[Poison]

Rose Tattoo

『バラの刺青』

【Part 2】

「Burt Lancasterは底抜けに明るい素朴な男を演じる」と書きましたが、どうもこの俳優はいつもクセのある役をやって来ただけに、「底抜けに明るく」見えず、いつか未亡人を騙すのではないか、いつか暴力的な男の正体を現わすのではないかと心配してしまう難点があります。しかも、彼のイタリア語や饒舌な台詞は、どうも似合いません。無理してイタリア人風にしている感じです。彼はミス・キャストではないでしょうか?

私はこのイタリア人コミュニティの人々が嫌いです。誰もが云いたいことをがなり立て、人の云うことを聞きません。Anna Magnaniも娘も我が侭です。特に、娘は自分で稼いでもいないクセに母親と対等のように振舞っていて、こういう娘こそ「吐き気」がします。

『欲望という名の電車』が主役のBlanche DuBois(ブランシュ・デュボア)を演じる女優の独壇場であるように、この『バラの刺青』は母親の役が主役です。彼女の堅い心がとろけ出すところが見せ場でしょう。そういう名演技を観たい向きには、どちらも満足出来る戯曲・映画なのでしょうが、物語として考えた場合、「で、何が云いたいワケ?」と聞きたくなってしまいます。イタリア系移民の男女交際に関する厳格な風習や、愛する夫を失った場合の嘆き、長い服喪などは珍しいものですが、映画が終ってみると、どうでもいいようなことをゴテゴテ、騒々しく飾りたてただけで、実は大したことが何も起っていなかったことに気付きます。まあ、映画には人生のさりげない一場面をスケッチするという機能もあるのですが、私にはこのような映画は物足りません。私がTennessee Williamsが嫌いなだけでしょうか?

(April 11, 2001)





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