【Part 2】
田舎町なのに、出て来る御婦人たちがみな貴婦人のような凄いヘアスタイルをしています。まるで毎日美容院へ行っているみたいに。これはヘア・デザイナーのやり過ぎだと思います。おかげでリアリティが無くなってしまいました。
リアリティと云えば、祈祷師Maya Angelouのあしらいだって変です。最初は森から出て来るし、白いターバンみたいな帽子に白い衣ということもあって“森の精”か何かかと思ってしまいました。しかし、只の祈祷師と分ってみると、何故人々が彼女を恐れて逃げ廻るのか不思議です。さらにこの祈祷師は裁判を傍聴に行くのですが、この時は誰も彼女を恐れたりせず、まるで彼女を一般市民のように受け入れ、平然と一緒に座っています。
冒頭の二人の少年たちの“冒険旅行”もおかしい。一晩だけということで親の了解を得たのかも知れませんが、黒人の少年だけクラッカーを持って来るものの、白人少年は何も持って来ません。ところが、“冒険旅行”を延長して川を下ってどっかの町へ行こうと主張するのは、その白人少年なのです。育ち盛りの少年が夜、朝と何も食べず、しかも遠くへ行こうなどと云うものでしょうか?私にはこの脚本家がそんなことには目をつぶって、ひたすら少年たちに人骨を発見させようとしただけに思えます。
また、ボートが引っ繰り返って頭を打った黒人少年は、その後昏睡状態に陥りますが、それが物語に何の影響も及ぼさず、ある日突然意識が戻るだけというお粗末さです。
人種差別主義者Cliff De Youngが撃たれる場面は、急にカメラが現場を離れてしまい、「黒人少年が撃ったように思わせる」という手法が取られています。これはペテンであり、この事件によってこの後長い裁判になるわけですが、何故黒人少年が即刻真犯人を指摘しなかったのか理解出来ません。
まだ公民権運動などが始まる以前、どれだけ黒人が蔑視され、非人間的に扱われていたかという部分は、黒人側に立ってよく描かれています。真面目な映画なのですが、テーマはいいとしても物語の進め方が安易なのが残念です。
(July 25, 2003)