【Part 2】
そもそも、偽装誘拐などといううまい話を信じるのが馬鹿です。「脅迫電話を入れる男性が必要だ」と云う依頼ですが、声を変える装置などは簡単に出来るので、悪女Elisabeth Shueにだって可能な筈です。電話一本と脅迫状、それに「まま娘」の宿泊先をお膳立てするだけで$50,000を貰えると信じるなんてどうかしています。働くだけ働かされて消されることもあるでしょうに。
大体、豪邸に住む富豪の夫人が$500,000欲しいというのがおかしい。90,000,000円ですからね。彼女の話を額面通り受け取ったとして、「まま娘」と折半したら大した額ではありません。富豪の旦那を殺して遺産を相続したいというのなら筋は通ります。そうでないということは、ここでWoody Harrelsonも観客もペテンにかけられているわけです。ヒッチコック的脚本です。
ただ、この映画が傑作足り得ないのは、「TV映画でもよかったんじゃない?」という程度の出来栄えだからです。しょっちゅう汗を滲ませたりして暑いフロリダの雰囲気は出ていますが、情感が伴っていません。Woody Harrelson以外の人物はハリボテ人形もいいところで、個性が描けていません。これは貧弱な脚本のせいです。
非常にスリリングなのは、Woody Harrelsonが死体を車のトランクに詰めてのドライヴで事故を起し、親切な年寄りの警官が助けようとする場面。警官は「トランクからスペア・タイアを出しなさい。手伝って上げるから」としつこいのです。Woody Harrelsonが何時その警官に襲いかかるか、ハラハラします。彼の機転で事なきを得ますが、こんな何でもないことでハラハラするというのも、これもヒッチコック的手法ですね。何も、大掛かりなことを考える必要はないわけです。
しかし、出所したばかりの男を地方検事が雇い、いくら元新聞記者だからといって記者会見で広報を担当させるというのはあんまりです。
また、老人が身代金を入れて放り出す鞄がグッチというのは不思議です。いくら金持ちでも、誘拐犯に渡す鞄は安物を選ぶんじゃないでしょうか。それとも海賊版なのかな?
(September 11, 2002)