[Poison] Nights in Rodanthe
『最後の初恋』

【Part 2】

このB&Bの沖合にある小島に野生馬の群れが棲息しており、希に海を渡って本土にやって来ることがあるという伝説が語られます。しかし、iMDbの"Goofs"の項を見ると、映画の舞台となるビーチと野生馬の棲息地は全く別個のところだそうです。原作者はノース・キャロライナ州のあちこちの事実を、一つの場所に寄せ集めたわけです。私はこんなことを"Goofs"呼ばわりするのはどうかと思います。John Ford(ジョン・フォード)監督の'Stagecoach'『駅馬車』(1939)の駅馬車は、Monument Valley(モニュメント・ヴァレー)の絵になる場所をぐるぐる円を描いて走り回っているだけで、全く目的地を目指していないので有名です。これも"Goofs"に入れたらほとんどの映画は"Goofs"だらけになってしまいます。

Diane Laneが初めてRichard Gereに食事を供する時、黙って赤ワインを食前に出します。B&Bで食事に無料でアルコール飲料を出すことは普通ありません。ホテルで"happy hour"と称し、6時前にワインを無料で飲ませることはあります。私はビール飲み放題のホテルに泊まったこともあります。この映画の場合、食事は5:30でしたから"happy hour"の時間帯ではありますが、Diane Laneはそういう説明抜きでワインを出しています。ワインを注いでから「赤でよかったかしら?」と云いますが、自分で料理を作っているわけですから、肉なら赤、魚なら白というのが常識で、「赤でよかったかしら?」という台詞はこの人物が相当いい加減であるという印象を与えます。翌日の食事には鮭を用意しているので、この日は肉だったと思われますが。

嵐が来て、Diane Laneが家具の下敷きになりそうになったのをRichard Gereが助けます。恐怖に震えるDiane LaneをRichard Gereが抱いていると、いつしか二人の顔が近づき二人は激しくキスし、場面はフェードアウト(御想像にお任せ…というR指定逃れの編集)。私の住む町にもハリケーン(トーネイド)が来て三、四日ずっと停電したことがあります。冷蔵庫・冷凍庫の物は腐り始めるし、落ち着かないので、色事に専念するような余裕はありません。映画の趣向は絵空事に思えます。

映画の最後の方は、息子の医療機関を助けに行ったRichard GereとDiane Laneの甘い甘い手紙のやりとりで占められています。「こう甘いと、絶対悪いことが起るぞ」と思っていると、実際その通りになります。単純な筋ですなあ。

「大人の恋物語」と云っても、ちょっと苦い味付けがしてある点でユニークだとは思いますが、シンプル過ぎるのが難点。単発のTVドラマでもいいような代物です。

しかし、邦題『最後の初恋』というのは映画の輸入会社が(物語のエンディングの)ネタばらしをしているわけで、これは犯罪行為ですね。自分で自分の首を絞めているということでもありますが。

(October 21, 2009)





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