[Poison] Sling Blade
『スリング・ブレイド』

【Part 2】

施設で聖書を読むことを覚えたため、Karlは洗礼を受けたがります。洗礼を受けた後で少年の母親のボーイ・フレンドを殺します。何とも皮肉な順序です。「そんな刃物を持って何をしようってんだ?」「あんたを殺すんだ、ウムム」「俺を殺したら119に電話しろよ」とかいうやり取りの後、Karlは無造作にスリング・ブレイドを男に振り下ろします。何度も…。そして119番に電話し、彼の大好きなビスケットをゆっくりと食べ始めます。

アメリカで云うビスケットは、日本の薄いものとは違います。薄い、小さいのは全部クッキーで、アメリカのビスケットは「小型のパン」に近いものです。英和辞典には「柔らかな菓子パン」と出ていますが、食事の際にも出るので「菓子パン」とは限りません。

Karlは親切な女性と、その息子Lucas Blackを愛しているので、彼等に迷惑を与える男を“排除”したわけです。頭が悪いわけではないので、殺人によってまた施設に戻ることは覚悟しています。そのため、娑婆で最後のビスケットを大事に味わったのでしょう。しかし、夜中に女性の部屋を訪れた時、ボーイフレンドと彼女が愛し合っていた姿を彼は見ているのです。この女性は、粗暴な時の男は嫌いだが、男とのセックスには未練があるのです。そういう彼女にとって、Karlの“サーヴィス”はどうだったのでしょうか?Karlによる二度目の殺人のリアクションは全く出て来ず、何とも伺い知れません。

Billy Bob Thorntonの熱演はいいのですが、監督・主演ということで自由に映像のモンタージュが考えられなかったのか、長廻し、フィックスのワンカットが多く、息が詰まります。ほとんど舞台を撮った映像を見てる感じ。もともと知恵遅れの男のクセのある仕草、喋り方が見てて辛いのに、さらに長廻し、フィックスで見せられるのはたまったものではありません。

Billy Bob Thorntonがアーカンソー生まれなので、この映画もアーカンソー州で撮影されました。クレディット・タイトルのSpecial Thanksの最初の“団体”は全てThorntonが付く名前ばかり。彼の親戚一同が揃って協力したようです。次いで二行に分けてズラズラ表示される名前も、みな彼の友人、知人のようです。

(March 13, 2001)





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