[Poison] Midnight Bayou

【Part 2】

この映画の原作のユニークさは「輪廻」という要素を取り入れていることです。しかも、男が女に、女が男に生まれ変わるという“性転換”もユニーク。確かに、生まれ変わるならどっちの性でも構わない筈です。面白い発想です。原作者が女性だからこういうアイデアが生まれたのかも知れませんが。

物語には100年前の人物たち(亡霊)が登場しますが、彼らは現在の人物とは直接接触しません。接触が必要になるとLauren Stamileの母Isabella Hofmannが、亡霊たちの手先に使われてJerry O'Connellを殺そうとします。これはタイム・トラヴェラーに「歴史を変えてはいけない」という枷(ルール)が課せられているのと同じ制約のようです。野方図ではないわけです。

しかし、ほとんどの場合過去の亡霊たちは現在の人物たちによって“観られる”だけ(現在の人物は透明人間のように過去の出来事を目撃しているだけ)なのに、後半に至って亡霊たちが現在の状況(人物の生命)に関与しようとします。これは物語前半との整合性が取れておらず、ストーリィの齟齬と云わねばなりません。TVのブラウン管から亡霊が這い出して来て人間を殺そうとするのはホラーとしてはいい趣向ですが、この映画の場合には無理があり、中途半端に終っています。

解き明かされる100年前の話も、実はその辺にいくらでも転がっている衝動殺人に過ぎず、あまりおどろおどろしくありません。折角南部のどろどろした背景を得たのに、アメリカの(あるいは世界の)どこにでもあるような事件でしかないのが不満です。

次男はボロ切れに包んだ死体をバイユーに捨てますが、別に重しを付けたようにも見えません(軽々と担ぎ、投げ捨てる)。あれでは数日後には死体が浮かび上がって来るでしょう。100年経っても未解決の失踪事件となる筈はありません。

Jerry O'Connell演ずる法廷弁護士は、八年の間に金を貯めて元荘園主の館である屋敷を購入したことになっています。いくらハリケーン・カトリナの後で不動産の値段が下落したからと云って、少壮弁護士が買える物件とは思えません。月賦ならともかく、「キャッシュで買った」と云われていますから、余計信じられないのです。ロマンスのためには男は若くなくてはいけないが、若ければ金がある筈はない…というジレンマはうまく解決されていません。

(May 14, 2010)





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