[Poison]

Reap the Wild Wind

『絶海の嵐』

【Part 2】

John Wayneが総体的に演じた役柄から云えば、この映画で欲にかられて悪党一味に加担するというのは、信じるのも難しいほどです。彼は、Ray Millandとの潜水中に、Ray Millandの酸素供給パイプを切断すべく、ロープで船上の仲間に合図しています。掛け値無しの悪党になってしまったのです。しかし、大烏賊に襲われたRay Millandを救うことと、逆に彼が大烏賊に襲われて殺されてしまうことで贖罪をします。

John Wayneが多くの映画で演じた人物像のほとんどは強く明るい正義漢でした。それに慣れた目には、この映画の彼の役柄はショッキングです。Ray Millandと役を取り替えたらどうだったのか?という考えが浮かびます。Ray Millandなら悪党に加担してもおかしくないイメージです。しかし、John Wayneには法律顧問というようなイメージは皆無です。このトレードはうまく行きそうもありません。

Paulette Goddardは最後の最後までJohn Wayneを愛しています。後半、彼がRaymond Masseyの影響下にあったことを察しつつも、まだ彼を愛し続けています。John Wayneが死に、Ray Millandの愛を受け入れることが暗示されますが、Paulette GoddardとRay Millandがキスするようなシーンは出て来ません。多分、すぐ男を乗り換えるようなヒロインはハリウッドから嫌われたのでしょう。それはそれで納得出来ます。

この映画には猿と犬が出て来て、コミック・リリーフになります。私はかつてNHKの『名曲アルバム』南ヨーロッパ篇を20数本担当したことがありますが、その時いくつか撮影のための作戦を立てました。その一つは出来る限り動物、花、子供を取り入れるというものでした。これらはみな女性の大好物であり、(大作曲家の旧家や銅像、町の雰囲気も必要ですが)動物、花、子供が入れば女性から受けない筈が無いという理由でした。これは大成功でした。この映画には子供は出て来ませんが、動物と花は結構出て来ます。同じ作戦なのでしょう。

大烏賊(イカ)も生きものですが、これは御婦人の好物とは思えません:-)。この烏賊、我々にお馴染の茹で蛸(タコ)のような色なので、てっきり蛸だと思って観ていました。しかし、この映画の紹介記事では全て烏賊になっているので、ヴィデオをポーズ状態にして脚の数を数えてみました。八本以上ありますから、蛸ではありません。それでもなお、烏賊って、あんな色であんな風に目が付いていたかなあ?と疑問に思っています。潜水撮影のプロだった私の元同僚に聞きますと、「海面下30mぐらいになると、自然光の下ではどんな魚や生物もグレイ一色になってしまう。照明を点けて初めて色が出て来る」とのことです。John WayneもRay Millandもライトを点けていなかったので、映画的に誇張された色彩のようです。

(March 24, 2002)





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