[Poison] Rambling Rose
『ランブリング・ローズ』

【Part 2】

撮影の専門的な話で恐縮ですが、この映画のタイトル・バックは凄い。薔薇の花の開花を微速度撮影しています。見た目にはスローモーションですが、数時間の動きを数分にまとめるので、これは"time-lapse"(微速度撮影あるいは駒撮り)と呼ばれます。単なる微速度撮影はそう珍しくないのですが、この映画の場合、微速度撮影しながらドリー(横移動)し、なおかつカメラを上昇させて花びらをやや上から見るような位置に変化させます。数十秒に一齣という感覚でシャッター・ボタンを押すわけですが、次のカットとの間でアングルが大幅に違うとスムーズな推移に見えず、NGになります。つまり、カメラを移動させつつ、スムーズに微速度撮影を行なうというのは至難の技なのです。最近ならコンピュータ・グラフィックスで簡単に可能でしょうが、1991年当時はそれほど便利な時代ではなかったと思います。

夫が「Roseを解雇する」とか云うと、妻が猛反対します。医者と夫の「結果としてRoseは性的魅力を失うだろうが、Roseの色情狂を手術で直す」という判断に、又もや妻が猛反対します。人道的見地では正しい行動なのですが、"Deep South"であるジョージア州の妻としては随分珍しい行動です。"Deep South"は封建的で、男尊女卑の考えが色濃く残っている地方ですから、夫にこうまで逆らうという存在は考えにくいのです。いくら夫が妻を愛していたとしても、夫の決断はかなりの強制力を持って妻の考えに優先します。最近は変わったでしょうが、この映画は1935年辺りを描いているわけで、まだまだ古い南部なのです。

孤児同士とはいえ、妻がこうまでRoseの味方をする理由が分りません。まるで'National Organization for Women (NOW)'(全米女性機構:女性の権利を守る団体)の代表のような考え方で喋ります。

Roseによって相当子供達の教育に悪影響を受け、迷惑千万だった筈の夫が、コロッと反省し、手術でRoseの自然さを損なうのは人権無視だという考えになるのは、あまりにも出来過ぎです。Roseが警察官と結婚してくれて厄介払い出来て嬉しかった筈です。映画の最後で、Robert DuvallがRoseの死を悼みながら「人間には死ぬ人間と死なない人間がいる。Roseは(我々の心の中に)生きている」などと云うのは、嘘臭くていけません。

大体、Roseを殺すような時点まで映画を引っ張ることはなかったと思います。Roseは幸せになり、少年は淡い失恋に泣くが自分の青春を満喫する旅に出るのであった…で終っても、何も問題なかったのではないでしょうか。

私個人はLaura Dernはミス・キャストだと思っています。品が無い点は、教育が無いという役なのでうってつけですが:-)、Roseにはモンローのようなこぼれる色気が無いといけません。Laura Dernはギスギスして色気がありません。町中の男がフラフラとなるような容貌には程遠い。製作者の個人的事情で選ばれたとすれば、非常に残念です。この人以外のキャストは皆いい芝居をしていて、見応えがあります。

(April 07, 2001)





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