の音楽が聞かれるだけで、クリスマスは一切物語に関わって来ません。音楽と云えば、Patricia Arquetteの歌はひどい。吹き替えにすべきでした。

“'Monster's Ball'の変化球”と云ったのは、'Monster's Ball'ではBilly Bob ThorntonがHalle Berry(ハリー・ベリー)を騙す(というか真実を云わない)のですが、この映画ではPatricia Arquetteに騙されます。Patricia Arquetteは彼を利用するわけです。また、Billy Bob Thorntonにやや気が変な父親がいるのも似ています。ここでは親子二代シェリフ、'Monster's Ball'では親子三代刑務所の看守です。

しかし、女(実は男)を殺した真犯人は面白くも何ともないですね。意外性は皆無で「ああそうなの?」という感じ。

ワンカットを刻んで人間の行動がスキップするような編集がところどころにありますが、これも思いつきのお遊びでやっているという感じで、納得出来ません。可笑しいのは誰かが電話すると電線をクィック・パンするシーン。こういうのは初めて見ました。しかし、電線と電話線は違うのですがねえ。

(November 05, 2003)





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