[Poison] Show Boat
『ショウ・ボート』

【Part 2】

Ava Gardnerの美しさが最高です。彼女が演じる役は、人のいい、悲しい存在です。黒人の血が混じっているとして一座を去り、シカゴでアル中の歌手となっていたところへ、妹のように可愛がっていたMagnoliaが歌手になるべくオーディションに現われます。自分が身を引けばMagnoliaが職にありつけるだろうと、Ava Gardnerは突然姿を消します。ミシシッピに戻って来たHoward Keelに、彼がまだ見ぬ娘がショウ・ボートでデビューすることを教えるのも彼女です。MagnoliaとHoward Keelの再会、ハッピーエンドを人知れず見送るAva Gardnerの姿は泣かせます。

しかし、Ava Gardnerの好演を除けば、実は1936年版の映画が最高であるとする意見があります。私は未見なので何とも云えませんが、1936年版のラストは1951年版(本作)とは違うそうです。

また、1936年版はPaul Robeson(ポール・ロブスン)が'Ol' Man River'を歌っていて、その名唱はつとに有名です。こちらの'Ol' Man River'も歌は悪くありませんが、朝霧を人工的に作るスモークのたき過ぎで、画面がほぼ真っ白け。これは頂けません。

この映画はテクニカラーだそうですが、私が観たヴィデオ版ではショーの衣装のカラー・コーディネートが下品で、見るに耐えません。衣装デザインも良くない。

シカゴで主人公二人が暮すことになりますが、一座は彼等の穴をどうやって埋めたのか?その辺の顛末は全く触れられていません。いきなり高級ホテルで暮してギャンブルに明け暮れます。この間、主題のショウ・ボートはずっと忘れ去られたままです。

うぶで可憐な娘とやくざな男というと、'Carousel'『回転木馬』の組み合わせに似ています。こちらには思わせぶりな幻想のダンスはないので一安心。私は、あの俳優とバレエ・ダンサーをすり替える幻想シーンが嫌いなのです。舞台ではいいでしょうが、映画には相応しくありません。『回転木馬』では、死んでしまった男が後で生まれた自分の娘に会いに天国からやって来ます。この『ショウ・ボート』では男は生きていて、家族が一緒に暮すことになることを暗示して終ります。男がギャンブルから足を洗ったという保証はないので、完全なハッピー・エンドとは云えません。娘の幸せを祈りつつ、天国へ帰って行く男の悲しさの方が数段上ですね。

なお、アメリカ各州には州花がありますが、ミシシッピの州花は"magnolia"(モクレン)です。晩冬から初春にかけて、至るところで白い"magnolia"が咲き乱れます。この映画の女主人公の名がMagnoliaなのは偶然ではありません。"Japanese magnolia"(日本モクレン)と呼ばれる薄紫の種類もポピュラーです。

(March 1, 2001)





Copyright ©  2001-2011   高野英二  (Studio BE)
Address: Eiji Takano, 421 Willow Ridge Drive #26, Meridian, MS 39301, U.S.A.