[Poison] Casey's Shadow
『すばらしき仲間たち』

【Part 2】

最大の難点は先が読めてしまうシナリオです。馬は優勝するだろうし、怪我がぶり返すだろうし、薬殺を宣告されるだろうし、子供たちは父親を責めて去って行くだろうし、父親は馬を再起させる決意をするだろうし、子供たちも戻って来るだろう。全て世は事も無し。時折、いい台詞もあるものの、あまりにも芸の無い脚本で驚いてしまいます。

原作はレース開催地Ruidoso Downsを題材にした短編小説だそうですから、物語のほとんどは脚本家の腕にかかっていたわけです。ストーリィを捻り出すのは大変だったでしょうが、こんな先の読めるお話なら誰にでも書けると思わせてしまうのは失敗です。

もう一つの難点は、序盤だけが末っ子Michael Hersheweの愛馬物語になっているだけで、馬がレースに出るようになる途中から以降はこの子の出番がほとんどないことです。馬を売る・売らないはWalter Matthauと長男Andrew Rubinのドラマですし、自分の名をレコード・ブックに残すという無名の調教師に訪れた唯一のチャンスに関する葛藤はWalter Matthau一人のものです。つまり、前半と後半で別々のお話になっている印象を与えます。

この映画の原題から推察して、生まれた仔馬は末っ子(役名はCasey)の後をトコトコとついて廻る可愛い性癖があったのでしょう。だから、'Casey's Shadow'(Caseyの影)と名付けられたのだと思います。しかし、映画にはそういうシーンはなく、命名の由来も説明されません。

素晴らしい馬'Casey's Shadow'の出現で自分の立場が危うくなった調教師Robert Webberは、'Casey's Shadow'に毒物を与えるという卑怯な手段に出ます。イギリスの競馬ミステリ作家Dick Francis(ディック・フランシス)の作品には、よくこういう残虐な犯行が出て来ますが、イギリスでは陰惨な行為が結構多いのだろうと思っていました。しかし、アメリカでもこんなことが起り得るとは!Walter Matthauは証拠もなしにRobert Webberを殴りつけますが、どうもここのところは釈然としません。その後、何も知らないRobert Webberの娘は'Casey's Shadow'の優勝を素直に喜ぶのですが、父の犯罪を知ったら…と思うと可哀想です。毒物を用いるというドラマチックな要素が、本当に必要だったのか?とも思います。

(May 22, 2007)





Copyright © 2001-2011    高野英二   (Studio BE)
Address: Eiji Takano, 421 Willow Ridge Drive #26, Meridian, MS 39301, U.S.A.