[Poison] Cabin in the Sky
『キャビン イン ザ スカイ』

【Part 2】

私が観たのはTurner Classic MoviesというCATVによる放送の白黒版ですが、劇場公開版はセピアでプリントされていたそうです。プロデューサーArthur Freedと監督Vincente Minnelliが試写を観ていて、どちらからともなくセピアにする案が出て、テスト焼きをしたところ黒人たちの肌色がフラットになってとても良く、その方式で公開されたとか。

歌の中にはRogers & Hummerstein(ロジャース&ハマースタイン)風のものもあったりして、今でも充分聞き応えがあります。後半のダンス・ナンバーは(クレディットされていないものの)Busby Berkeley(バスビィ・バークリィ)の振り付けで、これも'West Side Story'『ウエストサイド物語』の群舞に通じるモダンさがあります。

Lena Horneは可哀想な人で、その美貌ゆえに召使や汚れ役には向かなかった。で、彼女の登場する場面は本筋に関係ない独立した場面として撮影されることが多かったそうです。何故かというと、当時の南部はまだまだ黒人蔑視で、彼女のような美しい黒人という存在を嫌っていた。主役がからまない独立した場面なら、苦情が出たらすぐカット出来る…という理由だったそうです。

この映画の撮影中、Ethel WatersとLena Horneの反目をはじめ、他の俳優間でもお互いの中傷が耐えず、よくまあ映画が完成したものだと云われました。バー「パラダイス」でLena Horneが歌いEthel Watersが踊るシーンは、本来役目は逆だったそうです。ところがLena Horneが足首を捻挫して踊れなくなったため、役目をスウィッチせざるを得なくなりました。道理で、Ethel Watersの体型はちょっと踊るには無理があるなあと思っておりました。

そのEthel Watersの踊りはヤクザの一人(Eddie Andersonを撃った男)とのデュエットで、それがEddie Andersonの心をかきむしって真実の愛に目覚めさせるという筋書きになっています。Ethel Watersの踊りに無理はありますが、まあLena Horneのトラブルをうまく回避した設定と云えるでしょう。

クライマックスで大竜巻が襲来し、「パラダイス」は壊れ始めます。Lena Horneがこちらへ駆けて来る背後で、二度も天井が落下するのが凄まじい。昔ですからCGではなく、本当に巨大なガラクタを落としているのです。スクリーン・プロセスならいいのですが、Lena Horneの安全が気になる瞬間でした。

Ethel WatersとEddie Andersonは共にピストルで撃たれ、天国への階段を昇って行くことになりますが、それでもまだ終わりにならないというのもうまく出来ています。

(May 14, 2003)





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