[Poison]

New Orleans
『ニューオリンズ』


【Part 2】

実は私はBillie Holidayの良さが分りません。声がいいとも思えないし、唄もメリハリが無く、ドラマティックな歌手には思えません。ドラマティックなのは彼女の人生です。数々の艱難辛苦の後、やっと有名になったと思ったら麻薬に冒されてしまいます。1959年に44歳で亡くなった時、彼女の預金はたった7セントで、脚に$750.00のお札を止めていたそうです。長年の貧乏暮らしの智恵だったとか。

しかし、この映画でのBillie Holidayは溌剌とし、陰りは見えません。演技もまずまずです。途中で消えてしまうのが残念です。

歌手役のDorothy Patrickを見るのはこれが初めてですが、ベイジン・ストリートを訪れた時の彼女の期待に輝く表情は素晴らしい。未知の世界に恐れを知らずに飛び込んで行く無邪気な子供のようです。彼女は綺麗ですが、最後の方で髪を短く切ってしまったのは頂けません。また、彼女が歌う'Do You Know What it Means To Miss New orleans?'は躍動感が無く、全く聞くに耐えません。まあ、Billie Holidayと同じように歌うのではなく、クラシカル風味を強調したのでしょうが。

彼女のクラシック一辺倒の母親が、シカゴでのコンサートになると急にジャズ・ファンになるのが御都合主義です。

この“南部もの”大全集を始めてから、ずっと抱き続けている疑問があります。人種差別を描いた数々の映画を観て来たわけですが、公民権法が実施される以前、Louis Armstrongのような大物でも差別をされたのであろうか?彼が泊まれないホテル、入れないトイレ、飲めない水飲み場があったのだろうか?多分、丁重に、しかし厳然と差別されたのでしょうね。有名だからといって、一人許したらもう断れないでしょうから、やはり許さなかったのでしょう。差別も憎いですが、Louis Armstrongの心中を察すると無念です。

(February 06, 2002)