[Poison]

Panic in the Streets

『暗黒の恐怖』

【Part 2】

“名匠”が作ったB級映画という感じで、一本調子です。疫病が蔓延しそうなサスペンスもあまり感じません。

最初の死体公示所で、検屍官二人が死体を前に昼食の相談をするのが、グロテスクだけど可笑しい。

最後は倉庫内の追っかけで、「ああ、これで終りか」と思ったら、Jack Palanceとダチ公の一人が船着き場の下へ逃げました。水面ギリギリのところで歩けるようになっているのです。上では警官たちが右往左往しているのですが、悪党どもが足の下にいるとは気づきません。こういう場所は初めて見て新鮮でした。

この映画を観る楽しみの一つは、その配役でした。Elia KazanとRichard Widmarkという組み合わせも面白いのですが、私にはJack PalanceとBarbara Bel Geddesの名が魅力的でした。

Jack Palanceは'Shane'『シェーン』(1953)の黒装束のガンマンが有名ですが、'Attack'『攻撃』(1956) の凄絶な名演も見応えがありました。どちらも映画そのものが素晴らしいのですが、Jack Palanceの“所を得た”存在感が印象的です。

Barbara Bel Geddesは、私がBetsy Palmer(ベッツィ・パーマー)と同程度に愛するアメリカ女優です。Barbara Bel Geddesの代表作としては'Vertigo'『めまい 』(1958)、'The Five Pennies'『五つの銅貨』(1959) などがあります。『めまい 』はKim Novak(キム・ノヴァク)の美しさが最高の映画でしたが、Barbara Bel GeddesもKim Novakそっくりに見える場面もあったものの、大体は眼鏡をかけて平凡さを強調していました。私にはBarbara Bel Geddesの方が好ましく思えます。'Mister Roberts'『ミスター・ロバーツ』(1955) 、'The Tin Star'『胸に輝く星』(1957)などのBetsy Palmer同様、ほのかに色気のある“良妻”という魅力です。Barbara Bel Geddesは本作では三回しか出て来ないのが残念ですが、旦那を愛し誇らしく思っている主婦を好演しています。

(June 27, 2002)





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