[Poison] O Brother, Where Art Thou?
『オー・ブラザー!』

【Part 2】

George Clooneyの役はEverett Ulysses McGill(エヴレット・ユリシーズ・マギル)という名だそうで、それが暗示するようにホメロスの古典『オデュッセイア』の物語を借りたんだそうです。歌う洗濯女は歌を聞いた者を海に沈めるサイレン(魔女)で、片目の人物は原作では一つ目の巨人。ホメロスなんて、(読んだことはありますが)もう忘れちまいましたよ。三人の一人が、いくら頭がトロいからといって、仲間の一人が魔法で蛙になったと思い込むとは、「何だ、こりゃ」と思いましたが、これもホメロスにあったんですかねえ。

『イリアス』が確かトロイに遠征する話で、『オデュッセイア』はそれから帰国までの話でした。ユリシーズの妻は「ユリシーズは死んだ」と称して求婚して来る男が多くて困っていた。「この布が織れるまでは駄目」と断っていたのですが、夜な夜なそれを解きほぐして時間稼ぎをしているのがバレてしまった。最後の手段として、夫の強弓を持ち出し、「これを引ける者と結婚する」と宣言します。誰も弓を引ける者はいないのですが、そこへ乞食に化けたユリシーズが進み出て、「私にも引かせてくれ」と頼む。軽々と強弓を引き、離れ技を見せた後、「おれはユリシーズ」と名乗って、無礼な求婚者達をバタバタと殺戮するのであった(『岩波ギリシア・ローマ神話辞典』による)。

映画のGeorge Clooneyの奥さんは、彼の犯罪と長期服役に耐えかね、離婚を決意していた(さすがギリシア時代とは違いますね)。しかし、彼がラジオの人気曲の歌い手であることを知って翻意。知事がGeorge Clooneyらの罪を特赦することにしたので、George Clooney夫妻は大手を振って町を歩く。

私はハチャメチャなコメディも好きですが('Snatch'『スナッチ』は好きです)、一応常識と現実は踏まえて欲しい。こんな映画を出品して主演者達全員がカンヌ映画祭に行ったなんて信じられない。

(February 08, 2001)、改訂(January 09, 2011)





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