[Poison] Cold Mountain
『コールド マウンテン』

【Part 2】

なんといってもがっかりなのが、Cold Mountainという土地の撮影はルーマニアで行われたという点。確かにアメリカ南部の山地は映画のように美しくないかも知れませんが、映画の風景はどう見てもアメリカ南部らしくないのが難点です。

「元はCold Mountain一帯の地主」という顔役が悪役です。彼が数名の手下を引き連れ、南軍のために働いているように見せかけて勝手に人々をなぶり殺しにして廻ります。戦争にとられて青壮年の男子が少ないといっても、こんな悪党を撃ち殺せる老人の一人や二人いるでしょう。この悪党がのさばっているのが不思議です。

Jude Lawには何度か“貞操の危機”が訪れますが、いずれも堅固に回避します。これはJude Lawが繊細で一途な男に見えるから可能なのであって、他の俳優だと難しそうです。キャスティングの妙ですね。

この映画には何度か動物を処理する場面が出て来ます。雄鶏の首を千切る、牛を鋸で切り刻む、凍死した動物を焼いて食べる、仔山羊を殺して血を取る、羊の皮を剥ぐ…等々。それも、人々は平然と処理します。戦争の時期で生きるか死ぬかという瀬戸際の状況を描いているわけですから、確かに綺麗事だけでは済まないでしょうが、ロマンス映画としては何とも血なまぐさい場面の数々です。私はこういうのは嫌いです。

冒頭でNicole Kidmanがピアノを買います。Jude Lawが野良仕事をしている傍らを、Nicole Kidmanが馬車に積んだピアノを弾いて通り過ぎるというのはいいシーンです。最後の方でピアノを売らざるを得なくなるのは、“南部の令嬢”の没落を象徴するいい仕掛けです。前半で非常にユニークな袖のドレスに包まれたNicole Kidmanを見せ、後半では同じドレスが作業着に落ちぶれているという、細かい演出も憎い。

悪い映画ではないのですが、全体として褒める気になれません。Jude LawがCold Mountainに戻る途中に出会う苦難も新鮮味がなく、「なんとまあ!」とたまげるような出来事がありません。しかし、女性観客にとってはたまらない映画でしょうね。Jude Lawのようないい男が、自分一人のために野を越え山を越えてやって来ると想像しただけで痺れてしまうのではないでしょうか?

(December 29, 2003)





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