[Poison] The Long, Hot Summer
『長く熱い夜』

【Part 2】

Orson WellesにJoanne Woodwardが云います、「あなたに女のことなんか分るもんですか!」彼は「俺にはベストの女性がいたんだよ(彼の妻、Joanne Woodwardの母のこと)。こんな醜い太っチョの"redneck"を愛してくれたんだ」と答えます。彼は自らを"redneck"(無教養な田舎者、南部の貧乏白人)と云っています。親から引き継いだ地主ではなく、こつこつ汗水流して金持ちに成り上がったようです。だからこそ、その土地、財産を引き継いでくれる孫が欲しいわけです。

しかし、いくら"redneck"でも娘を子孫製造機、男を“種馬”としてしか考えていないというのはひどい話です。

役者たちはそれぞれ南部訛りをうまく喋っています。特にLee Remickの喋り方は私が現にミシシッピ州で耳にするトーンにそっくりです。こういう映画の場合、必ず方言指導の係が雇われることになっています。役者一人に付き一人の方言指導の係が付くわけではなく、たった一人で全員をカヴァーするようです。となると、自然に聞こえるかどうかは、役者の資質ということになります。

Joanne Woodwardは、ずっと慕っていた男の気持ちを確かめます。彼の答えは「クララ、私は君を助けたい」というもので、「君を愛している」という言葉ではありませんでした。"That's a pitiful answer."(それは哀れな返事だわ)を繰り返すクララ。ここではJoanne Woodwardがいい芝居を見せてくれます。

無視された息子Anthony Franciosaは怒りと嫉妬に狂い、父を厩舎に閉じ込め、焼き殺そうとします。気の弱い彼は父を見殺しに出来ず、ドアを開けます。親父は怒って勘当するか息子を殴り飛ばすかすると思いきや、息子を抱擁します。自分を殺そうとしたのも、一つの行動力と見たのか、息子を傷つけていたことに気付いたのか、どっちにしてもリアリティがありません。映画の冒頭で見せた納屋の火事に対応させただけという、あまり意味の無い火事だったことになります。

意味の無い火事でしたが、火事に関連した自分の父のことを語るPaul Newmanも、ここでいい芝居をします。

昔の映画だとはいえ、Orson WellesやPaul Newmanの煙草を吸う頻度には呆れます。私は一年かかって禁煙に成功したのですが、この映画を観ていたら又吸いたくなってしまいました。危ない映画です:-)。

撮影には文句があります。いくら題名が"Hot Summer"(暑い夏)だからといって、ギンギラギンに照明を当てすぎています。Joanne Woodwardが眩しそうに目を細めたり、辛そうな表情を見せているのは、照明(レフ)が熱いからです。黒澤 明監督のように光と影で暑さを表現するという手法を知らなかったんですね。

Orson Wellesは、まるで黒人の血が混じっているような黒っぽいメークを施されています。日焼けした"redneck"上がりだとはいえ、ちと黒過ぎます。シーンや照明によって、その黒さが変わるのも気になるところ。Orson Wellesを初め役者のギャラが高いので、撮影監督やメーキャップ係を安いランクにしたのでしょうか。まさかねえ。

(March 22, 2001)





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