[Poison] The Pelican Brief
『ペリカン文書』

【Part 2】

Tulane大学は北のハーヴァード、南のテュレインと云われる法学の名門です。正体不明の敵に追われてJulia Robertsがバーボン・ストリートへやって来ますが、折しもマルディ・グラの祭りで通りはごった返していた…というのは出来過ぎです。マルディ・グラは日数の長い祭りですから、ニューオーリンズの住人が知らないわけがない。また、祭りの間バーボン・ストリートが通りにくい最悪の通りであることも有名で、町の住人なら当然知っている。つまり、ボーイフレンドが死んだ直後に歩く通りとしては相当馬鹿げた選択なわけです。まあ、「折角ニューオーリンズで撮影するんだから観客サーヴィス」という理屈も分らないではありませんが、一寸無理があるようです。

大統領補佐官もDenzel Washingtonも、PBSが作った自然番組でペリカンのことを勉強します。PBSはPublic Broadcasting Serviceの略で、全米にある非営利・教育目的346放送局の集合体。主に寄付で成り立っていて、NHK教育TVのような教育、教養番組を放送しています。イギリスのBBSとも提携して、BBS制作の文芸作品やミステリ番組も含めています。

この映画の素材となったペリカン保護区とは違うでしょうが、ニューオーリンズ郊外で小型船によるスワンプ(湿地)ツァーをした際、湿原の中で石油掘削地とパイプを見ました。「こんな湿ったところで石油がねえ…」と思ったことでした。原作も、全くのフィクションではないのです。

フロリダ半島の沖合いでペリカンを撮影したことがあります。ルイジアナ州の「州鳥」ブラウン・ペリカンではなく、白ペリカンでした。大きい鳥なので信じられないかも知れませんが、空中を旋回していて魚影を見ると垂直に急降下して魚を捕食するのです。このダイヴィングは見応えがあります。

生死の危険を共にして、同室で長く過ごしたりもしているのに、Denzel Washingtonはいつも真面目な顔をしていて、Julia Robertsとの間にセクシャルな雰囲気を漂わせません。こういう状況下の主人公二人はベッド・インしちゃうのが相場となっていますが、この映画でそうならないのは不思議です。ボーイフレンドが爆死するのを目撃した直後という事情もあるでしょう。しかし、原作を読んだ人に聞くと二人はベッド・インしているそうです。さらに原作では新聞記者は白人だったそうです(私の義姉の証言)。黒人なるが故にJulia Robertsとベッド・イン出来なかったというのは解せません。この映画の前年に公開された'The Bodyguard'『ボディガード』では、白人のボディガード(Kevin Costner)と黒人女性(Whitney Houston)がベッド・インしていました。勿論、たまにはベッド・インしない組み合わせがあってもいいわけですし、何も無かったからこそDenzel Washingtonがより高潔でクールに見えるエンディングになったのでしょう。なまじ結ばれちゃうと、「この二人、結婚するだろうか?黒人と白人の結婚はたいへんだろう」とか、余計なことを考えてしまい、しこりが残ってスッキリ終れません。

(March 9, 2001)





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