公開：2003
監督：Jonathan Lynn
地域：ジョージア州
出演：Cuba Gooding Jr.、Beyoncé、Shirley Caesar、LaTanya Washington、Wendell Pierceほか
範疇：ドラマ、コメディ、聖歌隊、ゴスペル、音楽映画

私の評価 ：☆☆1/2

【Part 1】

原題"Fighting Temptations"（誘惑に抗して）は、聖歌隊のグループ名。この映画の製作にはMTVが参加しています。

1980年。ジョージア州の町Monte Carlo（モンテカーロ、架空の町）。聖歌隊の一員である若い未亡人Faith Evans（フェイス・エヴァンズ）は「セクシーな歌を吹き込んだテープを発売した」という理由で教会役員から非難され、息子と共に町を去る。彼女はナイトクラブで歌う機会を見つけながら、旅から旅への生活で息子を養う。

その母親は亡くなり、成長した息子Cuba Gooding Jr.（チューバ・グッディング二世）はニューヨークの広告代理店で活躍していた。ある提案会議で彼のアイデアはスポンサーや社長に気に入られ、彼は重役待遇を約束される。

しかし、彼がエール大学を卒業したという学歴詐称が社長にばれ、突如解雇通知を受ける。Cuba Gooding Jr.は慢性金欠で、何枚も持っているクレディット・カードも半分以上は使用拒否されるありさまだった。そこへ、唯一の親戚である叔母さんが亡くなったという知らせで、彼は急遽故郷に帰ることになる（この時の列車の航空撮影が美しい）。

叔母さんはCuba Gooding Jr.に$150,000という遺産を残すが、それは彼が聖歌隊の音楽監督になるなら…という条件付きだった。牧師は数ヶ月後に迫る'Gospel Explosion'（ゴスペルの爆発）というゴスペル音楽祭の賞金を得て、教会の修復費用にあてたいと願っていた。Cuba Gooding Jr.は「実はニューヨークでは音楽関係のプロデューサーをやっている」と嘘をつき、遺産と賞金を得たらトンズラしようと算段する。

ところが、現在の聖歌隊にはホンの数名の男女しか在籍せず、メンバーを増やさなくてはならない。ポスターを貼ったり、ラジオ放送で呼びかけたりしてメンバーを募集する。おいおいにメンバーは増えるが、決め球がない。折しもナイトクラブで歌う幼馴染みのBeyoncé（ビヨンセ）に一目惚れ。しかし、彼女はCuba Gooding Jr.の母と同じように俗っぽい歌を歌うので聖歌隊から追放された過去があった。しかも彼女は幼い男の子までいるというシングル・マザー。彼女を聖歌隊に呼び戻し、ついでに彼女の心も射止めたい。さあ、どうする？

私には'Chicago'『シカゴ』(2002)の成功に触発された後追い企画のような気がします。ミュージカルではありませんが、音楽映画であるとは云えましょう。で、音楽映画が通例そうであるように、ストーリィは大したものではありません。普通の映画として評価したら、この映画は星一つです。

しかし、音楽を楽しむ映画として観ればこれはなかなかいいです。最初のカットは、高所から教会を見下ろし、カメラが静かにクレーンダウンしてその玄関の階段に座っている男の子と女の子のフル・ショットになります。羽根こそ飛んでいませんが、'Forrest Gump'『フォレスト・ガンプ／一期一会』(1994)そっくり。いい滑り出し。その後、教会内でのゴスペル音楽に圧倒されます。女性歌手二人の歌が素晴らしい。ここでのカット割りと撮影、編集も絶妙で、「これは掘り出し物だ！」と思わされます。

BeyoncéはCuba Gooding Jr.と“幼馴染み”というには若過ぎますが、魅力的な顔立ち、独特の小節を使う歌唱が印象的です。Cuba Gooding Jr.は'Jerry Maguire'『ザ・エージェント』(1996)では破天荒な芝居で世界中をあっと云わせましたが、その後はへらへらした役か共演者に圧倒されるような線の細い芝居ばかりでがっかりでした。ここでも、若干へらへら加減はありますが、まあ許せる範囲。

そのほか、歌う床屋三人組、手足を鎖で繋がれ銃を持った看守に監視されながらラップを歌う囚人三人組などがユニークで面白い。

映画全体を「掘り出し物」とは申しませんが、音楽だけに限って云えばかなり楽しめます。

(October 07, 2003)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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