[Poison] The Patriot
『パトリオット』

【Part 2】

何が“アメリカ的なるもの”かと云いますと、先ず「家族愛」ですね。公衆の面前で「家族は守るが、英軍とは闘わない」と宣言する勇気。一旦家族が傷つけられると、敢然と戦地に赴く勇気。死んだ次男が大事にしていた鉛の兵隊(ミニチュア人形)を溶かして弾丸を作りますが、それで英軍を撃って次男の霊を慰めるというセンチメンタリズム。長男亡き後、長男が縫っていた星条旗を翻して先頭に立つセンチメンタリズム。旧知の間の将校Chris Cooperは自分の生まれたばかりの男の子に、Mel Gibsonの死んだ長男の名をつけます。

民兵の一人は英軍に殺された妻と息子の亡骸を発見し、号泣した後直ちに後追い自殺します。これも「家族愛」です。

村の牧師は初め戦争には反対しますが、人々の多くが戦場に赴くと知るや、自分も銃を取って参加します。「羊飼いは羊を守る役目だ。時には狼を相手に闘うこともある」と説明します。植民地軍に一年参加すれば黒人奴隷は自由の身になれるという告知が出ます。一人の黒人は自由の身になった後も、戦線を離脱せず闘い続けます。自分の身のためではなく、アメリカのために闘うという心意気です。奴隷として育ったアメリカに何の義理も無い筈ですが、こういうお話を作った脚本の大甘さがアメリカ風。戦争終了後、Mel Gibsonが疎開先から家族を連れて故郷へ戻ると、その黒人を初め大勢の戦友達が彼のために家を建てています。'Witness'『刑事ジョン・ブック/目撃者』(1985)のアーミッシュみたいな感じ。これもアメリカ的センチメンタリズムです。

Mel Gibsonは七人の子持ちという役にはピッタリの年代ですが、束ねた長髪、長いもみあげが似合わない。歳取っても白塗りで二枚目を演じていた長谷川一夫を見るような、辛い感じを受けます。しかし、アクション場面は見事に演じ切っていいます。

悪役の英軍将校Jason Isaacsも憎々しくてとてもいいですね。村人全員を教会に閉じ込めて焼き殺すというのは残忍。大虐殺です。'American Beauty'『アメリカン・ビューティ』(1999)でゲイ趣味に目覚めた元海兵隊士官を演じたChris Cooperが、ここでは植民地軍の頼もしい指揮官で、いい役をうまく演じています。総じて、この映画のキャスティングは素晴らしい。

長男を演じたHeath Ledgerは、この後'A Knight's Tale'『Rock You![ロック・ユー!]』(2001)の主役を演じ、人気スターの道を歩み始めました。

当時の戦闘を再現した場面が何度か出て来ます。鉄砲を構えて横隊になった両軍が至近距離まで歩み寄り、睨み合った後、交互に発砲するという戦い方です。これは恐いですね。弾は誰かには当たるわけで、双方ともバタバタと倒れて行きます。残った者は次の弾を装填して、「撃て!」の命令を待ちます。生存者が半分くらいになるまでこれを続けるというのが恐い。大砲の弾で頭をはじけ飛ばされる兵士もいます。どこまで持ち応えられるか、死を賭けた度胸試しみたいなものです。最後は肉弾戦になるわけですが、この方がまだ気分的に楽でしょう。

(August 27, 2001)





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