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Roots

『ROOTS/ルーツ』

[DVD]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema ONLINE」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1977
監督:Marvin J. Chomskyほか
地域:ヴァージニア州、ノース・キャロライナ州
出演:LeVar Burton、John Amos、Louis Gossett Jr.、Leslie Uggams、Ben Vereenほか
範疇:TVミニ・シリーズ/原作もの/実話の映画化/ドラマ/人種差別/奴隷

私の評価 :☆☆☆☆

【Part 1】

Alex Haley(アレックス・ヘイリィ)が12年かけて七代にわたる家系を調査し小説にしたもののTV映画化。制作に二年かかったそうです。有名なヴェテラン俳優、新人俳優たちが綺羅星のように勢揃いし、それぞれが熱演しています。IMDbでは720分、日本語版ヴィデオは565分となっています。英語版DVDでは3枚両面計573分(9時間半)でしたが、興味深くドラマティックなお話なので、私は二日で観終えてしまいました。

【第一部】1750年、西アフリカのガンビア。マンディンカ族の一組の夫婦に赤ん坊が生まれようとしていた。妻Cicely Tyson(シシリー・タイソン)の産みの苦しみを、夫Thalmus Rasulala(タルマス・ラスラーラ)が落ち着かない思いで聞いている。玉のような男の子が生まれた。Thalmus Rasulalaは満天の星空に赤子を高く差し上げて、健やかな成長を祈り、息子をKunta Kinte(クンタ・キンテ)と名付ける。

1765年(15年後)。メリーランド州アナポリスから一艘の奴隷船が出帆する。この船には200人の奴隷を収容出来るスペースがあった。しかし、人を捕らえて売り捌くという行為に懐疑的な船長Edward Asner(エドワード・アズナー)は、最少限の170人にするつもりだった。副船長のRalph Waite(ラルフ・ウェイト)は「アラーの国からクリスチャンの国に連れて来るんですから、これは功徳(くどく)ってもんでさあ。共食いの餌食にならずに済むわけだし」と云う。

Levar Burton(レヴァー・バートン)演ずるKunta Kinteは立派に成長していた。今日は少年たちが戦士となる成人式の日で、同年代の少年十人ほどが目隠しをされ、森の奥に住む隠者のところに連れて行かれる。レスラーとの格闘技で勇敢さと逞しさをチェックされ、鳥を生け捕りにするテストで賢さと機敏さを試される。これに合格しないと結婚を許されないので、マンディンカ族は自然に勇敢な戦士の血筋だけが残る仕組みになっていた。

Kunta Kinteが鳥を生け捕りにしようとしている最中、捕らえられ縛られて海岸へ連れて行かれる黒人達を目撃する。遂にKunta Kinteも捕らえられ、奴隷船に乗せられる。二重の棚に並べられ、鎖でほとんど身動き出来ない。時折、甲板に出され日光を浴び、運動のために無理矢理踊らされる。Kunta Kinteは絶望する。

[the South]

【第二部】1767年、メリーランド州アナポリス。黒人の数は140人に減っていた。船上で30人も死んでしまったのだ。奴隷市でKunta Kinteはヴァージニア州の農園主Lorne Greene(ローン・グリーン)に買われる。当時の慣習で元の名前は無視され、主人が英語風にToby(トビィ)と命名する。主人は御者でヴァイオリン弾きの奴隷Louis Gosset Jr.(ルイス・ゴセットJr.)に「六ヶ月で英語を教えろ」と命ずる。

Kunta Kinteは英語が話せるようになったが、Tobyという名には依怙地に反応しない。奴隷監督係のVic Morrow(ヴィク・モロー)は、いつかKunta Kinteの鼻をへし折ってやろうと機会を窺っている。ある日、Kunta Kinteは畑で手斧の刃を拾い、鎖を切る。Louis Gosset Jr.が見つけるが、黙って彼を送り出す。

しかし、犬を使った追っ手にはかなわず、彼は連れ戻されて鞭打ちの仕置きを受ける。Vic Morrowは「お前はTobyだ。云ってみろ、お前の名は?」と尋ね、「俺はKunta Kinte」と云う度に鞭打たせる。耐えられず、Kunta Kinteは「俺の名はToby…」と応え、やっと許される。Louis Gosset Jr.が泣きながら介抱する。

【第三部】1776年(9年後)。John Amos(ジョン・エイモス)演ずる成長したKunta Kinteは、主人やVic Morrowにへつらう。しかし、Louis Gosset Jr.にはそれが芝居であることが分っていた。案の定、Kunta Kinteはまた逃亡を図った。彼は奴隷船で一緒に来た娘Ren Woods(レン・ウッズ)の農園を目指す。彼女は環境に順応し、英語名も受け入れ、もはや英語しか理解出来ないようになっていた。Kunta Kinteは「一緒に北部に逃げよう」と説得するが、彼女は頑強に動かない。二人の声高な口論は農園主の聞くところとなり、Kunta Kinteは逃亡奴隷狩りに捕まり、「もう走れないように」と右足の指を全部切断されてしまう。

Kunta KinteはLouis Gosset Jr.と共に、借金のカタとしてLorne Greeneの弟の医師の農園に移る。足指を失い絶望的になっていると、賄い婦の奴隷Madge Sinclair(マッジ・シンクレア)が励ます。Kunta Kinteは主人の御者となり、賄い婦Madge Sinclairと結婚する。

Kunta Kinteはまだ逃亡する夢を捨てていなかった。しかし、赤ん坊が生まれ、家族愛に目覚めた彼は逃亡を諦める。故郷のしきたりに従い、生まれたばかりの娘Kizzy(キズィ)を満天の星空に高く差し上げる…。

これが日本で公開された当時、既にアメリカで大評判だったという噂で、当然私もTVにかじりついて観た記憶があります。ただ、どこまで観たのかは記憶にありませんでした。成人したKunta Kinteを演ずるJohn Amosを、私は'Die Hard 2'『ダイハード2』で初めて観て'Roots'に出ていたとは思いませんでしたから、観たとしても第二部までであることが分りました。

第一部の明るく平和なアフリカの描写は素晴らしい。アフリカ人の敬虔なしきたりや素朴な戦士教育も興味深い。Kunta Kinteの母Cicely Tysonが気高いまでの美しさを見せ、その夫Thalmus Rasulalaもいい父親を自然に演じています。Kunta Kinteの祖母はアメリカでは有名な詩人・作家・女優のMaya Angelou(マヤ・アンジェルー)です。

奴隷船の陰惨な描写にはうんざりですが、アメリカで奴隷にされてからはLouis Gosset Jr.との触れ合いがユーモラスだったり、スリルにも富んでいて、とても面白く観られます。

しかし、いくら文明から遠い生き方をしていて、肌の色が黒いからといって、猛獣狩りのように黒人を捕らえて鎖に繋ぎ、売り捌いてしまうというのは無茶苦茶ですよね。

御存知でしょうか?現在、黒人奴隷の子孫への賠償金が議論の的になっています。2002年8月、黒人たちが首都ワシントンで大集会を開催し、政府に賠償金支払いを要求したのです。

第二次大戦のさなか、米政府はアメリカの市民権を有する日本人家族を収容所に押し込め、不自由で屈辱的な生活を余儀なくさせました。1988年、政府は賠償金として日本人一人当たり$20,000を支払うことを決めました。黒人たちの運動はこういう前例を踏まえているわけです。

新聞の論説コラムに掲載された意見によれば、「皮膚が黒いからというだけで奴隷の子孫でもない人々が金を受け取るというのは醜悪である。それも、プランテーション・オーナーの子孫でもない納税者の懐から出る金なのだ」 当時、奴隷を利用した米国経済の潤いの影響は全国民が享受したでしょうが、だからといって、現在も億万長者であろうプランテーション・オーナーの子孫と同等に、一般庶民まで賠償金の一部を負担するというのは不公平でしょう。

ハーヴァード大の教授(黒人)によれば、「我々が考えているのは、個人が賠償金を受け取るのではなく、黒人全体として受け取り、それを基金として貧しい黒人家庭を助けるために使うということだ」と述べています。しかし、黒人一般は棚ぼたの一時金を期待していると思います。

もし黒人たちが賠償金獲得に成功すれば、次はアメリカン・インディアンでしょう。彼等は広大な土地をアメリカ人に奪われ、保護区と称する狭い地域に閉じ込められてしまいました。彼等が得られる正当な賠償金はアメリカ政府が支払い不可能な額になるのではないでしょうか。アメリカ政府は賠償金支払いで転覆し、代ってインディアンがアメリカ合衆国を治めるということになるかも知れません:-)。

DVDの長所の一つは、音声チャネルを選択してディレクターのコメントを聞けることです。しかし、複数ディレクターでも9時間半は到底喋れないということで、ディレクター以外にプロデューサー、脚本家、男優、女優、デザイナーなど多数が入れ替わり立ち替わり登場します。それでも喋り通すことは出来ず、かなりの空白があります。彼等のコメントを聞くために9時間半つきあう元気はなく、ごく一部を試聴するに留めました。

もう一つDVDの長所は英語の字幕が読めることです。この映画の字幕では、長年文法をうるさく教育された日本人がぶったまげるような台詞が洪水のように出て来ます。「御主人様」という意味の"master"が"massa"になるのなどはいい方で、"I is..."、"We is..."、"I loves you."などなど。Kunta Kinteの英語の先生Louis Gosset Jr.でさえそうですから、アフリカから来た黒人が"We is..."になるのは仕方がありません。

根気よくこの長いTV映画を観る方も少ないのではないかと思い、Part 2では第四部〜第六部のあらすじも紹介します。

(October 21, 2002)




Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema ONLINE」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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