[Poison]

The Littlest Rebel

『テムプルの愛国者』

【Part 2】

悪い人間が登場せず、南軍側の主人公に優しい北軍将校と大統領を配するという、南部・北部両方の観客に楽しんで貰おうという欲張った映画です。しかし、Shirley Templeの可愛さあっての北軍の好意であるということで、ちゃんと主役が引き立つように塩梅されています。Shirley Templeと優しい北軍少佐との交流が段階的に親密度を加えて行き、「私とパパを助けてくれたから、あなたは第二のパパよ」と云って少佐を感激させるまでに至る過程は見事です。

Shirley Templeは父に「戦争って何?」と聞き、黒人の執事に「奴隷の解放って何?」などと聞きます。執事は「自分にもわがんねえです、お嬢様」と応えます。この執事は主人を含む南軍の行進に手を振って見送ります。南軍に入って闘った黒人もいるそうですから、主人と生まれ育った南部に忠実な黒人も多かったようです。全部が全部脱走して北軍に身を投じた黒人ばかりではないのです。

ハーモニカを吹く黒人の下男のトロさは目を覆うばかりですが、黒人の執事はテキパキと仕事をこなし責任感もあり100点満点なので、製作者としては黒人蔑視ではないと云いたいのでしょう。しかし、実際にそうだったとはいえ、小さな娘に執事が"Yes, ma'am."(さようです、お嬢様)などと云うのを聞くのは、なかなか辛いものがあります。

ツボを押さえてよく出来た映画ですが、母親があっけなく死んだり、隠れていた父が簡単に降伏したり、北軍司令官の紹介状があってのこととはいえ、南部の子供が簡単にリンカーンに面会出来たりする御都合主義が、ちと残念です。

(May 05, 2003)





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