[Poison] The Ponder Heart
『ラッキー・タウン』

【Part 2】

この映画を観る気はないと決意した方だけ読んで下さい。

さて裁判です。被告なのにPeter MacNicolは顔見知りに「ハイ!」、「ハロー!」と陪審員と傍聴者とを問わず挨拶するのに忙しい。「こんなに大勢、みな正装で集まって来て凄いや」などと興奮しています。

地方検事はいくつか新事実を用意していたのに反し、弁護側はJoBeth Williamsや黒人家政婦など身内の証言しかなく、火の玉の話も「ナンセンス」と片付けられ、かなり旗色が悪くなります。昼食のため休憩した時、Peter MacNicolは一人銀行に行き口座のお金を全部引き出します。

裁判再開。しかし、Peter MacNicolは姿を見せません。逃亡したのかと思われた矢先、彼は「ごめん、ごめん」と入って来て、子供たちにペロペロ・キャンデーを配って歩いたりして裁判長から叱責されます。

午後の証言でも弁護側は得点出来ず、ついにPeter MacNicolの有罪確定かと思われた時、弁護士はふと閃いて亡くなったAngela Bettisの姉妹の一人を証言台に立たせます。彼女は検事の証拠を覆す証言をしますが、突如Peter MacNicolは「おれに証言させろ!」と主張し、反対する弁護士を馘にしちゃいます。

単に演説させるわけにいかないと云う裁判長に、「じゃ、検事に質問して貰おう」とPeter MacNicolは証言台の女性を追い立てるように席に付き、お定まりの「あなたは真実だけを話すと誓いますか?」という質問の「あなたは…」を聞いただけで"I do!"(誓う!)と云い放ちます。検事とのやりとりの最高潮はPeter MacNicolの「おれは怖がる妻にキスしようとした。強く抱きしめた。強過ぎたかも知れない。妻を殺したのはおれだ」と衝撃の発言をします。さすがの検事もこれにはびっくりしますが、すかさず「これは自白です!彼が自分の妻を殺したのです!」と叫びます。

裁判長が「では陪審員は別室で結論を出すように」と云うより早く、Peter MacNicolはポケットから札束を取り出し、「今日は御苦労さん!」と傍聴席にお金をばらまきます。傍聴人たちが争うようにお札を拾っている最中、陪審員長が「裁判長、結論を申し上げます」と云い、裁判長は目を丸くして「え?ほんと?もう?」と異例の事態が信じられません。「で、結論は?」「無罪です」弁護側は狂喜乱舞。

陪審員たちは「脳足りんを罰することは出来ない」と考えたのか、「こんないい人間を刑務所に送るわけにいかない」と考えたのか、「こいつに町をうろつかせてお金を貰う方がいい」と実利的に考えたのか、どれでしょうか?

ね?破天荒でしょう?こんなお話なら原作を読んでみようかと思ったのですが、単純なほら話なのに、女流作家によくありがちな饒舌体(ディテールを書き込み過ぎる)で展開するので、苛々してとてもついていけませんでした。

なお、Peter MacNicolが惚れ込むAngela Bettisですが、この女優がギスギスで、貧相な顔に不健康そうな青白い顔色をしていて、いくら好きずきとは云え、こんな女性に惚れる男がいるなんて考えられません。そのくせ「私は歴としたPonder家の嫁だかんね!」と威張り散らすので、もう目も当てられない。IMDbへの投稿に「この女が死んでほっとした」というのがありましたが、私も同感です:-)。逆に云えば、キャスティング担当者は死んでも同情されないような役者を意図的に選んだのかも知れず、そうだとすればその頭脳とセンスに脱帽です。

(December 16, 2006)





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