[Poison] Nightjohn
(未)

【Part 2】

Sarnyを演ずる少女は可愛いのですが、この役の設定が小生意気で好きになれません。主人の子供に食べさせながら、時々自分で食べてしまう…なんてのはまだいい方です。聖書を盗む…これもまあいいでしょう、自分では買えないんですから。主人の居間にある帳簿を読んで、奴隷個人個人の値段を盗み見る。主人が教会に銃を持って駆け込んで来て、「逃げた奴隷に通行手形を作ったのは誰だ(実はNightjohnとSarnyの仕業)。そいつを教えないと奴隷は皆殺しだ」と叫んだ時、彼女は「みんな、恐れることはないわよ。御主人は絶対撃つもんですか。あなた方はお金なのよ。私は$500。Dealey、あなたは$1,000、John、あなたは$50…」という風に一人一人の金額を暗唱します。「御主人にはお金は無い。あんた方が全財産なの」 主人はあっけに取られます。これは八歳の子供には出来過ぎの大芝居です。

主人は今度はSarnyを撃とうとします。Sarnyは主人の妻の秘密を仄めかし、ポケットにある手紙をちらつかせます。彼女は文盲であると思われていたので、主人の妻と医師の間で封もしないラヴレターを運んでいたのです。奴隷たちを撃つことを制止した妻は、今度は「彼女を撃ちなさい」と冷酷に云い放ちます。しかし、主人は「疑問解明が先」と撃ちません。妻の浮気の相手である医師が話をでっち上げてその場をとりつくろい、妻が主人を促して去ります。会衆がいなくなった後、医師はお金をSarnyに渡し、Sarnyはラヴレターを渡します。つまり、これだと金目当ての立派な脅迫という結果になってしまうわけで、どうもスッキリしません。生臭くなってしまっています。

ディズニィの映画にしてはNightjohnが指を切り落とされるとか、子供が噛み煙草を噛むとか、随分危ない橋を渡っています。

最後にSarnyは売られてしまいますが、ここにNightjohnがいないのが寂しい。

黒人奴隷が文字を教える、学ぶという話が非常に珍しいし、いいテーマだと思うのですが、その学習のプロセスの描き方が大雑把で誉められません。大文字のABCを教わっているだけで、小文字との区別とか発音しない文字とかを学ぶところはありません。Sarnyは苦労もせず、いとも簡単に読み書き出来た天才少女風になっていますが、実はそうでは無い筈です。大人の浮気などという陳腐な話は止めて、少女の学習を描くことに専念して欲しかった。'Miracle Worker'『奇跡の人』は、そうしたプロセスだけの名作だったではありませんか。

(May 31, 2001)





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