[Poison]

Hard Target

『ハード・ターゲット』

【Part 2】

実は、これは数ヶ月前に観たのですが、あまりにも単純なストーリィ、'Broken Arrow'とは較べものにならない演出、魅力に乏しい主演陣…などの理由でリヴューを書くに値しないと判断したのでした。しかし、“南部もの”も150本を越えて来ると、編者の偏執狂的情熱が「捨てるよりは含める」方向に傾斜し始め、本作も目出度く(?)採録されることになったのです。

私はタフガイは嫌いではありませんが、Jean-Claude Van Dammeのような無表情な演技は評価しません。演技力の無さをクールな無表情で胡麻かしているように思えます。ですから、この人の主演映画はほとんど観ていません。というか、マーシャル・アーツ映画そのものに関心がないので、この人ばかりでなくChuck Norris(チャック・ノリス)やJackie Chan(ジャッキー・チェン)、Jet Li(ジェット・リー)などの映画もほとんど観てないのです。本作も“南部もの”に入らなかったら、多分生涯観なかったことでしょう。

この'Hard Target'の難産の模様を記したいくつかのリポートを読みました。MPAA(アメリカ映画協会)にフィルムを提出したところ、あまりにも残酷なシーンがあるということで、NC-17(17歳以下は入場禁止)に指定されたそうです。アメリカの映画館では一つ一つの映画につきPG-13(13歳以下の場合保護者の同意が必要)とか、R(17歳未満は保護者同伴が必要)などの表示をします。このレーティングが無いと通常の劇場公開は出来なくなります。NC-17はX指定(成人映画で未成年者の入場は一切禁止)に匹敵する扱い。仕方なくJohn Wooは暴力的シーンを削って再度お伺いを立てましたが、まだ駄目。遂に配給会社のユニヴァーサルが暴力シーンとセックス・シーンを目一杯削ってやっと公開に漕ぎ着けたそうです。

「あれ、セックス・シーンなんてあったっけ?」と云う方は鋭い。劇場公開版ではJean-Claude Van DammeとYancy Butlerの間には何も無かったようですが、実はベッドを共にしていたらしいのです。この映画の荒編集版というのが闇で出廻っているそうで、それは劇場公開版より20分も長く、ベッド・シーンもあるのだそうです。もっとも、多いのは暴力的シーンとのこと。人間狩りのターゲットを見つける口入れ屋の親父がLance Henriksenから脅迫される場面がありますが、荒編集版では殺し屋Arnold Voslooによって鋏で耳たぶを切られるところがアップで出て来るそうです。恐ろしい。私はこういうのは見たくありません。

後半で廃工場が出て来ます。Mardi Gras(マルディ・グラ)の装飾の巨大なハリボテが沢山置いてあります。そのハリボテがかなり年代物であるところがリアルさを醸し出しています。

Jean-Claude Van Dammeの叔父さんの助けで、三人は馬に乗って追っ手を躱そうとします。しかし、船員のJean-Claude Van Dammeがああも乗馬が巧いというのは凄い。まあ、彼は叔父さんのところで何度も乗ったことがあるのでしょう。ところで、Yancy Butlerも手綱捌きがいいようですが、彼女はどこで乗馬を覚えたのでしょう?

ダラけた音楽が興を削ぎます。

(July 03, 2002)





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