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Raintree County

『愛情の花咲く樹』

[Video]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema ONLINE」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1957
監督:Edward Dmytryk
地域:インディアナ州、ルイジアナ州ニュー・オーリンズ、ジョージア州
出演:Montgomery Clift、Elizabeth Taylor、Eva Marie Saint、Rod Taylor、Lee Marvinほか
範疇:原作もの/ドラマ/ロマンス/南北戦争

私の評価 :☆

【Part 1】

'A Place in the Sun'『陽のあたる場所』(1951)を成功させた美男美女で、'Gone With the Wind'『風と共に去りぬ』(1939)を凌ごうと試みた大作。当然(!)、「序曲」、「間奏曲」が付いています。「後奏曲」までは無いようです(TCMの放送では、出て来ませんでした)

この映画を理解するために知っておいた方がいいことが二つあります。先ず、原題の"Raintree"です。辞書によれば「アメリカネム」とあり、図鑑による葉の形状もネムノキに似ています。中南米、フロリダなどの熱帯性気候のもとで見られる、幹が太く短いが、枝は長く繁茂する木です。"Raintree"の謂れは、木が湿っぽくて雨のように水分を滴らせるからだそうですが、実は木に寄って来る昆虫の排泄物というのが真相だそうです。

原題の"County"は「郡」と訳すことが出来ますが、日本の郡とはかなり違います。アメリカの"county"は行政のために括られた市や町の集合体で、大統領選挙、上・下院議員選挙、シェリフの選挙などは郡単位で行われます。私が住んでいる町Meridian(メリディアン)はLauderdale County(ローダーデイル・カウンティ)の一つの町です。では、Lauderdaleという町がMeridianより大きいかというと、実にちっぽけな町です。名前を取っただけという感じです。

1859年(南北戦争前夜)、インディアナ州Raintree County(レインツリー・カウンティ)。間もなく卒業の時期を迎えるため、アカデミー(短大?)の生徒たちもそわそわしている。女生徒Eva Marie Saint(エヴァ・マリー・セイント)は仲良しの男生徒Montgomery Clift(モンゴメリー・クリフト)と卒業祝いを交換する。彼女がプレゼントしたのは『レインツリー・カウンティの歴史』という本で、「いつかあなたもこれに載るのよ」と云う。

スワンプ(湿地)のほとりでの野外授業。カレッジの教授が「ある説教師が中国から渡って来たゴールデン・レインツリーの種を入手した。彼はこの地方で一個所だけその種に適する生育地があるのを見つけ、そこに植えた。それがこのカウンティの名の起源だ。若人たちよ、レインツリーを見つけて“人生の秘密”を知れ」と説く。Montgomery Cliftは早速スワンプにじゃばじゃば分け入ってレインツリーを探そうとし、Eva Marie Saintに呆れられる。

[the South]

Montgomery Cliftは美しい"Southern belle"(南部の令嬢)Elizabeth Taylor(エリザベス・テイラー)と知り合う。独立記念日に、彼は町の暴れん坊Lee Marvin(リー・マーヴィン)と駆けっこの賭けをする。町中が見守る中、僅差でMontgomery Cliftが勝つ。勝利の栄冠はElizabeth Taylorから与えられる。その日、二人は結ばれた。しかし、何故か彼女はニュー・オーリンズに去る。

レインツリー・カウンティに戻って来たElizabeth Taylorは「赤ちゃんが出来た」と云う。二人は結婚し、ミシシッピ川を下ってニュー・オーリンズに赴く。彼女の父は大プランテーション王で上院議員も勤めた人(故人)だった。ある日、二人は火事で丸焼けになった豪邸の廃墟を訪れる。そこは幼女時代の彼女が、両親やキューバ人の乳母と住んでいたところである。母と乳母の遺体はどちらがどちらか分らないので、二人一緒に葬られている。その話をしたElizabeth Taylorは俄に精神不安定になる。彼女は「赤ちゃんが出来たというのは嘘。あなたが欲しかったの」と告白。二人はレインツリー・カウンティに戻る。

本当に子供が生まれる。男の子だった。南北戦争が始まり、次第にElizabeth Taylorの精神状態がおかしくなる。ある日、Elizabeth Taylorと息子が消える。二人はジョージア州へ行ったとの噂。もはや南部一帯は激戦地ばかりで、普通人は通れない。Montgomery Cliftは北軍に志願し、兵士としてジョージア州を目指す…。

…と、ここで『風と共に去りぬ』同様「休憩」が入ります。

原作はRoss Lockridge, Jr.(ロス・ロックリッジ二世)の処女作で、数年の下調べの後、執筆に六年かかったという全1,060ページの大作です。これはMGMの原作公募の一位となり、15万ドルの賞金を得ました。当時映画界はTVに押されて低迷していましたから、MGMはこの原作で超大作を作り、一気に『風と共に去りぬ』のような興業収入を得ようとしたようです。一説にはこの映画は「MGMがアメリカ国内で製作した最も高額の製作費であり、65mmカメラを初めて使用した映画であり、史上最も長い脚本で、映画の製作と本の発売が一緒という初めてのケースだった」そうです。しかし、原作者は映画公開前に自殺してしまい、万事バラ色ではなかったようです。

Elizabeth Taylorは綺麗で十分目を楽しませてくれます。彼女の映画歴としては'Giant'『ジャイアンツ』(1956)の一年後で、'A Cat on a Hot Tin Roof'『焼けたトタン屋根の猫』(1958)の一年前です。彼女はこの作品を含め四年連続でアカデミー主演女優賞候補になります。三年間失意の連続。やっと四年目にオスカーを確保します。そう考えると、この時期は彼女の黄金時代だったとも云えます。彼女の南部訛りはかなり誇張されていて、南部に住んでいる私でも落ち着かないくらいです。彼女は、"New Orleans"を“ニュー・オリアンズ”という風にフランス語もどきに発音しています。現代では“ノーリンズ”と云うのと大違いです。

『陽のあたる場所』では水も滴る美男美女だったMontgomery CliftとElizabeth Taylorですが、この映画の撮影中に大変なことが持ち上がってしまいました。Elizabeth Taylorの家のパーティの帰り、車を運転していたMontgomery Cliftが電柱に激突してしまったのです。目撃者の知らせでElizabeth Taylorと、客の一人Rock Hudson(ロック・ハドスン)が駆けつけました。Elizabeth Taylorは大破した車にもぐり込んで、Montgomery Cliftを呼吸困難にしていた折れた二本の前歯を喉から取り出しました。ついでRock HudsonがMontgomery Cliftの身体を引き摺り出し、救急病院にかつぎ込みました。この事故でMontgomery Cliftの上唇は裂け、顔の左半分は動かなくなったそうです。しかし、彼は撮りかけていたこの映画から退くことはせず、九週間後に撮影に復帰し、痛み止めを飲み続けながら演技したそうです。確かに、声や表情が硬い時もありますが、クロースアップを排除した撮影により、そんな大事故に遭ったとは思えないように仕上がっています。

奴隷と黒人の問題がこの映画の核心です。南北戦争に絡んで、Elizabeth Taylorの奴隷の召使いの処遇、彼女の乳母だった黒人女性の話。南部の荘園でElizabeth Taylorの従兄の家に着いた時、黒人奴隷が従兄の妻の足を見たという廉で殺されかかります。一般に黒人男性は白人女性を見ないようにしていたものだそうで、まして足を盗み見るというのは白人女性に欲望を抱いたと取られたそうです。

のったりした巨篇(185分)ですが、巷間云われるように“駄作”と決めつけるほどひどくはありません。『風と共に去りぬ』とは較べものになりませんが、古き良き時代の映画の雰囲気を漂わせています。

(March 17, 2002)




Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema ONLINE」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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